黒帝は穢れた魔物に愛される

kokutei wa kegareta mamono ni aisareru

黒帝は穢れた魔物に愛される
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神42
  • 萌×224
  • 萌13
  • 中立1
  • しゅみじゃない0

--

レビュー数
7
得点
346
評価数
80
平均
4.3 / 5
神率
52.5%
著者
沙野風結子 

作家さんの新作発表
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イラスト
奈良千春 
媒体
小説
出版社
竹書房
レーベル
ラヴァーズ文庫
シリーズ
帝は獣王に降嫁する
発売日
価格
¥639(税抜)  
ISBN
9784801917477

あらすじ

「誰にも裸を見られてはなりませぬ」

海神の国の帝・キリイの肉体には秘め事がある。もしそれが暴かれれば、自分は殺され、この国は敵国ギメイルの侵略を許すことになるだろう。

だが、素性の怪しい薬師のスザクに不敬を働かれ、秘所を見られてしまった。

「刀を収めろ。まるで乱暴された姫君のようだぞ」

そう嗤うスザクに、キリイは憎悪と疑惑とともに妙な安らぎを覚えて――!? 快楽の闇の中で探り合うような関係。それはこの世界の運命をも動かし始める――。

表題作黒帝は穢れた魔物に愛される

スザク・薬師
キリィ・ワダツミ皇国帝

レビュー投稿数7

運命の歯車が廻って

ワダツミ皇国三部作の完結編です。
1作目、2作目で兄(シキ)と弟(ナギ)を謀で窮地に追い詰めたワダツミの現帝、キリィが主人公。
この人、前のお話では悪い人なんですけれど、どうも只の『悪い奴』と言って良いのか悩んでしまうほど謎が多い人でした。だから私はこの完結編をとても楽しみにしていたんです。

なーるほど、そういう事だったのね。
ここは重大なネタバレになっちゃうので書きませんが、前作でキリィが兄と弟に対して行なった仕打ちは自分の存在証明のためだったんだねぇ……
『悪い奴』にならなければいけなかった理由がよく解りました。
解ったからこそ、つらい。

止まらない頭痛と悪夢による不眠に苦しむキリィは、それを癒してくれる方法を探していました。
そこに現れたのは傍若無人な薬師のスザク。帝を帝とも思わないふるまいをするスザクですが、彼が処方した薬湯が良く効いた為、キリィは不本意ながらスザクを側に置くことに。しかし、薬の処方の為の診察で体を触られ、不本意のままに吐精させられただけではなく、今までひた隠しにしてきた『秘密』を知られてしまいます。スザクが露わにした髪の色から彼がワダツミの民ではないことも判明し、彼の思惑が解らないまま、キリィは自分の秘密を守る為に側に仕えることを許します。
その後、魔術を操る国ギメイルが、シキが嫁いだテルスに攻め込み、同盟国であるワダツミにも危機が迫ります。神子であるナギはシキを助けるため、海神の力を借りた秘策を行なおうとしますが、それはキリィにとっては自分の秘密を民の前に曝し、命を亡くすことでした。
自分と同じものをキリィの中に見つけたスザクはキリィに「国を捨てて逃げよう」と言います。兄弟に対する卑劣な手段を使ってでも手中に収めたワダツミ帝国の存亡を前にして、キリィが下す判断は?

自分は周りとは決定的に違うものであると気づく。
それでも、キリィにとって『生きること』は『ワダツミ皇国で生きること』なんですよ。
同じ境遇のスザクと一緒に逃げるという選択もあると思ったんですよ、私は。
でも、彼はそれを選びません。必死でそれに殉じようとします。
ここはとても美しいシーン。だから余計につらい。

お話の前半のキリィとスザクの腹の探り合いも、後半からの3国間の戦争もダークで重苦しい雰囲気。
『運命の歯車』っていう言葉を連想させます。
完結編らしくシキやナギを初めとするオールキャストなんですが、ナギとサガンが出てくる時だけ「ひょっとしたら上手く解決するかもしれない」と思えるんですよ。
どれだけ暗いんだ。ガイウス×シキとスザク×キリィは……

あと、ずっと気になっていた美しく残酷なユアハ(1作目に出て来た鳥の人)が、物語を大きく動かします。いや、ユアハの末路は凄いよ。どうやっても幸せにならないだろうと思ってたけど、上手い!

長くなっちゃったので申し訳ないのですが、沙野さんのご本ですもの。やはりエロについて書かねば。
『エロチャレンジャー』の面目躍如……ぶったまげちゃいましたよ。
今回のチャレンジは『いたしている最中の攻めのお尻を他の人が』っていう変則サンドウィッチ。
あのね、エロいだけじゃなくて3人の力関係を示す、物語上なくてはならないシーンになってるんです。
あ、初めてのエロに臨む俳優さんがよく言う「必然性があるので○○しました」って、こういうことか!

10

孤独な魂が幸せを手に入れるストーリー

『帝は獣王に降嫁する』→『神子は奴隷王に繋がれる』に続くワダツミ三部作の三巻目にして完結編。『帝は~』は長男・シキのお話、『神子は~』は末っ子ナギ、そして三巻目に当たる今作品は次男・キリイのお話。

一応、今作品でも読める造りにはなっているのですが(作中、前作のざっくりとした説明はあります)、このシリーズはぜひとも『帝は~』から読んでほしい!前2作で撒かれた伏線が、これでもかと生きています。

既に内容は書いてくださっていますが一応ざっくりと。





主人公はワダツミ国の帝であるキリイ。
彼は前2作で、兄であるシキとナギを蹴落とす形で帝へと収まったという経緯がある。

彼は決して人前で隙を見せない。
そして、帝であり続けることに固執している。
だから、実の兄弟であるシキとナギを蹴落とすことにためらいがない。

が、そんなキリイには最近悩みが。
不眠と、そこからくる悪夢、頭痛が引かないのだ。薬師を呼び調合してもらった薬が効くことはない。
そんな悩みを抱えるキリイのもとに、一人の薬師が現れる。スザクと名乗るその薬師は、自分ならキリイの悩みを晴らす薬が作れると言い放ち―。

というお話。

何しろ、キリイが外道です。

前2作でもまさにヒールともとれる立ち位置にいた彼ですが、そのイメージを覆すことのない出だし。一体ストーリーはどこへ向かうのかハラハラしつつ読み進めました。

が、そこから見えてくるキリイの孤独に泣いた。

彼が抱える身体的な特徴。
出生の秘密。

彼の抱える秘密が、彼を帝の立場に固執させ、そして孤独へと導いた。

そして一方のスザク。
彼もブラックさが際立っている。

いわゆる、BLにおける定番の攻め、ではない。
キリイを無理やり抱き、彼の意思に反して秘密を暴き出す。

が、彼もまた抱えるモノがあって。

なんていうんだろうな。
様々な伏線と、人間関係が複雑に絡み合って、ストーリーに奥行きがある、といった感じ。

そして、今作品で重要なキーパーソンとなるのが、前作からたびたび登場しているユアハ。

彼の動かし方が、これまた素晴らしい。
そう来たか!という。

ユアハの、「これから」を読んでみたい。
ガイウスを愛しすぎたゆえに、彼はゆがんでしまった。そんな彼が愛する人とどうか幸せになってほしいと願ってやみません。ユアハに寄り添い、彼を救おうとする「人物」が誰なのか、ぜひとも読んでほしいです。

でね。

キリイが抱える秘密を、スザクが快楽でもって暴き出す、といった展開である事からエロ度はやや高めな作品なのですが。

スザクがキリイにフェラさせてる時にお尻をいじられるシーンがあります。

これがさ、

クッソ萌えたよ…!

この時の状況はかなりシリアス寄りなので、萌えたらアカンかも、と思いつつ、激しく萌えました。

キリイが抱えることになった彼の秘密。
それは、彼の母親が追うべき咎であってキリイが抱えることではない。
ないけれど、それでも彼が負う事になってしまったことがとにかく切なかった。

そんなキリイが、同じく孤独と闇を抱えるスザクと出会い、そして愛を知り。

他の誰でもない、彼ら自身が、自分を赦せるようになったことに心底安心しました。

ガイウス×シキ、そしてサガン×ナギ、もかなりの頻度で登場し、まさに大団円な完結編でした。

そして特筆すべきは奈良さんの挿絵。
もう、勘弁して、っていうくらい、美しく、そして優しかった。

このシリーズは、どれも個人的に神作品なのですが、今巻が一番好きかも。

孤独な魂が、寄り添い、赦し合い、そして愛し合う。
文句なく、神評価です。

6

沙野さんのセンスに脱帽です

わだつみ3部作最終巻です。美しくまとまっています。ファンタジーだけど、設定が作りこまれていてわかりやすいので途中で脱落せず最後まで楽しめました。

皆様おっしゃるように、このエロお伽話のような素敵な世界感を盛り上げてくれるのが奈良さんの美しい挿し絵。物語を補足しつつエロシーンもちりばめ上質な大人の絵本のような仕上がりになっています。

主人公で帝のキリイは兄弟の命を危険にさらしても自国の民を守るため、帝の仕事を果たすためには冷徹だけど必死に頑張る人です。あの体の秘密にはやられた。両性具有とかかと思ったら違いました。筍とかトゲトゲとか沙野さんのセンスが最高です。ベテランなのにエロ設定を心から楽しんで作っていらっしゃるように見える所が大好きです。BLエロへの探究心が素晴らしいです。

ストーリー的にもクライマックスの盛り上げが切なくもロマンチックでした。あんなに冷徹だったキリイとその心を溶かしたスザクの愛はツンデレ同士だったけどうまくいって良かったです。

このシリーズは2もすごく面白かったけど、実は1だけまだ読んでないので早速注文しました。読むのが楽しみです。


5

納得の最終回

この作品のあらすじに惹かれて前作2つを読みました。そして満を持して読んだ今作…、やっぱり一番面白かったですね!
三部作の最終回ということで、キリイとスザクの話だけでなく、物語のまとめがされていて読み応えがありました。どうなっちゃうの?と思っていたユアハの結末も上手く纏まっていて良かったです。

スザク×キリイのストーリー的には、キリイが自分の中にスザクの魂を感じられるようになったシーンが印象的でした。
口を神聖視していないキリイにとって最初は全く意味を持っていなかった口づけが意味のある行為になっていく。読んでいてドキドキしました。

あと皆さん書かれてますが、攻めがお尻をいじられるシーン最高でしたね〜!
スザクがいじられるシーンも、キリイがいじられるシーンもすごく楽しめました。
キリイはスザク相手には受けだけど元攻めってところがポイント高いんだよなぁ。

1

ワダツミ三部作-3

色々あった1と2に続いて、完結編はドラマチックな急ぎ足の展開でした。
ワダツミ三部作-3は、兄弟夫々に背負わされた役割の謎解きのようなものだった

悪ぶって、悪の化身に化した次男のキリイは、「国の統治についての考え方の相異」が理由で、兄弟は統治を妨げる存在なので殺意を抱いた、と建前を述べていたけど、それは違う。「自分だけ異なる疎外感」と「海神に愛される兄弟が妬ましかった」だけ。

どうやら自分は、母の不義で生まれた存在で、父は他部族の男、という疑念を自分の体のつくりから幼い頃にナギと比較して気づく。
でもそれも、シキを護るためにキリイに背負わせた母の判断だったと、母が生前呟いた言葉を、大津波が押し寄せるギリギリでキリイが思い出したことで解決します「キリイは、シキのために必要な存在」
・・という事は、シキが生まれた頃に、3巻の国難がいつか訪れる事は予測されていた
=神託が有ったという事なんでしょうね。
奥義の秘術の場面の海が渦巻く様子は、まるで311の大津波のようです。

3巻を読んで1-2巻を思い返すと、
キリイは、自分の役割の説明を親から聞く機会が無く、異分子として捻じれて荒んだ損な役の人でした。
親が勝手に授けた使命の為に味わうキリイの辛苦を、国難を乗り越えた後で兄弟が正しく評価して報う最後で良かった。夫々が最良の伴侶を得て、全部が幸せになる形で落着でした。

登場人物の中で一番奇妙なキモイ仕様は、空の一族。
羽を切り落としても、保管が可能・腐敗せずまた装着出来る、赤い目の一族なんですね。

---
★海の宮のモデル、ホタテ貝は、実際に海底を泳いで移動するのが名の由来です。
参考記事→「ホタテは殻を帆のように立て、風を受けて移動します」/「ホタテは軟体動物であり、動く」

1

オールスターキャスト

ドキドキどうなることかと楽しみにしていた「3兄弟の次男坊のお話」でシリーズ完結編。そこまで歪むなよと思うが、キリイの覚悟、そして全てを融合させる3人の思いに涙ぐんだので神より萌2。震災のトラウマある方はちょっと覚悟が必要ではと思ったお話、本編200P弱(よくまあ、こんなページ数でと驚嘆)+あとがき。

頭痛に苦しむワダツミの帝キリイのもとに、新しい薬師がやってきて処方した薬。どうせ効かないだろうと思っていたら、なんと朝までぐっすり。診察と称してあちこち見られ触られ、体の秘密を知られたと思ったキリイは、効き目抜群の薬を自国の薬師に解析させた後、彼を毒殺しようとし・・・と続きます。

攻め受け以外の登場人物は
長男カプ、三男坊カプ、ハヤテ、ユアハとオールスターキャストです。皆頑張りましたが、一番の功労賞はハヤテにあげたい。

**神にできなかった理由

キリイがいびつに歪んでて。誰も彼を解放してあげられなかったのね・・と深く同情。同情はするし、神にしたいぐらい最後は感動したんですが、冒頭の歪みがどうしても苦手で神にできなかったです。

清い方々(シキは変わらず神々しくナギは変わらず清純ラブリー)に挟まれて、息をするのもつらかったのかもなと思うキリイですが、スザクを得て、シキ、ナギとも心がつながり、開放されたとわかる最後は本当にこちらも深呼吸する心地です。なかなかヘビーな最終巻でした。

最後に。奈良先生の挿絵はやはり凄いです。このお話の世界観にここまで合う先生は他にはいないと強く思います。最後の1枚がもう本当に美しくて美しくて、赦しを得た開放感満点。最高です。ファンタジー万歳。

2

三冊まとめて読むべき

長男シキのお話、三男ナギのお話、それぞれでヒールキャラだった次男キリイのお話。ずっと気になる人物だったので、何を考えてどういう目的で動いていたのかがわかってスッキリ。これは三冊とも全部読むべき。
ユアハやハヤテなど、落とし所の難しそうなキャラにも救いが感じられてよかったし、シキにもナギにもちゃんと役割があって、完結編としては申し分なかった。
ファンタジーものは普段あまり読まないのだけど、この世界観はロマンがあって好き。

甘い話が好きな私は、二つ目の末っ子ナギのお話が全体では一番好きだったな。今回の主役カップルは、ヒリヒリしていて、立場上なかなか甘い雰囲気にならなかったのがちょっと物足りなかった。
一番萌えたのは、キリイのナギに対する憎悪と嫉妬が明らかになるところ(兄弟スキーなもので…)、ユアハがスザクのア○ルを弄るところだった。ユアハとスザクの関係性が判明した後は、更に萌えちゃった。んー、たまらん。





1

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