Sakura0904
◆アードルテとアーダルテ
これは何とも言えない後味の物語ですね。アードルテに騙されたにも関わらず、彼を憎まなかったアーダルテの想いが気になります。自分の身代わりとして長年日の当たらない生活を強いられ、あらゆる外の世界を見ることのできた自分と違い、あまりにも狭い世界で生きてきた彼を想い、数年の身代わり生活は甘んじて受けようと考えたのでしょうか。脱走に成功した後の2人の慎ましやかな生活が永遠に続け…
◆2週間のアバンチュール(表題作)
こういう女子は中村先生にしか描けないだろうなぁと。見た目は地味な優等生、でも中身は周りの同い年の女子達よりもずっと大人びていて、行動は大胆で。その行動の理由を辿っていくと、ちょっとした悪戯心や好奇心であったりして、やっぱり子供は子供なのかとも思う。彼女は同性の他人を介して、女である自分を理解しようとしているのかもとも受け取れました。周りには迷惑極まりない話で…
最後まで勢いを失わずに読者をミステリーの渦に引き込んでくれた作品でした。やはり己の命を削りながら物を書く職業というのは、どこか鬼気迫るというか、常に死と隣り合わせにあるようなものなのだなぁと改めて感じました。藤乃朱は溝呂木に対して恨みは微塵も持っていなかったのですね。彼女の溝呂木に対する感情の複雑さ、慕情の純粋さはまさに創作のキャラクターにもってこいなのではないでしょうか。1人の女性にここまで想…