はるか彼方の心臓

haruka kanata no shinzou

はるか彼方の心臓
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神8
  • 萌×211
  • 萌10
  • 中立1
  • しゅみじゃない0

--

レビュー数
7
得点
115
評価数
30
平均
3.9 / 5
神率
26.7%
著者
千地イチ 

作家さんの新作発表
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イラスト
奈良千春 
媒体
小説
出版社
竹書房
レーベル
ラヴァーズ文庫
発売日
価格
¥590(税抜)  
ISBN
9784801902428

あらすじ

横浜にある古着屋の店長・眞栄田英雄は、過去のトラウマで、快感に反応しない身体になってしまった。しかし、近くの交番にやってきた、クールビューティーな警察官・日比谷晴人と弾みでキスをしてしまったら…!?「本気にしないで下さい。ただのノリでしょ」。晴人は、自ら仕掛けてきたにもかかわらず、なぜか冷めていて、それ以来、英雄を避けるような態度になる。だが時折、晴人から感じる物欲しげな視線に、英雄は悩まされるようになり―。誰もいらないと言いながら、たったひとりを強く求め合う、純粋で厄介な恋が幕を開ける。

表題作はるか彼方の心臓

眞栄田英雄,27歳,古着屋店長
日比谷晴人,25歳,警察官

その他の収録作品

  • あとがき

レビュー投稿数7

大人になってしまった少年の再会もの

人物描写や感情の表現がリアルで、小説読んだなーっと満足させられる作品です。

晴人はあまり感情を表さないミステリアスな人物として登場しますが、とつぜん「なんでそんな目で
俺のことみるの?」と英雄から指摘されます。
はじめはそれがどんな目なのか晴人にも読者にもわかりませんが、後にそれがどんな目かが語られて、
ようやく“あぁそういう事か”と、英雄のとまどいの理由に気づかされます。
小説ならではの表現で、叙述トリックが好きなわたしにはツボでした。

晴人にとっては、少年時代に憧れを抱いていた先輩との再会。
英雄にとっては、封印した過去の自分を知る人物との出会い。
未熟だった自分への後悔や、大人になって変わってしまった事への寂しさ、苛立ちなど、お互いの
複雑な思いがちゃんと伝わってきて、奥行きを感じさせる物語になっています。

人物のイメージがしっかり浮かんでくるので、この作品に挿絵は邪魔だったように思います。
たとえば、英雄の言葉足らずなセリフや態度から、モテる男独特の間のようなものをリアルに感じます。
もしかしたらモデルとなる人物がいたのかもしれません。

晴人のセクシーなのに実はストイックなキャラクターもツボでした
ゲイの男性って優しい人が多いので間違えて好きになってしまうことがあるんです。
夏希と話してるときに晴人の優しさとか、あるあると思ってしまいました。

後半の通り魔が現れるくだりは、少し強引だったように思います。
少年時代と現在の英雄が重なる素敵なシーンなので、都合よすぎな感じが残念でした。
とはいっても、全体にクオリティが高く読み応えあり。
エロは飛ばし読みしてしまうたちなので語れませんが、色気のある大人な作品だと思いました。

0

大人になっても日々成長?

中学時代の思いが年月を経て育っていくお話でした。

中学時代、自分の中に唯一住み着いた
眞栄田への思いを抱えながら警察官となった晴人。
かたや、その頃の自分を消して毎日を生きてる眞栄田。

過去の思いを捨て前に進もうとする晴人に対して
過去を引きずる眞栄田の葛藤とかズルいんだけど
大人になっていくうちに逃げることで楽な方を選んでしまう。
でも眞栄田がその過去に向き合い先を見つめだすようになって
だんだんとストーリーに引き込まれていったかな。
キュンキュンとはまた違うんだけど、なんかハマりました。

次は作中に出てきた弓削さんとリンさんの大人なお話が読みたいです。

0

過去もひっくるめて今の自分がある

自由そうな古着屋の店長とクールな新人警官、
接点なんてまるで無さそうな序盤なのに
読み進めていくごとにどんどんのめりこんでいってしまいました。
警官の晴人が、英雄に対して素っ気ない態度をするくせに熱い目で見ていたり
キスしたのに「ノリでしょ」とか言っちゃうし
本音がわからない状態から明かされていく過去。
英雄視点での回顧シーンもあるので、ああなるほど…と
どうして今はこうなったのかを目の当たりにして切なくなりました。
“自分ではない何者かになりたい”ときっと誰もが一度は思ったことがあるでしょうけども
良くも悪くも自分は自分でしかない現実で
それは周りの人たちに支えられて存在する今なんですね。
英雄と晴人の心情も胸を打ちましたが
晴人の上司である弓削や、ダイニングバーのマスター(ママ?)リン、
古着屋で働く夏希とせりか、とても個性が強くて人間くさい人々が
物語に厚みを感じさせてくれました。
本当に弓削とリンは結ばれたらいいのに…リン×弓削希望ですが多分逆……。

不審者の犯人が意外でしたが、まさかと思う人がということもありますもんね。
間違った正義感ほど恐ろしいものはないかもしれません。

晴人が憎まれ口をたたいても内心はそうじゃないツンデレ具合や
英雄が軽口をたたいても決して忘れられない背負っていたツライ過去、
このバランスが非常に素晴らしかったです。
個人的に晴人×英雄だったら間違いなく神でしたが英雄×晴人も素敵でした。
晴人のギャップがたまりません。

0

大人になるということ

大人の青春ドラマに定評のある千地イチさんの新作は
初の年上攻め? 受けの方が背が高く男前なので
攻×攻っぽい男の色気が堪りません。


古着屋を営む英雄(攻め・『俺』)は
近所の交番に異動してきた警官・晴人(受け・『僕』)と知り合う。

英雄と晴人の一人称視点が
交互に出てくることで分かりますが
この二人は中学時代の先輩後輩。
晴人にとっては、苛めから助けてくれた英雄は
憧れの存在で片想い相手。
英雄は晴人のことを全く覚えておらず
悪気なく無神経なことを言って
晴人を怒らせてしまう…というすれ違いです。


本作品のテーマは「成長」だと思います。
大人になるって喜ばしいことばかりじゃないんだな~という話。
作中たびたび登場する「べつの生き物になりたい」という言葉が印象的です。

中学時代、小柄で大人しい少年だった晴人は
英雄への叶わぬ想いをバネに
男とも女とも経験を積み、
無愛想だが心身共に強い警察官に成長する。

逆に、学生時代非常に目立つ存在で
何にも囚われず自由に生きていた英雄は
バイク事故のトラウマと後遺症により
良くも悪くも温厚で凡庸な大人の男に成長。
勃起不全のため、女遊びもせず
小さな古着屋をひっそり営んでいる。

変わってしまった英雄に苛立ちを覚えつつも
昔の恋心をふっ切ることができず
近づくとドキドキしてしまう。
そんな晴人がとても愛しく思えます。
口では「強がるなよ、インポのくせに」とか
悪態をついて初対面のふりをしているのに
英雄への好意は隠しきれてないところが可愛いv

ラストの絡みでは、いつも冷静な晴人が余裕なく
がっついて英雄を求めていて、
英雄が、昔のような野性味と大人の余裕とを
見せているところがとても良かったです。


晴人が英雄により変わったように、
英雄もまた、再会後の晴人に檄を飛ばされたことで
肉体的にも精神的にも再び走り出すことができ
これからの毎日が少しだけ変わっていくのでしょう。

女生徒があまりに達観している点など
(自分らしく生きることと足を失うことは
全く別次元の話なんじゃないかな~と)
ちょっとエピソードが気障すぎる気はしましたが
穏やかでちょっとほろ苦い大人のラブストーリーを
堪能できる秀作かと思います。萌×2寄りです☆

7

遠い昔の残像に恋しつづけている男

あらすじにある『純粋で厄介な恋』
ああ、これは確かに厄介かもしれない。

遠い昔の残像に恋しつづけている男が、その残像を残した男との再会。
現在すっかり変わってしまった姿にショックをうけながらも
その中にある昔と変わらない面影に抗えない恋心に揺らいでしまう。

そんな批難めいているようで物欲しげな目を投げる男の不思議な引力に
昔を忘れたい男は心に燻る過去を引き出されていく。

受けのコンプレックスや、
攻めの忘れたくても忘れられない過去、
脇役の細かな人物描写や通り魔事件などが絡んで展開します。
視点は攻め受け交互でしたが、受けの方が多めに感じました。


受けは中学生時代、2学年上の攻めのことを
太陽のように眩しく明るく照らす存在に感じていました。
自分には無いものを全て持っている憧憬が恋心へとなり。
攻めが卒業し、自分の前から消えたときに
心の中にどうしようもない喪失感を覚えます。
大きく開いてしまった心の穴を違うモノで埋めながら淡々と生きています。

攻めの中学時代はまさに怖いモノ無しといった具合。
体格に恵まれサッカー部のエースで強豪校への推薦も決まり。
喧嘩が強く、教師を困らせながらも自由奔放にキラキラ輝いています。
けれど高校に進学し、膝の故障でサッカーから離れ、空虚な気持ちを抱えていたときに、
似たような空気を持っている女の子を好きでした。
2人でアテもなくバイクを走らせているときに事故にあってーーー。

それぞれの思春期の経験はその後の人生に影響を与えます。

受けの一方的な片想いであり交錯することじゃなかったけど、
大人になり偶然に出会ったったことが互いの人生に作用していく。
表面的には淡々としているいるけれど内側は熱情を感じるようなお話でした。


淡々としたテンポで進んでいるようで、
中学時代の残像に焦がれたままの受けの感情にドキドキが伝わります。
個人的に決定的な萌えポイントはあまりなかったのですが
ジワジワとしたドキドキがなんか良いヾ(*´∀`*)ノ
受けは感情をあまり表には出さないけど沸々とする恋心にキュンときました。

攻め視点もあるのですが、こちらは過去の語りのほうが印象的でした。
それだけ過去を引きずっているということでしょうか…。
けれど昔の間違いを繰り返さないよう、今は今なりに生きている。
決して前向きとは言えなくても根本は変わらないんだろうなぁとジンワリ。

偶然再会できて止まった時計が動き出す感じがとても良かったです。

3

脇役が魅力的だった

古着屋店長の英雄(攻め)と交番のお巡りさんの晴人(受け)

ヤンチャで自由奔放で、足がずば抜けて早くて、晴人の目にはまるで太陽のように映った15の頃の英雄。
晴人はそんな英雄にたった一度、助けてもらったあの日から彼に心の全てを奪われてしまったせいで晴人の心は空っぽのまま……。

10年経っても憧れてやまない存在・英雄に偶然再会するも、彼はすっかり落ち着いた平凡な大人になって小さな古着屋の店長におさまっていた。
しかも女達から強烈にモテてた彼が何故かEDになっていると知り、何から何まですっかり変わってしまったように晴人の目には映るのだけど、それでもいまだに心は英雄に惹きつけられたままで……。

英雄は15歳の頃を黒歴史と呼んで、かつての彼を誰も知らないようなところに移り住んでいます。
15歳の頃の英雄は、傍から見ると常に気ままに疾走していたように見えていた。
でも本当は、物心ついたことから母親が病に伏せていていつ死んでもおかしくない状況だったので、そういう恐怖を忘れるために走り続けるしかなかった。
そしてその勢いのままバイク事故を起こして、好きな女(将来有望な陸上選手)の片足を奪ってしまった……

それ以来、変わりたいと思い続けている英雄だけど、一方で罪の意識が消えないので自分に対して「変わってもいい」とは思えないというジレンマを抱えていたことがわかる箇所がハッとしました。

英雄も晴人も過去と現在がうまく繋がっていないというか、「べつの生き物になりたい」という気持ちを抱えながらも、心が過去に囚われているような二人が出会って、そして呪縛が解けて……といったストーリーでしたが、いまいち受けの強烈な空っぽ感が理解しがたいというか、そこまでご大層なものでもないものを大仰に捉えて一人で深刻ぶってる……みたいな印象を受けてしまいました。

それに対して攻めの過去はかなりのものだと思うんだけど、読んでて「へぇ〜そんな事があったんだ、そりゃ大変だ……」みたいな人ごと感で終わってしまいました。
そのせいでEDになるくらいなんだからかなりのトラウマなはずなんだけど、彼の苦しみや苦悩がさほど伝わってこないところが残念というか、淡々としているというか。

英雄のことを強烈に恋い焦がれてやまないくせに、受けの春人はそんな気持ちを悟られないようにかなりのツンな態度を取る男で(でもバレなかっただろうか……とか思ってる受け・萌え)この男が盛大にデレるところを見たいなぁと思いながら読んでたけど、かなりの手強いツンでした。
全身全霊で攻め命なくせに、ちょびっとしかデレないの。
でも、そんな受けの強がりも揶揄うことなくそこも含めて可愛いやつと思ってるような様子には心和みました。

それと脇役がとっても魅力的で、影の主役と言っても過言ではないと私は思う。

1

後味が良く読みやすい

鮮やかなひまわりと温度感の低い人物がとても印象的で、表紙買いしました。
過去のトラウマと再会もの。
中学時代に受に助けられたことがきっかけで恋をした攻と、そんな中学時代を忘れたくて自分を偽って生きるようになった攻が、大人になって再会する話でした。

BLというよりは受の過去が重すぎて、そんな過去に捕らわれている受の成長物語のような印象を持ちました。
攻と再会(といっても受は覚えていませんが)し、交流を重ねていくにつれて徐々に受の中に変化が生まれ、最終的に過去と決別して未来に一歩踏み出してゆく姿がとても力強く眩しく感じました。
脇役もとても魅力的で、弓削とリンさんの今後とかうっすら気になるな、とか。

中学時代のエピソードはあまりに重たくて、キーになってくる女の子と再会した時はほっとしました。過去の過ちを無かったことには出来ないけど、お互いそれを受け入れて丸く収まったので安心しました。受け攻め当人同士というよりは、この女の子が幸せになったことが一番嬉しかったかもしれません。

それぞれの登場人物がそれぞれ「別のいきものになりたい」というその先が、プラスに向かって進んでゆくようになったラストはとても後味が良かったです。

0

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