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エキスパートレビューアー2022

女性あんバターパンさん

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ノンケ同士の先生×DK

一穂ミチ先生ならではの心理描写かな、というお話です。タイトル通り、DKとその担任の先生のお話なんですが、特に2人ともゲイという訳では無いのです。ノンケの2人が何故、どうやって恋愛感情を抱くに至ったのか、というところがエロありきのストーリー展開ではない、一穂先生ならではのお話で引き込まれてしまいました。

過去に苦い経験をして贖罪のように生きている先生の意外な一面を見た志緒少年。志緒ちゃんの行動力に胸を打たれ、新しい人生を歩み始めようと思えた先生。

成績は優秀なのに中学、高校受験に失敗している志緒ちゃんの言動には筋が1本通っていて、悪くいうと頑固なのかもしれないけどそのブレなさ、思慮深さが先生には眩しく映っていて、それは本を読む私にも同じように眩しく、輝いて見えました。

大なり小なりあったとしても、何も失敗なく大人になる人はいないと思うので、大人であれば先生に共感できるところがあるんじゃないかな…。

そしてこのお話で好きなポイントのひとつは、志緒ちゃんが成人するまでは手を出さないというところです。もちろん学生のうちに最後までやっちゃうお話も好きなんですが(笑)、先生の大人としてのケジメをつけるところが、志緒ちゃんの生き方とも合っていて良かったです。

そしてこの本編を読んだら「林檎甘いか酸っぱいか青、赤、黄」を読むことをオススメします!本編で辛いことがあった分、甘々補完の短編集になってます。ちなみにりかちゃんとの仲をこじれさせようとしてくれた栫くんのお話は「meet,again」という1冊がありますのでよろしければそちらも読んでみてください。

ミステリーっぽい

豆腐屋の気まぐれで高知を居酒屋に案内することになった遠召。酔いつぶれた高知をそのまま家に居候させることになる。

2人の同居生活を通してわかるのは名前、年齢、人となりだけ。そして2人にはそれぞれに何やら不穏な過去がありそうだということ。

どちらかの過去だけが謎に包まれている…というのではなく、2人ともに過去が謎というところがミステリーみのある展開のお話でした。

ここからはネタバレになってしまいますが、高知は愛する姉を死に追いやった義兄を刺したことで警察に追われていて、遠召は生い立ちから家族の愛に恵まれず、異母兄に心身ともに支配される生活を送っており、身体的な支配を逃れた現在においても心理的には支配下にあるというとても不憫な2人でした。

2人がお互いの過去を打ち明け、相互救済していく…とざっくり言うとそんな一文に纏まってしまうのですが、生きていく業というか、逃れられない苦しみ、自分や他人への怒り…みたいな、自分一人ではとても抱えきれそうにない重い荷物を2人で分け合うというような甘いものでは無いのだけど、お互いに支え合ってやっと立っていられる、というような不安定さをずっと感じていました。

なので途中まで「もしやこれはメリバなのでは?」という疑いを払いきれないままラストに突入するという、凪良先生作品では初めての体験をしました。

そしてタイトルが相変わらず良いですね。「天涯生き」。天涯の意味を調べてしまいました。だからこそ、2人のその後が読みたいなと欲に駆られてしまいます。2人が何に追われることも、何に縛られることも無く、心から笑いあっている未来を読みたいです。

べしょべしょに泣きます

多感な時期に、ゲイであることをリアルな人間関係には誰にも打ち明けられられず、ネットで知り合った、共通の趣味を持つ年上男性と高校生のお話です。

ネットで知り合ったとは言え、年上男性はアルタイルというハンドルネームだけで年齢や職業は明かしてくれず、お互いにアルタイルとベガという星の名前をハンドルネームにただ話をするだけ、直接会いましょうという距離の詰め方をせずに3年間関係を続けます。出会いが目的ではない、プラトニックな関係のまま、自身の性的な悩みなど、何でも打ち明けられる存在ができた文人(ベガ)。これだけでも文人が大人の男性に惹かれてしまうの、無理もない話です。

でも文人が高校を卒業した後、文人がSOSを出したことがきっかけで2人は初めて出会います。そこでも本名も家も、職業さえも教えてくれないアルタイル。踏み込もうとしても引かれてしまう距離感に文人は歯がゆさを感じるものの、もう会うこともメールもやめようと別れる2人だが、アルタイルは文人の姉の婚約者として再び文人の前に現れてしまう…。

もうここだけでも相当しんどいです。しかもお姉ちゃんが弟思いのめちゃくちゃにいい人だからなおさらのこと。辛くて辛くてどう転んでも絶対誰かが悲しい思いをする鬼展開に久々に泣きそうになりました。そしてこのお話、アルタイルこと新開さんがバイってこともポイントなんですよね。これまでBL読んできて、バイの登場人物を深く掘り下げて考えることは無かったように思います。バイの方は男女どちらとも関係をもてる、だからこそ家庭を、子供を持つ夢を簡単に諦めることは出来なくて、周囲からの目にも割り切ることはよりできなくて…という苦悩を初めて知ったように思います。だから新開さんの苦悩も読めてしまう。誰も悪者じゃない。みんなが自分と向き合い、苦しみながら生きてる。

今回ネタバレは避けようと思うので、未読の方は文人と新開さんが出した結末を、ドラマティックな展開を出来ればネタバレ無しで読んでみてほしいです。そして、雨降りvegaのタイトルも、最後には悲しく響かないのではないかな、と…。

また世に出して欲しい

旧版は未読で、新装版も電子配信が終了すると聞きつけて慌てて購入を決めました。

7歳差の年下攻め、しかも出会ったのは陽光が11歳の時という、8年間にわたる育み愛です。受けのニーナは光線過敏症という生まれつきの病気で、夏だろうとタートルネック長袖長ズボンという出で立ちのため、クラスでも浮いている存在。しかも病気に対する知識の乏しい学校の先生の優しさ(?)から昼休みにクラスメイトと屋外でボール遊びをしたことをきっかけに皮膚がただれ、つだ妖怪と呼ばれ、イジメの対象に。こんなん絶対先生の責任でしょ!先生責任取りなよ!と思うのですがそんなことはさておき。

そんな不登校ひきこもりなニーナが深夜の散策で出会ったのが18歳の陽光。彼もまた、子役として活躍する一方で学校では浮いた存在で孤独を抱えていて…。

ニーナは冷たい印象だけど心の底では愛情に飢えていて、でも愛情を全く知らずに育ってきている訳ではなくて、病気のせいでぐにゃぐにゃと色んな感情が絡まりすぎて素直になれない感じなのかな、と思いました。そんなニーナに、遠距離をものともせずに会える時は頻繁にニーナに会いに行き、一途に愛を伝えていた陽光。陽光の向ける熱い愛情をサラリと受け流しているように見えるニーナも、実は陽光のことをとても大切に思っていることが伝わるんですよね。

凪良先生の書かれるお話って、「普通」さを持たない人間が「普通」を追い求めて苦しむ姿に共感したり、でも「普通」に固執しなくていいんだよって言われているようだったり、そもそも「普通」ってなんなの?という投げかけのようなものを感じながら読むんです。今回もそうで、病気のせいで「普通」の暮らしができないニーナ、劇団に所属して子役をしていたことで「普通」の子供ではなく、周囲から浮いて孤独を抱えていた陽光。でも決して同じ場所にとどまらない、少しずつでも変化しようとする2人にはとても勇気を貰えました。そんな2人の自分らしく居られる場所、自分らしく居られる相手をただただ求めているお話で、とても泣けてしまうんです。

電子配信が終了した後に凪良先生がXで何かしらの形でまた読めるように…みたいなことを仰っていたと思うのですが(違っていたらすみません)、ぜひまたどこかの出版社さんから新しく出版していただけたらとても嬉しいですし、迷わず紙で購入して手元に持っておきたいな、と思えるお話でした。

スピンオフ

前作「365+1」のスピンオフです。前作を読んでない方はぜひ読んでから、こちらを読むことをおすすめします。この作品の美山靫彦というトップモデルが他人から見たらどんな人なのか、よくわかると思うので。

前作で紺と綾野を引っ掻き回して、結果的に2人を元サヤに収めてくれた靫彦ですが、なかなかに寂しくて辛い生い立ちをしていました。そして本気で好きになった男性と、その後についても詳しく書かれています。本気の恋を手酷い振られ方をしたことで人を信用しないように生きている靫彦。

そんな靫彦のお相手は…と言うとちょっと意外な人物。こちらも前作から登場の紺や綾野と同郷の先輩、デザイナーの久保田でした。クリエイターにありがちなプライドの高さはありながらも決して傲慢ではなく、靫彦をまず1人のトップモデルとしてリスペクトしているところがとても良かったし、そこが靫彦にも響いたんじゃないかと…。

とにかく面倒臭い靫彦を深い愛情で包み込んでくれる久保田の愛し方がとても好みでした(個人の感想です)。また、靫彦のあしながおじさん的存在の当て馬さんも最終的には嫌な奴じゃなくなって全体的に丸く治まって最高のハピエンだったのではないかと思います。

また個人的な好みの話になりますが、口が悪くてツンツン女王様なんだけど実は寂しがりで甘えたな受けちゃんと、受けのお世話をしっかりしてくれる攻め様が大好物なので、大変よく刺さりました。

ハピエンですが

攻めざまぁからの元サヤです。

高校時代に出会い、同じ美容学校に通い、両片思いから両思いへ発展していった紺と綾野。共に就職のため状況しようとしていた矢先、母親が倒れたことで綾野は地元に残り、母の病院で共に働き、紺は東京で働くという遠距離になった2人。

流行の最先端でえる東京で働きながらも自分を見失い、くすぶり続ける紺と、地元に残ったことで紺に遅れを取っている、共に同じ夢を追っていたはずの紺に置いていかれると感じるようになる綾野。お互いに相手にいい所しか見せようとしないから言葉も足りず、どんどんすれ違う2人。紺は東京で満たされない自意識、プライドを無意識のうちに帰省した際に綾野にぶつけることで解消しようとし、綾野もモヤモヤが募っていて、ついに別れを切り出すことに…。でも紺はなぜ別れることになったのはを全く理解出来ずにいて…。

そこに出てくる口と性格が悪い美山靫彦(トップモデル)がいい役割を果たしてくれるんです。もうホントにここで綾野と一緒にモヤっていた読者はスッキリするんです✨

正直、無意識に変化のない(ように見える)綾野を安心材料にしている紺には嫌気がさすのですが、男同士ってこんなんかも…とか、こんな男いるよね…って思える妙なリアルさがあるのかな…と思っています。

結果的には元サヤに収まるんだけど、きちんとお互いを見つめ、理解し、足りないことはしっかり言葉で補えるような関係になってのでとてもいい終わり方だったのかなと思っています。

タイトルそのまま

冬雪は不幸体質で、両親に捨てられ、就職しても職場が倒産したり家をなくしたりとギリギリの毎日を送っていて。そんな中、信用している施設出身の先輩から紹介された単発のバイトで超人気俳優の燿仁と出会う。そこで出会った燿仁がただの人気俳優ではなくて、実は陰陽師の家系の人で、冬雪を不幸に導く黒い影が見えることから、冬気を根本的に救ってくれる、というタイトル通りのお話でした。

冬雪があまりにも不幸体質で生活するのにいっぱいいっぱいで芸能人に対して変にミーハーではなかったり、救ってもらいつつも自立心を失わないところが読んでて気持ちよかったです。燿仁の溺愛っぷりも甘くて好きでした。

ちょっと難しかった

本格的中華風ファンタジーBLなんですが、ちょっと設定が難しかったかな、と思ってしまいました。四神のお話が土台にあるので、まずそこを説明してあったらもっと読みやすかったかな…と思います。もちろん私の理解力の問題もあると思いますが!

とまぁ、設定は少し難しく感じましたが、話としては恐れられている隣国の獣人王に姉の命令でいきなり嫁ぐところから始まります。
受けの生まれ故郷ではΩは地位が低いのだけど、嫁いだ先ではそうではなくて…っていうΩに対する認識が違うのが良かったです(逆なら絶対いやでしたけど)。そして超ブラコンなお兄ちゃんが受けのために嫁ぎ先の国にまで押しかけるのも面白かったです(自国での職は心配になりましたが笑)。

こちら、商業デビュー作のようでこれだけ練った設定のお話を書かれる先生の次回作も、ぜひ読んでみたいと思います。

ますます惹き込まれる

前作「賢者とマドレーヌ」の続きです。
前作で無事思いが通じあったユーエンとルドゥラですが、真っ直ぐな2人はユーエンがルドゥラのアルダ(唯一)としてふさわしいと認められるよう、岩山へ…。
そこで3つの試練がユーエンに待ち受けるわけだけど、3つめで大きく展開を見せて。もしかするとこれが水問題への大きな布石になるんじゃないかという展開でとてもワクワクしました。そしてピンチのユーエンを救いに来たルドゥラのカッコいいことと言ったら!

片や、水問題の別の解決の為にと遠出をした明晰と秩序にも美味しい展開が待っていました。前作ではすごーく嫌な奴だった秩序。今作でその生い立ちが明かされるのですが、不憫好きにはたまらない過去が明かされます。

ユーエンが仕えるニウライとは何者なのか、神なのか悪魔なのか…ちょっと懐疑的にも読んでしまいます。そんなこんなでまだまだ続くわけですが、もう既に続きが読みたくてたまりません。

設定がいい

鳥モフBLってことで、鳥が主役のCPです。

凶禍と言われる黒鳳凰のヒナを殺すよう命じられた玻璃が命令に背いてこっそり育てるお話です。黒鳳凰だからか、玻璃を守るためか、烈と名付けたヒナは普通では考えられない速度で成長して、玻璃を番にしたいと迫るようになります。
子供の頃にお世話をしていた子が成長していつしかお世話する側が逆転するって好きなんですが、このお話はそこに鳥設定が効いていました。玻璃から烈へ口移しで給餌するが子育てから、烈から玻璃への求愛行動へ移行していくんです。
そんなこっそりとした生活がいつまでも続くわけがなく…ってところからがまた面白いわけですが。