【ボーダー】
ノンケの攻めとゲイのバーテンダーの受けの話。
攻めの渡部は受けの環に近づくが、環はゲイである自分とノーマルである渡部を線引きして突き放す。好きだけど距離を置いて、好きだから遠ざかる。環の中にノンケに恋をしてしまったゲイの苦悩が伺えて読んでいてつらくなりました。
【揺れる境界線の上】
ずっと受けのことが好きな攻めと、ゲイフォビアのバツイチ受けの話。ボーダーではさんざんゲイを嫌っていてBLの登場人物としては嫌われ要素満載な役回りだった佐々木でしたが、今回は主役のしかも受けとして登場します。
男は女を好きになることが当たり前。同性同士の恋愛なんて気持ち悪いだけ。そんな自分の価値観を環や渡部に無理矢理押し付けていた佐々木ですが、まさかそんな彼が線を飛び越えてしまうとは。
ゲイという人種をずっと毛嫌いしていた佐々木が国見の気持ちと向き合ったとき、自分が今まで必死に線引きしてきた境界は意外にもあっさりとなくなってしまいました。けれどもそこに行きつくまでの過程が長く、リアルに描かれていてとても良かったです。
最近何の疑問や葛藤も抱かずにすんなり男と男がくっついてしまうBLが増えてきているなか、「ゲイフォビア」のキャラクターを出して世間体や常識、価値観の違いをぶつけてきたのはとても新鮮でした。
恵まれない生い立ちから恋愛詐欺師として生計を立てている受けと、総合病院の長男でお金持ちで何不自由なく暮らしている攻め。生きてきた環境が真逆のふたりが出会い、人間不信の受けが真面目で心優しい攻めに少しずつ心を開いていく物語です。
受けの蓮がカモにしていた加賀谷のことを心から好きだと感じたとき、受けは初めて今まで他人の気持ちを弄び騙して犯してきた罪の重さに気付くんですね。私は人間の弱い部分、醜い部分を描きつつ、あたたかい部分で救済していく、凪良さんの文章がすごく好きです。
詐欺容疑で逮捕されて、二年という長い年月を経て結ばれたふたり。何度も何度も積み上げて、時折崩れることもあったけど、それでもあきらめずに時間をかけて積んだ恋が実り、本当に幸せになってくれて良かったです。
恋人とのセックスレスに悩む攻めと幼馴染にずっと片想いしている受けの話です。
偶然始まったメールのやりとりからふたりが近づいていく過程は奇跡的でとてもロマンチックでしたが、攻めと受けが抱えているものや背景が重かったです。特に攻め。上記に書いたとおり攻めは彼女とのセックスレスに悩んでいて男なら好きな人としたい!って感じなんですけど、彼女はそうでもないんですよね。BLなので彼女は悪役というかちょっと嫌な奴に描かれているんですけど、読者の自分としては彼女の気持ちも分からないでもないなと思う部分もあり複雑でした。
人間くさい部分がたくさん描かれた良作品だと思いますが、ときめきよりも考えさせられる部分が多かったのでこの評価にさせて頂きました。