Sakura0904
凡人であれば何もかも放り出して逃げてしまいたくなるような立ち位置にいながら、2人はよくここまで耐え抜き1つひとつのことに向き合えたなぁと、感服せずにはいられませんでした。相当時間はかかったけれど、久世家をどうするか、自分達の身の振り方はどうするか、石崎家・桂木家との関係はどうするか、そのすべてにこの最終巻で答えを導き出した2人。どちらかだけでは絶対辿り着くことはできなかったであろう終着点でしたね…
5、6巻よりはずっとストーリーがすっきりしたように感じました。というか、テンポが良かったと言うべきでしょうかね。BLはひとまず置いておいて、思わず引き込まれたり、唸らされたりする展開が多かったように思います。桂木の母親らしい芸者の知津の話や、桂木と石崎、石崎父とのやり取りなどなど。終盤まで暁人と桂木が一緒になることはないのですが、別々に暗躍する2人のかっこ良さに惚れ惚れしました。特に、暁人が病床…
名高い作品に自分もハマりたい一心で読み進めてきましたが、もう心が折れそうです。ここまで来てもほとんど萌えは感じられませんでした。焦れったい展開には耐性ある方なんですけどね…。しかし、時々挟まれる濡れ場にすらあまり萌えられないのでもうどうしようもないです。ついさっきまで冷静だったのに、暁人に迫られるとすんなり受け入れてしまう桂木に、どうしても矛盾を感じます。本人にも自覚はあるんでしょうけれど。自分…
物語の骨組みは本当に緻密で素晴らしいと思います。例えばこういう裏取引が実話だったとして、華族令時代のドキュメンタリーとして放送されたら、間違いなく見入るでしょう。でも、私はあくまでBL作品には1巻1巻に萌えや、同性愛だからこそ感じられる何かを求めているので、その点では、5巻は娯楽として得られるものがあまりにも少ない巻でした。今は2人の幸せのための壮大な準備期間なのであり、辛ければ辛いほど2人が結…
互いを思いやるあまり暁人も桂木も極端な行動に出ることによって、物語の方向性が二転三転する4巻。暁人は桂木の積年の目的を果たすため、自分が隠居し桂木を久世家当主に据え置くことが最善だと考え、森山侯爵を脅迫してまでその根回しに奔走します。最大の目的は桂木のためですが、彼は自分が当主の器ではないとも感じています。家格を軽視し恋に溺れている自分では、臣下や領民が不安になる、と。一方、その画策を知ってしま…
今まで桂木に任せていたことにもどんどん暁人が裁量権を持つようになり、暁人は既に桂木とほぼ互角の才覚を見せていました。別に彼は桂木から何か奪いたいわけではなく、そこにあるのは昔から変わらず、ただ桂木に認められるだけの人間になりたい、彼と一緒にいられる人間でありたいという純粋な気持ちだけなのです。桂木と同様に抜け目ない根回しをするようになっても、彼の本質が変わることはないんですね。
雨宮と桂…
1巻では明らかに桂木の方が優位で何を考えているのか分からない印象でしたが、2巻では暁人も堂々とした態度を見せるようになり、彼も彼で何を考えているのか分からない時がありました。きっと2人はまだ本質的には子供とそう変わらないはず。でも、桂木が一貫して頑なな態度を崩さず先代との約束にこだわっているから、暁人も家督にこだわらないわけにはいかない。無意識の内に2人はお互いとても無理をしている状態にあるよう…
日高先生の無駄のない美しい絵と、華族という身分が幅を利かせていた時代の重厚な雰囲気がとてもマッチしていました。子爵だった父が亡くなり、10歳という若さにして襲爵した主人公の暁人。何もかも任せれば良いと彼に与えられた家令である桂木は、私情を挟むことを一切許さず、徹底的に厳しく暁人を教育します。桂木に認められたい一心で努力しても、彼が暁人を穏やかな目で見てくれることはありません。なぜなら桂木は、なか…