幼馴染で親友同士の万里と静。
大学進学のタイミングでルームシェアを始めたふたりのお話でした。
帯にある『好きすぎて執着が止まらない』という言葉通り、冒頭からすでに万里の"鬼執着"っぷりは全開。
果てのない執着と独占欲の源には親友以上の気持ちがあるのは誰が見ても明らかなのに、肝心の静にはまったく伝わっていなくて。
物理的にとても近くにいても心の距離はなかなか近くならないことに、なんとも言えない歯がゆさを感じてしまいました。
ですが、わりと早い段階でふたりの関係が進展する出来事が起こり、そこからは静の気持ちもどんどん変化していって。
絶妙に噛み合わない想いとすれ違いの頻発にハラハラさせられたりもしますが、
彼らはきっと離れることはないな。というのがわかるので心配することなく見守れました。
めちゃくちゃ独占欲が強くて全方位に敵意剥き出しにしたり、ストーカーじみた一面があったりと
ヤバい奴要素たっぷりな万里だけれど。
それをあっさり受け止めてしまえるあたり、静の気持ちははじめから決まっていたのでしょうね。
後半は結構駆け足気味に進みましたが、ふたりが幸せだと思えるところに着地してくれて良かったです。
「ふったらどしゃぶり」シリーズで一穂先生の作品にハマり、過去作も読んでみたくなり購入。
シリーズものではなくまずは手軽に読めそうな作品を。と思って手に取りました。
最初は一般庶民とは住む世界が違うところで進んでいくお話を遠くで眺めているような気持ちだったのですが…
羊自身の考えていることや見えている景色がわかってくるとどんどん世界が近付いていく感じがして、その飾らない姿にグイグイ引き込まれていきました。
ふたりの気持ちの変化や駆け引きめいたやり取り、ハラハラしてしまうエピソードなど。
さくっと読める中にもたくさんのドラマがあって、恋愛部分以外のところでも見どころがたくさん。
そして。とにかく一色のギャップにやられまくりで、素が見えた瞬間から彼の虜。
完璧に仕事をこなすコンシェルジュ。からの
あの姿、あの振る舞いは反則級では…?
とても冷静かと思えば感情のままに動いていたりもして、羊への想いが彼を突き動かしているということもすごく素敵でした。
両想いになってからセックスするまでの展開がものすごく早くて、その辺はもう少し丁寧にいってほしかった気もしましたが…
気持ちの昂りと勢いが比例しているのがしっかり伝わったので、駆け足気味になったのも納得だったかな、と。
今作では可哀想な役割りだった和楽のお話もあるそうなので、彼の幸せも見届けたいなと思います。
超恋愛体質なのに「恋愛しないって決めてる」だなんて…
主人公に何があったのか気になって、
あらすじと帯にある言葉の真相を確かめるべく読み進めました。
磯村が頑なに恋愛を遠ざけようとしている理由はよくあるもののように見えて結構重たくて、
彼自身のメンタル面はもちろん、彼を探していた家族目線で考えても苦しい過去でした。
それを乗り越えるために自分で決めたルールを守って堅物を貫き通そうとしているのだけど…
卯月の存在によってその心はかき乱されてしまって、一生懸命抗っているうちにとんでもなく難しいヤツみたいな感じになり、どんどん空回りする彼の不器用さは心配になるレベル。
そうなっても仕方ないのはわかるけれどあまりにも同じところをループしているので、
抜け出すまでの展開はちょっぴり間延びしているような感じになっていた気がします。
無理に恋愛へと結びつける展開にしなくてもいいのでは?と思うほど、磯村の恋愛拒否な姿勢を見続けるのはツラいものがありました。
高城の激しい執着にヒヤヒヤはしたけれど、彼自身の感情はあまり見えてこないことに消化しきれないモヤモヤは残ってしまって。
せめてどうして囲い込んでいたのかだけは明かしてほしかった。
でもたくさんのことを乗り越えた先、幸せそうなふたりを見ることができたのは良かったな、と。
ドタバタしながらも仲良く過ごしていくのが想像できるラスト、微笑ましかったです。
とても分厚い、大ボリュームな1冊。
すごい読み応えです。
先生の作品はエロが濃厚なイメージなんですが
今作もそれを裏切らない感じでがっつりエロを楽しみつつ、楽しく恋の行方を見守るようなお話でした。
勢い任せなワンナイトから始まるふたりの関係。
真司は弟思いの良いお兄さんだけれどそれ以外のことには鈍そうというか…
しっかりしているように見えて肝心なところが抜けていそうな危うさを感じて、
この出会いによって彼が傷付くような展開になるのではないかとちょっぴり心配でした。
というのも、ものすごく大人でスマートな京の振る舞いが"できすぎてる"感じがしたから。
なんですが、そこから彼の正体があっさりと明かされて心配は不要だとわかったあとは
ふたりの絶妙なすれ違いごと楽しめるようなストーリーだったなように思います。
京が本当のことを言えるまではハラハラするような場面もあって、真司の出方によっては悪い方向へ進む可能性もあったけれど。
特に波乱や大きな戸惑いもなく受け入れ、拗れることなく幸せなところへ着地。
弟くんもわかってくれて、誰も傷付かない優しい結末で良かったです。
ただ。真司がブラコンすぎるのは良いとしても、
彼の目を通して見る弟くんがいつもキラキラしているのはしっくりこなかったかな、と。
キラキラ輝いて見えるほど可愛くて仕方がないってことなのでしょうけど…
そんなにキラキラさせなくても十分に愛は伝わってきていたのになーと思ってしまいました。
控えめながらも柔らかく微笑みかける賢太郎と
そんな賢太郎への愛おしさがただ漏れな足立。
そんな構図(に見える)の表紙がめちゃくちゃ可愛くて、読む前からほんわかした気持ちに。
この癒される感じがおんせん先生の作品らしいなーと思いつつ、"じれキュン"な恋の行方をしっかりと見守らせてもらいました。
自分の思っていることを人に伝えるのが苦手で
頭の中でアレコレ考えているうちに微妙な空気になり、そして人付き合い自体が苦手になるというループから抜け出せずにいる賢太郎。
自分を変えたいと思いつつもなかなかうまくいかずにいるときに足立と知り合って、彼の優しさに救われてやがて惹かれていくわけです。
ここだけ見れば淡く可愛い恋心という感じですが
『かくしごと』部分はかなり大胆で、
好きという気持ちが人を動かすパワーってすごいなぁ。と、妙に感心してしまったのでした。
がっつりセックスしているのに酔っているから記憶が無いと信じ切っている、ちょっぴり抜けているところすらも賢太郎の魅力として映ったので、
足立が好きになったのも納得でした。
ふたりの仲を裂かない程度の当て馬的キャラがいたり、拗れすぎないすれ違いがあったりと
山場はしっかりあるけれどもふわっとした優しさがあふれる展開に癒されます。
ふたりの幸せいっぱいな笑顔がすっごく素敵で、
こちらまで温かい気持ちにさせてもらいました…!
こそこそ内緒話の距離にドキドキしている倫也がめちゃくちゃ可愛い…!
ぱっと見ただけで甘酸っぱい恋の空気感が伝わってくるような、素敵な表紙に惹かれました。
家がお隣同士で、小さい頃から当たり前のようにいつも一緒に過ごしてきた啓太と倫也。
倫也一家の引っ越しが決まったタイミングで彼自身の想いが明かされ、そこから啓太が意識し始めるという感じでふたりのカタチが変わっていく中で。
それぞれに揺れる気持ちを抱えている様子にものすごくキュンとして、自分の想いをうまく伝えられないもどかしさすら眩しく映りました。
これまで恋愛というのをあまり意識したことがなかったからだと思いますが、告白された後の啓太はものすごくわたわたしているんですよね。
戸惑いと高揚感が入り交じる振る舞いは微笑ましくもありますが無自覚に倫也を振り回してしまっていたりもして、それによって倫也が感じる切なさに胸がギュッとする場面もありました。
でも離ればなれになる前に焦って答えを出すのではなく、少し距離ができたことで気持ちを整理することができて、啓太も倫也も自分に正直になれた結末に一安心。
拗れてしまいそうなハラハラと、恋に変わっていく甘酸っぱい雰囲気が絶妙にマッチしていて
いい意味でずーっとドキドキしっぱなしでした!
卒業後のほんわか幸せそうな日々まで見ることができて嬉しかった〜!
とても温かい気持ちになれるようなお話でした。
パキッとしたブルーの表紙と、ふたりのビジュアルの良さに惹かれ購入。
表紙だけではなく中身もめちゃくちゃ絵が綺麗で、ものすごく目が幸せでした…!
そんなキラキライケメンたちなんですが
戸橋も市川も格好良いのにちょっぴり残念なところがあるというか、それぞれに不完全な面があって。
そのギャップが絶妙にコミカルで、ドキドキするけど面白い。というのがクセになるような展開でした。
自分の気持ちに気付くまでは天然全開な感じですが、『好き』を自覚したら一直線な戸橋。
真っ直ぐすぎるくらいに想いをぶつけられて徐々にペースを乱されてしまう市川だけれど、
それに流されたわけでも絆されたわけでもなく
自然と惹かれていく感じにキュン。
セフレ始まりなのでこれまでもエロいことはしていたのに、両想いになってからの恥じらいもすごく可愛かったです。
そして、市川の苦い思い出になっている初恋の相手・矢那岸さんのちょっぴり切ないエピソードもすごく良かった…!
彼にもぜひ幸せをあげてほしいなと思いました。
絵本作家の七星と駄菓子屋店主の千宙。
店先での出会いから始まる淡い恋を描いたお話かと思いきや、バース性によって巻き起こるヒリヒリした展開もあって。
ページ的にはわりとコンパクトなんですが、
ぎゅぎゅっとドラマが詰まっていてとても読み応えがありました。
暗い顔をしていた七星に千宙が声をかけたことで知り合いになり、週に何度か顔を合わせる程度の交流が始まったふたり。
すぐに千宙に惹かれた七星の想いは早い段階で明かされていて、バース性に左右されない甘酸っぱい空気感にほっこりしていたのだけど…
千宙にヒートがきて、同じ気持ちにならないまま身体の関係を持ったのを境に空気はガラリと変わっていきます。
千宙の悲しい記憶だけではなくいつもほんわか優しい七星にもものすごくツラい過去があるのがわかってくると、ストーリーは一気にシリアスになり胸が締め付けられました。
それぞれが経験した痛みのそばにはやっぱり
"αだから""Ωだから"というバース性とは切り離せない理由があって、逃れられないモノと戦わなければいけないやるせなさは感じましたが。
お互いの存在が乗り越えるための支えになり、
光が見えてくる結末に一安心。
次々と切ないエピソードが出てきた時はどうなることかとハラハラしてしまいましたが、
拗れることなく問題が解決してくれて本当に良かったなと思いました。
一緒にいることで幸せを感じているふたりの姿にこちらまで幸せな気持ちになれるようなラスト、すごく素敵でした。
ホラー作家と編集者さんとのお話。
帯に『オカルトラブ』とあったり表紙にも彼岸花が描かれていたりと、ホラー色強めなのかな?と思いきや。
ホラー要素もあるけれどそれが"怖さ"だけに繋がるモノではなくて、人との関わり合いの中で感じる温かさに通じているのがすごく良かったです。
変わり者というか我が道を行くタイプな鳴海に
最初は振り回されてしまう鈴木ですが。
そのやり取りを見ていてもかなり相性は良さそうだったし、さらに少しずつ気持ちが変化していく様子も見えていたので、彼らの間にある感情が恋に変わるまでをドキドキしながら見守れたかなと思います。
良くも悪くもいつも飄々としている鳴海だけども、心の内側では誰にも打ち明けられない寂しさを抱えていて。
そこに気付いた鈴木が自分の中に芽生えていた気持ちも自覚するという展開にグッときました…!
すぐに両想いとはならないけれども、すれ違った時間もふたりが分かり合うためには必要だったのかもしれません。
表面上だけではないところで惹かれたのが伝わる結末、すごく素敵だったなと思いました。
「ふったらどしゃぶり」「ナイトガーデン」の
その後。
たくさんの短編集が楽しめる"完全版"の下巻。
一顕と整の幸せにあふれた日常、さらに上巻にはなかった和章と柊のお話も収録されていて
彼らのことが気になっていた私にとってはたまらないエピソードばかりでした。
山を出て生活は大きく変わり、これまでと時間の流れがまるで違う日々を過ごすふたりですが。
その中には変わらないあたたかな愛が充ちていて、どこを切り取っても胸がいっぱいになるくらいの幸せを感じました。
柊を大切に想う気持ちが自分の中に存在していることが、和章にとって前に進む力になっているのでしょうね。
本編では見えなかった心の内側に触れ脆く柔らかい部分までも知ることができて、また和章の印象が良い方向へと変わったなと思いました。
一顕と整の日々にはたくさんのドラマがあって、そのどれもが何気ない日常から生まれているのがすごく良かったです。
日々増していく好きという気持ち、ふとした時に陰る心。
行き場のない嫉妬や不安、肌を合わせて感じる幸せなどなど…
付き合っていて出てくるごちゃ混ぜな感情がすごくリアルで、このふたりは本気で向き合って恋愛しているんだなとしっかり伝わりました。
そして。和章も整もお互いに大切な存在として心に留めていることにものすごくグッときました。
過去はなかったことにはならないし美化することもできないけれど、今ある幸せに繋げていくことはできるんだな、と。
ふたりの前向きな姿勢から学ばせてもらえた気がしました。
4人のことをより深く知ることができる濃密なお話ばかりで、ものすごく満たされました。
それぞれの日々がこれからもどうか、幸せでありますように…!