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hako no naka
先日、この『箱の中』と続編『檻の外』が収録された決定版が一般書として文庫化されました。そちらの方で、一般書としての『箱の中』について書かせてもらったので、ここでは収録されなかった短編・番外編を含め、作品自体について書きます。
BL好きで、この作品をまったく読んだことがないという方は、ノベルス版で読むことをオススメします。2冊買うことになりますが、文庫版に収録されていない短編がとても重要になるので。
それでは本題。
10代で殺人罪を犯した囚人・喜多川と、彼の雑居房にやってきた痴漢の冤罪で実刑を受けた不遇の男、堂野。
この二人の出会いからはじまる「真実の愛とはなにか」を極限まで突き詰めたような物語。
泣きます。
号泣します。
涙なくしてはぜったい読めない。
号泣、という表現をつかうほど読書で泣くことってそうそうないですが、まさかBL作品でこんなに泣くとは思いませんでした。
それは、『冤罪』という屈辱を受けながら「死」を望むほどの理不尽な境遇に身をおく男の絶望感や、
同じ箱の中にいながらも、「自由を知らないから不自由と思えない」子供のような男がもつアンバランスな純粋さが、ありのまま淡々と描かれているからだと思います。
無駄に美化することも、逆に悲惨さぶることもなく綴られた文章は、刑務所という閉塞的で、規律と嘘と理不尽さにあふれた箱の中を表現するのに相応しい。
物語の前半、読者は堂野の不遇な運命に最大級の絶望感を感じます。
ただでさえ冤罪なのに、金を騙し取られ、懲罰を受け、風邪で死にかけ、人間不信に陥ります。堂野の身に起きることはすべて不幸、どこをみても同情するしかなくて、読んでるこちらも辛くてしかたありません。
「もうやめてあげて…」となんど願ったことか。
だけど、この底辺の底の底に落ちていく苦しみがあるからこそ、その後の喜多川とのぎこちないやり取りが胸を締め付けるほど切なく、温かいものに感じるのです。
喜多川は、親の愛を知らずに育った男でした。
親戚や施設を転々とし、大した教育も受けておらず10代で収監された。だから、物事を知らない。善悪もわからない。常識やモラルなんてもってのほかです。
だけど、それは知らないだけで、頭が悪いというわけではない。
「ありがとう」という言葉をもらう喜びを知り、それがほしくて堂野の世話を焼く。
そんな男の思考回路を知った堂野が、打てば響くが、精神的な「心」の部分で未成熟な喜多川に物を教えたくなるのは無理もないことです。
絶望感に取り付かれていた堂野を救ったのはそんな喜多川の存在でした。
感情を捨て思考を放棄し、言われたことをただ行う平穏をよしとしてきた喜多川が、人間らしい感情を覚え変化していく様は圧巻です。
そして、喜多川にとっても、この世のどこにも見たことがない誠実で真面目で優しい堂野という男は、生きる希望のような存在になっていきます。
大人はいろいろ複雑に物事を考えるけど、子供はまっすぐで単純です。
そんな子供のように純粋で、ストレートな思考で、恥もプライドもなく一生懸命に愛を伝える喜多川の姿は、痛々しくなるくらい必死で、涙がでてきます。
ノンケである堂野が戸惑うのをよそに、喜多川が愛していると囁いたときから、この物語は「ひたすら一途でひたむきな不変の愛」を描いた苦しく長い試練の話へと変わっていきます。
『箱の中』では、喜多川の愛は堂野に拒絶された形で終わります。
■脆弱な詐欺師
喜多川が出所後、堂野の行方を探す話。
ただ会いたい、という願いのために出所後、4年以上の歳月をかけて堂野を探し続ける喜多川。
そんな彼を騙してお金を稼ごうという小悪党な探偵、大江。
物語は彼の視点で描かれています。
第3者である大江の目を通して客観的に喜多川を描くことで、常識を超えた愛の深さが一層際立つわけです。
そして、給料の全て、生活の全てを堂野探しに費やす姿は、痛々しいほどなのに、当の喜多川が「気にするな」と平然としているのでたまらない気持ちになります。
『箱の中』で名脇役を演じた芝というキャラの計らいもあり、ついに堂野発見に至ります。
たまたま大江の悪事を知った芝が、何も気づいていない喜多川のために一肌脱ぐのですが、そんな芝の真の思惑を大江にだけ伝える場面がまた涙を誘います。
信頼している人間に裏切られるのは、しんどい。
…最後まで、大江を親切な探偵だと信じていた喜多川を守り通してくれた芝の優しさに誰を代弁するわけでもないですが「ありがとう!」と言ってしまうくらいグッときます。
■それから、のちの… (※文庫版、未収録)
大江中心の数ページの短編。
大江が後輩の探偵に告白されるエピソードを通し、うまくいかない現実の辛さを描いた話。
もともと監獄物が好きです。
ガッツリ刑務所を扱ったBLは、英田サキの『DEADLOCK』シリーズや、定広美香の『アンダーグラウンドホテル』などがありますが、どちらも外国が舞台です。
日本の刑務所を舞台にし、しかもここまで本格的に刑務所内を描いた作品ははじめてです。
架空のお話とは思えないほど作りこまれた人物たち。
手に取るように伝わってくる感情表現。
向き合うことを避けがちな「真実の愛」というものをとことん追求する気概。
これだけのものを描ける作家さんがいることに、そんな作品と出会わせてくれたBLという世界に、感謝したいと心から思った名作です。
《個人的 好感度》
★★★★★ :ストーリー
★★★★★ :エロス
★★★★★ :キャラ
★★★★★ :設定/シチュ
★★★★★ :構成
「箱の中」「檻の外」の堂野と喜多川を初めて目にしたのは「ergo」シリーズの四コマ(寸劇)でした。木原音瀬さんの作品でも評価が高く、ランキング常連の作品なので大雑把なあらすじは知っていたものの、「ergo」の二人はとてもほのぼのとしていて、過去に色んなことはあったのだろうけど今は幸せな二人…という感じだったので――ううっ…正直、小説は読みたくなかったのです。だって辛そうなんだもの。というか木原作品だから絶対に辛いんだもの。しかも二冊読まないと報われない感じなんでしょう?…ううっ。
そんな折、某号の「ダ・ヴィンチ」で「BL界の芥川賞」と称されていたのを目にして…これは読まねばと思って遂に手に取ったのでした。前置き長い。
上下巻とも言える二冊を通して、5つのエピソードが4人の視点で描かれています。…4人ですよ。2人じゃないんです。まずこの点に唸りました。読み応えがある…なんてもんじゃなかったです。読み始めに大きく深呼吸。読み終えて大きく深呼吸。色んな感情が渦巻いて叫び出したくなるような、誰かと滾々と語り合いたくなるような、そんな小説でした。
私は、これは喜多川圭という男の人生をトレースする物語だと思います。そして上下巻の上巻であるこの作品では、起承転結で言うと人生の「転」(転機)に当たるお話が描かれています。純粋にこの一冊だけだったら評価は「萌」かなと思いますが、上下巻合わせて「神」にします。
生きていく先に幸せがあるのか――。喜多川ほど一途になれたら…と少し彼が、そして堂野が羨ましくなりました。
とりあえずこの作品を読むにあたり、理解しておくべき点があります。
それは、この小説の世界が「BLを寛大に受け入れる世界ではない」ということです。
BL作品でよくあるのは、「男を簡単に好きになれる」「男同士で付き合っても周りから許させる」という世界です。
しかし現実の世界ではどうでしょう。
例えば男A(ゲイでもノンケでもいいが)が男B(ノンケ)に告白したところで、その人はAを受け入れるでしょうか?
ノンケが実生活において、男の人を見て
トゥンク…
「(な、なんだ…このドキドキは…)」
と顔を赤くして考え込むことはほぼありえません。
男が男を好きになるということは難しいことなのです。
この小説は、その現実世界のような感覚です。
その為、「男でも好きだ、付き合ってくれ!」「お、俺でいいのかよ…///」という甘い流れはありません。
そこはきちんと把握しておかないと、読んだときに「なんだこの受け…」とイライラすることになってしまうでしょう。
そして次に大切なこと、
それはジャンルについてです。
先程言ったように、これは「甘々♡」を期待して読む作品ではありません。
(むしろ結構シリアスな内容…w)
”男同士”をよく意識したうえで成り立つ物語です。
内容としては「BL小説」というよりは「小説(一般の小説)」寄りになっています。
その為、BLとは離れたことも多く書かれていますので「BLじゃない…」と感じてしまう方もいるようです。
しかし、この作品において議論すべきなのはそこではありません。
ネタバレは控えたいので詳しくは書きませんが、この小説を続編も含め最後まで読んだとき、感想は二つに分かれるでしょう。
簡単に言うと「好き」と「嫌い」です。
そんなのどの作品でもそうじゃん、と思うでしょうが、私が言いたいのはそうではありません。
ストーリー展開において、個人によってよりはっきり分かれるようなのです。
私は「好き」の方だったのでこの★5の評価なのですが、
「嫌い」だと思う方もでてしまうことには仕方ないと思うストーリーだと思います。
デリケートな内容を扱っていますので…。
なので、購入を考えている人は、とにかく実際に読んでみると良いと思います。
そして、読んでみて「嫌い」と感じてしまう可能性もある、ということも理解しておきましょう。
今までに言ったことをきちんと理解し、勘違いしたまま読むなんてことがなければ、
色々考えさせられる作品となるでしょう。(良い意味でも悪い意味でも)
問題なのは、読んだあなたが「好き」か「嫌い」、どう受け止めるかなのです。
文章(表現)がとてもうまい方なので、文章が微妙だったら…ということは心配しなくて良いです。
(BL小説という枠を超えて文庫本としても発売しているくらいなので…)
「好き」だと思えた方には”最高な作品”として自分のなかに残ることでしょう。
私は泣いて泣いて…とにかく泣いて大変でした。
そして後編である『檻の外』を最後まで読んだ時、
なんとも言えない‥‥とにかく心が温かい……最高…
と放心状態になることでしょう。
あなたにとってどういう作品になるのかはわかりませんが、
私と同じように「素敵な作品だ」と思えたらいいなと願っています。
市役所で働き、普通に暮らしていた男 堂野崇文。
満員電車に乗り痴漢と間違えられ冤罪で服役する。
築き上げたものが壊れ、家族に迷惑をかけ堕ちてしまった先の
刑務所でも騙され打ちのめされる。
そんな堂野の頭をただ撫でてくれた男が喜多川圭。
堂野は喜多川に「ありがとう」と言うんです。
それがきっかけ。
他人に感謝される喜びを知った喜多川は
「ありがとう」のために堂野の世話を焼く。
お駄賃代わりに「ありがとう」を要求するようになり
堂野に絵を誉められれば
今度は、誉められたくて絵を必死に描くようになる。
酷い生い立ちの喜多川にとって
堂野は、はじめて出会った“普通の人”なのだけど
喜多川にとっては、それがとても大切な人になってしまったんですよね。
そして堂野にとっても箱の中(刑務所)という
劣悪な環境で、当たり前が通用しないわけです。
だから、あまりに当たり前のこと人間として当たり前の交流が
酷く特別のこととして心に響く。
本質的な“情”で、つながったふたりは
堂野の出所で離れてしまう・・・
1年あとに出所した喜多川は、必死に堂野のことを探すんですよー。
喜多川は、箱の中からでたのにちっとも解放されてないんだよ。
いつまでもいつまでも堂野という箱の中から出られないっ。
いやもう、解放されることが喜多川にとっての幸せなのか
何が幸せなのかってのは、難しい話だけどもね。
ふたりの絆は、まさしく“情”なんだけど
前に、なんていう漢字が入るのかは、まだわからない・・・
コノハラーむつこです。
正直いうと、木原音瀬さんの作品はレビューしづらいんです。
思い入れが強すぎて、「私の思いを文字で伝えきれない…!」という不安があって。ぽんぽん何も考えずにレビューしてたころが懐かしい。
刑務所ものです。
閉ざされた小さな空間のなかで、一つの愛、いや、愛とも呼べないような執着が生まれ、そして、その愛(執着)は、(いったん)死にます。
そういうお話です。
冤罪で刑務所に入れられた生真面目な男(受け)と。
殺人を犯し、20代のほぼすべてを刑務所のなかで過ごしてきた世間知らずな男(攻め)と。
まともな人生をまったく知らずに育ってきた攻めが、受けに抱いた感情は、生まれたてのヒヨコのインプリンティングに似ている。
攻めは受けの背後に、「美しいもの」「正しいもの」「真っ当なもの」を見て、そこにすがりつくのだ。
怖いほどの執着は、刑務所を出て六年たっても変わらない。彼にはソレしかないのだ。『薔薇色の人生』の攻めもそんな感じですが、この小説の攻めは、それ以上に純粋で悲しい。そして怖い。
怖いんですよ、まじで。
やめてくれと思う気持ちと応援したくなる気持ち、両方の気持ちがゴチャゴチャになって、ボロボロに泣けました。
続編の『脆弱な詐欺師』も傑作でした。
まともな人間が犯罪に手を染める過程が鮮やかで、説得力ありすぎます。BLの範疇にとどめておくのがモッタイナイ。ミステリ小説としても一級品だと思う。このミスの選者たちも、BL界に目を向けるべきだ!なんてやくたいもないことを思いましたw
脇役の芝は、味がありすぎ。いぶし銀の魅力とはこのことだな、と。
『檻の外』へと続きます。
二冊まとめて読むべし。
痴漢と間違われ逮捕されてしまった堂野崇文は、無罪を訴え続けて最高裁まで争い、そのことが仇となり、実刑判決を受け刑務所に入れられてしまいます。
被害に遭った女性が間違えて堂野を訴えるのはなんとなくわかる。でも、それを見ていた証人がいたりして・・・。
その証人は、ただの通りすがりなのに、そして、冤罪ということは、そんなことをしていないのに「私も見ました」的な証言。
その後の取り調べや「罪を認めてしまった方が早く解放されるし罪も軽くなる」という現実。
けれど、やってもいないことを認められない。そのため「反省が見えない」ということで執行猶予なしの実刑判決。
入った雑居房で犯罪者達に囲まれた生活。
普通の人だった堂野が精神的に追い込まれていく過程がすごくリアルでした。
そんな刑務所の中で堂野が出会った喜多川圭。
喜多川は、19歳で殺人を犯し、すでに10年近く服役しています。
誰からも親からさえも愛情を受けられなかった喜多川は、精神的にとても未熟です。
そんな喜多川にはじめて生まれた人間らしい感情はまっすぐ堂野に向かっていきます。
刑務所という特殊な環境のなかで、近づく距離、それに流される堂野。
喜多川が堂野に抱く感情は狂気をはらんでいてとても怖い。
堂野が先に刑期を終え出所します。
出所する際に堂野は、雑居房の芝に喜多川への言伝を頼もうとします。
しかし、芝から諭され、堂野自身思い切ることができず、何も伝えないまま出所していきます。
そして、喜多川の刑が終わる日に・・・堂野は、迎えに行こうと思い・・・けれどそれを行動に起こすことのないままその一日が過ぎる。
切なく、でもどうすることもできない現実を強く感じるシーンでした。
そして、喜多川が出所したあと、堂野を探している過程で出会う「脆弱な詐欺師」探偵の大江。
大江は、しがない探偵で、妻と娘がいるのですが、娘の大学進学を控えて家族間はギクシャクしています。
とにかくお金が必要・・・そう、大学に通わせるにはけっこうな大金が必要で、けど、勉強する気持ちがないなら「働けば」と思う大江に対して妻は「大学くらい行かせてあげなければ可哀想」真っ向対決です。
そんな頃、大江は喜多川に会います。
「金は払うから探して欲しい」
喜多川は出所してから5年、ずっと堂野を探し続けていました。
大江に会う前も何人か探偵に頼んでいますが、すべて断られ続けます。手かがりが少ない
のです。
大江も本来なら断らなければならない依頼でした。
しかし、お金欲しさに大江は、喜多川をだまします。
前科のある喜多川にとって大江に払う依頼費は大金でした。
大江にだまされているとも知らずに大金をつぎ込む喜多川を見るに見かねた芝が今度は逆に大江を脅します。
「堂野を探せ、探し見つけなければ喜多川から金をだまし取ったことを世間に公表する」と・・・。
自分の生活が壊れることをおそれた大江は必死に堂野を探します。
そして、大江は、堂野を見つけ、喜多川に堂野を見失った公園周辺の地図を渡します。
その地図を握りしめる喜多川・・・。
芝も約束通り堂野を見つけてきた大江を放免します。
ホッとする大江・・・けれど、そんな大江を待っていたのは、妻からの離婚届。
妻は娘を連れて家を出て行ってしまっていました。
大江が罪を犯してまで手に入れたかったもの守りたかったものはなんだったのでしょう。
人の狡さとか弱さを突きつけられる作品でした。
喜多川は、堂野への手がかりを手に入れました。
出所後の喜多川の側に芝がいて良かったと思いました。
けれど、芝は、喜多川と堂野の関係を応援しているわけではありません。
喜多川が堂野をあきらめて自分の人生を生きるようにと思っているし、実際に喜多川に何度もそのことを伝えます。
けれど、喜多川には、堂野しかいないのです。
会わなければ、終わらない・・・。
この物語は「檻の外」へと続きます。
感動もたくさんありますが、何よりめちゃくちゃ面白かった!
初めて読んだ木原作品が”趣味じゃない”評価だったので、おっかなびっくり手にした作品だったのですが、物凄く入り込んでしまいました。
堂野と喜多川に心臓を鷲づみにされて夢中になったし、堂野に共感できてしまったことが神評価に繋がったと思います。
堂野は良くも悪くも普通の人なのかなと思いました。
喜多川を受け入れられる器なんか持っていないのに、中途半端に受け入れてしまう情は持ってる。
もちろん心が弱り切っていたという状況もあると思いますが。
その中途半端さや宙ぶらりんな態度に共感できてしまって、どうしても堂野を責めることができませんでした。
アクセル(愛情)とブレーキ(迷いとか恐怖)が同時にかかってるような状態は、前には進まないんですよね…
どうにもできない堂野が歯がゆくもありますが、優柔不断になってしまう部分は人事ではなくだいぶ心を抉られました。
喜多川の人物描写はもの凄く衝撃的でした。
自我や社会性がすっぽり抜け落ちたまま、経験だけベトッと乗せられたような人物に感じます。
特に、初めて愛を知った喜びが無邪気で残酷でとても引き付けられました。
到底社会にうまく溶け込めるとは思えないんだけど、喜多川の存在自体に感じる感動も半端ないです。
幸せになってほしいという気持ちしかでてこない。
堂野を探し続ける一途さ(執着性)や、居場所を突き止めたラストの描写は言葉になりません。
喜多川にとってこの巻は、紛れもなくハッピーエンドなんですよね。そこがめちゃくちゃ切なかったです。
堂野と喜多川の着地点が気になって気になって、これから「檻の外」を読みますが徹夜になってしまいそうな予感がしてとても怖いです。
初めて木原音瀬先生の本を読んだのが、この作品でした。
全身に衝撃が走り抜け
開いた口が塞がらなかった。
同性の男に対して、こんなに愛おしく思ったことなんて今までに一度もなかったです。
しかも架空の本の中の男に対して…。
人を愛するということが、木原先生の作品を読むと
常に考えさせられてしまいます。
涙が止まらないし、
愛おしいし、俺の心の中に侵食していくんです物語が…。
物凄い影響を受け、
愛してやまない一冊です。
この本と出会えて本当に良かったです。
痴漢と間違われて逮捕された。
警察にも弁護士にも3万払って嘘でも罪を認めてしまったほうが得策だといわれた。
しかし、やってもいない罪をみとめたくはなかった。
これまで何に対してもマジメにそつなく暮らしてきた。
市役所につとめ、何不自由なく。
そんな自分がどうして。
1年半留置所におしこめられ、最高裁までいった裁判ではこれまでの努力むなしく有罪の判決がきまった。
初犯にしてはいささか厳しい実刑判決だった。
監獄に入ってからの堂野の話。
堂野・・・なんていうか、踏んだり蹴ったり(苦笑
話を一本とおして、しゅ~~~~わ^~~っと来る話でした。
いつもみたいに「ウホ☆」「ジュルリ」「ハァハァ」言っている余裕がなかった(苦笑
ひたすら胸が苦しいというか。
盛り上げるだけ盛り上げといて、突き落とされるというか。
素直に、喜多川が28にもなって、すごく子供みたいとか。
まっすぐに、「好き」というキモチをあからさまにする喜多川はやっぱりかわいいと思うし、キュンとする。
それに対しての堂野のキモチもわからんでもないと言うか。
独房/みんなの前での交接。
堂野とシンクロしてすごく苦しくなる気持ちと、その行為に対する萌えとで、すごく不思議な気持ちになりました。
やましい自分が恥かしいorz
なににしても、牢屋という閉鎖された空間で起こる、堂野を中心とした物語。
どんぞこにいた堂野のキモチの変化や、周りとのかかわりがすごく良くわかる作品です。
なんていうのかな、気持ちを載せやすいというか。
その分、読み手も苦しいんだけど。
続編「檻の外」を用意して読むことをお勧めいたします。
続きが気になって夜も眠れなくなるから。
昨夜一気に読みきりましたが。。。
最初から最後まで、心が悲鳴を上げていました。
すべてが辛すぎるよ。。。
今まで、木原作品でいろんな痛みを経験しましたが
また新たな痛みでした。。。
痴漢の冤罪で、最後まで無実を訴えたばかりに実刑判決を受けた堂野が
やり場のない怒りを抱える気持ちが痛いほどわかるし
きちんと相手を確かめなかった痴漢の被害女性や
大して調べもせずにどうののことを犯人と決め付けた警察に
心のそこから憤りを覚えつつ、手を震わせながら読みましたよ。
一方の喜多川も
家族からの愛情を与えられないで育っただけではなく
ろくでもない母親のせいで刑務所に入ることになって
それでもその事実に気付けない中身の幼さや
その分ストレートな感情表現なんかを見てると
かなり上から目線だけど「憐れ」過ぎてきつかった。
だから、喜多川が堂野に異常なまでの執着を見せてべたべたする様子も
なんだかんだいいつつも喜多川に流されてる堂野の様子も
まるで「つかの間の幸せ」を見ているようで救われました。
でも、そこは木原さん。
あっけないほど簡単に二人を離れ離れにしてくれちゃいますよね。。。
しかも、堂野は結婚しちゃうし。。。
喜多川が出所した後のことを考えると。。。喜多川がかわいそう。。。
だから、続編の中で
堂野の居場所がわかった時の喜多川の喜び様を見て
涙が止まらなくなってしまいました。・゚・(ノД`)・゚・。
その、続編「脆弱な詐欺師」にもかなりイライラさせられた!
世の中にこんなサイテーなやつがいるなんて!!
って、キィィィィヽ(`Д´)ノ!!ってなりましたが。。。
喜多川と堂野の刑務所での同室だった芝GJ!!
胸が透く思いでしたよ。
しかも、私をイラつかせた張本人・大江の結末も容赦なかったw
「檻の中」では、再会するであろう喜多川と堂野がどうなっていくのか。。。
しっかりと見届けたいと思います。