オメガバースものでは通常卑しめられ虐げられることが多いオメガが尊ばれ、そのオメガの項を噛んで番にすることが可能なアルファは虐げられ、愛し合うことは法律的にも社会的にも許されないという世界線で繰り広げられる幼馴染再会愛です。
オメガのネックガードの代わりに、本作ではアルファに2種類の枷が付けられています。まるで家畜か奴隷であるかのように。どんなに愛し合っていても、身体を繋ぐことはできても、枷のせいで、両腕で相手を抱きしめることも口付けることもできないなんて…。
このもどかしさの描写がとても巧みなので、クライマックスでの解放感や2人の喜びが増しています。
本作は主人公の受けでオメガ・アランの視点で描かれていますが、羽生橋先生の丁寧な筆致で、攻めでアルファ・グウィンへの一途でいとけない恋心、それが引き裂かれたことへの悲しみ、彼を取り戻そうとする決意など、移り変わる心情が巧みに描かれていて胸が痛くなりますし、
アランのみならず、グウィンの心理についても表情や言動(時間につれて変化するところもお上手!)から、読者には「この2人は両片思いなんだな」と解らせてくれるので、気持ちよくジレジレモダモダを楽しむことができました。
また、一般的なオメガバースとは異なる世界線なので、その説明が冒頭にあるのですが、まるで神話みたいで美しく、スーッと染み込んでくるように理解できました。
本作の最大の魅力は、主人公アランの成長とひたむきさだと思います。当初は父親にちょっとした過失を打ち明けることすらできない臆病な少年だったのが、学業に励んで医師となり、万全の体制を整えて10年越しの念願を叶えてグウィンを娼館から請け出すことや、番の証を隠さないところには清々しさを感じました。
脇役も、とっても良い人そうな人が実は…!と、良い意味でギャップを作ってくるのですが、良く読むと伏線として、チラチラと不穏さは見え隠れしています。とは言え、あそこまで豹変するのか!ドラマを盛り上げてくれます。
本作では、アルファとオメガは愛し合うことを禁じられた世界のままです。しかし、グウィンとアランは心を通わせ合い、肌を重ね番の契りを交わします。2人の行く手にどうか幸多かれと祈らずにいられません。
一味違ったオメガバースを読みたいという方にオススメいたします!