1巻が発売になってからちょうど1年。1巻の内容を思い出すために再読してから2巻を読みました。
そうでした、このお話はとても王道のオメガバースでした。
今さらですがオメガバースの正しい読み方を私はいまだに会得していないようで、ただただ李里耶が気の毒でなりませんでした。特に本作のように、責任ある役職についたオメガが並み居るアルファの中で仕事をしなければいけないパターンは可哀相過ぎて。どうやっても冷静な判断など出来ないし、認めたくなくても仮にも相手が番であるならばビジネスパートナーにはなり得ない。
このような大企業同士のビッグプロジェクトの契約を締結する段になって、ようやくの顔合わせの場で突然商談を白紙にするなど非常識だし百害しかないわけです。オメガ性はそんな道を辿らないといけないのかと。たとえば顔合わせの数分のみにして、あとは体調不良を理由に立ち去り、契約の手続きは部下に任せておくなどのソフトランディングな事も出来るはずで、まあ何が言いたいかというと、とにかく可哀相でした!公式の場においてこんな恥をさらして辱めを受けるなんて。
同じ仕事の場でも地味な平社員が日常業務の場でヒートになったりするのと、立場のある人が晴れの舞台で通常の判断ができないようなことに陥るのとでは、読んでいるこちらのダメージが違い過ぎて。乱れる李里耶をエッチな目で見て楽しむのが本作の意図だとしたらそういう気持ちには全然なれませんでした。だめな読者です。
面白かったです。3巻の終わりに衝動的にキスをしたことを、4巻では主に鈴木がずっとずーっとモダモダしていて、いや俺は女が好きなんだ、と自分に言い聞かせつつも、杉木から可愛いだのあなたが欲しいだのと言われれば嬉しくてやに下がったり、目で会話したり繋いだ手からお互いの感情ダダ漏れだったり、房子ちゃんじゃないけど私は何を見せられているんだと楽しくなりました。
俺はそんなに簡単じゃねえんだ、しばらく会わない、と宣言した次の瞬間、成り行きとは言え杉木先生の教室に行ってるし、なんだかんだで二人は毎日会っているらしいし、結局好きなんじゃん、もうそれは好きってことですよ、観念するしかなくない?と腹を抱えて笑ってしまうなどしました。
総じて4巻は痛快で、上記のラブコメ展開と、思いの外下ネタ多めなのに加えて、ラテンチャンピオンのアルのトルネードにも感嘆したり、アキちゃんのあれこれにも同情したり、鈴木の生い立ちや家族のこととか情報量も満載で読み応え十分でした。
だけど不意にやっぱり冷静になってしまうのです。
3巻のレビューにも書いたのですが、それでこの二人のことを競技面でどうやって受け止めればいいのかということです。いや、二人が組んで踊るわけではないから(一旦Netflixのことは置いておく)、単に二組が切磋琢磨して、並み居る世界の強豪の中で優勝できるのかを見守っていくことになるのかと思うのですが、どうも自分の中で消化できなくて。もう少し見守ります。
特装版は、2本の番外編が収録されていました。エロというか下ネタ特化。杉木のパブリックスクール時代のエピソードが面白かったです。
親友で幼馴染みかつ長年の片思いの相手である大河とその家族のために、アキは誰にも内緒でストリップダンスの仕事を始めるが当の大河にばれてしまう、という表題作。全4話で、一冊のちょうど半分くらいまででした。
表紙が過激でネオンカラー風の効果もあって目を惹きますが、内容はとても可愛らしいです。
幼馴染みというよりも兄弟のように育ってきた二人。生い立ちや出会いも描かれ、どのようにしてアキは大河への秘めた片思いを抱えてきたか、アキにとって大河とその家族がどんなに大切か、また、最近大河が事故に遭い入院している間どれほど心配したか、丁寧に綴られていることから、自然にアキに気持ちが寄り添います。アキをとりまくダンサー達も皆やさしくて、第二の家のような場所が出来て良かったなあと思える一方で、仕方ないことですが大河がアキの恋心にこれまで気付いていなかった上に突然執着心を見せつけたりストリップダンスに生き甲斐を感じているのを理解しなかったりで、少々モヤりました。
ましてや俺の前でプライベートダンスを踊れとか、キスマーク付けたりとか、大河をとても子供っぽく感じてしまいました。アキに告白したのも本当に好きなのか疑うレベルです。
もしかしたら、一冊まるまるの分量だったら、大河のことももう少し描けたりしてこのモヤモヤも解消できたのかもしれません。そう思うとちょっと勿体なかったなと思います。
本の後半は、既刊「月と野蛮人」のスピンオフ、エルヴェが主役の「エル」というお話でした。
こちらは全5話です。申し訳ないですが完成度としては「エル」の方が表題作より高かったです。
「月と野蛮人」から3年後の設定で、ユリエルに仕えるエルヴェが主人公。もとよりエルヴェはユリエルの育ての親みたいな位置づけでもあり、前作がユリエル目線だったため頼れる兄的に描かれていましたが、いざエルヴェを中心に据えたらこんな感じになるのかと。若く美貌で有能なのに加えて、案外性に奔放で小悪魔的、女性からも男性からも好かれるというように非常に多面的に描かれていました。戦えば強いし賢いし駆け引きで負けないし弱点なんてあるのかな、と思うほどでしたが、甘えられたり世話をしたりするのが好きという一面が隙といえば隙でした。(なお、弱みはユリエル殿下のことだけ)
アルドの腹心バディスもエルヴェには形無しで、こんな最強のBL主人公は他にいないかもしれない、と思うなどしました。
ストーリーも面白く、小悪党タージェルの行く末も気になります。エルヴェのことは本気と思うので今後も諦めきれず、次の機会を狙ってくるんじゃないかと思っています。続きが読みたいです。
ラファージ王国の国王の末弟であるユリエルは誕生した時に両親が死ぬなど不幸が続いたことから呪いの王子と呼ばれ王宮とは離れた場所で暮らしている。あるとき、子供の頃から憧れていた伝説の都ロアディスの、遺跡調査の視察に赴いたところを砂漠の民に攫われてしまう。というお話。
19世紀の北アフリカ、架空の国が舞台です。
読み始めて思ったのは、大昔に読んだ少女マンガの世界だ!ということでした。
素直で天真爛漫な姫(ここでは王子)、砂漠の荒々しい部族の長、部族の民はあたたかくて姫は馴染み、自分を攫ったはずの男を好きになる。なんだか懐かしいぞ、と読みふけりました。
ユリエルは決して女の子ではないのですが、本当に素直ないい子で、心配になるくらい優しい(でもしっかりしてもいる)のでアルドが自分の物にしたくなるのも分かるなあと。
巻末のあとがきで、ロマンチックラブストーリーという単語が出てきまして、まさにそれだ、と思いました。展開もですし、登場人物の誰もが優しくて魅力的で、悪役が不在なのも良かったです。ユリエルと彼のそばに仕えるエルヴェとの繋がりの深さ(しかも恋心じゃなかったのがよい)がしっかり描かれていることにより、一層切なく感じられたのも良きでした。
上巻から3年後。沖縄でのんびり暮らす片岡のもとへ届いたメッセージによって、再び新宿にもどってきたお話です。2025年に雑誌で連載されていた同作のほか、描き下ろし番外編「はじまりの夜」、旧版収録の第0話、旧版発売時の各種特典、旧版カバー下、SNS掲載のマンガ等を盛り込んでいます。
頽廃的な雰囲気が漂う上巻から一転、下巻はいろいろな意味で幸せ色満載でした。こんなにハッピーでよいのかと思うくらいには新キャラ含めてキャラがみんな可愛いです。読んでいる間は違和感など全然ないのですが、下巻まとめに入った辺りで様々判明すると途端に全部が違って見えてきます。特に読み終わった後に下巻の始めに戻って再読すると、あんなに深刻に悩んでいた桐井の金策と「本家に頭を下げるなら死を選ぶ」という決め顔が、違う意味合いを帯びるために、思わず吹き出してしまいました。
また、小田島の親友くん、名前が明らかになりました。片岡から嬉しい言葉も出て、気持ちがあたたかくなりました。そしてカバー下の1本目がものすごく可愛いので、ネタバレでもあるしカバー下はぜひ最後に読んで欲しいです。この4コマが最高に幸せです。
元はプリンセスコミックスカチCOMIで出ていた作品を、キャラコミックスから新装版として発売したもの。新装版の上巻は、元の巻に未収録のイラストと、描き下ろしの番外編「光のむこう」及びカバー下が追加になっているようです。
逃亡中のヤクザ2人。一人は若頭の片岡、もう一人は片岡に付き従う下っ端の小田島。片岡由来の事故について、組長の息子である桐井が話をつけるので、それまでの間ほとぼりがさめるまで行方をくらますことになった、というお話。
逃亡中という言葉とは裏腹に、片岡の言動は気の抜けたようなお気楽なものですし、誰かに追われている風でもなくただ郊外をドライブしているように見えます。片岡とは対照的に、無表情でぴりっとしている小田島は実は裏で桐井から片岡を始末するように申しつけられていることが読者には分かるので、ドキドキしながら行く末を見守っていく形です。
私は序盤は普通に読んでいたのですが3話でぐぐっと持って行かれて陥落しました。3話は扉絵からもう既に刺さり、内容もとにかく素晴らしく、とても気に入っています。3話で落ちたら4話5話は御馳走でしかなく、特別な一冊になりました。
片岡の黒スーツがカッコ良すぎ。下巻も楽しみです。
前作から2年後の設定。2年の間に、紫苑は、イヌカシは、火藍達はどうしていたのか、世の中はどんな風に変わったのか、ということにページが割かれており、紫苑とネズミの再会は終盤のみで、ネズミがどうして紫苑に会おうと思ったのか、紫苑のしらないところで何が起きているのか、といったことは次巻以降。
1巻を読んだだけでは、ストーリーの山谷や特段の盛り上がりがあるわけでもないので些か消化不良です。
また、続編に当たるので、前作を読まずに本書単体ではなんのことか分からないのではと思います。
もとはティーンズ向けだからなのか本書はハードカバーなのに大変に字が大きく、挿絵もあります。イラストはアニメNo.6のキャラデザをされたtoi8さんが描いています。挿絵は終盤に集中していて、狙いが分かりやすく、でもせっかく二人が再会するのだから挿絵じゃなく展開で喜びたかったです。
全編書き下ろし。
初版本には、初版限定書き下ろしSSがつきますが、ダウンロード方式で、2026年5月末がダウンロード期限なので興味のある方は御注意ください。
面白かったです! 紆余曲折の末のハッピーエンド、テンポがよくて時々くすっと笑えてほっこりしたり、最高の展開でした。
宇迦野父や宇迦野兄のナイスアシストにも震えましたが、なんといっても、荒矢編集長と宇迦野さんとの対決が大変ドキドキして素晴らしかったのです。
思い返せば1巻からずっとそうでしたが、宇迦野さんがもうとにかくカッコイイ。なんなんすかこのカッコ良さは。表ではにっこり笑い、その裏でたくさん計算して駆け引きをし、胸には怒りの炎を燃やしたり、さちおにメロメロだったりするのがたまりません。ドアを閉めた後の、「荒矢ぶっつぶす」のコマが大好きです。
荒矢さんのキャラ立ちがとても良くて、アライグマαっていうのもよかったです。キツネとタヌキの対決かと思ったらしっぽがしましまでタヌキじゃない(笑)。幼馴染みのウサギΩにこじらせているのも気になります。昔のさちおに意地悪だったのはマイナスですが仕事出来キャラなのが良かったです。詰めが甘いですが。宇迦野さんを敵に回したらいかん(部下だけど)
さちおはにこにこ笑うようになって本当に可愛いです。相変わらず餌界のエリートとの謎の自負心は面白いし、テンションが上がったり下がったりするのも微笑ましい。中でも宇迦野さんのふわ耳をはむはむしている場面がお気に入りでございます。4巻も見所がいっぱいですね。カバー下の宇迦野父も可愛い。
完結巻と思いきや続くとのことで嬉しい限りです。荒矢さんがなんらか巻き返すのかなー。さちおの新連載のことも含めて楽しみです。
バイトからの帰り道、行き倒れに遭遇する。雪が降るような寒い夜、凍え死んだら大変だと心配した比呂は、見ず知らずの男をアパートに連れ帰って介抱する。というところから始まるお話。
比呂は思いやりがあり、拾った山鹿の世話をやきつつも、気弱な性格でコミュ障のため常にびくびくしています。山鹿の方もわけありで自暴自棄になっていたので、比呂の優しさを鬱陶しく思うのですが、あまりにも彼が不器用なので放っておけずいつしかほだされていきます。
山鹿は酸いも甘いもかみ分けるような大人の男に見えて、甘い部分も優しいところもあるのでとてもモテそうで、恋愛経験の少ない比呂がドキドキするのも分かります。気の弱い比呂を手なずけているようで、実際には山鹿が振り回されているのも好きなポイントです。「Love Scene」でぼんやりした比呂を手のひらの上で転がしているときにそうと気付きました。
二人とも過去に挫折を経験していて、苦しい思いを抱えて落ちた底からもう一度立ち上がる、再浮上に至る展開なのが良かったです。
新装版は、旧版の内容に加えて、書店特典を集めたらしい「Bonus Scenes」、Canna vol.104に掲載された「Extra Scene」、描き下ろしの「Next Scene」を収録しています。続編の連載も決定とあるので、この二人のお話が今後も読めるようです。