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神作品

マスターレビューアー 「BLアワード検定」合格証 ソムリエ合格

女性みざきさん

レビュー数14

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今年度17位

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異様さと背徳感の中に

理原先生、漫画がすごくうまい。
続きが気になります。

男性妊娠の研究施設を舞台に繰り広げられる物語は、被験者たちが監視されていたりと設定的にも内容的にもほんのりダークなディストピアものといった感じ。
発情や男性妊娠といったテーマを扱いながら、オメガバース作ではないというところも独自設定の面白さが光るポイントのひとつだと思います。

第三者たちに監視された中で描かれる濃厚な性描写と共に、主人公である凪冴と幼馴染の隼仁のややどろついた再会劇が繰り広げられていくのですが…
レビュー冒頭にも書いた通り、工夫されたコマ割りやアングルによる視線誘導が非常にうまいので、自然と1コマずつ目で追いたくなるような仕掛けが本当によく効いているんです。
どうしても背徳的な設定と性描写に目がいきがちなのですけれど、他の見どころにもきちんと目がいくというのかな。
被験者が徹底的に管理・監視されている、この異様な箱庭に関する謎への疑問を膨らませながら、凪冴と隼仁のビターで複雑な現在と過去を時に切なく、時にもどかしく追いかけ楽しめました。
攻め視点で見えてくる一途さよ…ああ…

凪冴の母の謎や、ラストの不穏さ。
そして、どこからどう産むのか?
一筋縄ではいかなさそうな雰囲気にわくわくしますね。
やや好みが分かれる内容かもしれませんが、うす暗く危険な香りと共に香る想いと話運びが面白い1冊でした。
いったいどんな結末を迎えるのか?
引き続き下巻も見守りたいです。

すこし苦くてとびきり甘い

これは…神評価以外の選択肢が自分の中にありませんでした。

受けのことが好きすぎる攻めが登場する、人によって好みが分かれる設定や内容の作品が読みたいと、ちるフェスのソムリエコーナーでおすすめしていただいたこちらの作品。
あらすじからして心惹かれるものがあったのですが、読んでみて思わず頭を抱えました。
最初から最後までドスドスドスっと萌えのツボに刺さってなかなか抜けません…好きだ〜…!!
熱く推してくださったソムリエさんに感謝です。

人身売買がごく当たり前に存在する世界の中の、そのもっともっと奥のほう。
表からは見えない薄暗いところにあるユートピアといいますか…全体的にも題材的にもダークな香りが漂うのだけれど、蓋を開けてみればとんでもない甘さなのです。
いやあ、なんでしょうかこの絶妙なバランスの良さは。
ほんのりどころじゃない苦味と、加糖練乳のような甘みがぐつぐつ煮込まれていて、一度味わったらやみつきになる味付けになっています。

劣悪な環境下で洗脳され慰みものとなっていた受けを、殺し屋の攻めが血で汚れた手を差し伸べて救い出す。
一筋縄ではいかないお話なのかなと思いきや、2人の暮らしはまさに楽園。スウィートルームそのものです。
柔らかい毛布で身も心もまるっと包み込んで、少しずつじっくりとやさしさで愛でつくすアムの溺愛っぷりがたまらなく良かったなあ…
そして、アムの手から情操教育を受け、毎日愛情をたっぷりと浴びた翠が2人の関係に見事な化学変化をもたらしてくれる素敵仕様となっているではないですか。
この展開と関係性の変化は大好きなやつー!と、すっかり彼らと作品の虜になってしまいました。
唯一無二の関係になるまでの流れが最高すぎて萌えざるを得ません。

薄暗さの中の多幸感や優しさ。
愛情や癒しという、世界観やバックボーンとは相反するテーマが非常に上手く効いている作品でした。
わくわくするような萌え要素がぎゅっと詰まっていて、刺さる人にはざくざく刺さるハッピーセットみたいな1冊だなと思います。
作家さんの既刊も追いかけたくなりました。

まさかこうくるとは

柳川視点の忽滑谷刑事の事件簿シリーズも5作目。
今回のショートストーリーなのですが、えっ…!もしかしてそう来るの…?!という、意外性大なもので非常に楽しめました。
これは…続きがどうなるのかがかなり気になるところです。
新装版はもちろん、こちらの忽滑谷と柳川のお話も楽しみにしている自分がいます。

いつもの流れであれば、作中で交わっていそうであまり交わっていなかったキャラクターと忽滑谷&柳川バディの絡みが、事件の調査途中にふわっと見られるものだったと思うのです。
今回は前回・4作目の特典小冊子と繋がりのあるお話となっています。続きものは初なのではないかな。
先日世話になったお礼にと、酒入が2人を食事に誘うストーリー展開。
当日指定された少々人を選ぶコンセプト店へと向かうと、そこにはなぜかそこまで親しくも面識もあまりない間柄の俳優・三谷がいて…と続きます。

三谷の困りごとがこんな展開になるとは、でした。
事件簿シリーズのナンバリングが増えていく度に、なんだかちょっと柳川の忽滑谷への印象が変わりつつあるなとは思っていたのですけれど、なるほどこう香りますか〜!と面白かったです。
芽吹いているのか、それとも香りがするだけなのか。
彼の今後が楽しみです。

それから、忽滑谷が着ていた昔父親からもらった趣味の悪い私服って、もしかして本編に登場したあの人がお父さんなのかなあなんて思ったり…この辺りも今後明らかになるとうれしいですね。
このシリーズもまだまだ続いてほしいです。

新装版番外編

新装版5作目…ではなく、番外編となります。
旧版5巻に収録されていた、暁にフォーカスをあてた番外編作品と、暁がアメリカでエンバーミング技術を学び始めた頃の書き下ろし短編「友達とライスボール」が収録されています。

やはり4巻があの展開だったものですから、どうしても続きが読みたい!と思ってしまいそうなところですが…
久しぶりに読んだこちらのなくてはならない番外編に、またしても見事に感情を引っ掻きまわされ、すぐには言葉が出ない読後感でいっぱいになっています。
綺麗なところも汚いところも含めて、木原先生は人間の生々しさを描くのが本当に上手い作家さんですよね。
だから私は木原先生作品を追いかけたくなるのかもしれません。
最後のページまで読み終えたあと、1巻から読み返せばまた違った世界がきっと見えてくるはず。
何度も読んでいるはずなのにもう1度読み返したくなってしまいました。

今作はなんといっても、高塚暁という人を知る上では欠かせない1冊でしょう。
今までの吸血鬼シリーズは、書き下ろし短編を除けば全てがアル視点なのです。
なので、読者には「アルの目を通して見た暁」の情報のみが与えられていて、その他の彼の背景に関しては想像をするしかなかった。
今作では、そんな彼の謎めいていた過去が暁視点でじっくりと解き明かされていきます。

エンバーマーの暁の元に、よく知った1人のご遺体が現れるところから始まる物語。
暁のこれまでの歩みが痛いほどにわかる、非常に濃厚でずっしりとした重みと読み応えのあるお話です。
なんだかもう言葉にならないんですよ。苦しくて。
でも、どうしようもないほどに心が揺さぶられる。
これ以上ないほどに、暁という人がどんなものを見て感じて生きて現在の暁が形成されていったのかが理解できてしまうんです。

なぜ、他人を寄せ付けたがらないのか?
なぜ、嘘が嫌いなのか?
なぜ、エンバーマーを志したのか?
なぜ、蝙蝠が好きなのか?
なぜ、生きている人間を愛せないのか?
そして、なぜあれほどまでに愛情深く優しいのか。

暁に対して感じていた「なぜ」の全てがここにありました。
1人の人間に奥行きを持たせ、どんどん立体的に浮き上がらせていく繊細で複雑な心理描写と、生きた人間の誰しもが持つ残酷な部分が容赦なく切りつけて襲いかかってくる恐怖。
隠れていて見えない、もしくは見ようとはしていないだけで、身近にあるかもしれない残酷な側面ばかりが描かれています。
なぜ大人は嘘をつくのか。たった一言がとても重く苦しい。
イグリットの真理をついた言葉がじくじくと胸に刺さりました。

暁の過去を知れば知るほど、丸腰で嘘のない感情を真っ直ぐに暁へと投げてくるアルは、もしかしなくても本当に特別な存在なのだろうなと思えてなりません。
最初から最後までどっぷりと没頭して読ませてくれる1冊でした。
5巻の前にこちらの番外編を挟んだということは、ずっと待っていた旧版5巻よりも先が読めると期待をしていいのかな。
叶うことなら彼らのこの先を最後まで見届けたいです。