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萌×2作品

アドバンスドレビューアー

女性renachiさん

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“彼の口が僕の口と同座標に存在する”

短編の良さが最大限に発揮された作品だと思った。とある一瞬を迎えるために、モヤを一つ一つ晴らして進んでいくような、丁寧な描写に引き込まれる。
現在軸で見ればほんの短い間のことで、失恋相手に再会してくっつく話、と一言で終わってしまう内容。だがその瞬間を感動的にしてくれる構成で、そこに辿り着いたときには、到達感に似た感覚があった。

八年ぶりの再会を果たしたショーンとミッチ。現在と過去のさまざまな事情が明かされ、小さな駆け引きめいたものを楽しみつつ、お互いが同じ場所に向かっていく。親族が全面バックアップ体制なのが微笑ましい。

ラストはエロと連動した心理描写で、両方が一番盛り上がったところでスパっと終了。そして読後には邦題の「帰郷」からたくさんの意味を感じ取れる、この余韻も良い。
何度か出てきた「座標」という単語の使い方もとても好きだった。

精神的な痛さが辛すぎた

香港が舞台の初恋+再会モノ、マフィアと記者の組み合わせ。肉体的にも痛いが、それ以上に精神的な痛さが半端なかった。相手を想い合う二人が表面上は加害者と被害者になり、交互視点でお互いの辛すぎる心理描写が続く。
一番の山場だけがとても不思議なことになっていた。

慧は複雑な生い立ちで気胸を患っており、何度も日本から香港まで消えた初恋の人を探しに行く執着心を持つ。李煌は事情が複雑なうえに内面まで歪みまくりで難儀だなあという感じ。口調のせいかちょっと黒猫っぽいと思った(動物の)。

悪役である暁の煌への仕打ちは確かに酷いが、慧に誰よりも丁寧に状況を説明したりと、都合の良い立ち回りをしてくれる良き悪役。
後半はむしろ人の話を聞かなさすぎる煌へのもどかしさが大きい。仕方ないのも分かるが、疑心暗鬼でいっぱいの人間を見続けるのはしんどい。

ところどころで出てくる違和感や疑問は、思わぬ回収のされ方に驚かされることが多く、とても面白かった。
暁が真実を知った瞬間から煌への態度を変えたのは、血のつながりがなければ物理的につながないと不安で焦ったってことなのかな。愛の形が一瞬で変化したのも驚きだった。

山場はもう少し緊迫感が欲しかった。慧のセリフが三文芝居のようだし、あの場面で紙吹雪とは。しかも慧の見せ場だったはずなのに、事前に脇キャラに教えられた通りに行動しただけという。ただの操り人形状態で情けない。

メインカプが感情的な執着で進んでいくのに対し、もう一組のカプ(?)は策略を練り頭脳戦で進んでいて、後者の方が山場の印象を持って行ってしまった。自分で考えて行動する主人公が好きなので、慧には物足りなさを感じた。

ダークな雰囲気の中、エロシーンは回数多め。そのエロの中でBのLが始まったり動いたり、キャラの内面が掘り下げられたりするので、読み飛ばせない。気楽に読めるのはラストの甘々エロくらい。

香港描写が魅力的で読み応えがあった。ストーリーが勢いよく進み、飛ばし気味に書いたっぽいテンポが好き。
新作読めたらいいな。

ラストのspeechlessなシーンが良い

片眼を失った旋盤工トラヴィスと失語症の小説家ドリューのお話。

大きな事件は起こらず、二人の出会いから仲を深めていく様子が描かれる。お互いに引け目に感じていることを認め合ったり気にしなかったりしていて、二人が心から受け入れ合っていく感じがとても良かった。

ストーリーはやむを得ない事情で離れた二人が再会するところで終わる。別れた後も未練を残すトラヴィスだが、戻ると決意するきっかけが突然出てきたドリューの義理の母というのは少々残念。
できればその後のトラヴィスの心理描写をじっくり読みたかった。

ラストはトラヴィスから告白。これがドリュー式の方法で、すごく良かった。片目のトラヴィスがeyeと「I」をかけたのにはどんな意味があるんだろう。正式な手話じゃないはずで、よく分からないけど上手いと思った。

全体的に穏やかで読後感の良い短編。この作者さんの長編も翻訳されて欲しい。

前二作とは雰囲気が変わった三作目

シリーズ三作目。前二作とは構成が変わり、短編四つが収録されている。「」内のセリフを句点か読点で終わらせる独特の書き方も止めてしまったみたいで、文章の雰囲気も変わっていた。漢字をひらく割合は控えめになっていて読みやすかった。

最初はなんともヘンテコなお話。内容が微妙にとっ散らかっているような。嘘と屁理屈で押し通そうとする桜蔵のセリフに戸惑い、こんな性格だったかな?と思いつつ……ちょっと物言いもキツくなった気がする。

一編が長くなったぶん、この世とあの世の境目の分からない場面が長く続くことになり、徐々に何を読んでいるのか分からなくなってくる。没入すると、今自分は正気を保っているのか怪しい、という気分を味わえる不思議な読み心地。

驚いたのは、この作品が現代設定だったこと。1942年が70年以上もむかしとあり、こうもはっきり数字を書かれてしまうとは思わなかった。一作目から、なんとなく昭和時代をイメージしつつ、そこはぼやかしていくと思って読んでいた。

ストーリーは桜蔵の秘密に近付く方向を期待していたが、柾にはきっぱり話さないと宣言されてしまった。どうやら夢から覚めさせる気はないらしい。起きても起きても夢の中にいるような、足元がおぼつかない世界から抜け出せない。

最後は柾も視える側だったのか?どこまで?とさらに謎が深まって、やっぱり曖昧なまま終わってしまう。幻夢が描かれる作品とはいえ、作中あまりに解答の提示されない謎が多すぎて、ちょっと疲れてきたかも。

一作目の「左近の桜」第1章に萌えて惹かれて読み続けたが、随分遠くまできてしまったなあという感じ。羽ノ浦の存在も消えてしまったし、文章が変わり情緒を味わう楽しみも減ってしまったように思う。BL的な楽しみ方を見つける余裕もなくなってきた。

感想としては、夢文学は読み方が難しい、かな。

なぜ桜蔵なのか、とても気になっている

角川文庫版を読了、シリーズ二作目。心の準備をする間もなく最初から飛ばしていて、誤ってこちらを先に読むと戸惑いそうな始まり。すでにソレが当たり前になっている世界が描かれるので、一作目を読み終えた直後の心構えで臨んだ方が良さそう。

よくぞここまで!と感心するほど、たくさんの得体の知れない男に目を付けられる桜蔵。一作目から引き続き、桜蔵の身体で未練や欲を満たして消えていく何者かが描かれる。
中には特定の一人の身代わりに使われるような話もあり、そこは少々モヤモヤした。

???となったのは第7章。人でない何かが正体を現すおどろおどろしい場面で「髪のあるヤツが気にいらない」は笑うしかない。言いがかりにもほどがある。
さらには「髪乞い」とか「髪と毛を区別しない」とか、大真面目に何を言っているのか。最後のオチまで愉快な内容だった。

桜蔵がこんな目に遭う理由について、一作目では意味ありげな柾のセリフが書かれているくらいだった気がするが、今作では桜蔵も少しずつ考えるようになっている。自分のことなのにドライな語り口なのが好き。
なぜ桜蔵なのか、なぜある時から頻繁に起こるようになったのか、明確に設定されているなら今後が楽しみ。

それにしても毎回記憶を失くす桜蔵は大丈夫なのかな。ツッコミは野暮だけど、倒れまくってるとやっぱり心配になる。
あと不思議なのは千菊があまりにゆで玉子のことしか考えていないかのように描かれる点。ここは一作目から一貫していて、何かの伏線か?と勘ぐってしまった。でなければ、ゆで玉子ばかり食べ過ぎでは……。

重い内容からコミカルだったりシュールだったりグロかったりと、いろんなテイストを楽しめる短編集。独特の情緒ある世界観に浸れる文章も良かった。

本作は桜蔵の環境が大きく変わる直前で終わる。柾の過去に関する匂わせや、最後の提案(命令)をした柾の意図など、興味を惹かれる謎が残されている。
羽ノ浦も浜尾もすっかり出番が無くなっていたのは残念だったが、次作も楽しみ。

左近の桜 非BL 小説

長野まゆみ 

素晴らしき情緒、唯一無二の世界観

角川文庫版を読了。久しぶりに長野まゆみさんの作品を読んだら、文章が変わっていて驚いた。初期のインパクトが強すぎて。
醸し出す雰囲気には情緒があり、世界観にどっぷり浸かれる心地良さは健在で良かった。

ほんのりホラー風味な短編集。1章から12章までは同一の世界線で、1章ごとに何かが起こる。特に1章が魅力的で、一気に引き込まれた。
古風な風景の描写と謎の男と少々流されタイプな主人公。期待しない方が無理、と言いたくなる始まり方。

主人公の桜蔵は、毎回男にいろんな目に遭わされる。章を追うごとに、そのエピソードに遠慮がなくなっていく。後半はほぼヤられていたような……。
印象に残っているのは9章の終わり。相手は人ならざるものだけじゃないのか、という衝撃と、ふわっと表現した後に次章(柾のセリフ)で決定打を与えてくれるスッキリ感。内容はさておき、こういう匂わせが読みたかった!

次々起こる不思議なことは、理由が分かるもの分からないもの等さまざま。そもそも桜蔵がなぜ頻繁にソレらを引き寄せるようになったかも分からないまま終わるので、全体的にふわふわしている。独特の空気をそのまま感じ取るだけで良いのかな。

付き合っている彼女も幻夢(?)の世界に引っ張り込まれる展開があり、その境界線は超えないで欲しかったと思った。夢か現か、を彷徨う桜蔵にとって、真也は現の象徴のようなキャラであった方が読みやすかったな、と。

残念だったのは、最初に惹かれた羽ノ浦があまり活躍してくれなかったこと。後半はほぼ名前しか出てこない。読み始めから期待を煽られ、気になるキャラだっただけに、物足りなさを感じた。

ストーリーより、作者の作り上げた世界そのものを楽しむ作品という感じ。長野まゆみというジャンルを確立してしまいそうな、唯一無二の味わい。
さらっと書かれた会話の中に、羽ノ浦の背景につながりそうな興味深い点があったため、さらにここが深掘りされることを期待して次作も読みたいと思う。

ハスキーとセントバーナード

シリーズ5作目。群れの存続に関わる深刻な問題に立ち向かう話だが、鬱々とした雰囲気はなく、さくさく読めた。
今作のメインキャラは二人ともたぶん初登場で、ストーリーは独立している。とはいえ、前作までの登場キャラが何人も専門分野で活躍しており、軽くキャラの復習をしておいた方がスムーズに読めそう。あ、お騒がせリリーは今回お休み。

メインカプは内気なジウスと野生味あふれるティモ。アラスカの小さな群れの中で生まれ育ったティモとマッドクリーク出身のジウスでは、価値観が大きく違う。
そんな二人がお互いを知りお互いの街を知ることで、ティモは異なる考え方を受け入れていき、ジウスは自分の殻を破ろうとする。こうした変化や成長がとても良かった。

ただし恋愛となると子供っぽい組み合わせ。ティモは思い通りにならないと癇癪を起こし、ジウスは自己完結型ネガティブを発動させて逃げてしまう。個人的に持っていたハスキーとセントバーナードのイメージとは違ったかな。少々萌え不足かも。

結果的に押したり引いたりになり、上手くまとまったのはティモの激しい性格のおかげとみると、お似合いではあったのかも。今後もジウスはティモに振り回され続ける未来が容易に想像できるし、それも幸せなんだろうと思った。

このシリーズで毎回楽しみにしているのが、動物たちの躍動感あふれる描写。今作もそれは健在で、犬姿で伸び伸びと駆け回ったりじゃれ合ったりする様子が微笑ましかった。神々しい狼の群れや大自然の描写も好き。

群れの立て直しは始まったばかりのところで終わるけど、上手くいきそうな空気が流れており、読後感は良い。

引っかかったのは、シリーズ3作目で匂わせていた(?)トラブルに触れられる気配がないこと。またジェイソンのクイック研究の成果も気になる。今回は問題点が別のところにあるので語られないが、どちらも知るのは諦めた方が良い雰囲気。

今作単体でみればとても面白かった、シリーズを通してみると何かを読み飛ばしたかな?と思うところがあった。
月吠えシリーズ次作(#6)はアラスカが舞台のロミジュリ物語らしい。また翻訳版で読めますように。

「間山白雄の幸福」のかたちとは

面白かった!が、まだ不安要素が残っている状態で「堂々完結」はもったいない。ラスボス的胸糞キャラの地位は安泰なまま、実父と白雄の対面もなく終了。せめて続刊への希望があればなあと思う。

今作は捜し物屋の愉快な仲間たちのわちゃわちゃ感は薄め。見どころは白雄の生まれ育ちに関する全容が明かされることだろう。
本編4章の視点主は芽衣子・和樹・白雄・白雄(エピローグは光とミャー)。個人的に白雄視点多めで嬉しい。白雄の言葉はストレートすぎて奥を読みづらく、性格の歪みがはっきり伝わってくる。とてもクセになる味わいで、読んでいて楽しかった。

序盤からちょこちょこ嫌なキャラは出てきたが、白雄の実の父は全てを凌駕するほどの清々しいクズ男。白雄は彼の遺伝子を見事に受け継いでいる。
直接対決(?)は和樹と西根、できれば面と向かって白雄と西根で話す場面を見たかった。警察官や弁護士を揃えても、政治家にあっけなく圧倒される。リアルで良いが、そこに白雄のオカルト能力が加わるとどうなるかも読んでみたかった。

事件同士が意外なところでつながり、クズの周りはクズばかりという、クズで胸焼けしそうな展開。そんな中、クズの一人である白雄の祖母の霊のオチの付け方がとても良かった。

シリーズを通して気になっていたのは、白雄の執着について。家族としての想いは和樹が語るものに比べて軽いのに、白雄の和樹への想いの強さはすさまじい。
結末は間山義兄弟を中心に見るとゾクゾクする。和樹を自分に縛り付けた白雄視点の章タイトルが「間山白雄の幸福」、ここにきて唐突な萌え。
その後の和樹の白雄に対する認識は、QRコードから読めるSSで確認できる。白雄も大満足の縛られっぷり。一生二人で生きていきそうな雰囲気だと思った。

事件は綺麗にまとまり、エピローグでは華々しい結婚式が描かれる。読後感は良い。分類は非BLじゃないかな。
兄弟推しなら初版帯のQRコードから読める限定SSとコミコミ特典まで読むのがおすすめ。

たくさんのトンデモと残酷シリアスと

あらすじの一行目から設定が渋滞しており、内容も最初からぶっ飛んでいた。いきなり性技を磨く女友達が出てきたり、四百年前の学校帰りの回想に入ったり、BL妄想を話す腐女子が出てきたり。
どうやら細かいことは気にしない方が良いらしいと思いつつ読んだ。

メイン二人の出会いは飲み会で、明るい雰囲気で進む。一夜を過ごした後は、初対面の横柄な態度から一変した岩瀬の、子犬のような逆ギレ(?)っぷりが激しくて面白い。
ミハルはちょっと口煩い世話焼きタイプで歯の浮くセリフを言いまくる。学院生でルーマニア人で吸血鬼、四百年以上を生きているらしい。年齢のわりに迂闊なのは性格なんだろうか。生活費の出どころが謎。

クセのある設定とエピソードが大量に詰め込まれている中でも衝撃的だったのは、ミハルの両親の最期。あまりにも残酷。ここだけ空気が違いすぎるのもダメージが大きい。
ミハルは大切な人の死を目にしてトラウマになっているのに、岩瀬の前で消失しそうになった際、喜びのみを感じていたのは気になった。目の前で死なれた辛さは誰より知っているはずなのに。あのシーンは岩瀬の気持ちも慮って欲しかったかな。

二人がまとまるのは同情や傷の舐め合い的側面を持ち、お互いにそれを自覚しながら、ちゃんと恋愛感情に持っていこうとしていて良かった。
今後年を取らない問題や寿命問題にぶち当たるかもしれないけれど、岩瀬のキャラで軽く乗り越えていけそう。

最後には女友達の裏事情や記憶を飛ばした一夜の件も回収されてすっきり。やっぱり推したい作家さんだなあと思った。