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女性ぱるりろんさん

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暗部の上に成り立つふわふわファンタジー

「5分後に孵るのを待ってる」を読んで、違う作品も読んでみたくなったので購入しました。
そのときとは絵柄が変わっていましたが(線も違う)、やはりとても個性的な作風でした。
主人公は格闘技(ジークンドー)が得意な男子高校生みなと。道場が治安の悪い町にあり、そこで知り合ったフリーター2人と三人でいつもつるんでいます。
あるとき肝試しでとある廃ビルの屋上に行ってみたところ、屋上で名前のない男と出会います。
みなとは男に「なな」と名前をつけて、しょっちゅうこの屋上で遊ぶようになるのですが……、というお話。
ななの生い立ちについて、こんなことあり得るのかなと読みながら時々まじめに考えてしまいました。(まあいまの世の中何があってもおかしくはないですが)
ななの父親(といっても親でもなんでもない)は気まぐれにロッカーで拾ったらしい子供を、放置しつつ薬漬けにしつつ身体を売らせて、最終的にはまた捨てたわけなのですが、その辺りはさらっと流すように書かれていて、ななの心の闇の部分もあまり描かれずに、そのひまわりみたいな明るい笑顔の印象が前面に押し出されています。
この二律背反な感じは、いくらでも掘り下げようとおもえば掘り下げられると思いますが、この作品ではその辺りはむしろぼやかして、社会からはみだしている男との、風変わりな交流に焦点を当てています。
BLになり得るのかも私の中では謎なのですが、みなとがピュアなのも手伝って(こちらも少し変わっている)最終的には家族になっているのが、現代のファンタジーだなと思いました。みなとの御両親はそれでいいのか、とか、戸籍どうなってる、とか、思うところはたくさんあります。
作品世界の底にはものすごい暗部があるのに、その上にふわふわしたものを積み重ねて、ふわふわの表面だけをいい感じにコーティングしたものがこの作品、という気がしました。
ディスっていません。個性だと思っています。次の作品も楽しみに待っています。

大切な人の死を乗り越える

天国ホテル。どこにあるかは誰も知らないが、そこに行けば死んだ人に会えるという。
ピアノを教えてくれて、人生を変えた大切なひと、月彦が病死した。その事実を受け止められない春希の心の中に、天国ホテルの噂が刻まれる。
月彦の甥である康は春希を心配し旅行に誘うが、二人が乗った観光バスが山の中で事故に遭ってしまう、というところから始まるお話。

いろいろ考えさせられました。
メインキャラである上記の3人の思い出も、行きつ戻りつ明らかになっていきますし、バスに乗っていた他の乗客たち数名についても、そのバックボーンが語られます。
それらを踏まえて、この不思議な場所で起こる事柄を登場人物の思考に寄り添いながら一緒に体験していくような形で読み進めると、この先どうしたらよいのか、何が正解なのか段々分からなくなっていきました。
亡くなった月彦を慕う春希が可哀相で、そんな春希を元気づけようとする康が可哀相で。
何年経っても忘れられない月彦が目の前に現れて、一緒にピアノを弾いて、共作していた曲の続きを一緒に作って、話をしたり食事をしたり、そんなことを毎日していたら、それはもう取り込まれますよ。ここに残る選択をしたとしても、それは仕方が無いと思いました。誰も責められない。何が幸せかなんて、見ていれば分かります。
特につらかったのが、月彦が亡くなって2年後かな、春希の誕生日を康がお祝いした場面です。279ページ。「笑いたくない。楽しいなんて思いたくない。何かを欲しがったりしたくない。幸せになんてならなくていい」この科白には打ちのめされました。康もショックだったでしょう。そこから年数が経っているとはいっても、だからいまこの場所で、最終的に康がくだした決断も私には納得のいくものでした。
翻ってこのお話のラストシーンは、私は個人的には実は違う結末の方がよかったのではと思いましたが(仕方ないよな、とは思っています)、著者の優しさが多分に反映された内容で、あるべき姿、理想ともいえる帰着点でした。
うずくまっているところから立ち上がるまで、かかる時間も必要なエネルギーもきっかけも人それぞれで、康はそれでも随分待ってはいたけれど、本当はもう少し春希には時間が必要だったんじゃないかと思いました。

依存でも刷込みでも二人はこのままでいい

大学生の孝己は幼馴染みの沙世と暮らしている。沙世はいつでもどこでも突然眠ってしまう病気で、孝己はまるで母親のように微に入り細に入り沙世の面倒を見ている。
沙世がいつでも自分を頼れるように、優しくくるむようにして日々を過ごしてきたけれど、そういう意味で沙世を好きな気持ちを持て余す。
一方で沙世の方も、孝己が自分の前から去ったらどうなる?などと考えるようになる。このままで居たい気持ちとのせめぎ合いが丁寧に丁寧に描かれたお話。

絵柄に派手なところはないのに不思議な魅力があって、最後まで集中して読みました。最後まで読んで、それからもう一回初めから読みました。
日常が淡々と描かれていますので見逃してしまいそうですが、出来事的にも心情的にも結構なドラマが内包されていて、2回目読んだときに沙世の成長(というかジャンプアップ)を思い知り、よくよく考えたらクズでヘタレな孝己の方が沙世に救われていることを再認識しました。
お互いがお互いを必要としていてつなぎ止めたくて、これは依存なんだろうか、刷込みなんだろうか、でも完成形ならばもうずっとこのままでいいよね、と思わされました。
象徴的なのが、孝己が沙世に言った「俺より一日早く死んでね」という言葉です。孝己は最後まで看取りたいんですね。沙世を残して自分が先に逝くのは心配で、さりとて沙世のいない世界で生きたくはないから「一日早く」なのですね。深い。
「5分後に孵るのを待ってる」というタイトルも、よく練られていて深いと思いました。

脇キャラの蜂須賀くん、出番が少ししかないけど、孝己のセフレで親友で、二人の関係もよく知っていて、同じ学部の沙世のために講義のノートをとってくれる(孝己の依頼)やさしい人。見た目とのギャップでとてもモテそうだけどセフレは孝己だったという、こちらにもドラマがありそうでとても良かったです。
同じく脇キャラのたつきちゃん、キャラが激しすぎて出番一瞬なのに強烈な印象。孝己のことをタカシと呼ぶのは何故なのか分からず色々謎のままでした。こちらは逆に居なくても支障なかったような。

読み応えとセンスの良さに釘付け

「眠り男と恋男」「優しいディナー」「夜を逃げる」「太陽と秘密」「待つ花」「眠り男と恋男 その後」の6編を収録した短編集。
長編ばかり読んでいたので短編集は新鮮でした。それにしてもおしゃれな表紙ですね。レコードのジャケットみたい。

表題作の「眠り男と恋男」がこの中では一番好きな作品です。
主人公のジュードの悩みは、相棒のロイスの奇病のこと。ロイスは睡眠中、無意識のうちに相手かまわずセックスをする、しかもそのことを本人はまったく覚えていない。本当はロイスはノンケのはずなのに、ジュードは襲われてしまっており、相手が男でもいいらしく、余計に傷つき、でも誰にも言えないしで、悶々としているというところから始まるお話。
2週間前から始まった、というのがポイントで、要は病を抑えていた薬を切らしたときから、なんですよね。本人は自分が何をしたか覚えていないし、これまで多分大きなトラブルもなかったのでしょうが、あまり切実に感じてないのがたちが悪いです。全部わかって全部背負い込んでいるジュードがとにかく可哀相。ロイスのことを好きだから余計、相手が誰でもいいらしい夜の秘め事を自分の中で消化できず、さりとて自分以外とはして欲しくなく、どうしようと思うんですよね。
表紙もおしゃれですが、この作品の語り口も大変にセンスを感じます。冒頭の「商売仲間になったのが4年前 共同で部屋を借りるようになってまる2年 いかがわしいことになったのは昨日で7回目」にノックアウトです。詩的でありつつ説明にもなっていて、登場する数字の単位が異なっている。もうこの冒頭の1ページ目で大拍手でして、しかも次のページのタイトルバックの遠景が最高の一言です。こちら側に背中を向けるロイスが、画面の奥にいるジュードの背中を見ている。つまり、こちら側からは二人とも背面しか見えていなくて、でも上下に配置している大コマにより両者の表情も分かる、という。素晴らし過ぎます。ついでに、この作品の一番最後のページの最後のコマは、二人が背中合わせでくっついているカットなので、最初と最後で対になってもいるのでした。ああ、マンガってなんて素晴らしい。

ほかに、「夜を逃げる」も良かったです。
子供の頃のバス事故がきっかけで夜が怖いハル。薄暗い部屋がいやで引っ越してすぐに東側に窓をつけ、その時に知り合った建具屋のユーゴと身体の関係を続けている。夜だけそばに居てくれればいいのに、朝もいちゃいちゃしたがるユーゴが少し鬱陶しくて「もう来るな」と告げてしまうのですが、不測の事態が起きて、……というお話。
夜だけでいいのにというのが身勝手と思うものの、その裏には夜を怖れる自分への嫌悪や羞恥が含まれていて、その分だけ余計に強がってしまうのだと思えば、ハルのことが愛しく思えてきます。ユーゴはハルの過去のことは知りませんが、夜を怖がっていることには気付いていると思う。だから蝋燭もたくさん付けていたし、夜に外に出ようとも言わない。
見た目も優しくてユーゴはいい子だなあと思っていたら、とんでもないSぶりだったのでギャップに驚きました。敢えてクローズアップされてませんが執着もすごいので、今後ハルは愛し尽くされるでしょう。でもちょうどいいのかも。いつか夜の街を二人で歩けるようになるといいな。

長年連れ添った夫婦の域

「真夜中ラブアライアンス」シリーズのスピンオフだということを、読むときに知りました。元のお話の方を読んでおりません。すみません。
ゲイバーママのヨシオと、酒々井組若頭の天麻は昔馴染み。最近天麻の様子がおかしくて、20歳の時にも似たような感じだったと気付いたヨシオは、また天麻が何か大きなことを抱えているのだと思い巡らせる。……というお話。
二人のつきあいが長いためか、お互いへの信頼感が飛び抜けていて、何かを不安に思うとか誤解するとか全然なく、自然と寄り添い、共にあるだけで支えになっているような関係性が描かれていました。長年連れ添った夫婦の域です。
ちなみに20歳のときは、天麻は組に入ると決めて、背中に彫り物を入れ、友達全員と縁を切ろうとしていました。今回は組長就任の決意を固めていました。人生の大きな一歩を踏み出すとき、前は一人で歩こうとしていたけど、今回はそうではないというのが良かったです。

彼は誰のひかり 電子 コミック

たすく 

途中までは文句なしに面白かったです

ガルネア国には人が、スルズ国には獣人が暮らしており、両国は国交を断っている。
スルズ国には多様な獣人が混在していることから本能のコントロールを含めて綿密に管理され、発情を一生知らない者も居るほど。
主人公は、半獣人のケーナイン。姿形はほぼ人に近く、犬耳は欠けていて尻尾も切れている。捨て子のために親は無い。そのケーナインが国境付近の警備の勤務中にガルネアの兵士を捕らえ、処遇が決まるまでの間その兵士の面倒を見るように命じられたところから始まるお話。全部で230ページ以上もある大作です。

途中までは面白かったのです。
捕らえられたガルネアの兵士ナイルのフェロモンにケーナインは取り込まれ初めて発情を経験するのですが、それ自体がガルネア国の策だと分かったとき、とてもワクワクしました。
フェロモンは獣人の本能を目覚めさせるということで、ガルネア国ではフェロモンの人体実験を行ったり暴力性を亢進させるセックスドラッグのようなものを作ったりしているのです。ナイルは本国でその実験体に使われて、実験中相手の獣人を腹上死させていたので、兵器としてスルズ国に送り込まれた? ナイルの左目にはカメラが仕込まれていたのでスパイ? などと、わくわく想像しながら読んでおりました。
そこへケーナインの生まれの秘密や、ケーナインとナイルの過去の繋がりも明らかになりますし、ナイルは結果スパイだったことが露見して、ケーナインの目の前で掴まってしまいます。
ここまでは本当に面白かったのです。ここまでで162ページあるのですがノンストップでした。
ですが、そこから最後のページまでがちょっと私には理解ができなくて。
今回のことを経て懲罰部隊行きとなり、国境のはずれにある小屋に一人にさせられたケーナイン。だけど、閉じ込められているわけではなく小屋に居るだけで見張りもいません。
そこにナイルが現れます。兵士としての価値を買われてスルズ国の国境付近の偵察をすることになったと言うのですが、こちらも見張りなどなく一人です。それで小屋で二人で暮らす。え、なんでだろう。隣国のスパイの処罰は? もしかして何かの罠か、それとも更なるどんでん返しかとも思いましたが違いました。私の読み込みが浅いのかもしれません。すみません。

かき餅あられが食べたくなりました

「郵便飛行機より愛を込めて」の特典SS小冊子。本編を読んだあとにこちらを読まないと機微が伝わらないので読了後推奨です。
いろいろあって再会を果たした兄弟でしたがそう長くは休めずもう帰らないといけません。おみやげの菓子折は既に資紀が用意してくれていて十分なはずが、希のおすすめのかき餅を買うべく四人で商店街に寄ったお話。
六郎視点→希視点→六郎視点の構成で、希視点のところは兄弟のやりとり、六郎視点のところは六郎と資紀のやりとり。どちらも貴重です。
兄弟パートは、恒が希を心配して、資紀のことを気にくわないのを丸出しで生活のことを尋ねるところが、評価分かれそうですが私はお兄ちゃん味を感じられて好きでした。身内だし恒くらいは尖ってていいかなと。ただ「あいつ」と呼ぶので、あれ年齢どんなだっけ、と少し混乱しました。はい、恒の方が年下でした。そりゃそうですよね。
恒は小学生みたいな部分と頑固なおじいちゃんみたいな部分が半分ずつ同居しているような人だと思っていて、このSSではどちらも感じられるのでとても満足です。
六郎は海よりも深い包容力の持ち主なので、かき餅の大量購入についても文句も言わず持ち帰るのが本当に素晴らしい。(購入前に一応意見を言ってみるのも良き) 六郎の目から見た資紀像というのも珍しくて、妙な圧迫感がある、と評していたことににやにやしちゃいました。
補完的な意味合いもあり、かつファン感謝デーみたいな特別サービスにも感じられる小冊子でした。

ハードにしてドラマチック

面白かったです。メキシコの裏社会モノでとてもドラマチックでした。
主人公のアベルは子供の頃に麻薬組織のボスであるリコに拾われ、育てられ、長じた今は組織のNo.2的な立ち位置にある。あるときリコが取引現場を押さえられて逮捕され、組織がガタついているときにリコの弟を名乗る男が現れる、というところから始まる物語。
BL的要素としてはアベルはリコの情婦でもあったことと、リコの弟レナートがアベルにちょっかいをかけることくらいで、恋愛面はあまり掘り下げて語られません。裏社会だしボスがいなくなって組織は揺れているしでとにかく血なまぐさく、アベルは常にぴりぴりと神経を尖らせているので、誰かのことを好きだとかそういうことは二の次のように思えます。でもそんな嵐のような日々において、配下のハイメとのエピソードや、妹を守る様など、アベルの心の柔らかい部分が描かれ、レナートに対する感情も出会った時の強い警戒心からだんだん変化していく様子がとても丁寧です。
幼い頃、妹を守るためにリコの言いなりで身体を開かされたりおそらく人を殺したりなんでもしてきたアベルにとって、生きる日々の根底に諦めがあって、色々な感情がわいたところで押さえ込むしかなく、そこにレナートが風穴を開けたんですね。人の生まれ育った環境が精神に及ぼす影響は大きいと思うので、このお話の後もまた新たな問題に直面するでしょうし、少なくとも逃亡している状況なので不穏ではありますが、この先はちがった道を歩けるよう祈るばかりです。
電書の書き下ろしは5pもあり、その後の二人と妹サリタちゃんの様子を少しだけ知ることが出来ます。
作画については、作品のカラーに合っているものの、キャラの判別が難しくて、何度か前に戻りました。ハイメのうっすら笑う、二心有るようにも見える表情がとても良かったです。
ところで、試し読みをして面白そうと思って購入したのですが、試し読みした箇所は第2話だったことを後から知りました。これまで試し読みは冒頭のことが多かったので珍しいかもしれないです。

淡々と二人の心情が綴られています

同窓会をきっかけにやけぼっくいに火が付くお話はよくありますが、こちらは当時特別な関係だったわけではなく、ただ同窓会で再会したのを機に元担任、元教え子の関係のまま交流を深めていつしか恋愛感情に発展する、というお話でした。元教え子視点の「いつか終わる恋のために」と、元担任視点の「恋ひめやも」の二本立てです。分量は前者の方がページ数多いですが、だいたい半々くらいです。

「いつか終わる恋のために」を読み驚いたのは、主人公の棚橋には結婚を控えた彼女が居たことでした。しかも仲も悪くなく、両親に紹介する約束までしています。繰り返しますが学生の時に水原先生を好きだったとか、主人公がゲイだったとか、そういうのは一切なくて、同窓会きっかけで交流するようになって、御飯食べたり本の貸し借りしたりたまに遊びに行ったり、そうこうしているうちに好きになっていったのでした。水原先生の元彼とのあれやこれやを知ってしまったことが、多分に影響しているだろうとは思うのですが、人生が変わってしまうほどのことに踏み切るには些か短絡的という印象は否めなかったです。まあそれが恋に落ちたのだ、ということかもしれません。
続く「恋ひめやも」はその続きにあたるお話で、水原先生の側から描かれています。ものすごく内省的で後ろ向きで強情で、差し伸べられる手を振り払い言葉で傷つけ、居なくなったら遠くの月を眺めて涙するような、大変に大変に面倒くさい性格の人です。なので、この人視点で物語を進めると、地の文はほぼネガティブ思考で満たされ、同じところをぐるぐる周り、読んでいるこちら側も迷路にはまったかのように八方塞がりのような気持ちに。棚橋が押して押して、ようやく最後に結ばれましたが、今後この二人はどうなっていくんだろうなあ、と遠い目です。
どちらのお話も、ものすごく丁寧に二人の心情が綴られており、大きな事件など全くなく淡々としているのに飽きることなく最後まで読み切れました。「恋ひめやも」の方は書き下ろしで、終盤ときどき科白がかたくなるのだけ気になりましたが、気付いたら最後のページでした。さすがの筆力といいますか、集中を途切れさせられずに走らされたような、ちょっと不思議な気持ちです。
それと、本筋にまったく関係ないのですが、途中の地の文で「伝染病に冒され病に倒れた人がいても、どうして感染なんかしたんだと責められないのと同じだ。」という文章がありまして、確かに昔はそうだったけどコロナ辺りから変わっていったな、と世情につい思いを馳せました。

第一部完

第一部完、だそうです。おおお。
2巻が出るのを待って、1巻から続けて読みました。
1巻ではなんとなく見えてきた不穏な状況と、あまりに対照的な朱里の無垢な表情で終わったので、次巻への引きがものすごかったですが、2巻は種明かしの回というか、次巻への準備回といった印象を持ちました。
朱里とマリィの過去エピソードを知ることで二人の絆の強さを見せつけられました。1巻のあの一連の場面からは想像もできない、二人の間に流れる強い信頼感、一体感とでも言えばいいのか。てっきり酷い目に遭わされていると思っていたのですが、全然違いました。二人はお互いの存在に生かされているといっても過言で無く、その根底には恐怖と絶望があるのだと。
朱里にとってキーパーソンとなる元彼については、来る来ると言われながら来なかったので、どうやら再会は次巻に持ち越し。ただ、当時と今とで朱里は変わったので(本人は変わっていないと言って震えてましたが)、だいぶ異なるものになるのではと思うのですがどうだろう。もっとも元彼も変わっているかもしれません。回想ではただのクズでした。
一方で、暁は、朱里との関わりを通して考え方が変わり、その言動からも一本芯が通った様子が垣間見られます。恋をすると大人になるのか、表情も少し変わって見えます。
それにしても朱里は抱えているものが大きすぎて、「好き」という言葉すら無垢な表情でたどたどしく告げるくせに、掴まえたと思ったら逃げるような一筋縄ではいかないところが、BLのメインキャラとして実に良いです。暁の焦りや喪失感はどれほどであるのか想像するだけでBL読みとしてわくわくし、今後の展開に期待が募ります。
1巻のレビューにも書きましたが、この作品はホストクラブのお客をモブではなく、光と闇の両方の意味合いをもたせて描いているのが特色で、個人的にも気に入っています。