敵だらけのところから成り上がった皇帝リュウセイと、その懐刀であるハイイロの両片思いすれ違いファンタジーBL。
いわゆる逃げる受けと執着攻めの王道のお話です。
妖魔と契約し、対価を渡すことで力を手にする護衛の一族のハイイロは、他の一族の人たちとは違って落ちこぼれであり、血では対価が足りません。代わりに彼が対価に使うものは記憶。シエンという妖魔と契約しているハイイロは、主のリュウセイのこと以外のほぼすべての記憶を捧げることで比類なき力を手に入れました。
幼いころから苦楽をともにして、皇帝に成り上がるまでの道を共に歩いてきたリュウセイとハイイロの間には、すでにかたい主従の絆があります。両片思いであるリュウセイとハイイロですが、自己肯定感の低いハイイロの方は、己が主人に想われているとは露とも思いません。結果として、一夜を共にした後に、ちょっとした誤解から思い込みが膨らんで、皇帝の前から逃げ出してしまいます。
そこに絡んでくるのが他国の姫。リュウセイを守るため、自己犠牲でどんどん記憶を失くすハイイロが切なく、一方であくまで冷静にハイイロを追いかけるリュウセイは常識人ぷりが可哀想ながらも安心感がありました。
妖魔のシエンをはじめとして、護衛の一族の当主や皇帝の叔父など、サブキャラクターたちも優しく魅力的です。
絶望感からのウルトラハッピーエンド、シリアスの中のコミカルな会話(皇帝と叔父と当主)が印象的な、さらっと読める電子オンリーの中編です。
逃げる受けと執着攻めの攻防戦がお好きな方におすすめです。
グレア過敏症に悩むワーカホリックsub・八雲と、早熟のdom・星那の現代しょたおにdom/subユニバースBL。
物語開始時点では星那は小学六年生なので、ふたりの年齢差は十一歳の歳の差ラブです。厄介な体質のせいでdomとプレイすることができない八雲ですが、ある日体調を崩して倒れていたところを助けてくれた星那のグレアだけは、心地よく感じられます。最後まで明かされなかったその理由が気になるところではあるものの、運命的な出会い方が素敵です。
星那を見つめて星那父に不審者と勘違いされる場面や、無邪気な星那とプレイや水泳の練習を重ねる場面は、低年齢スタート独特のかわいらしさとピュアピュア感にあふれていて頰が緩みます。
大人の八雲の視点からだとプレイの場面にはどうしても背徳感がついてきますが、家族ぐるみの和やかな関係ですし、星那が成長するまでは恋愛関係も進まないので、かわいいふたりを存分に見守ることができます。
後半では星那が頼れる大人に成長して帰ってくるのですが、そのシーンのどきどき感には歳の差もののおいしさがたっぷり詰まっています。
成長する年下攻めがお好きな方、純愛しょたおに好きな方、おすすめです!