中村明日美子先生の代表作ともいえる作品。2016年2月に映画化されたのをはじめ、数多くの関連書籍やグッズも発売されているところからも人気の高さがうかがえる。
『同級生』→『卒業生(冬)』『卒業生(春)』→『空と原』→『O.B(1)』『O.B(2)』と冊数は多いものの、主人公の草壁光×佐条利人の二人を中心に魅力的なサブキャラも多く登場し、少しずつ、けれどそれぞれがしっかりとリンクした作品です。帯にも書かれている「まじめに、ゆっくり、恋をしよう」をテーマに、男子高校生の、青くそして切ない恋が、瑞々しい感性と繊細な絵柄で描き込まれている。
それぞれの巻に付けられたタイトル、そして草壁くん×佐条くんの名前に隠された「ひかり」が効果的に使われているところに明日美子先生のセンスを感じます。
『O.B(2)』で完結したかに思われましたが、2018年2月28日発売のアンソロジー『OPERA vol.67』にて新章「blanc(ブラン)」の連載がスタートします。
高校2年生の草壁くんと佐条くんが主人公。チャラい感じの草壁くんと真面目で成績優秀な佐条くんというまったく正反対の二人が、「歌」を通して少しずつ近づいていく。
感情表現が豊かな草壁くんに流されるような形で付き合い始める二人ですが、寡黙で自分の感情を表すことが苦手な佐条くんが少しずつ見せる恋心になんとも萌えます。時にすれ違いながらも、相手を想い、言葉を尽くし、そして少しずつ恋を育てていく男子高校生の二人。まさに「青春」という言葉がふさわしい甘酸っぱい恋が描かれています。
そして、佐条くんに恋する担任の原先生(あだ名はハラセン)。彼の大人ゆえの分別に、これまた激しく萌えました。
高校2年生の時に出会い恋を知った彼ら。時は過ぎ、進路を決める高校3年生に。
優秀ですでに自分の進路を決めている佐条くんと、未だ自分の進むべき道を決められない草壁くん。そんな彼らが選ぶ「道」はー。
受験を目前に控えた彼ら、という事で季節は冬なわけですが、季節を意味しているだけではなく、彼らの関係も「冬」という言葉が端的に表している。
若さゆえに隠し切れない嫉妬心、すれ違い、あふれる想い。それらを乗り越えて、二人の絆は強まっていく。
そんな彼らをサポートするのがハラセン。佐条くんへの想いに蓋をして、若い彼らにエールを送るハラセンが、男前すぎます。
佐条くんが、自分の両親に草壁くんの存在をカミングアウトするシーンからスタート。
ゲイであることに引け目を感じていた彼の、一歩前進した姿に胸が熱くなりました。
そして、佐条くんの受験も終わり、そして草壁くんも自分の歩む道を見つけ始める。
タイトルに付けられた「春」の文句がぴったりの、優しく、輝き始めた彼らの姿にエールを送りたい。
恋人同士になって久しい彼らですが、性的にはキスどまりだった彼ら。そんな彼らですが、卒業式の日にやっと結ばれる。「同級生」だった彼らが、教室で初めて結ばれたという事の意味の深さに萌えが滾ります。
草壁くんと佐条くんの担任だったハラセンのお話。
「原先生を幸せにしてあげて下さい」という読者の声にこたえた形で生まれたスピンオフ作品です。
夜の街に遊びに繰り出したハラセン。そこでメガネをかけた青年に声をかけるが、どうしてもメガネ=佐条くんという図式から離れることができず。
ところがその声をかけた青年・ソラノは、ハラセンが教鞭をとる学校の新入生で…。
生徒とは付き合わない、というポリシーを持つハラセンと、そんなハラセンに恋しちゃったソラノの恋のお話。
ソラノとハラセン、二人の過去の恋のエピソードも盛り込まれ、過去のトラウマを乗り越え、新たに恋をしようと一歩踏み出す、不器用な二人の男に激しく萌える巻でした。
『同級生』シリーズで登場してきたキャラクターたちのオムニバス作品集。
『O.B』というタイトル通り、高校を卒業した草壁くんと佐条くんと、彼らを取り巻く周囲の人たちのお話が収録されています。
草壁くんと佐条くんがメインではないストーリーも収録されていますが、彼らの目を通して草壁くんと佐条くんの関係性や彼らの想いが透けてみえてくる展開。そして終盤にはハラセンの、高校時代の想い人だった有坂先生のお話も。
年代は違えど、恋する男子の甘酸っぱい恋のお話に、萌えが滾ってしまう作品です。
それと特筆すべきは表紙。
出てくるキャラたち全員が高校生のビジュアルで描かれている。1巻は制服で、2巻は体操着で。萌え度が上がるコスも素敵ですが、彼らの内面まで描き切った表紙になっていて一見の価値ありです。
2巻完結という事で、完結編にあたる『O.B(2)』。
その「最後」にふさわしい、優しく温かな内容になっています。
響と有坂先生。
ハラセンとソラノ。
そして草壁くん×佐条くん。
『同級生』シリーズを通しで出てきた主要なCPたちが大団円を迎える。
草壁くん×佐条くん以外のCPに関しては濡れ場はなく、けれど、そこはかとなく漂うエロスの空気が明日美子さんならではか。そしてお互いがお互いを想う空気がこの作品の最大の魅力かと思われる。
切ない恋をしてきた彼らに訪れた幸せに、気持ちがほっこりと和みます。