ポッチさんのマイページ

神作品

PREMIUM レビューアー

女性ポッチさん

レビュー数6

ポイント数121

今年度30位

通算--位

  • 神4
  • 萌×22
  • 萌0
  • 中立0
  • しゅみじゃない0
  • 絞り込み
条件

指定なし

  • レビューした作品
  • 神作品
  • 萌×2作品
  • 萌作品
  • 中立作品
  • しゅみじゃない作品
  • 出版社別
  • レーベル別
  • 作品詳細
  • レビューした著者別
  • レビューした作画別
  • レビューしたイラスト別
  • レビューした原作別
  • レビューした声優別
媒体

指定なし

  • 指定なし
  • コミック
  • 小説
  • CD
  • DVD
  • ゲーム
  • 小冊子
  • GOODS
発売年月
月 ~
レビュー月
表示モード

今巻も最高。

『無能な皇子と呼ばれてますが中身は敵国の宰相です』の3巻目。
続きものって続巻が進むごとに面白さが半減してしまうものってあったりしますが、さすが夜光先生。巻数が進むごとに面白さがマシマシです。素晴らしいです。

アンティブル国の若き宰相・リドリー。
落雷事故に巻き込まれた彼は敵国・サーレント帝国の第一皇子のベルナールと入れ替わってしまっていた。自国に舞い戻り、そしてリドリーの身体を取り戻したい彼はー。

というストーリーの今作品。

3巻は、白豚皇子と呼ばれていたベルナール(中身は有能なリドリー)がメキメキと頭角を現すようになり、疎ましく思った皇帝から竜退治を命じられてしまいー?

というお話。

いやもう!
リドリーがカッコいい!
竜退治に向かう彼は、決して国のために行動しているわけではない。自分が元に戻るために行動しているだけ。なのに、それが結果的に国のためになり周囲からの支持が上がっていくという。単なる「良い人」「スパダリ」ではないのでめちゃめちゃ面白い。行く先々でトラブルを解決していくさまがクソほどかっこいいのであります。

彼が言い放った「罠に嵌めて抹殺しよう」というくだりにはもう爆笑。彼の本質をズバッと言い表したセリフにしびれました。そして、悪には鉄槌が下り、正義が勝つ瞬間は胸がすく思いです。

そして3巻に入り、なぜリドリーとベルナールが入れ替わってしまったのか?という部分に触れる描写が出できました。今後、どうなっていくのかめちゃめちゃ気になります。

王族であるがゆえに浮き彫りになる世継ぎ問題。
クソでクソな皇帝の存在。
入れ替わってしまったリドリーとベルナール。
今巻で退治に向かった竜の存在。そしてその過程で知り合う国民たち。

バックボーンはてんこ盛りなのに、それらがきちんと繋がり伏線を回収していくさまは読んでいて圧倒されます。

ちなみにですが、リドリーに(術を掛けられているために)忠誠を誓っているシュルツ。この二人がやっと本懐を遂げます。おめでとう、シュルツくん。ページ数はさほど多くはありませんが、この濡れ場がめちゃめちゃエロいです。リドリーの秘密と、シュルツにかけられた術の件もあって身も心も、という感じではないですが、それがまた良い。ジレジレと進む二人の行方もこの作品の大きな魅力の一つだなあとしみじみ。

あとは忘れちゃいけない、サマミヤさんの描かれた挿絵。
もう最高。
リドリーがカッコよすぎて悶絶しました。

何もかもがパーフェクトな今シリーズ。続きが今から待ち遠しいです。

読後、心がほっこりします。

櫛野先生は人外ものを多く描かれる作家さまのイメージが個人的に強いのですが、今作品はゴブリンが主人公。ゴブリン、というか、ゴブリンと人間のハーフが受けちゃん、という設定のお話です。





森の奥深くで、ひっそりと一人で生活しているリュイが主人公。
表紙の右側の彼です。

22歳の彼が生まれる前の30年ほど前のお話。世界には魔王が魔物を操り、人間たちを恐怖に陥れていた。が、一人の勇者が立ち上がり魔王をせん滅。魔王亡きあと、操られていた魔物たちは正気を取り戻し、世界に平和が訪れた。

これからは魔物も人間も仲良くしようー。

そんな時にリュイの両親は出会い恋をして、リュイが生まれた。
リュイの父親は人間、母親はゴブリンだ。が、人間の姿をしているもののゴブリンの特徴でもある緑色の肌は斑に広がり、そしてとがった耳を持つリュイは人にも魔物にも受け入れられる存在ではなかった。それでも、両親はリュイを愛し、三人平和に暮らしていたが、ある日母は病にかかり、その病を治す薬を手に入れるために父は森を出ていき、それっきり3年という月日が流れた後も森に帰ってくることはない。

孤独に一人で父を待つリュイではあるが、魔物の友人やリュイが育てている薬草を買いに来てくれる商人もいて、それなりの日々を過ごしている。

が、そんなある日、森でリュイはケガを負った一人の騎士を見つける。こんな森になぜ?と思ったものの、彼の目に失明してしまう危険性のある花粉が付着しているのを見て、思わず助けるために声をかけてしまったリュイだったがー。

というお話。

リュイ視点でストーリーは始まりますが、この騎士・レオン視点と交互に切り替わりながら描かれていくので、二人の感情が分かりやすく感情移入しやすい造りになっています。

リュイは人間とゴブリンのハーフ。ということで孤独に生きてきた過程が読み取れて、序盤から一気に萌えを掴まれました。リュイが可愛いんよ…。母を病で亡くした過去から、彼は病で苦しむ人たちの助けに少しでもなりたいと尽力を惜しまない。

そして、一方のレオンも。
彼が傷つき、森の奥に逃げ込んできた経緯。
彼の素性。
そして、彼が成し遂げたいと願っている「こと」。
レオンもまた、リュイと同じように清廉な魂を持つナイスガイなのです。

一時的に目が見えなくなっているレオンと、ゴブリンと人間ハーフであるという素性を隠したいリュイは、けれどお互いを思い遣り優しい日々を過ごすうちに少しずつ心惹かれあっていくけれど。

レオンの素性と、リュイの隠したい魔物とのハーフであるという因子。
これらが上手に絡み、レオンの目的と、二人の恋の成就というバックボーンが過不足なく進んでいくストーリー展開に圧倒されました。

リュイは一人で暮らしていますが、でも、彼にかかわる人物はいます。
人間の商人であるカガリ。
魔物の友人・フラム。
彼らがまた良い味出していてですね、最後の最後までナイスなのです。

魔物と人間の、過酷な過去から生み出されてしまったすれ違い。
これに関してもきちんと描かれていて、バックボーンとしてはシリアス寄りなのですが、シリアスすぎずに、けれど軽視することなく終始温かな展開を見せるところも非常に良かった。見た目とか種族とか。自分と違うものを排除しようとするのではなく、お互いに歩み寄り、心を割って話し合うことで信頼関係は築けるのだと。多くの方に読んでほしいと願わざるを得ない、心温まるストーリーです。

挿絵を描かれている石田さん。
石田さんて綺麗な絵柄を描かれる作家さまですが、ちょっと色香が強いっていうのか。エロ度が高いというのか。そんなイメージがあるのですが、今作品の絵柄はとっても優しくてきれいでめっちゃ良かった。

今作品には、様々な形の「諍い」が描かれています。
けれど、それを上回る、愛情とか人の優しさとか、家族愛とか。それらもきちんと描かれています。

話し合い、相手を尊重し、自分と違うものにも歩み寄ることの大切さを説いた一冊。読後心がほっこりと温かくなる、そんな優しい作品でした。

べな 4 コミック

こふで 

堂々、完結!

「べな」の4巻目にして完結編。
いやもう、めっちゃ良かった…。ページを捲るたびに思わず涙が溢れました。じんわりと何かが心に染み入ってくる、そんな感じ。


若水の情人・鬼平太を救うために、べなと壱は手を貸すことにするがー。

という3巻からの続きから4巻はスタート。

すごくお上手だなと思ったのは、鬼平太と二三をシンクロさせているところ。
自分の身を犠牲にしても、愛する人を守りたい。鬼平太と二三は、タイプとしては全く正反対でありながら、いやだからこそか?二人の、それぞれの「大切な人」に対する愛情が怒涛の様に流れ込んできてとにかく切なかった。

そして、二三を救うことができなかった壱にとっても。
鬼平太を救い出すことで、彼は自分自身の贖罪の気持ちに一区切りつけたんじゃないかなと。そんな風に思いました。

そしてダンゾウさん。
彼もね、めっちゃ良いよね…。彼は彼の形で、償い続ける。二三を想って。
彼の優しさを受け取った誰かとともに、ダンゾウにも幸せになってほしいなと願ってやみません。そして、壱に「戦うすべ」を教えてくれたことにも花丸を差し上げたいです。

べなは、鬼だからというただそれだけの理由で虐げられてきた。
けれど、壱におにぎりをもらったとき。壱が助けてくれようとしたとき。
その時に、彼は「鬼」ではなく、「べな」として生を受けたんだろうな、と、そう思うのです。

姿かたちは人間であっても。
その心根はケダモノみたいなやつもいる。

その一方で、鬼の姿をしていても心は人と同じ。愛情ややさしさに満ちたべなもいる。べなを、「鬼」ではなく「べな」として受け入れてくれた周囲の人たちの優しさが、べなを人として育てるための糧になったのだろうと。流血とか、子どもに対する性搾取とか。痛く、しんどい展開でありながら、今作品が描いているのは様々な形の、深い愛情です。人は一人では生きてはいけず、愛情がなくても生きてはいけない。そして自分もまた、誰かの支えの一つになれたなら、こんなに嬉しいことはないなあ、と。

鬼と人間、という異なる人種の2人が紡ぐ恋の行方。
でも、それは「入れ物」だけの話。
べなと壱。
二人の笑顔が、これからもずっと続きますように。

キャラ、絵柄、ストーリー。
何もかもが素晴らしい神作品。こんなにも素晴らしい作品に出会えたことに感謝。こふで先生の次回作も楽しみに待っていようと思います。

最高すぎて。

鹿乃先生作品ってどれも最高ですが、個人的に一番好きなのは『 Punch↑』シリーズ。

今作品はその大好きな「 Punch↑」…、え?あれ?

「~About of HISASHI~」?
HISASHI?
ひさし?
久嗣かー!

ということで、変態・牧さんの有能なビジネスパートナーであり、長きにわたって牧さんの私生活をずっとサポートし続けてきた、和久井久嗣のお話であります。いや、まさかあの久嗣メインのスピンオフが来るとは…!嬉しみにあふれてしまいましたです、はい。

ということでレビューを。ネタバレ含んでいます。ご注意ください。




有能かつ変態の一級建築士・牧志青。
彼を公私にわたりサポートしてきたインテリアコーディネーターの久嗣は、Uチューバーとしての顔もある。お手頃価格で買える家具や植物をメインに配信している彼の動画を、一生懸命に追っているフォロワーがいる。

人気美容師の隅田くんだ。

彼の勤務する美容院の顧客でもある久嗣を、隅田くんは一途に思っている。
美容師としても有能で、イケメンな彼は人気美容師だが、彼には実は秘めている「もの」があって…。

というお話。

えーっとですね、ここでお詫びしたいです。
ワタクシ、久嗣は完全なるモブ顔だと思ってまして。牧さんの友人兼ビジネスパートナーとして「Punch」シリーズではなくてはならない存在になってはいますが、でも、脇キャラだよね。

そんな風に思っておりました。
が。
いやいやいや。

イケメン!
見た目だけではなく、その中身も。
今までももちろん「良い人」ではありましたが、鹿乃先生の手腕にかかるとこうも魅力的な主人公になってしまうのかと圧倒されました。

鹿乃作品ではおなじみ、といって差し支えないでしょう。
イケメンさんなのに、仄暗い「何か」を抱えている登場人物。
今作品では隅田くんがその立ち位置にいます。

いずれ失くしてしまうものなら持ちたくない。
欲しくても手に入らないものは、いっそのこと…。

というストーカー気質も持ち合わせた青年であります。

が、なんか憎めない。
作中にも書かれているワードですが、「イケメン無罪」なのかも。
けれど、彼の暗く光を宿すことのない瞳に、何とか手を貸したいと思ってしまう。そんな不思議な魅力に、久嗣とともに読み手もどっぷりと嵌ってしまうのです。そんな彼の瞳が、終盤に向けて少しずつ光を取り戻していく。そんな彼の内面の見せ方が非常にお上手だなと感心しきり。さすがしうこ先生です。

変態、いや失礼、有能な一級建築士・牧志青。
志青が愛してやまない、唯一無二の恋人、コータン。
この二人がサポート役に回っているのがとにかく新鮮でした。特に志青。正論を、そして時には正論だけをぶちかますのではなく、久嗣の立場に立って、あるいは彼のためにポロっと出る彼の助言や意見は、悔しいことにめっちゃカッコいい。

そしてコータン。
彼はやっぱり天使だった。
可愛い…!特に、終盤のネコに囲まれている絵面。あれは反則級の可愛さでした。

読み始めた時、暗い瞳を持つ隅田くんが、久嗣と出会い恋をして、そして過去のトラウマを乗り越えていくお話、なんだと思っていました。

が、今作品はそれだけに非ず。
久嗣もまた、彼に救われたんだなあ、と。志青と同じように、可愛い恋人に骨抜きになっていくさまが可愛くって萌えました。人として大切な「何か」を欠落していた二人が、お互いに足りない部分を埋めるように満たされていく。人として成長していく。

鹿乃作品に外れなし。
改めてしみじみと感じた、そんな1冊でした。

連雀さんのカッコよさにKO

『高嶺の花は、乱されたい』の3巻目。

連雀さんがいないタイミングでヒートを起こしてしまったハナちゃん。そのピンチは切り抜けたものの、自分がいないタイミングで再びヒートを起こしたら。そう心配した連雀さんから「(連雀さんの)事務所で働かないか」といわれたハナちゃんは…。

という前巻からの続きから今巻はスタート。

ハナちゃんは、「スタニャが好き」、「自立してずっと働き続けたい」という思いを持ちつつ、それと相反するように自身のオメガという性を受け入れられない。受け入れられない、というとちょっと違うのかな。母親に植え付けられた先入観、自身の性に対する拒否感も持ち合わせているように見える。それが、ヒートを起こしたという事実によって強く意識せざるを得なくなってしまった感じ。

そして一方の連雀さんも。
ハナちゃんを大切に思う気持ちは本物なのに、それがうまくハナちゃんに伝わらない。アルファとオメガの性差なのかもしれないし、あるいは彼の過去のトラウマ(父親の愛人さん絡みのお話)にもつながっているのかもしれない。

そこを端的に表しているのが「うなじを噛む」という行為なのかな。
ハナちゃんと連雀さんとではその行為そのものが少しすれ違っている気がしました。

自分のオメガだと主張してほしいハナちゃん。
噛んだ(愛情表現をしたつもり)の連雀さんからしたら「噛んでほしい」といわれるのは信用されていないことなのか?と思ってしまう。
同じものを見ていても、見方や立場が違えば違うように見えてしまうのは当たり前のことで、こういったすれ違いを経ながら二人は本当の意味で信頼関係を築いていくのだろうと。そう思うのですが、すれ違う二人にやきもきしつつ。

でもハナちゃんの母ちゃんに対する連雀さんがカッコよくて悶絶。
あんなん、あんなん、

惚れてまうやろー!

ここで再登場するのが鷹司さん。
連雀さんとはまた違ったゴージャスさを持つ「エライ人」なわけですが。
イヤー、これはもしかして蒼葉と?ワンチャンあるんじゃないですか?
アルファ×アルファとか最高なんですけど。

3巻の序盤はドシリアスで始まったのでちょっとドキドキしながら読み始めましたが、終盤に向けて糖度マシマシ。で、最後の「アレ」は…。

え、そうきたか。
という終わり方で次巻が待たれます。




今巻も最高。

『トンでもない俺のα』は「両親編」と「息子編」の2パターンがありますが、4巻目にあたる今作品は両親編。ジャウハラ王国の第6皇子であるナダ(豚ちゃん)と、日本人で一般人の菫人(オメガ)のCPのお話。



オメガである菫人の発情期の時だけ、ナダは菫人に会いにくるという関係。
「運命の番」である菫人をナダは溺愛しているが、菫人はまだ受け入れられなくてー。

という、シリーズの2巻の続きから。

受けさん溺愛の攻めさん、って大好物でして。
強い受けさん、しかもオメガ、も大好物でして。
個人的萌えツボがたっぷり詰まった今作品ですが、今巻も面白かったー!

菫人を溺愛しているナダ。
なのに、なぜかナダから婚約破棄を言い渡される菫人。
しかもナダの横にはしっかり美人さんかつ女性(に見える)人物が立っていてー?

という、え?なんで?という出だしから今巻はスタートします。

ナダには、政略結婚でバッカリス王女との婚約が決められてしまっていて。
あの手この手でバッカリス王女には手を引いてもらおうとするナダではあるが、癖のある兄ちゃんズたちの横やりもありなかなかうまくいかない。

ナダと菫人は、バッカリス王女から逃げ切ることができるのか。

というお話。
とはいえ、ですよ。菫人はナダの求愛を断り続けている関係なわけで、バッカリス王女の存在が「雨降って地固まる」になるのか?という展開。

もうね、「漢」という形容詞がこれほどまでしっくりくる受けさんはいますか?状態の菫人。今巻は可愛いぜ…。ギャップ萌えしてしまいましたですよ、はい。彼が頑なにナダの求愛を避ける、その理由に。

BLとしての軸は切なさが詰まっているのに、ここに藤咲先生らしいコミカルさが加わることで唯一無二の世界観に仕上がっています。今シリーズ大好きなんですが、中でも今巻が一番好きかも。

ナダは菫人を溺愛しながらも、彼の意志を尊重している。
可愛いうえにスパダリで、受けちゃんファーストのナダも最高すぎて悶絶しました。

今巻はナダ×菫人だけに焦点を当てて描かれているので、この二人が大好きな腐姐さま方には朗報かと思われます。

で。
バッカリス王女。
良い。めっちゃ良い。「彼」の番になった「あいつ」もいい。
末長くお幸せに!

まだまだ続いていってほしいシリーズ。
続編を、正座してお待ちしております。

寒い冬のお供にお勧めな1冊。

伊達先生作品の『春になるまで待っててね』のスピンオフ作品。前作未読でも読めますが、『春になるまで~』と同じ世界観であることと、登場人物たちも登場しているので読んでいた方がより楽しく読めると思いますので未読の方は是非。

ということでレビューを。前作含めてのネタバレがありますのでご注意ください。





主人公は警察署で働いているフィン。28歳のヤマネ獣人だ。
警察署で働いているが、いわゆる警官、刑事、といった部署ではなく、事務職で働いている。市民を守るヒーローに憧れての職だったが、彼の属性からはあきらめざるを得ず、けれど真面目に働き市民たちからは愛されている。

そんな彼は唐突に恋人(男)に振られてしまう。
理由は「冬眠があること」だった。長い間寝られてしまうとつまらないのだという。そして、可愛らしいビジュアルに反して、表情と言葉があっさりしているのも「イメージと違う」らしい。

愛嬌がないことも、無愛想なことも自覚はしているが、そして冬眠をすることも申し訳ないとは思っているが、でも、彼にはどうしようもないことでー。

というフィン視点のお話です。

フィンが冬眠から目覚めて訪れたレストラン。
そこで働いているリス獣人のリックという青年が絡まれているところに出くわし、機転を利かせて助けたことから、リック、リックの恋人のディビス(消防士)、そしてディビスの同僚の消防士である豹族のテイラーと知り合いになりー?

リックとディビスが、前作の登場人物。
という繋がりがあります。彼らに再会できて嬉しかった。

というのはさておき。

リックは冬眠大好きっ子。
対して、今作品の主人公・フィンは、冬眠は嫌いではないができればしたくない派、に分類されるでしょうか。ウキウキで冬眠の準備をしていたリックも可愛かったですが、今巻のフィンもまた違った可愛さがある。

フィンの元カレが、まあクソ男でして。
クソで下劣で最低な男なんですね。

でも、そのクソ男のセリフにいちいち傷つくフィンが健気でかわいいの。
フィンに悪いところは一つもないのに、自分のことは棚に上げてひどいことをする元カレに天罰が下ればいいのに。

というところからの、テイラーくんが眩しい。
年下ワンコ攻めの鑑のような好青年でした。表情と表現力に乏しいフィンの感情の機微を正しく読み取る。それはひとえに、フィンをつぶさに見ているから。フィンが喜ぶことを、してほしいことを知りたいから。そこにあるのは、打算でもなんでもなくただひたすらフィンのことが好きという彼の一途な想いからきている行動からなので、読んでいて心がほっこりと温かくなります。

可愛らしい見た目を持つフィン。その「入れ物」から自分の願望を込めた理想像をフィンに押し付けてきた今までの恋人たち。

そうではなく、素のフィンを愛し、彼が彼らしく過ごせるように心を配ってくれるテイラー。テイラーと出会い、フィンが素の自分でいていいのだと。何の心配もなく冬眠していいのだと。そう思えるようになっていく過程がとにかく優しく心にじんわりと染み入ってくる。

登場人物はそう多くはありません。
テイラーとフィンが、心を通わせ、少しずつ愛情を育てていくシーンがメイン。この温かさが「冬眠」というバックボーンとうまくリンクして、終始やさしさと温かさに満ちた、そんな作品でした。

「冬眠BL」というバックボーンてなかなか斬新というか。
今までにお見掛けしたことがない設定で、前作を読んだときは良い意味で衝撃を受けました。今巻はその衝撃はない状態で読み始めるわけで、前作よりも萌えとか下がっちゃうかなー、なんて危惧しながら手に取りましたが、いやいやいや。

めっちゃ良かった!
文句なしの神作品。あとがきを拝見すると、もう続きは出ないのかな?と思ったりしましたが、でも、また読みたい。そんな感想を抱いたりもしました。

寒い冬にぴったりの温かく、そして暖かくなる、そんな1冊。冬のお供に超絶お勧めしたい作品でした。

ほっこり、心が温かくなります。

作家買い。
ユギ先生はシリアスなものからハートフルなものまで描かれる引き出しの多い作家さまですが、今巻はルチルから刊行されているからでしょうか。めっちゃ可愛い、ほのぼのなお話でした。





主人公は高校生の理久。
シングルで、母が女手一つで育ててくれた。母親が忙しいことは分かっているが、そんな彼をなにくれとなく面倒見てくれたのが隣人で幼馴染の遥太。おなかをすかせた理久のためにホットケーキを焼いてくれたり面倒見のいい、仲のいい、そんな幼馴染。

が、遥太は高校を卒業してすぐにフランスに修行に行ってしまう。パティシエになるのが彼の夢なのだ。そして、いつの間にか日本に帰ってきた遥太は、引きこもりになっていてー?

もう出だしから可愛い。
中学生の遥太が、6歳年下の理久のためにホットケーキを焼くのよ?この時点で萌え鷲掴みされてしまいました。

そして、遥太がひっそりと日本に帰ってきた後も。
何かがあったのだろうと推測しつつ、理久は遥太の心の中に土足で踏み込むようなことはしない。けれど、放っておくことも、しない。遥太にそっと寄り添う理久のスパダリ感、最高。

理久という男の子はですね、優しいんですけれども、ちょっと掴みどころがないっていうんでしょうか。そこもいい。単なる優男ではないので、お好きな方にはドハマりする魅力を持つ、そんな男の子です。

引きこもっている遥太を無理やり引きずり出すようなことはしない理久ではありますが、のっぴきならない理由で「パティシエ」の遥太の力を貸してほしいと頼み込むことで遥太の閉じていた心の扉が開き始めていく。このやり取りがもう絶妙で、押しつけがましくない理久と、このままではいけないと感じていた遥太のベクトルがぴったりとはまった感じがめっちゃ良かった。ユギさん作品の根っこって、こういう人としての優しさが垣間見えるところなんだよなあ…、としみじみ。

タイトルも秀逸。
パティシエである遥太に引っ掛けてのスイーツなんだと思うのですが、イチゴのショートケーキの上にあるイチゴ。このイチゴ、どのタイミングで食べるかって人それぞれですよね。

大切に最後まで取っておいて、最後の締めに好きなイチゴを食べる人。
好きだからこそ、最初に食べちゃいたい派の人。
あるいは、全く気にせず途中で食べちゃう人。

このイチゴに、お互いの好きな人や価値観をかけてるのかなあ、なんて思いました。

理久は、気づいたときにぱっと食べちゃう人。
遥太は、吟味に吟味を重ねて、最後に大切に食べたい人。
なのかな。

いつ食べてもいいねん。
好きな時に食べればさ。
と個人的には思いますが、ただ、途中で誰かに食べられちゃわないといいね!と、当て馬さんの登場が終盤ににおわせられているので続きが気になる。

理久、そして遥太の周囲にいる人たちもいい。
友情、家族愛、さまざまな形の愛情がきちんと描かれています。
とにかく、すごく温かい空気感に満ちた、可愛らしい作品でした。タイトルに「1」とついているところからも分かるように、今作品は1巻完結のお話ではありません。完結してから大切に読みたい派の方はしばしお待ちを。

もう今から続きが待ち遠しい。
次巻を正座して、お待ちしています。

可愛いし、萌えるし、面白いし。

作家買い。
小中先生の新刊はファンタジーもの、って言っていいのかな。異世界転生、ではないし、生まれ変わりもの、でもないし。でもまあ何でもよし。めっちゃ面白かったー!

コミカルとほんのちょっぴりのシリアスさと、恋心と。いろんなものが上手にミックスされた神作品でした。ということでレビューを。ネタバレ含んでいます。ご注意ください。




領主であり子爵でもあるチェリーゲイト子爵の一人息子・フィンが主人公。
彼は若干7歳の時に母をなくしてしまうが、その時に、自分はかつて日本という国に住むサラリーマンだったことを思い出す。

そして、「フィン・チェリーゲイト」は、自分が愛読していたBL小説に登場していた悪役令息だったことも。
「レイ」という名の薄幸少年(作品の主人公)を苛め抜き、挙句の果てに悪政を敷いた父とともに殺されてしまう、その、「フィン」だったことも。

その小説と同じように、父とともに殺められることがないよう、彼は父とともに善政を行い清廉な日々を過ごすことを決意するー。

というお話。

小説の中に入り込んでしまうというお話は珍しくはないものの、そこに小中先生らしいコミカルさと萌えがプラスされて、めちゃめちゃ面白いストーリーに仕上がっています。

かつて自分が愛読していた小説を思い出し、自分と父の死エンドを迎えないように奮闘するフィン。自分がかつて日本人のリーマンだったころの知識と小説の内容をもとに、若干7歳の少年が奮闘するシーンは笑えるやら可愛いやらでとにかく出だしから小説の世界観に引きずりこまれてしまいました。

とはいえ、今作品はBL作品。
ということで、フィンの恋のお相手となるのは、小説の中でフィンが苛め抜いた主人公・レイ、に一途に思いを寄せていた(そして当て馬でもある)ユエン。フィンはもともと小説を知っていて、先の話を知っているというチートさも相まって、孤児だったユエンを取り込むところから物語はスタートします。

小説の中のフィンは悪役ですが、今作品では主人公なのでもちろん可愛いし一生懸命で優しい青年です。「悪役令息にならないように」と心がけているフィンではあるのですが、根っこがとにかく優しいのでベースとしてはかなりホンワカ、ほのぼのムードでストーリーは展開していきます。

で、フィンのお相手のユエン。

カッコよ!

と思わず声が出てしまう、正統派の「攻めさん」であります。
見目麗しいビジュアルに加え、剣技も、頭脳も、他の追随を許さないというカッコ良き攻めさんであります。そんな彼がフィンに忠誠を誓い、溺愛するという。最高か。

読者にはユエンとフィンがお互い思いあっていることは駄々洩れで伝わってくるのですが、いかんせん、二人はお互いに気持ちを伝えることをあきらめている節がある。そして、その理由がきちんと見えているので、この二人のすれ違いっぷりにはやきもきしつつ応援したくなってしまうという腐女子の萌え心を把握している小中先生らしいストーリー展開に翻弄されっぱなしなのです。

ストーリーに無駄がなく、きちんとすべて繋がっているストーリー展開なので、読み進めていくうちに点が線になっていく。その手腕に脱帽です。作中「じゃがいも」というワードがこれでもかと出てくるので、ジャガイモを使った料理が食べたくなるという飯テロでもあります。

小中先生はドシリアスなものも書かれますが、今作品は可愛さとほっこりが詰まったほのぼの系。多くの方の萌えを掴みそうな、そんな1冊です。

めちゃめちゃ笑い、時にしんみりし、留まるところを知らない萌えに翻弄されまくりました。文句なしの神作品。寒い冬にぴったりの、心がじんわり温かくなる良作でした。

カッコいい!

作家買い。
あらすじとか何も確認せずにお買い上げしましたが、あらまあ。

天馬とヨシオってみちのくさん作品の『真夜中ラブアライアンス』に掲載されていた「夜も日もあけない」のあの二人?マジで?嬉しー!とテンション高く手に取りました。『真夜中~』のスピンオフ作品で、前作既読の方が楽しめるかな?と思いますが、未読でも読めないことはないかな。でもショータ×ヒロト、まさき×はじめの2人とか、『真夜中~』の登場人物たちがオールスター出演しているのでそちらも読まれていた方が楽しく読めると思いますので未読の方は是非。

順番としては『真夜中ラブアライアンス』→『真夜中ラブアライアンス DEEP』で、今巻となります。


さて。
『真夜中~』では高校生だったヨシオと天馬。
極道の家の息子の天馬は、年を経て、いよいよ跡目を継ぐ事になりー?

えー。
みちのく先生の描かれるスーツの破壊力にヤラレました。
クソがつくほどカッコいいです。ヤバいです。
そして、そのカッコいいスーツを身にまとう天馬のカッコよさもヤバいです。

もともと『真夜中~』シリーズは裏社会とうっすらつながりがある作品ですが、今作品は酒々井組の跡目となる天馬が主人公なのではっきり裏社会を描いた作品。表紙も前2作とはその色味がはっきり異なり、ポップだった前2作品とは一線を画すイメージなのはさすが。とはいえ酒々井組が義理人情に厚い組なのでダークな展開にはなりません。大人の色香をイメージした、そんな表紙にまずKOされてしまいました。

もうとにかく、ひたすら、天馬がカッコよかった。

極道としての筋を通そうとする彼と、そんな天馬の意図を汲み先回りするヨシオ。
硬派な天馬と、明るく天真爛漫でオネエ口調のヨシオ。
正反対に見える二人の、お互いへの愛情や信頼、何より高校生の時から二人が築いてきた歴史。読んでいて圧巻。ムネアツです。

ストーリーもいいですが、みちのくさんらしい汁っ気たっぷりな濡れ場がまた良い…!天馬が受けなのがベースではありますが、リバ描写もあるので苦手な方はご注意を。

とにかく体つきが綺麗。
細マッチョで綺麗にうっすらついた筋肉と、そして紋々。色気がヤバいです。

『真夜中シリーズ』は、登場人物たちがうちにいろいろ秘めてる、っていうか。
人には見せずに、「何か」に葛藤し続けている人物たちを描いたシリーズものですが、まだスピンオフができそうな人物もいますし(前作からの成長が眩しい「彼」とか高校時代からの後輩くんとか)まだまだ続いていってほしいシリーズです。

男気がこれでもかと詰まった今作品。
萌えもエロもてんこ盛り。
「カッコいい」。そんな言葉を送りたい神作品でした。