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女性renachiさん

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ツッコミたくなる心理描写が最高

女装もの?同期の片思い相手のために女装するリーマンが主人公のお話。男のために着飾る受けと、自分のために着飾る受けを元カノたちと比べて喜ぶ攻めという、昔懐かしい価値観を見た気がした。後半の攻め視点がうるさくてとても好き。

前半は瀬戸視点。ちょっとしたハプニングから女装して加賀谷と遊ぶことになった瀬戸は、恋心にチクチク刺さる加賀谷の言動に小さく傷つく場面がいっぱい。でもその原因は最初に瀬戸が吐いた嘘にあり、瀬戸自身もそれを分かっていたのが良かった。

加賀谷は瀬戸の恋心なんて知らないし、瀬戸が女装好きだと思っている前提で見れば、喜ばせようといろいろ考えてくれる良い奴。瀬戸視点で恋心重視の描写のみだと、加賀谷に読み手のヘイトが向きそうなところを、瀬戸自身の客観視点でフォローしており読みやすい。

それを言って欲しかった、と思う一文が良いタイミングで入ってくることが続き、どんどんハマっていく。ストーリーに意外性はなくとも、ぐいぐい読まされる。
瀬戸が加賀谷の後ろ姿を見送るシーンの描写が好きすぎた。

後半は加賀谷視点。同じタイプの美人とばかり遊んできた男が、今までとは違う尽くす系に惚れ、結婚一直線パターンを見ているようで面白い。

加賀谷視点で見る瀬戸は、あざとく見える。性格を演技で作っていても加賀谷は自分に都合よく解釈しそう。男はこういうのが好きだ、コイツはこういう考えだ、と自分の察し力を信じすぎているところからもそう思う。

そんな加賀谷と一緒にいるせいなのか、男はやっぱり~なんて発言し始める瀬戸。見た目を加賀谷好みに整えようとしたくらいだし、中身も当然のように加賀谷に染まっていくのかな。
キャラが嫌いなタイプでもキャラ個人を嫌いになることはなく、それどころか楽しく読める。なんかすごい。

最後のレストランシーンはファンタジー。場を静めるほどの美女メイクできたの?
瀬戸は“ゆで卵にちょいちょいと筆で目鼻をつけたような、簡単な顔”とか書かれてたのに。加賀谷視点はこういう愉快な表現が良い。加賀谷うるせえな、とツッコミたくなる心理描写もいっぱいで好き。面白かった。

キャラクターの魅力がすごい

シリーズものだが、他を知らずに読んでも問題なかった。警察関係のお話にしては、デートしたり風邪イベントがあったりと、プライベート部分もBLも多め。事件はサクッと終わり、キャラクターの魅力で読ませてくれる作品だった。

メインカプは中垣と北山。チーム内での立ち位置は後輩の中垣の方が上にあり、北山のおおらかさのおかげで上手くいってるところもあるのかな、と思う。でも北山もそこはしっかり劣等感を示し、若干卑屈で自己評価の低さが見て取れる。陰のある美人な雰囲気と京のおっとりしゃべりの組み合わせが素敵。

中垣は太陽って感じ。見た目の描写と性格のイメージが一致しやすく、キャラが浮き上がってくるよう。人望が集まるのがよく分かる人物像で、リーダーとして理想のタイプ。恋優先でチームで二人も仕事休むのは微妙なとこだけど、若く責任がそこまでない今しかできないと思えば、それもまた可愛い気がしてくる。

状況的に、チーム内恋愛ってとこが一番の懸念点になりそうだが、すでに中垣は北山がピンチに陥っても冷静に対処できるところを見せている。ここはすごく良かった。恋人だからと取り乱すようでは、他のチームメンバーを危険にさらすかもしれない。中垣は良きリーダーになりそう。将来性抜群。

気になったのは、同じ補足を何度も何度も入れてくるところ。読者に過保護すぎると感じるところは他にもあり、顔の表情一つとっても内心まで説明され、別の解釈を挟む余地がない。記憶力も読解力も不要で読めるほどに懇切丁寧。

都度説明に加え受け取り方までガチガチに固定された描き方で、何も考えなくとも全ての情報を与えられるのは、時代に合っているのかもしれない。でも思考停止状態にされる読書に心地よさはなかった。

キャラはとても魅力的だし、ストーリーは読みやすい。緊迫感のあるお仕事シーンも面白く、日常描写とのギャップが良い。詳らかに書き込み過ぎて、設定に反し北山に神秘性を感じなかったのは残念。中垣の一視点で読んでみたかった気もする。

巻末短編は渋い雰囲気がとても良く、橋埜と犬伏にも興味が湧いた。シリーズの別作品も読んでみたいと思えた。

ただ主人公が可哀想なだけだった

外からの圧力と自分自身の中にある呪縛で生きづらそうな主人公が、環境的に生きるのが大変な男に異常な執着をされるお話。最初から最後まで、ただ主人公が可哀想なだけに感じた。

物語は子供時代から始まるため、一稀の人格がどのように形成されていったかが良く分かる。弟ばかりを甘やかし、一稀には常に譲歩を求める家庭。それを(読者として)ずっと見て来たからこそ、大人になってからの母親や弟の言動は許せない。

後半にかけて、一稀は次々と危機に直面する。そこでなるほどと思ったのは、これまでの展開で、一点集中的に一稀へのヘイトを集めようとする作為的なもの、いわば作者の意図を感じていたこと。受けザマァへの布石だったのか、と。

父親も猛も弟も、一稀に何かを指摘されると論点をすり替え、皆一様に一稀の差別的な点を批判してくる。例えば父親は、自宅不倫の話を男同士に問題はないとの話にもっていき、一稀の良くないところに注目点を移す。

会話の不自然さを押し通してまで、何度も一稀のゲイを受け入れられない性質を非難するせいで、こちらの感情を無理に誘導されている気がしてしまう。一稀を嫌な奴と感じるのでなく、嫌な奴と思わせたいように感じる。

もし一稀へのヘイトを溜めた状態で読むことができたら、後半の酷い目に遭い続ける展開にも耐えられたんだろうか。流れを微妙にズラして欠点を強調する描写に違和感があり、一稀には同情しか生まれなかった。

猛は前半はとても可愛かった。育ってきた環境から一稀に依存するのも納得で、捨てられて歪んでしまうのも理解できる。でも一稀を陥れる過程で、弟を助けたところで一気に冷めた。傀儡の甘ちゃんが人の上に立って調子に乗るサマが不快すぎ。

最後は妙な爽やかさを醸し出すハピエンを迎えたが、作品から離れた自分の気持ちは戻ってこなかった。弟はずっと良いトコ取り人生で、一稀はいつも尻ぬぐいで恋人と共に全てを失って。モヤモヤが残り続ける読後感。

あの二人のその後が見られる喜び

“手”と人の状態で出会った二人が恋人になったお話の続編。あの二人のその後が見られる嬉しさはあるものの、どうしてもあの“手”の可愛さを期待してしまう。幸せそうで安心すると同時に、もう見られない寂しさを感じてしまった。

前作でくっついた二人の現在の問題は、遠距離や歳の差といったよくある悩み。経験値や価値観の違いに戸惑ったり、すぐに会えない距離を嘆いたり。

リョウの方は“手”しかなかった自分を愛してくれた光への絶対的な信頼があるが、光の方はリョウのことを信じ切れるだけの根拠がない。そもそも出会った当初から、リョウが元彼への未練を断ち切れない様子を見ているわけで。

光に横恋慕する男やリョウの元彼も出てきて、遠恋中の二人はどうなる?という展開。
まあ結果はハピエンで、将来のことも一緒に考えていけそうな二人を見れて良かった。

ただやっぱりあの“手”が再び見られることはないのか……と残念。出会い編が衝撃的だっただけに、あまりに普通のカップルになっていて拍子抜け。
続編という期待をせずに読めば、とても温かくて良いお話だと思う。

“手”がこんなに可愛いとは!

とても不思議な面白さ。部屋に実体を持った(触れる)“手”が現れるという、一見ホラーな始まり。だがこの“手”がだんだん可愛く見えてくる、嬉しい誤算。オチは定番のアレだったが、安心して読み終えられる良きハピエンだった。

主人公の光は、引っ越してきた部屋の中に両手を見つける。怖がりながらも同居を続けるうちに、その健気さに惹かれていく。
手しか見えていない中で、感情を豊かに表現する“手”の動きが可愛い。さらにはお見送りからお出迎え、日々の家事から愛情弁当まで至れり尽くせりで、“リョウ”なんて名前まで付けてしまえば、光の中に情が生まれていくのも分かる。

元彼への未練で部屋に留まる霊だと思われていたリョウは、自分に関する記憶が曖昧。そんなリョウの不安を取り除くべく、必死に調べる光が良い。傍から見れば“手”といちゃつく光景は異常かもしれないが、二人のラブラブ生活はとても可愛く、癒やされた。

そして、ついに元彼を忘れたリョウは、光の前から姿を消してしまう。少ない手掛かりからリョウのお墓を探して回る光が切なくて、手しか見えなくても、ちゃんと恋していたんだなあと思えて良かった。

エンディングのその先に、また新しいドキドキが詰まっていそうだと、期待させてくれる終わり方。
“手”だけで表現する喜びの動きがとても好きだった。

最後にめちゃくちゃ泣かせてくる

これまでのあれこれがどんどんひっくり返され、実は捏造だったとか全ては仕組まれていたとか、怒涛の展開。聖器や神話等の文化的背景を知らないまま読み進めても、最後までとても面白かった。キャラクターの魅力に引き込まれる作品。

前巻最後に衝撃をもたらした趙雲瀾の前世の記憶が、実は捏造だったと明らかになる。が、真実が分かっても沈巍の辛い状況には変わりがなくて、こんなことをやらかしても、沈巍を応援したい気持ちは変わらない。

趙雲瀾が一緒に死んでくれるように、なんて願いで世界を思うままに動かし、趙雲瀾以外には冷酷。でも沈巍は趙雲瀾を守るためなら趙雲瀾をも騙すので、何度もケンカに。
冥府や現世を巻き込み壮大にやってるのに、趙雲瀾に怒られたらしゅんとして姿を消して、恋敵にまで怒られる沈巍が愛おしい。

そして、最後の最後でまたやらかす沈巍。趙雲瀾の記憶を消し、自分一人の命で大災厄に決着をつけようとする。幾千年前から人の愛し方は変わっていないんだな、と思わせる行動が切ない。

で、ここでやっと郭長城が活躍する。抜き出して見るとそれってアリなの?と思わなくもないが、最初からあれもこれも伏線が張られていたおかげで、するっと納得できた。欲を言えば、郭長城は新人という立場を活かし、読者の案内役を担って欲しかったな。

ラストは爽やかな大団円。沈巍の重い愛はきっと一生変わらず、ときに趙雲瀾を怒らせては謝り倒して仲良く過ごすんだろう。過酷すぎて沈巍に肩入れしてたけど、趙雲瀾も沈巍に本気になってからすごくイイ男になったと思う。

巻末には外伝が収録されており、特に最後の「山鬼」が良い。一万年の間、輪廻の輪に乗り人生を繰り返す趙雲瀾と会わないとの誓いを破った、たった一回の一生のお話。沈巍の恋が苦しすぎてめちゃくちゃ泣いた。

趙雲瀾の魂を持つ沈三のピンチを見過ごせず、つい助けてしまう沈巍。そうして恋に落ちた結果、沈三は精気を吸い取られ、悲しい最期を迎えてしまう。その後は何度も何度も別の人と幸せになる趙雲瀾を見守り続ける沈巍。

全ての始まりとなる崑崙君とのエピソードや、一万年もずっとただ見守るだけの沈巍の心情を思いながら本編を再読すると、二人の邂逅がより輝いて見える。沈巍の名前の由来を話すシーンなんて涙なしには読めなくなる。

まだしばらくはこの二人に浸っていたいと思うくらいハマった。Priestさんの他の作品も単行本化されたら絶対読みたい。

運命の過酷さに衝撃を受ける

序盤からBL方向に飛ばしてて最高だった。沈巍がまさかの時空を超えたストーカー。趙雲瀾は恋人妄想でマンション購入。でも現実は、振られて飲んだくれる趙雲瀾と、所員にも気持ちはバレバレで呼ばれたら即飛んでくるのに拒む沈巍。

そこからやっと、という感じの壮大な告白と、そこに至るまでの心理描写はとにかくすごい。
恋人になっていちゃいちゃしたがる趙雲瀾と、初心すぎる反応で逃げる沈巍を見ていると、あんなセリフを吐いたのにこんなに可愛い付き合い方!と何度も告白シーンを思い出す。沈巍の魅力にハマらざるをえない。

ストーリーはどんどん複雑になっていく。いろんな種族の本音と策略が絡み合い、前世の話も出てくるうえに、趙雲瀾が敵の上をいきながら引っ掻き回すので、とにかく沈巍が大変そう。心労で倒れてもおかしくないくらい。

それにしても、斬魂使としての沈巍の状況はあまりにも辛すぎでは。畏怖され忌み嫌われながら、都合よく利用したがる輩が寄ってくる。趙雲瀾だけが自身の存在意義になっていくこれまでの日々を思うと、切なくて苦しい。

パンツを盗みたいなんてあほな目的で沈巍を遠ざけ、死ぬほど心配させた趙雲瀾はちょっと怒られて欲しいが置いといて。このときに“崑崙君”の秘密を知った趙雲瀾の描写がとても良かった。静かに、逆に内面を書かないことで、深みがじわじわ広がる感じ。
両親へのカミングアウトは、趙雲瀾の覚悟なのかな。父の演説が印象深かった。

泣きながら前世の行いを悔いる趙雲瀾と沈巍の会話は、二人の運命の過酷さに衝撃を受ける。同時に、沈巍の想いの強さに圧倒される。自身は重荷を背負い身を捧げ、存在を忘れられても趙雲瀾が楽しく暮らしていればそれで良いなんて。

四つのうち三つの聖器が出てきたし、幾千年も続く二人の関係も見えてきて、いよいよ次は最終巻。展開が何も想像できない。とても楽しみ。

二人の関係性がとても気になる

面白かった!現代が舞台だけど特殊設定がてんこ盛り。そして何よりメイン二人が魅力的で、この二人の前世とこれからが気になって仕方ない。サブキャラも個性豊かで、特にしゃべる黒猫が可愛い。すぐにでも続きを読みたくなる1巻だった。

趙雲瀾は、ヒトでない何か(鬼や霊)が起こす事件に対応する公安部特別調査所の所長。高いコミュ力と自信を持ち、沈巍に迫って振られて凹んでポジ思考で持ち直し、特大の爆弾を落とされ大人しくなる忙しいキャラ。心理描写が愉快で好き。

十歳で黒猫に鎮魂令を渡され、悪と戦うことになった自分を、美少年戦士だと思ってたエピソードがめちゃくちゃ可愛い。
一巻最後で前世があるらしいことが分かったが、本人に記憶は無いらしく、だが沈巍は知っていそうな雰囲気があり、前世の二人の関係性がとても気になる。

沈巍は不思議な雰囲気の大学教授。趙雲瀾と直接接するときはツン全開なのに、見ていないところでは真っ赤になってデレまくり。
「私のいるところで、彼の身になにか起こるなんてことはまずありません」ってすごいセリフ。趙雲瀾を守る強い覚悟が見えるけど、その気持ちはきっと今世だけのものじゃない。そこが見えてくるだろうこの先が楽しみすぎる。

実は沈巍は斬魂使だった、ってとこで終わったが、趙雲瀾にとって恐れ多く失恋決定なのは分かっても、斬魂使自体の存在については正直よく分からない。
不吉の塊で神も悪魔もひれ伏すらしいが、邪気が具現化した無魂の者が一つの人格を持ってる?とか真面目に考えるとドツボにハマる。まあ適当で良いかな。

たまに知っている匂わせで言っているのか、文化的に定番だから例に出しているのか分からない点があり、中華ファンタジーに詳しければもっと楽しめたんだろうな、と思うところがあった。ちょっと悔しい。

あらすじに数万年の時空をさかのぼるとあるし、これから本格的に輪廻転生とかの話が出てくるのかな。沈巍が必死に隠してる想いが明かされる展開も期待したい。2巻楽しみ。

軸になる目的が分からない……

本の世界に入るのが趣味な古書店主と、ボディーガードを頼まれた宅配員。BL未満で、二人の進展は雇用者と被雇用者の関係から友人に昇格するまで。ストーリーは軸になる目的が分からない。映像化すると映えそうな異世界描写を楽しそうに書いてるなあと思った。

基本は宅配員の一本木視点のお話。一本木は気になることを放っておけないらしく、自分から面倒事でも何でも突っ込んでいく。お節介とかお人好しとか、そういう感じで、対凛太郎になると流されてる印象にもなる。

古書店主の凛太郎はフランクで人懐っこくビビリ。一本木をボディーガードとして雇い敬語は不要と言いながら、自身は敬語で語尾に「っす」を付ける謎。でも一番分からないのは、人を雇ってまで危険かもしれない本の中に入る理由。

本の世界に入れる「奇書」を集めるのは、祖父のものを取り戻したいと語られている。だがその本の中に入るのは趣味と言う。友人でもない宅配員にそれなりの報酬を出し、ついてきてもらってまで遊びたい凛太郎に魅力を感じない。

その本のエピソードをなぞれば元の世界に戻れるとか、ゲーム性があるのは面白いと思う。異世界の生き物や景色、小物の描写も生き生きしていて読み応えがある。ただストーリーが……。

例えば何かを探してるとか、いろんな本の中に入らないといけない理由があれば、そこにストーリーの軸になる何かがあれば、楽しく読めたんじゃないかと思う。二人の関係の変化が軸になっているわけではないし、ただ趣味を満喫する日常を見せられても。

身も蓋もないが、こういう形で異世界を楽しみたいだけならVRで良いのでは、と思ってしまった。泥に襲われる危険を冒す、その危険に赤の他人をお金で巻き込む、そこに確固たる目的がないというのはちょっと。この内容で商業化OKなレーベルは信用できない。

表紙とタイトルはとても好き。

設定はめちゃくちゃ好きなやつ

愛する人を失くした男が、その転生者に執着するという、設定がめちゃくちゃツボな作品。再びいなくなることを恐れてべったり監視状態だったり、お互いに相手を守るためなら命をも惜しまない姿勢が良い。
ただストーリーが同じところに留まり続ける感じで、盛り上がり切れなかった。

幼馴染みのライリーを守るために魔物と闘い、命を落としてしまったアレン。その後ライリーはアレンと名乗り、勇者として魔王を倒しながらも、自身は死んだように生きていた。

そんなライリーがアレンの転生者イリヤと出会い、アレンの生まれ変わりと認識し、執着するまでがあまりに早くてびっくり。イリヤの方も普通にアレンとして振る舞っており、再会に情緒がない。

ストーリーは、かつての魔物の襲撃や魔王討伐のシーンを、複数の視点で何度もなぞる感じで、なかなか新エピソードが進まない。勇者誕生の秘密や予言の過去話はとても面白かった。

一応の山場は、イリヤが誘拐されたところだと思うが、敵は雑魚ばかりで過去の敵を超えてこない。しかもライリーが助けにきたシーン、敵を惨殺中にイリヤがツッコミを入れて即転移ってアリなの?それですぐいちゃいちゃモードに切り替えられても、ついていけない。ここは悪い意味でびっくりした。

個々のエピソードの面白さや、キャラクターの魅力はあると思う。でも描かれているのは、半分のページ数で十分な内容しかない気がする。過去の大きな出来事を何度も擦り倒して無理矢理膨らまそうとしているようで、ちょっと苦しい。

ここはもう少し盛り上げて欲しかったな、というシーンがさらっと流れ、ここの描写何回繰り返すのかな、と飽きるシーンがあったりと、微妙に合わない。同一シーンを別視点から描く際は、新情報を付加して飽きさせない工夫が欲しいと思った。