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女性なゆnayuさん

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及川の良さがわかった(やっと)

麻生龍太郎が若い。刑事になったばかりの25歳。
【以下『聖なる黒夜』を踏まえての感想なのでそちらの内容にも多少触れる】

行動だけ見ると、今まで見てきた麻生(おっさん)とそう変わらないのだけど、こちらの麻生は思考がなんだか瑞々しい。
仕事や恋愛や将来に対する漠然とした悩みも色々と抱えていて、でも苦しむほど深刻でもなく。結婚も別れも、裏切りや修羅場も未経験の龍太郎。若いっていいな。

オムニバス短編集なので、話の数だけ事件がある。
小さな事件もあれば、人が死ぬような事件も。謎がスッキリ晴れても、気持ちがスッキリしないような後味の苦い事件が多い。
文庫書き下ろしの「小綬鶏」が読後感は一番いい。


当時麻生と恋愛関係にあった及川が要所要所に登場する。なんだか甘酸っぱい…し、未来を知っている分ほろ苦くもある。
こういう、未来で破綻するのが分かっている二人の恋愛を(回想でなく)リアルタイムで見るというのも乙だなと思った。
「雪うさぎ」が一番、二人の関係性が見れてよかったな…。及川めっちゃ麻生のこと大事にしてるじゃん…。

今まで、及川のキャラクターとしての魅力ってイマイチわかってなかった(他の方々が及川推しててもピンとこなかった)けど、今ならちょっとわかる。

一緒に居ることについて、麻生に投げかけはするけど決して無理に追いかけない及川。プライドと逃げ道と願いと諦めがない交ぜみたいな。
これを読むと『聖なる黒夜』で語られたおもちゃの拳銃のシーンが余計にグッとくるな…
この及川があんな行動に出るなんて相当のものだよ…。ちょっと『聖なる黒夜』読み返したい。

もっと及川について知りたいなと思った。この人が何を思って生きているのか、もっとじっくりと読ませて欲しい。及川視点の新作とかあったらいいのに…!

李歐 非BL 小説

高村薫 

二人の人物像に惹かれる

あらすじによると、美貌の殺し屋と平凡な学生。日本の学生一彰視点。

一彰は「平凡」の皮を着ているだけで、中身はかなり非凡。地頭が良いというか、かなりIQが高そう。
顔色ひとつ変えずに暴力を行使するところとか、奔放な女性関係とか、冷静に静かにぶっ壊れている感じがある。
個人的に、こういう人物にとても惹かれるのでわくわくした。

一方の李歐は、「殺し屋」というか国?からの任を負って暗躍する人という感じ。
殺しの場面は(間近すぎて)視界の限られた一彰視点で見てもとても鮮やかなのがわかって惚れ惚れする。
人となりは明るく自由な印象。

自分は、当時の国際情勢に疎くてあまりピンと来ない部分も多かったけど、国同士やそれぞれの裏社会、各個人の思惑が絡まりあう背景をちらつかせつつ、一彰の目にうつるのは町工場の日常で、非日常になり得る拳銃や原口のことが逆に日常に組み込まれてしまっているの、不思議な感じで面白かった。

一彰と李歐は一夜のスリリングな悪巧みの後本当に15年間離ればなれで、それぞれ妻子をこさえたりなどするけど、それでもお互いに強烈に惹かれ合ってるのはわかる。
李歐の唯一の泣き所認定される一彰、とても良い。

残りのページ数が少ない中での千枚漬け(←読めばわかる)にはびっくりしたけど、静かに収束して大団円よかった。

二人ともかわいそうだけどコミカル

電書で購入して久しぶりに読み返したけど、改めてすごく面白い。

親の同士の再婚で兄弟になった二人。兄の公崇は弟の夏央のことが好きだけど、夏央は兄を邪険にする。

最初は、お兄ちゃん叶わぬ恋をしててかわいそう、弟の情事を聴かされてかわいそう、ゲイだとバラされてかわいそう…と兄の方を不憫に思ってたけど、だんだんそればっかりじゃないことも見えてくる。

女の子との逢瀬は邪魔されるし、兄ちゃんヘンタイだし、好きになった女は兄ちゃんが好きだし、そもそも、かっこよくて好きだったのに裏切られたし、やっぱり兄ちゃんヘンタイだし…夏央もかわいそう。

二人ともかわいそうで、二人とも非があって、ズルズルと性的接触もしちゃう。
笑えない状況だけどずっと読み味はコミカル。そのバランスが絶妙。

この二人はなんだかんだうまくやっていきそうな気がするし、夏央が根負けしそうな気もする。夏央、相手が悪かったな。がんばれ。

巻頭作品の兄ちゃん……

色々な兄弟のお話。
兄と弟でBLするわけではなく(BLするのもある)兄弟にまつわるBL。

様々な恋の始まりが見れて楽しかった。
楽しかったけど、ひとつめのお話のお兄ちゃんには天罰が下ってほしい…

家庭教師先の中学生に手を出して、散々弄んだ挙げ句結婚を理由にポイだなんて。
しかも好きでもない女性と世間体のために結婚(実際そうかはわからないけど結婚相手はそう思ってる)だなんて……ドクズじゃないか……
自分のことしか考えてない、誰も幸せにしない、その上弟くんの淡い恋まで踏みにじってたわけで。サイテーー!!
社会的にフルボッコにされてしまえ。


オムニバス形式の一冊だけど、2巻にはどのくらい続くのかな?

おとこのこ同士の恋のかけら

おとこのこ同士の恋のかけらの詰め合わせみたいな。
始まったり終わったり、途中だったり。
「タカシとカナタ」「岡本と成田」の二本が特に好き。

「タカシとカナタ」
小学生のとき、中学生のときのエピソード。
カナタは無自覚にタカシのことが大好きなんだな~タカシはそれに気付いていて呆れつつも満更でもないんだな~というのがとても伝わってきてにやける。
タカシはカナタが自覚するまで待つつもりのようだけどどうなるかな?
カナタが自覚するのが先か、タカシがしびれを切らすのが先か…もっと未来のふたりを見てみたいな。

「岡本と成田」
イケメンな岡本とフツメンな成田。
岡本からのラブを成田が受け入れるまで。
成田がどこにも変な力の入っていない自然体な感じでよかった。
このキスシーンすごい好きだ。

穢れのない人 電子 コミック

虫飼夏子 

「これで完成だ」と思う自分も居る

【『後日譚 Jam 』の感想】




下巻を読み終えたとき、穏やかで幸せな様子の二人を見て「良かった」と思う一方で、心に重く引っ掛かるものがあった。

それは、失われた生命のこと。子を奪われた親のこと。
「犯人」にどんな理由があったにせよ、罪を認め、服役したにせよ、きっとずっと、彼らの絶望は終わらないのだろうなと。

そう思っていたので、この後日譚はショックは大きかったけれども納得もした。
彼女の苦しみに触れないままでは、この物語は欠けたままだった。
この短編をもって物語は完成したと私は思った。

しかしながら、それは罪や罰や赦しを主軸とした物語の完成度の話であって、
「BL」という恋愛を主軸とした物語にこの後日譚が必要不可欠かというとそうではないと思う。

「二人の幸せあふれる後日譚」を望んで読んだ読者には気の毒であるが、
今後先駆者たちによってどんな読み味の後日譚なのか注意喚起がされるだろうし、
それを踏まえて読むか読まないか、読者自身が決められるようになるといいと思う。


最後に少しだけ自分の考えを述べておく。
人の生命を奪った者は死ななければならないとは思わないし、
家族を殺されたらそいつを殺しても良いとも思わない。
ただ、「殺したいほど憎い」という気持ちは理解できる。

それと、彼の生死については読者の解釈に委ねられたと思っている。色々な可能性があってもいいと思う。

穢れのない人…!

【下巻の感想】
一見穏やかな木場と秋鷹。
恋人同士のような雰囲気も流れるけれども、あのような始まりと因縁の二人なので、いつ秋鷹が手のひらを返すのだろうという不安も感じる…。

昔の写真をきっかけに語られる木場の過去は、本当に胸糞悪くて辛くて悲しかった。酷すぎて読む手が止まりそうになる。

話を聞いた秋鷹の、愛についての言葉がよかった。

その後の展開は、転がるように、流れるように。
いつの間にか、秋鷹にとって木場が庇護の対象になって「この子」と言い表すようになっていたのが印象深かった。

全編通して、秋鷹の心の清さ、圧倒的な光に胸打たれる物語だった。タイトルの『穢れのない人』はそのまま秋鷹のことだった。
どうしてこんなにも穢れなくいられるのか。

どんな理由があっても、どんなに悔いても、失われた子供の生命が戻ってくることはないので、そこだけはずっしりと重く心に引っ掛かった。


収録作の『仮面の内側』はガラリと雰囲気が変わって明るく楽しいお話なので、読後感をだいぶ軽くしてくれる。

上下巻、とても完成度の高い良作だった。

可哀想可愛くて最高

【上巻のみの感想】
少年への性的暴行と殺人の罪で15年服役した秋鷹。
出所して真面目に働こうとするも、長く続かない。
自殺しようとしたが神父である木場に止められ、話を聞いてもらい受け入れられて教会に身を寄せることに。


木場に優しくされ穏やかに過ごす秋鷹が可愛らしい。ホームレスを見捨てられないところなど、とても善良な心を持っているのがよくわかる。
一方の木場は、ホームレスへの厳しい態度など、根が真っ白な「善」ではないのが垣間見え、二人のこれまでの人生の明暗も合わさって対比がとても面白い。

木場の、なんとなく不穏→ちょっとヤバイ→真っ黒のグラデーションに惹きこまれた。
木場が真っ黒だと分かったときの秋鷹の絶望感が最高だった。なんかもうカタルシスすら感じる。
可哀想可愛い。好きすぎる。

その後の秋鷹の心の動きは予想外ではあったけれども、この人ならという納得もある。

圧倒的な闇と圧倒的な光、果たしてどちらが勝つのか、下巻も楽しみだ。


収録作の『スケープゴート』もとても暗~い話で良作だった。

チートよりも大事なもの

BL作家が、自作品の世界に転生。
その身体は受けのセフレで当て馬ポジのヤリチン篤史のモノだった…。

受けの巧のことが好きなので、正規ルートの攻めと恋仲になるのを阻止したい篤史。
なりふり構わぬ体当たりでベッドイン。童貞丸出しだけど取り繕わない(えない)カッコ悪さが逆に好感度高い。

作者だから巧の性格や生い立ちを知っている、ヤリチンの身体だからベッドテクがある…それを篤史は「チート」と評したけれど、それはアドバンテージになりこそすれ、それだけで幸せにはなれなかったろうと思う。

篤史(の中身)の心根の優しさとか、巧への好きの気持ちの大きさとか、好きを真っ直ぐ伝えるところ、自分のカッコ悪さから逃げないところ…全部彼の持ち前の美徳であるし、そういうところこそが巧が好きになった部分だと思った。
だから彼は誇っていい。その幸せはまぎれもなく彼自身がつかみ取った幸せだと。

モブ女との別れ話のシーンと、泣き怒りしながらの告白シーンが特に好き。
彼の真摯さや一生懸命さが伝わってくるから。

どうか末永く幸せであれ!(きっと心配はいらないが!)

どんどん物語に引き込まれる

かつての英雄でありながら山奥でひっそりと暮らすシャガールは、定期的に誰かと性行為をしないと死んでしまう身体である(要約)…と。難儀な…。

以前は不特定多数を相手にしていたけれども、今は狩人で傭兵のルソーが不定期で通ってくる。
ルソーは粗野で乱暴な男だけどそう悪い関係性ではないように見える。
…ていうか、ルソーってばシャガールのこと好きだよね?シャガールから求めて欲しそうな言葉選びしよる。

ある日シャガールが山で出逢った青年フィオは、おそらく裕福な家の子息だけれど家族とそりが合わずに家出中。
やる気があり勉強熱心なので弟子にすることにしたが、その体質がシャガールにとって都合が良すぎて国に知られるとまずいかもしれない…?

フィオの若々しく元気なワンコっぷりは、読んでいてとても楽しかった。
若さ故に暴走しかけるところをシャガールが手綱をしっかり握って説き伏せるシーン、シャガール格好いいしフィオもちゃんと止まってイイコだったな。

そしてフィオの素性が分かって波乱の予感…!
ルソーの行動の意図も気になるし、シャガールはどうなってしまうのかも気になる。
国防が絡んでくるから、シャガールやフィオ本人たちの意思だけではどうにもならないことも多そうだ。

どんどん物語に引き込まれる上巻だった。
下巻に続く!