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na mo naki omoi wo kimi ni sasagu
電子専門の単行本で、134ページと読み応えのあるボリュームになっています。
今後、小説はこういう形での刊行に移行して行くんですかね。
で、こちら、教師と生徒ものであり、切なくピュアな純愛ものになります。
これ、教師と言う立場である受け視点で進みますが、大人だからこその弱さや苦悩、そして、自分を突き動かす激しい愛しさー。
そんな彼の心情が、とても丁寧かつ繊細に綴られ、心を打たれましたよ。
う~ん・・・。
一途に想いをぶつけられる攻めと違って、大人でましてや教師でもある受けは、どうしても拒むしかないんですよね。
相手を大切に思えば思うほど。
いや、教師と生徒ものの良さがこれでもかと生かされた、とても素敵なお話だと思います。
内容です。
ケガをした同僚のピンチヒッターで、受験を控えた三年生の数学を受け持つ事になった数学教師の涼一。
授業内容は優秀でも、取っ付きにくく生徒からは遠巻きにされる彼になついてきたのは、クラスの中心的存在である生徒・黒川でー・・・と言うものです。
まずこちら、涼一が、口が悪くクールな教師。
で、黒川が爽やかワンコって感じでしょうか。
黒川ですが、最初の出会い時から、一気に涼一との距離を詰めてきます。
数学の授業でこんなに面白かったのは初めてだとなつき、、先生はキビキビしてて格好いいと話をねだる。
で、ここから、数学準備室を訪ねてきては他愛ない質問をしてきたり、パン持参で訪れてはお昼を一緒に食べる。
こう、二人が距離を縮めて行くエピソードが丁寧に繰り返され、なんともピュアで可愛くて和んじゃう感じでしょうか。
いや、涼一ですが、口が悪くてクールではあるものの、教師としてちゃんと生徒を見てるし、大切にしてるんですよね。
黒川はとてもデキた生徒ではあるものの、高校生なので当然不安定な部分はある。
そんな彼の悩みにちゃんと向き合いと、これは黒川が憧れから恋へと想いをシフトさせていっても仕方ないだろうと。
また、涼一は涼一で、高校生らしい真っ直ぐさで、好意をてらいなくぶつけてくる黒川に対して、くすぐったいような愛しさを覚えるようになる。
これな!
この「互いに惹かれてゆく様」と言うのが秀逸で、ここの描写がとにかく萌えるのです。
また、埃っぽい準備室に、階段の踊り場、騒がしい教室ー。
そんな情景描写もまた、リアルでして。
いや、何だろうな。
学校って、ある意味特殊な空間であり、教師と生徒の関係と言うのも、一般社会からすると特殊ですよね。
その空気感と言うのがお見事に表現されており、すっかり入り込んじゃうと言いますか。
と、ここから、体育祭での競技に絡み、全校生徒の前で告白まがいの事をされる涼一。
想いを告げられるものの、教師と言う立場や彼の将来を思うと、突き放すしかなく・・・と続きます。
う~ん・・・。
大人って、臆病なんですよね。
そして、背負っているものも多すぎて、心のままに行動する事は難しい。
だから、自分の気持ちは押し殺してでも、正しい道を選ばざるをえない・・・。
そんな涼一の葛藤や苦悩、そして悲しみ。
そんなものがとても丁寧に綴られ、なんともやるせない心地にさせられます。
また、黒川は黒川で、とても切ないのです。
「教えて、先生。どうやったら先生の近くに行ける?」
そんな駆け引きなんて知らない、真っ直ぐすぎるセリフが痛いんですよ。
どうやったって追い付けない、年の差と言うものに悔しさを見せる彼の姿に、めっちゃ心を動かされるんですよ。
この後ですね、父親が倒れた事により、涼一は学校を辞めて実家に戻ります。
そして、ここからが、胸アツの展開。
心の痛みと向き合う彼に届いた、黒川からの手紙ー。
と言った感じで。
この手紙、思わず泣けちゃいましたよ。
居ても立ってもおられず、衝動のままに動き出そうとする涼一にも、胸が熱くなりましたよ。
とりあえず、とても爽やかで素敵なラストになるんですけど。
あとこちら、二人はプラトニックのままです。
エロは無し!
エロ大好きですけど、今作では無くて良かったんじゃないかと思います。
この作品の雰囲気に、エロが入ると余韻もなにも無くなっちゃう気がするなぁ。