一穂ミチさんのレビュー一覧

おとぎ話のゆくえ 小説

一穂ミチ  竹美家らら 

睦言よりも雄弁な言葉

寄せては返す波のように、さざめく感情が静かに
満ちてゆく過程と、飾らない言葉が魅力だと思う作家です。
一穂先生の作品にはそれぞれに色を感じる事が多く、
それは情景や風景の描写が感情の流れの奥に
佇んでいるからかもしれません。
今作は長閑でも緩く閉ざされた曇天の街、
薄墨色のイメージでした。

世が世なら殿様一家であるやんごとない育ちの湊と、
人にも物にも一切の執着を持たない根無し…

2

Don't touch me 小説

一穂ミチ  高久尚子 

不器用な2人のスローテンポな恋

一穂さんの作品はどれも評価高いので、過度に期待したせいか
普通すぎる展開にちょっと拍子抜けしたかも...
でも、ちゃんとキュンってなる場面も、共感できる場面もあって、
一穂さんじゃなかったら単純に「いい作品だったなぁ~」って
なってたと思います。
そーゆー意味で考えると、人気作家さんって大変ですよね~
普通にいい作品書いても評価厳しくなっちゃうみたいな...

『Don’t tou…

0

藍より甘く 小説

一穂ミチ  雪広うたこ 

静かに染まりゆくまで

一穂さんの作品は時々色があるように感じます。
タイトルにもある「藍」という色は、今作では
じっと心の底に横たわる交じり気のない想いの
イメージと重なりました。

ノンケで彼女持ちの暁行に、伝えるだけでいいんだと
告白した遥は、胸の内を多く語らず芯があって欲のない青年です。
彼の実家は藍染を生業としており、要所で語られる
藍というものは、凛とした遥に似合う良いモチーフでした。

3

藍より甘く 小説

一穂ミチ  雪広うたこ 

観覧車から夜景を見ているような

一穂ミチさんが好きで買ってみました。これはあたりです。
「藍染め」家業のゲイ・遙と、その想い人暁行のお話。

やっぱり一穂さん特有の透明感というか、綺麗さがありましたね。
重点を置かれがちな登場人物の心理描写より、風景など周りの様子の描写に力を入れているように感じました。
文学的でとてもよい雰囲気だったと思います。
物語も丁寧に作られていて、深い物語でした。
一穂さん好きです。

4

雪よ林檎の香のごとく 小説

一穂ミチ  竹美家らら 

ときめき盛りだくさんな心にしっくりくる神作品

タイトルに惚れてほとんど衝動買いでしたが、大当たりだったと思います。
こんなにしっくりくる作品は初めてでした。
てかときめきすぎて心臓もたなかった・・・。

辛い過去を持つ桂先生とその生徒で純情少年な志緒ちゃんのお話。
一見ポピュラーでありがちな設定で、たしかに私もそれに惹かれて買ったようなものですが、この二人だとなんか違うんです。
普通教師×生徒の作品って、話自体は萌えるものの、二人…

14

街の灯ひとつ 小説

一穂ミチ  穂波ゆきね 

ヘタレワンコ攻めがツボでした

導入部、あまり乗り気でない同窓会に顔を出した主人公が、見覚えのない同窓生に出会う。
自分は彼の事を全然覚えてないんだけど、彼は主人公の事をよく知っていて・・・
そこから展開する、彼等の接点・しがらみ、事情、
原風景の描写もあいまって、視覚に訴えかけてくるお話でした。

自分的にヘタレワンコ攻めになる方喰がドストライク!
もじもじ、うじうじしていて、若干変態ストーカーめいていて、ずっとあ…

1

街の灯ひとつ 小説

一穂ミチ  穂波ゆきね 

学生の頃を思い出した

 恋愛部分とか、エロとかも好きですが、やはりこの方の小説は、誰もが感じていてもはっきりと意識していなかった心情を、言葉に表しているところが好きです。

 学生の頃は、クラス内ではっきりグループが分かれていて、違うグループの人とはほとんど交流もなく卒業していきますよね。
 大人になれば、全然学生の頃にはしゃべらないような相手と、交流するのが当たり前で、世界も広くなりますが、学生の頃はそうはいか…

3

街の灯ひとつ 小説

一穂ミチ  穂波ゆきね 

“受ざまぁ”な展開でした

受の性格を好きになれるかどうかが、この作品の好みを左右すると思いました。
私はちょっと微妙…(笑)
プライドが高いけどコンプレックスも強い、なんとも脆そうな主人公(受)。
しかも攻に対して思わせぶりな態度をとったり逆ギレしてみたり。
そういうのを含めて共感できたり、かわいいな~と思えたりすると勝ちなんでしょう(笑)

同窓会で見覚えのない美形の同級生と再会した初鹿野(はじかの)。
し…

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さみしさのレシピ 小説

一穂ミチ  北上れん 

雨の匂いのするお話

この作品の匂いが好きです。

お話の中で「匂い」が重要なモチーフとして、あちこちで出てきますが、
知明の作る料理たちの匂いはもちろん、
慈雨の部屋の古い辞書の匂い
鬱蒼とした洋館の古い家の匂い
熟して落ちるすももの匂い
そして、雨の匂い
雨漏りのする家の中で
パリの街角で
そして、海の上で

一穂さんの作品って、「赤ん坊が日の光でキラキラ踊る埃をつかもうとして手を伸ばしてい…

3

さみしさのレシピ 小説

一穂ミチ  北上れん 

期待が・・・

評価が厳しいですが、一穂さんだからと期待していたので低めになってしまったところもあるかと思います。
今までの作品もそれなりに泣かせていただいたし、今回は題名からして泣かせてくれそうだったので、期待が高すぎたのかもしれません。
そうです、今回は泣くまでには至りませんでした・・・

家族の中で孤独を感じていた上、結婚も考えていた彼女に手ひどく振られて、仕方なく実家に帰ってきていた知明と、唯一彼…

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