待ちに待ったたうみまゆさんの新刊。
時代物ということでしたが、どのお話もまるで短編映画を見ているようで、その世界観に惹き込まれました。
とにかくセリフが素晴らしいです。きゅっと心臓を掴まれるような粋なセリフ回しが堪りません。
表題作「このよのはじまり」「このよのおわり」そして描き下ろし「おまえ百まで」。
主人公・佐根市は、役者(女形)を目指しているものの、色恋や艶もまだわからない16歳。
「このよのはじまり」では、幼馴染・善介に抱いていた想いが「恋心」なのだと初めて自覚します。
この様がなんともかわいらしい。
その10年後、「このよのおわり」では、その恋心を芸の肥やしに人気女形となった佐根市。
実らない想いを芸にかえ、この10年で「いじらしく慕う恋心・女心」を完璧に演じきれるようになっていた。
しかし、恋心を隠し通すことで芸を磨き、不仕合せであることが良い役者の条件だと思っていたけれど、そういうわけでもない。
「自分の心ととことん付き合う覚悟が足らねぇ。芸に逃げるな。」
とは、助六を演じる先輩役者・喜蔵さんのセリフ。
佐根市の演じる助六のお相手・揚巻は、今まで自分が演じてきたいじらしい娘とは違う。
助六のために自分の心も身体も投げ出せる覚悟を持った、肝の据わったいい女なのです。
その女の艶を演じきるには、自分の気持ちに向き合い、隠してきた想いを伝え、この10年を終わらせる。
清水の舞台から飛び降りる覚悟で、善介に気持ちを打ち明けようとする佐根市ですが、善介の方が一枚上手でした。
なぜなら、描き下ろしの「おまえ百まで」で善介が言ったセリフが佐根市の人となりを上手く表していて、
「遊ぶもとことん、惚れてもとことん、ゆえに芸もとことんだがね。」
だからこそ、佐根市は恋心もとことん芸に変換して、女形という自分を作り上げてきた。
そういう彼を近くで見てきた善介が、佐根市の想いに気付かないわけがないんです。
早くから佐根市の気持ちに気付いていた善介が、その想いを芸の肥やしにする佐根市にとことんつきあうと決めた覚悟。
愛する男のために、身も心も投げ出さん覚悟を持った善介の漢気は、まさに佐根市が思うところの揚巻そのものだったのです。
今風に言えば、佐根市はヘタレ攻めなのかもしれませんが、芸の道に生きるその姿は男らしいですよね。
そして善介は、清廉として初心に見えて、いい塩梅のわかる魔性の受けです。心は佐根市一筋ですが。
余談ですが、「おまえ百まで」に出てくる勘弥の艶話も読んでみたいなあと思いました。
同じように「いずみの如く、」と「龍の引越」も、駆け引きと目線、セリフ回しが素晴らしい。
「いずみの如く、」では、惚れることで湧きあがる欲を、短い話に上手く織り込んで描き切っています。
舞台は吉原。惚れた腫れたはまやかし、真の言葉なんてものはない、この世の全てがなぁんでもいいと思っている見世の番頭。
その番頭に惚れた遊び人の若旦那の、ことばの裏に隠された本気とおおらかさが堪らないです。
「龍の引越」では、一度は生きることを諦めた男の再生を、火消しの仕事に絡めて描いています。
麗人さんのレーベルにしてはえろさが少ないですが、江戸・明治・大正・昭和と、バラエティに富んだ内容です。
現代モノでは味わえない粋な駆け引きと、セリフの端々に見え隠れしている本音の部分とのバランスを楽しんでいただきたいです。
あと、たうみさんのお話には、必ずといっていいほどイイ女が出てきます。
今回も素晴らしい女性陣に脱帽です。男前過ぎます!そちらも必見です。
個人的には、「硝子哀歌」「カラスの名前」「カムバック・スイート・ホーム」が泣けました。
私の泣きツボは人様と違う気がするので、あえてここでは書かないでおこうと思います。
3巻の終わりで知らされた、いきなりの桜井さん大阪転勤。
切ない始まりだとわかっていたので、買ってからなかなか開けられなかった4巻です。
そして今、読み終えて……なんですぐ読まなかったのかと。
今回、蓉ちゃんをはじめ、桜井さん、藤本、柏木さん、それぞれに様々な変化が現れてきました。
特に藤本株は上がりっぱなしです。かわいいヤツやん!
ストーリー的にも登場人物ひとりひとりの人生を示唆するような「カギ」となるセリフや場面が多かったです。
それに、蓉ちゃんがひとりもんもん考えるシーンや、蓉ちゃんと桜井さんのケンカシーン。
自分的に好きなシーンが多くてドキドキしながら読み進めていったんですが、ラスト25話で心臓鷲掴みにされました。
まともなレビューになっていないのは承知で、これだけは言わせてください。
自慰シチュ大好き人間として、言わずにはおれません!
あの蓉一くんが、桜井さんを想いながら自慰してたんです、って!!
もうこれが興奮せずにおられましょうか!!
「どーやって…抜いてたのかな…とか」っていう誘導尋問(?)しかけた桜井さん!
なんていい仕事してくださったんですか!
それに素直に答える蓉ちゃん…もう心臓がいくらあっても足りません。
実際、そういうシーンが描かれていたわけではないですし、蓉ちゃん自身が「桜井さんで抜いてた」って言ってるわけではありません。
が、蓉ちゃんの告白とたどたどしい行為だけで脳内はエラいことに。
夢が叶いました、ありがとうございます桜井さん!
さらに、桜井さんの大事なところを蓉ちゃんの手が……もう萌え死にそうですスミマセン。
でも、これ書いてる本人は、いたって真面目です。心臓止まりそうですけど。
いろんなことが初めての蓉ちゃんに、
「出したばっかで今ここ感じやすいから、やなの?」とか
「お前ってさー、続けて出したことないんだろ?」とか
軽い言葉責めですか?もうホントにありがとうございます!
その後の蓉ちゃん、かわいかった…かわいかったです(大事なことなので2回言いました)。
蓉ちゃんをあんなにかわいがってくださった桜井さんに感謝してる人、私だけではないはずです、多分。
いや、実際は日高センセに感謝する方が筋が通ってる気もしますが、そこはまあ桜井さんの手腕ということでひとつ。
何度も言いますが、ストーリーはもう佳境に入ってきた感じです。
両親の死にまつわる蓉ちゃんの告白で終わったりして、もう既に5巻が待ち遠しい。
でもあえて言いたい。
この記念すべき4巻、なんなら10冊くらい買ってもいい!
それくらいいろんな意味でうれしかったです。
なんだか、そのシーンに特化したレビューでスミマセン。
次はジェル、たくさん使ってください、是非!
リクローとヤス、ふたりの一筋縄ではいかない最終章、文句なしの神評価です。
とにかくネームの勝利だと思います。木下センセーさすがです。
リクロー目線で終わった二章ラスト、リクローとヤスの関係はリクローの願い通りになり、このままうまくいくんじゃないかと思わせておいて、そうは問屋が卸さない。
初っ端、ヤス目線で話が進んでいくのが大きな鍵となってます。
ヤスのやらかしっぷりがよくわかる最終章最初のモノローグ。
結婚まで考えてた相手を怒らせて別れてもその理由がわからず、果ては「恋愛運がないらしい」。
後輩・加藤の泣き脅しに同情して「1回だけだ」と身体を許して、「正直、流された。まあやってみたら案外気持ちもよかった」。
リクローに対しても、友だち同士から恋人同士になった途端、いろんなことが「めんどくせーな!!」。
まさに『THE オトコノコ』ですよね。すっごくリアル。
逆にリクローは、ヤスを大事にしたくて堪らない感じです。優しくしたいし気持ちよくしてあげたい。
その純粋な恋する気持ちとは相反する形で存在する男のプライド「ヤスの初めての男よりもイイって思って欲しい」これが曲者。
なんせ、加藤と致した時のヤスの感想が「気持ちよかった」ですから、リクローが「負けてられない」と思うのも致し方ない。
ちぐはぐなふたつの思いを抱えながらも、なんとかヤスに自分を恋愛対象として見て欲しいとがんばるリクロー。
そんなリクローの切羽詰った想いに対して、ヤスのモノローグが
「俺、殺されんじゃねーかな」
「なにクセエことしてんだバカ」
「どんだけ恥ずかしい奴だよおまえ!!」
てな感じで、微妙に伝わってない。
『THE オトコノコ』なヤスは、恋する男(リクロー)の一生懸命を容赦なくぶち壊してくれてます。
まあ、10年間友だちやってたら、急に甘くされたり大切に扱われたりされると「キモっ」と思ってしまうのもわかる気がします。
それでもやっぱり、ヤスにはリクローから注がれる溢れんばかりの想いは十二分に伝わっていて、ヤスもまたその想いを受け止めたいって思ってる。
ヤスがリクローを好きだから、単純に大好きだから応えてあげたいっていうのは読んでてすっごく伝わってきます。
でも、リクローにしてみれば、とにかくヤスには自分に恋して欲しい、恋愛の対象として好きになって欲しい、その想いが強いんです。
なんといっても10年分ですから。
この【好き】の捉え方の違いが生み出す様々な問題こそが、友だちでもあり恋人でもあるふたりをラブラブモードにはしてくれない。
好きだって言ってんのに、何で信じられないかなあ、とか。
どうしてこの場面で地雷踏むようなセリフ言っちゃうかなあ、とか。
めんどくさがらずにもうちょっとちゃんと向き合えばいいのに、とか。
地団駄を踏みたくなるようなこのもどかしさ。
友だちだから「好き」という言葉を手放しで信じることが難しいし、酷いことも平気で言っちゃうし、面倒臭いからまあいいかと思ってしまう。
そういうところがすごく上手く描かれてて、長年の友だち同士から恋人同士になるのって、実はすごく厄介なのかもと思わせる説得力。
だからこそ、この強靭な「友だち」の壁を乗り越えることができたふたりは、普通の恋人同士以上の素敵な関係が築けるんじゃないかと思います。
そしてゆくゆくはヤスにも、リクローが味わったような「嫉妬や独占欲でぐるぐる悩む」を経験して欲しいです。
(その片鱗らしきものは少々描かれてましたが、リクローのぐるぐるに比べたら生温いですよね)
いや、実に人間臭くて愛おしいふたりでした。
もうー、ふたりまとめてぎゅっとしたいくらい愛おしい。
あと、どうか加藤くんを救済してあげて欲しいです!あいつすげえいいヤツだから!
表紙から勝手に「元気なボクサー少年とその友だち」の話だと思ってたんですが、裏表紙を見ると好みのメガネが…。
あらすじが書いていなかったので「好みのメガネの話も入ってるな」と予想して買いました。
さらに「青空★ウォーズ」のツトムさんの絵に似てるなあーと思って買ったらツトムさんでした。
表紙の作者名、「ツトレ」さんだと思ってたのです(レジで気付いた…アホです)。
ツトムさんの初コミックスで短編集なんですが、ツトムさんの魅力いっぱい。
その上、どのお話も自分好み、自分的お得感満載の1冊でした!
お得その1:表題作「パンチドランカー」のCPが実の兄弟(それも弟攻)だった。
ホントの兄弟だからわかる、弟の自分に対する微妙な変化、態度、表情。
でもそれがまさか、弟が自分に兄弟以上の好意を抱いているからだとは、夢にも思いませんよね。
ひとりもんもんしながら「やっぱ兄貴から離れなきゃ」って思う弟、離れる前に気持ちを打ち明けます。
弟にしてみれば、端っから無理って決めてかかってます。なんせ男同士で兄弟なんだから。
まあ普通に考えれば無理ですよね。ところがどっこい、兄貴もまた同じ気持ちだった…なんて旨すぎる!?
でも、兄貴の単純で明るい性格を見てると、非常にその答えが的を射てるんです。
「ケンカに勝つと弟が喜ぶ→弟の喜ぶ顔をもっと見たい→ボクシングで勝てばいい」
結局は、兄貴の頭の中も弟のことでいっぱいだった、という。シンプルですごくいい!
ただ、兄貴は弟ほど深く考えていない感じがして、それがこのCP成立に一役買ってる気がします。
書き下ろしもかわいくてやらしい!
弟のお願いって、何でも聞いてあげたくなっちゃいますよね!わかるー!!
お得その2:裏表紙のCP「キミとお仕事」はリーマンで年下(だけど先輩)攻めだった。
大好物ですよ。受けがメガネで、年上だけど中途採用なんで後輩というシチュ。
年下の先輩・小次は一言多くてちょいちょいイジワル。
後輩・竹倉は、小次のそんな態度にイラッとしながらも、デキル奴だと認めてます。
その上、自分に対する仕事上の細かな気遣いにドキリ。だんだん意識してきて…。
このお話の種明かしが、実は一番萌えポイントだったんです。
だって私も、裏表紙のメガネ(竹倉)に一目惚れして買ったんですから。
このお話は、攻めの年下先輩の性格勝ちです。攻めなのにツンデレですよ。もうっ、かわいいったら!
お得その3:オッサンだ!ツトムさんのオッサン!
「オーダー!」なんですが、オッサン攻めなのか受けなのかわからない仕様になってます。
ツトムさんの仰るように、オッサン受けならニンマリですが、なんとなくオッサン攻めのような雰囲気…。
でも若人(麻生くん)のかわいいお願いに、オッサン(柄本さん)受けちゃいそうな気もします♪
とにかく、ふたりの表情がすごくいい、すごく好き!
それに、スイーツの出てくるお話なので、甘い香りが漂ってきます。
その他のお得:とにかくどのお話もいい!
全体的にエロさ控えめですが、どのお話も未来を予見させる終わり方が私好み。
こういうの「中途半端」って感じる人も多いと思いますが、逆に私は大好きなんです。
「雨上がり恋したい。」のふたりもこれからって感じだし、「夏の残り日」のふたりは10年後の再会。
「君に唄えば」に関して言えば、最後にちゃんとHまで入ってて……ツトム先生ありがとう!関西弁もウレシイ!
ツトムさんの魅力満載の短編集、たくさんの方に読んで欲しいです♪
コイツとは絶対合わない合うはずがない。
そうわかりきってるのに止められない。
ノンケ同士だったらそれは、良きライバルとして互いに認め合い、気付けば強い絆で結ばれる…というオチなのかもですが。
表題作のふたりがゲイだった、というのが重要。
ゲイだからこそ、認め合いながらも惚れる、強い絆に愛が加わる、そういう部分を丁寧に描いてあるものって貴重かもです。
この御本の売りである「攻vs攻」という関係性は、間に「受」っぽいかわいい子(港)がいたから成立してたんじゃないかな。
それよりも、このお話の一番の萌え処は、ふたりのデザインに対しての本気。それが読んでる側にビシビシ伝わってきてかっこいい。
イケメンで人のあしらい方にも慣れてて器用そうな一弥。
逆に、個性的で切り込みが鋭く本物には本気の姿勢を崩さない二郎。
「Parallel lines」では、港を挟んでのライバル同士だったふたりが、いつの間にかお互いの(デザインに対する)本気を認め合っていく。
そして、二郎の悪口を言うクラスメイトにマジでキレる一弥、この時点で既に、一弥は二郎に狂わされいてるんですよね。
それを気付かせるのが港、っていうのがまたいい。港もある意味男前です。
「Rise line」では、もう、ものの見事に二郎が狂ってくれちゃってます。
器用な一弥と違って、好きという感情の折り合いが上手くつけられない不器用な二郎が堪んないです。
好きだから相手のことが気になるし、男同士だから自分と比べてしまう。プライドも邪魔する。
港が間にいた時は、同じラインに立っていると思ってたのに…。
二郎のそんな心の葛藤がすごく上手く描かれてて、その揺らぎを見抜く一弥がまた男らしい。
へこんだ二郎を煽って引き上げる一弥。だってへこんだ二郎はいつもの二郎じゃないって一番わかってるのは一弥なんです。
めんどくせーけど、同じラインじゃないとダメなんだって最初に気付いたのは一弥で、その言葉を受けて這い上がる二郎もイイ。
このふたりが引いたり折れたりで成立する関係じゃないというのが伝わってきます。
ただ、どんなに攻気質の人でも、弱い部分はあるし、それが受けっぽいと思わせたりもする。
でもこのふたりには、弱いトコにつけ込んでの上下決定はないと思います。そんなのはフェアじゃないってお互い思ってそう。
カバー下で作者さんが仰ってるように、ふたりのHシーンがあったとしてもお互い譲らない=ケンカしながらも離れられない=リバ?という流れになりそうな…。
同時収録の「名前を呼んだら」「まっすぐ飛び立て大空へ」もですが、夢に向かってがんばるというシチュ、所謂青春モノって萌えますねー。
エロはなくても、青春の汗くささって妙にストイックで、逆にえろい感じがします(妄想しすぎでしょうか)。
でも、個人的に、青春臭のしない「カフェ・ラテ・レター」が、じぃんと泣けました。
ゆくえさんの絵は、さらっとあっさりしているんですが、何気ない表情にものすごく気持ちが表れてるんです。
特にこのお話のマスター・種さんの表情、堪りません!胸がきゅうんとなる!
口絵もカバー下のマンガも大好きです。幸せがあふれてる!
どのお話にしても、その後のふたりをいろいろと想像できる余韻を残して描いてくださってて、それが特に「物足りない」とは感じさせないところがすばらしいと思います。
ですので、神評価です!
普段、はじめての作家さんで題名がいかにもな本は買うことがないんですが、作者さんの名前がひらがなで回文だったというだけで手に取った本作。
いやもう、よくやった!とあのときの安易な自分を褒めてやりたい気分です。
帰ってきて裏のあらすじを読んで「ひとりエッチ」の文字を発見。
自慰シチュ好きなのでテンション↑↑。
でも、もくじに「drapモバ」の文字を発見し、携帯配信モノ=手軽にH補完というイメージがあったので、期待半分で読みました。
お話の流れは、身体から始まったふたりが、いろんな試練(?)を経て徐々気持ちを通い合わせる……みたいな所謂王道です。
もちろん、携帯配信モノだけあってエロい。
いや、エロいのはエロいんですが、それだけじゃなかったんです。
大学寮の寮長さん・冴木くん、この子が素晴らしい!軽くツンデレ超えてます。
普段、素直じゃない代表みたいな冴木くんですが、デレた途端、気持ちをぽろぽろ零しちゃう。
これはもう、どんなヤツでもイチコロですよ。
その上、酔っぱらったらさらに素直通り越して甘えんぼさんになっちゃって、もう読んでる私もメロメロです。
そして攻めの菅谷、コイツ、やりたいだけみたいなタイプじゃなかった。
冒頭で「久々のコンパ楽しみにしてっから!」なんて軽いノリで電話してるんで、うっかり「軽い子」前提で読み進めていったんですが…。
実は、やんちゃだけど思いやりがあって優しくて、割と素直で嘘つけないタイプ。
その上、男気もあるし、想ったら一途。なかなかの男前です。
コイツの素晴らしさがこのお話の評価UPにかなり貢献しています。(でもコイツ呼ばわり)
とにかく、ここ一番で発するセリフが萌えツボをガンガン突いてくるんです。
特に、酔っ払って泣きながら盛大に告白する冴木くんに放った一言。
「こんなゲロまみれで鼻水だらけできったねーお前にな、ためらいもなくキスできるド変態はこの世で俺だけだ」
もう、これだけでご飯3杯いけます!なんつー男前!!ドヤ顔も堪りません!!
実際は笑うトコなのかもしれませんが(汗)
それだけじゃありません、もっといい場面でいいセリフ言ってくれちゃってます。
全体通して出てくるギャグが私好み!おもろいです好きです初代ガ●ダムネタとかDBネタとか。
これ、CD化熱烈希望です。できれば達っつん×野島兄さんで!
読んでる間、脳内ではおふたりの声で再生されてました(ファンの方々スミマセン)。
当て馬役だった女装男子・リリコちゃんのお話も良かったです。
ここでもまた、天然あほの子攻め・斎藤クンがいいセリフ吐いてて萌えっとします。
もうひとつ、同時収録だった幼馴染モノも好きです♪
すごくすごく、好きになっちゃった1冊です。
私がこの作品を読んで強く惹きつ付けられた部分、それはいろいろな形で表現されている「執着」です。
まず、高校生の時の桂先生の、葉子先生への情熱的な執着。
モノクロの世界に投じられた淡いブルー、桂先生の中に立った恋のフラグです。
「束の間の蜜月と嵐のごとき修羅場」という言葉で表現されていますが、当時の桂先生には葉子先生という存在だけが色を持ち、彼女を振り向かせることが自分の人生においての宿命であり、彼女と愛し愛される立場になることが人生の到達点のような感じだったのではないでしょうか。
でもそれは、宿命でもなく人生の到達点でもなかった。甘い蜜月の齎したものは、ひとつの新たな命と苦いやりきれない思いと自分の無能さ。
この哀しい結末が、彼の考え方や生き方を大きく変えていくのです。
誰からも執着されてはいけない、もしそういうことがあれば突き放す、何人も自分に関わってはいけないのだ、と。
そんな孤独な人生を選んだ桂先生にも、たったひとつだけ、自分を生かしてくれている希望があった。それが「ゆうき」。
そして「ゆうき」という名の生徒との、早朝の図書室での出会いが偶然だったのか必然だったのか、そこまでは書かれていません。
でも多分、桂先生は志緒ちゃんが朝早く図書室で勉強していることは知っていたんじゃないかなと思います(あくまで妄想です)。
複雑な気持ちを心の奥底に持ちながら、小さな希望を口にしたい思いがあったのではないかなと。
単に呟くのではなく、自分のクラスの「ゆうき」に自分の希望を重ね合わせながら。
次に、志緒ちゃんの執着。
彼は執着しなさそうに見えて、実は物語の中でものすごく執着しています。
父親の通っていた高校に対する執着…これは高校に執着しているわけではなく、父親の望みに執着しているんです。
本人も自覚していますが、半ば意地のようなものです。
ところが、母親の妊娠をきっかけに、様々な疑問や不満が現実となって自分に降りかかってきます。
その苦痛は志緒ちゃんの中に鬱積していき、どんどん膨らんでいきます。でも吐き出そうとしない志緒ちゃん。
そんな志緒ちゃんが唯一吐き出せた相手が桂先生だったのは、どうしてなのだろう、と考えた時、桂先生自身から『ゆうきの悩みや苦しみを解放してやりたいオーラ』が出ていたのではないかなーと思ってしまうわけです。
それは教師と生徒という関係から来るものではない、ということは明らかです。
志緒ちゃんは、もうひとつ執着していることがあります。
それは言わずもがな、桂先生です。
桂先生が志緒ちゃんに自分を重ね合わせ、似ていないのに昔のことを思い出し「つらかった」という場面がありますが、もし志緒ちゃんの桂先生に対する執着の仕方が、過去の桂先生の情熱的なそれと同種のものであったなら、このふたりは結ばれなかったかもしれません。
志緒ちゃんの、桂先生に対する執着が、なんとも言えず柔らかい優しい包み込むようなものであったからこそ、この恋は成立したのだと思います。
桂先生から「ゆうき」の存在を聞いた志緒ちゃんが、「ゆうき」の現在をこの目で確認したいと札幌へ旅立つシーン。
桂先生の過去が、たった今、札幌という場所で現在を生きて過ごしている。それを自分の目で確かめたい。
その行為自体、志緒ちゃんの桂先生に対する執着であり、桂先生を想う志緒ちゃんが桂先生の過去も現在もすべて受け入れたいという強い意志にも思えます。
先生の過去も現在も、遠くの地で生活している先生の過去の断片もすべて、志緒ちゃんは自分の目で見て確かめる。
確かめたからこそ、より一層、桂先生のことを好きでいたいと思う。
「先生のこと、好きでいてもいい?」
そのひとことに、志緒ちゃんの男気というか想いの強さをひしひしと感じます。
確かに志緒ちゃんは、桂先生に強い想いを抱いているけれども、決して同じ想いを抱いて欲しいと思っているわけじゃない。
けれども、志緒ちゃんの想いは、人との距離を縮めようとしなかった桂先生の心にすうっと沁み込んでいきます。
人から執着されることを拒んでいた桂先生が、志緒ちゃんになら執着されたいと思ったんじゃないかなーと、読んでいてすごく感じました。
元々情熱的な桂先生だから、「好き」と自覚したらそこからはガンガン燃え上がってきます。
実際は我慢するんですが、それでも言葉の端々に「志緒ちゃん大好き!」が溢れていて、読んでる側もニヤニヤしてしまいます。
あとひとつ、栫の執着の仕方もすごく気になります。不器用すぎて。
この1冊で、様々な執着や愛のかたちを感じ取れました。
そして、孤独のまま人生を終えようと決意していた桂先生の未来を、明るい色に塗り替えることができた志緒ちゃんの柔らかな執着と愛に、心が熱くなりました。
「嵐のあと」から4年後(と、「初恋のあとさき」のあとがきに書いてあった)の美山と、10年振りに再会した仁科。
この「初恋のあとさき」は、私が初めて読んだ日高ショーコさんの御本でした。
読んだ時は、美山よりも仁科の方になぜか肩入れしてしまってました。
多分、直後に「嵐のあと」を読んで、美山のことをあまり良く思えなかったからだと思うんですが(これはかなりのヒコクミン発言ですよねスンマセン)。
どう考えても仁科の方が狡い子なんですよ、でもそっちの方が人間らしくて好きなんです。
しかしながらこのCDが、私を仁科好きから美山好きに変えてしまう程に良い配役なのです。
まず、間島さんの美山、表面上の明るい部分と苦い思いを抱えている暗い部分、そしてほんの少し垣間見える子どもっぽさ、その演じ分けが上手すぎるんです。
まるで自分が経験してきたことのように演じておられて、なんとも言えない胸の痛みが伝わってくるんです。
もちろん、あどけない感じの高校生の時の美山の演技も、やっぱりちゃんと美山なので素晴らしい。
高校時代の、一途な想いを仁科にぶつけ周りが見えてない美山と、不安定な気持ちのままそれを受け入れ拒絶できない仁科。
お二人の若々しい演技がこれまた堪らんかったです。温度差が痛すぎます。
再会した仁科が初めて美山の家に行った時。
いい雰囲気になっている最中で、仁科が結婚指輪をしていないことに気付いた美山が仁科に問いかけるシーン。
「……離婚した」と答える仁科を、美山はかなり強く拒絶します。
あのときの美山のセリフは、マンガを読んだ時以上に胸に響きました。
そして、仁科役の小野友さん。
優等生で真面目で流されやすく、保守的でバカ正直で、誰も愛せないし誰からも愛されない、何に対しても熱意が感じられない。
何かに縋り付きたいのに不器用すぎて縋り付けない、自分がかわいいくせに他人をとことん利用するまでには至らないマヌケさ。
自分にはない一途な想いや熱意を持つ美山に心の奥底では憧れて本気で愛していたくせに、それを認められない、自分を否定したくない。
そんな仁科の人間らしい部分を、あのソフトな声で上手に演じておられて感動しました。
こんな難しい子を美山は赦して、さらに「今の俺なら、仁科の迷いを拾ってやることができるんだろうか?」って、美山どんだけいい子なの!?
大人の美山が自分の中に抱えていた仁科への想いや葛藤をすべて抜きにして、大人の仁科へ向き合っていく場面、もう泣きそうでした。
音声になって、こんなにも胸に響いてくるものなのかと。
一途な想いと性に対する好奇心と子どもっぽい優越感。
そんな青臭い中で生まれた初恋の芽は、10年経ってようやく育とうとしているんだなあと感じさせられました。
償い赦し合うことから始まる、お互いを思い遣る気持ち、逃げ出さずに諦めずに真っ直ぐ向き合う大切さ。
ゆっくり時間をかけて育っていくんだろうなあ、と思わせるラストでした。
あと、大事な役どころでもある安東さん役の高橋さん!
あの低めのお声が、美山と仁科の子どもっぽさを引き立たせてて、いい感じに大人でした。
「あーあ、もうコイツら、見てらんねえなぁ」っていうセリフが聴こえてきそうなくらいに。
いいお兄さんの安東さんにも、幸せになっていただきたいです…。
「嵐のあと」で美山を演じておられたスズケンさんも美山らしかったですが、間島さんの美山もそれに負けないくらい素敵でした。惚れました!
待ちに待った野島兄さんの花城さん。
期待通り、いやいや、期待以上でした!
そして、澤さん役の安元さんがすごくステキでした。
試聴した時は、ちょっと声が低すぎるかなあと思ったりもしたんですが、あの低い声がドラマの要所要所でアクセントになっていて、ドラマ全体がきゅっと締まった感じがしました。
内容については、原作に忠実にCD化されていて、がっかりする部分が全くありません。
細かい手書きのセリフもちゃんと音声化されてて嬉しかったです。
ラストの+αの部分もオチがついてて、音楽と相まってキレイに終わってます。
その上、4人の主役たちの声が、個々に聞くとそんなでもないのに、ドラマになると完璧にはまってました。
野島兄さんと安元さんは大人組、小野友さんと達っつんは若人組、すばらしくピッタリです。
さかえさんのマンガは、モノローグが極端に少なく、そのモノローグも尻切れになってたりするんですが、このシリーズは廣瀬と澤さんにモノローグが多く、それがストーリーの鍵になってると思います。
それでも、原作片手に…でないと、わかり辛い部分が多いかなあと思います。
原作を読んだ時とCDを聴いた時とで、確実に印象が変わった(それも良い方に)場面は、脇キャラと主役たちとの遣り取りです。
とにかく、脇キャラの印象がすごくいいんです。
雪に濡れて身体が冷たくなった花城さんと廣瀬。
花城さんの会社のあるビルの地下、ボイラー室で管理人のおじさんにお風呂を借ります。
その時の、おじさんと花城さんの遣り取りが、サイコーに大好きです。
まるでジ●リです、ほのぼのしいというか、管理人のおじさんがすごくかわいいです。
廣瀬が持っている有原の書いた手紙を、盗み見する花城さん。
「いけねんだー」と管理人のおじさんの微妙に間延びした声がすばらしい。
そしておじさんの前じゃ、思いっきり素に戻る花城さんが子どもみたいで楽しい。
ボイラー室の蒸気の音、ラムネのビンの中のビー玉の音。
すべて臨場感があって、目を瞑ると情景が浮かんできます。
もうひとつ、澤さんが有原を連れて支那そばを食べに行き、その後、連れ込み宿へ。
連れ込み宿の女将さん・志緒さんがまたかわいらしい。
翌朝の有原との遣り取りが、これまたジ●リっぽい。
小さいときから澤さんを知ってる志緒さんは、有原に澤さんの過去や人となりを語ります。
そしてお願いするんです。
「帰るなんて勿体無い事言わずに、ちょっと考えてみちゃくれないかい」
それに対して、有原の真面目な返し。
「思い返せば面倒見は悪くないと思いますが、嫌がらせを受けた方が多いです」
その後の志緒さんの笑いがおかしくって、つられて笑ってしまいます。
さらに、先生がすごくいい感じで、ホントにピッタリです。
狸オヤジっぽいというか。助手との遣り取りも秀逸。
それ以上に、澤さんとの電話での会話が、狸と狐の化かし合い…楽しすぎます。
音楽も素敵!
バンドネオン(アコーディオン?)だったり、小編成のラグタイムだったり。
昭和初期の時代っぽい音楽にやられました。
私の中では「ジ●リっぽいBLCD」=名作確定です。
何度でも聴きたい、そして続きが待ち遠しいです。
渋谷くんは、人懐っこくて付き合いもよさ気な新人。
本田さんは、人以上に仕事が出来て人当たりもいい。
上っ面だけは普通のリーマンなふたりが、「変わったパンツ」が縁で親しくなっていくという、ありそでなさそなお話です。
本田さんの小5的変態っぷりが素晴らしすぎて、渋谷くんがフツーの人みたいに見えてますけど…。
渋谷くんも大概ですから!その辺、私、スルーできません!
だって、いちごちゃんパンツやハート柄パンツやヒモぱん、穿いちゃうんですよ!?
まあでも、パンツの好みは人それぞれですから、その点は100歩譲っても。
スーツケースに間仕切りして、かわいいパンツくるくる丸めてコレクションですよ!?
「俺の前で……、俺以外のパンツ褒めた…」って泣くんですよ!?
夜のオフィスでいきなりストリップ始めちゃうんですよ!?
ほら、立派に変な人です。大好きです。
でもその上を行く変態を出してくるのが腰乃さんなんですよね。
もちろん私は本田さん寄りです。パンツも3枚で充分とか思ってしまうクチです。
世話を焼きたいのに大雑把、いじめるの楽しいのに泣かれるとすぐ反省(心の中で)。
好意がすべて裏目に出ちゃって、その上、相手が男だから(?)遠慮がない。
かっこよく決めようとしても、ツメが甘くてあほのこ認定されてしまう。
それも、ツメが甘いとか気付いてないから、むかつくあほのこ認定。
何でも食って寝て起きれば全て解決するって思ってる……まさに自分を見てるようです。
なので、どーにか渋谷くんには本田さんに夢中になってほしいと願ってしまうわけです。
途中、マジで渋谷くん、本田さんにキれてますよね。
本田さんのズレまくってる優しさが、セクハラパワハライジメにしか受け取れなくて。
読んでる側はおもしろくって楽しくってモットヤレー状態なんですが、本田さん寄りの私は内心「違うの、愛なの!わかったげて!!」って叫んでました。
ですから、デートの回の襲い受け、これはもう辛抱堪らんかったです。
『この人ちゃんと俺のこと好きだったんだ…』
という、渋谷くんの心のつぶやきに「うぉいっっ!」と突っ込んだのはいうまでもありません。
その時の本田さんの告白(ほとんど懺悔?)は、渋谷くん同様、私のハートにもトスッとブッ刺さりました。
んで、渋谷くんからのチュー!!うわーうわー!!
結局、ベッドにふたりしてなだれ込んだけど、チューの後そのまま『すやぁ~』…。
でもでも、そのお陰で、書き下ろしが120%楽しめました!
ありがとうございます眼福です!
個人的にお気に入りは、第一資料室の電マ使用シーンと、お城ホテルの拷問部屋シーン。
まさか電マ×Tバックで、挿れてもないのにあんなにエロいとは!
さすが腰乃先生、ツボを押さえてらっしゃる(電マだけに)。
もちろん、拷問部屋でのおもらしシーンも激萌えでした。タオル洗う本田さんに愛を感じました♪
ホントご馳走さまでした!