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女性ごまくろさん

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目が…目がぁあ〜っ!

大きなネタバレはないように、書いていきたいと思います。

新井先生の絵がとてつもなく好きです。
先生の持つフェティシズムに共感しまくり、それを表現する力が圧倒的で涙が出るほどです。
今作も特に少年に対する愛が、絵に対する思いがひしひしと伝わってきました。
印象的だなと感じたのはお話の初めの頃、小木曾君がパラパラと服を脱いでいく場面。
骨格、肉付きの美しさに見惚れました。また、その脱ぎっぷりの良さが、小木曾君の本来優しい性格とは裏腹に大胆で、グッときました。こちらは電子の試し読みでも見られますので、ぜひ覗いてみてください。
また、デッサンの最中に小木曾君も與君も、お互いを意識しまくっていて萌えました。小木曾君が與くんの視線から逃れられない感じが、たまりませんでした。個人的に、学生服はブレザーより学ラン派なのもあり、目がずっと幸せでした。漫画自体も描き込みが多く、丁寧で素敵です。

お話についてですが、男同士に対する葛藤などは特に見られず、そういう意味ではライトなBLと捉えています。あくまで惹かれ合う2人、恋愛面がメインに据えられていて、思い切りドキドキ、きゅんきゅんすることが出来ました。
また、色っぽい描写も何度かあって楽しかったです。どの場面を見ても、胸がきゅっと締め付けられます。少女時代に戻ったみたいに、赤面しながら読みました。

息をとめて、動かないで、と、言われているのは私たち読み手側かもしれません。2人の世界をそっと見守るように読めて、読後感は甘酸っぱい心地でした。

表紙を見て気になった方は、必ず萌えまくれると思います!キャラクター達が、本当に純粋で優しい人ばかりなので安心して読めました。
初々しい恋愛を楽しみたい方は、読んでみてはいかがでしょうか。

恋をして、仕事をして、生きていく。

面白かった〜‼︎

大きな声で一言、初めに書きたかったのです笑
『is in you』シリーズ3作目、今作のカップルはかなりの年の差ということで、読む前は若干尻込みをしておりました。
44歳は、一般的におじさんと言うのでしょうか?私見ですが、30代後半からは印象によりけり、その人となりによると思っています。結論からして、西口さんは私にとっておじさんではありませんでした。壮年期真っ只中の、魅力的な大人に見えました。

今回も舞台設定が本当に見事でした。遠い記憶ですが小学生の頃、国会議事堂見学に行ったのを思い出しました。行った人はわかる、あの独特の雰囲気、周囲から逸脱した世界観が大変面白いので、まだの方は見学ツアーがオススメです。
また碧の速記者という職業ですが、知ってはいたものの深く考えたことがなかったので、すごく興味深い内容でした。碧は、速記者は透明人間、影側の仕事という風に捉えているのですが、本当に一種の特殊能力のような職業でした。一穂先生にはぜひ、一般誌でノンフィクション系のお仕事小説も書いて欲しいです。


私事ですが、ここのところ心から揺さぶられる!という作品がご無沙汰でしたので、興奮しております。今作の特に惹かれた部分は、登場人物を多面的に描いているところと、碧の初恋の、片想いのみずみずしさが文を通してありありと伝わってきたところです。

多面的、というと特に西口さんの性格付けが好ましく思いました。
グイグイ来るけど基本的に優しくて、優しいかと思えば、優しさ故に冷酷で。彼の、悩ましいが切り捨てたくない過去が、心の強弱のバランスが、最高でした。

そして、碧が西口さんに恋をしていく様子。美しささえ感じるほどにみずみずしくて、涙が出そうになりました。碧は四角四面とは違うけれど、すごくそれに近い真面目で、生きる喜びもまだ知らないような、無垢な印象を受けました。自分で丁寧に生活をする姿、布巾を縫ったり、お料理をしたりする彼には、私が持っていない物を持っている人だ、とめちゃくちゃ癒されました。家事の合間に布巾を縫う26歳、最高に可愛いです。

碧が西口に対して、すみれという女性の存在を通して、好意から来る怒りの感情が発露する場面は特に圧巻でした。
普段冷静な彼が、冷静でいられなくなり、そんな自分を、ああ、恋をしているからだとやはり冷静に見ている。その辺りの表現が秀逸でゾクゾクしました。

碧のモノローグに

『あなたと出会ってから、僕はすこし変わったような気がする。透明だったはずの僕を見ていてくれたと知った時から』

という一文が、ぽつりと出てきます。この言い回し自体は、特段珍しいものでは無いと思います。ですが、そのタイミングと一連の流れが本当に良くて、一気に心を持って行かれてしまいました。
最後まで勢いを落とさず読ませてくれる作品です。
今のところシリーズ内ではこちらの続編が1番読みたいです。

とっても面白かったです!

胸のキュンが止まりません。

究極の癒し系BLでした。

正直、一穂先生の作品群の中ではやおい度が高めというか、ストーリーよりもキャラ萌え重視な雰囲気でしたが、胸がキュンとして止まりませんでした。
たまにはこういった、考えるより萌える作品というのも良いな〜と。

特に一色さんのキャラ設定には、お見事としか言いようがありません。相変わらずお仕事のチョイスが素敵。カード会社のコンシェルジュサービスなんて、由緒ある庶民()出身の私からすれば、本当に存在するのかも分かりかねる存在。しかし、先生の小ネタの説得力と、一色さんの慇懃な振る舞いも相まって、読ませる力がありました。このリアリティ、興味をそそられる話題の提起が本当にすごいです。

序盤の、羊が一色さんに興味を持ったお手洗いの場面では、一色さんはため息をついて手を洗っていただけ。しかし年上の男性の、なんとなくセクシーな、見てはいけない部分を見てしまったような、若干の背徳感さえ感じるときめきを共に味わい熱量が一気に上がりました。日頃の何気ない一場面が、人生の分岐点になってしまうことってありますよね。

しかしまあ、年齢的には一回りちょっと離れている2人ですし、お仕事モードの一色さんの言動から、慎みというか、あれやそれは我慢する方向性かと思いきや、手ェ出すのはや。はやっ。(もう一度言う)
お話の分割地点が表題(付き合うまで)と番外(付き合ってから)で半々くらいなので致し方ないかとも思ったのですが、そこだけは解せませんでした。

序盤の期待値から比べて、読んでみたら全体的にざっくりとしたお話でしたが、それを超越してめちゃくちゃ萌えました。
もう一点、挿絵担当の山田2丁目先生のイラストが素晴らしかったです。普段挿絵はおまけ程度に捉えていることが多いのですが、キャラのハマり具合が半端じゃなかったです。特にお気に入りのシーンは、ラストの挿絵。羊の表情に私の萌えタンクが爆発しました。

一穂先生の文芸的な作品群からは、あまり想像がつかない展開でしたが、純粋に楽しかったので神評価に致します。
いや〜コンシェルジュ最高です!

ネームまではらだ先生!

ワンルームエンジェル読後、こちらの小冊子を読みました。
発売日の関係で入手はこちらが先でしたが、もう楽しみで楽しみで、大切に温めていました。

私事になってしまいますが、実は、本編の評価は中立にしてしまったんです。お話のファーストインプレッションが、全くの予想外だったものですから。何日か迷いながら、困惑していますという旨のレビューも書きました。

しかし、ワンルームエンジェルのつくりはまさに天下一品です。構成やキャラクターの表情が、本当にイキイキとしていて素敵です。その秘密がこちらの小冊子に隠されていたような気がします。
まずネームとは思えないほど絵が、特にお顔が綺麗に描かれていて驚きました。もう本当に漫画のまんまで、ネームなのに眼福というのがすごいです。

冊子は、幸紀がバイトの面接で落とされまくるシーンから始まります。魅力的な脇役達の、わかりやす〜い表情も漫画のまま、面白いです。

本編の構成上、読み終わってからまた読み返して、更に読み返したという方が多いと思います。この小冊子はその答え合わせというか、補足として読んで欲しいなと個人的に思います。
漫画に夢中になっていて気が付かなかったヒントや情報が、より直接に、シンプルに見えてくるのが良かったです。
おそらくこの小冊子が1番に見て欲しかった場面は、天使が人間の悪意に晒されている1枚だろうと思います。
言葉という言葉で埋め尽くされた。本編でも印象的な場面ですが、ネームではフォントで綴られた悪意の後ろに、はらだ先生の肉筆で『ごちゃごちゃ』とびっしり書かれていました。その雑然とした嫌な感じが、よく伝わってきてうわっとなりました。
このネームを見たあと、必ずもう一度本編を読み返したくなります。

また個人的に、窓の外に『夜』と書いてあったり、キャラクターの足元に『カゲ』と書いてあったりしたのが可愛らしくて和みました。様々な意味で魅せる、作品の裏側でした。

ワンルームエンジェルを読んで、より理解を深めたいという方にオススメします。sns等でネタバレせず、ぜひご自分で気付いて読み返して欲しいです!

眼福では、ある…!

色々と衝撃が過ぎました笑

設定・展開・キャラの性格全てにおいてぶっ飛んでいます。

ちしゃの実先生の『片恋家族』でファンになり、まほろば、新婚と読みましたが、個人的に片恋家族を読んだ時の興奮を超えて来ず、今作の兄弟設定に、おや?と期待して購入しました。


読後ですが、思ってたのと違ったー!笑

しかしなんでしょう、今作、気に入っております。表題はまじでやまなしおちなしいみなし風情。
購入前、電子の試し読みをした際にも感じたのですが、登場人物がとても多いです。
主人公の兄に対して弟4名の計5名で、画面がとっても華やかです。弟全員の好意が主人公に向いているので、ハーレム状態と言えます。
メインは義理の弟×主人公です。

キャラクターの印象は、いつもの先生の受けと攻め。絵柄もいつもの先生で、とろけそうな描き方が印象的でした。

内容の感想ですが、エロネタがなかなか際どい笑
ギャグなのかガチなのか、兄弟間でのSMや乱交、ドラッグを思わせる描写に、え?え?という感じでドギマギしました。目は楽しいんですが、テンションに着いて行くのが大変でした。頭を空にして読むのが良いです。
これだけ人物が多いので、メインである義理の弟君の影が薄めです。
正直…正直…前世の弟、ニコラスのインパクトがデカすぎました。彼の話をもう少し読みたかったです。いや、イイ趣味してますよね!
もう1つ、実の弟君が主人公についてどのような感情を抱いているのか気になってしまいます。ガチ兄弟?それとも実は、他の弟のなかに…?
本筋とは関係ないところで妄想が止まりません。
また読み終えて改めて感じる、『弟はたくさんだ!』という題の妙なること。私もお腹いっぱいです。

お話としてはギリギリ成立している感じですが、とにかく話の勢いが読む手を止めさせません。スピンオフが出たりなんかしたら、買ってしまうかも…

設定の割に軽い…?

タイトルがすごいなと思いました。
すごいなと思い、そのまま手に取ってしまいました。


率直な感想は、軽い。です。
絵のタッチがサラサラしていて、人物も基本的に華奢なのが大きいかもしれませんが、な〜んかなんとな〜くお話が浅い。
お話は謎の多いコンビニ店員・花織ちゃんを主軸に展開していきます。物語のキーパーソンが何人かいるのですが、主人公格3名の関係性は他ではあまりないと思うので、歪んだ三角関係がお好きな方にオススメです。
浅い、というのは特に受けの花織ちゃんなのですが、生い立ちを含め仄暗い描かれ方をしている部分がありますが、どうしてもシリアスに見えない。ふわふわとした喋り方の問題でしょうか。夢系?の浮世離れした、所謂男らしさの欠片もない不思議な少年です。
そして、りゅら君の心の動きを追うのが難しい。
こちらとしては、どんな心持ちで読めばいいかわかりかねて、ふわっとお話が進んでしまい、もったいない気がしました。
設定がエロエロになっているし、そういった場面は多いのですが、基本的にきらきらふわふわしているので、あまりエロい!という雰囲気はないと思います。
しかし、唐突なサンドイッチは最高でした。
この使い方は上手い…と素直に楽しめ、お嫌いな人は多いかもしれませんが、今作の真ん中あたりを激推しします。

三角関係や多角関係は好きだけど、重いのはちょっと、という方にはうまくマッチすると思います。
個人的には、もう少し人物を減らして、ひとりひとりをグッと掘り下げてほしいかなと思いました。
総受け要素は、二次創作の方が楽しい気がします。

冷静ではいられない。

とにかく、衝撃を受けました。

私ははらだ先生の大ファンです。
ですが、正直この『ワンルームエンジェル』は素直に受け止めることが出来ませんでした。
以下個人的な感想です、好意的な文ではありませんので、お気を悪くされたらすみません。


ワンルームエンジェルは面白いし、構成もしっかりしていて、本当に感動的な作品だと思います。
これがはらだ先生の作品でなければ。

はらだ先生の作風に対して、私は"扇情的で、ラブコメと闇の描写の融和がたまらない"と考えていました。絵柄の魅力も相まって、漫画界で唯一無二の存在だと思っています。
今作の元となった『止まり木』は短編ですが、短くても読ませるお話といいますか、展開は敢えての御都合主義なものの、登場人物の心の動きが豊かで、印象深いお話でした。止まり木を先に読んでいたので、私としては半ば必然的に、ワンルームエンジェルと止まり木を比べながらの進行になりました。
関連のある場面では、なるほどそういう風に…と感心しましたが、私は止まり木が好きすぎたのかもしれません。
止まり木を読んだ時の鮮烈さを、ワンルームエンジェルが上回って来なかったのです…
具体的に言うと、序盤の幸紀の天使に惹かれていく様子が、説得力に欠けると感じました。セルフリメイクという点が裏目に出ているようで、止まり木を意識して無理やりくっつけようとしているように感じられ、残念に思いました。

また、もう一箇所戸惑ったのが、セックスの描写についてです。普段描写の有無にはこだわりがないし、無ければ無いで別に良いと思っていたので余計に戸惑いました。読後改めて考えたのですが、私ははらだ先生の作品に、男×男の描写を強く求めていたようです。特に近年は、人間がむき出しになった、先生にしか描けない表情の数々が見られますので。
本格的にネタバレですが、天使は天志君という中学生ですし、なぜ天使になったのかというところが非常に重く描かれていたので、今思えば無い方が自然かなとは思うのです。思うのですが、やっぱりご褒美が欲しかった。
ストーリーと密接に絡む先生のエロが好きなんです…楽しみにしてたんです…日々先生の痛いエロに苦しむ(喜ぶ)私ですが、こういう読者の痛ぶり方があるものかと!!(たぶん違う)

とにかくストーリーを一周した感想は、なんか、納得いかない!でした。なんではらだ先生の作品がこれなんだろう、なんで感動できなかったんだろう、なんでなんでの連続、予想外の衝撃でした。先生がどんどん変わっていくのを、理解できても納得が出来ないんです。今も作品を持て余してしまい、どうしたら良いのかわかりません。

しかし、先生の遊び心、スマホを使った仕掛けやラストの持って行き方、天志君のまつげなど、めちゃくちゃぐっと来る部分もたくさんあったので、評価としては中立にさせて頂きます。

また時間を置いて読み返したら、違った印象を得られるかもしれません。1ページ1ページの描き込みがすごいので、漫画としては、本当に、皆さんにオススメしたいです。はらだ先生すごいです。

最後に、本を閉じて目に入る帯の
『あなたは、この関係をなんと名付けますか?』という問い。

魂の結びつきかな、と、天使誕生のシーンを見て思いました。





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【追記】
パス付きの特典について、少々話題になりましたね。パスはお父さんが出てきた後をじっくり読めばちゃんとわかりますよ。

特典には(掲載の文章・画像・写真・音声などを無断で複製することは法律で禁じられています。)と添えられていましたが、パス拡散禁止とは別に書かれていないんですよねぇ…
ちるちるのみならず、その他のsnsツールでも特典話題からこの作品に興味を持つ方が出てくるのではないでしょうか。
これが『はらだ作品に興味が無い人を呼び寄せる策』だとしたら、震えます。なんにせよ、"本筋とは別の話題作り"に成功してますから、すごいですね。
考えすぎでしょうか。はらだ先生なら、ありえそうです。

舌の上に、あかい鬼灯。

このレビューには盛大なネタバレがあります。お気をつけ下さい。

物語の前半部分、読みづらさに挫折しかけました。
今作のメイン2人が、話し方や考え方が似ているところがあり、どちらの台詞なのかわからなくなったり、出て来る名前が草・森・麦なので、脳内変換が厳しい所が多くあったりしました。
一穂先生のネーミングセンスが好きですし、いつも見ていて楽しめるのですが、今回の漢字は訓読みのイメージが強すぎたかな…

なんとなく始まって、なんとなく過ぎていく時間をとても上手に表現されていたと思います。
特に前半部分は、メイン2人が溌剌としていない所から始まるので、現在の自身の心持ちと合わなかったのか、少々退屈に感じました。
麦の心の動きをうまく追う事ができず、置いてけぼりにされてしまいました。

中盤から後半にかけて、なぜそうなってしまったのかの理由がわかってくるあたりから、褪せた背景に色がつき始めるような印象でした。色で言えば、草の部屋のベランダに、鬼灯の鉢が置いてある描写が印象的なのですが(表紙にもありますね)、ストーリーの平坦さゆえか、初めは鬼灯の色をうまく想像出来ませんでした。ストーリーに2人の感情が乗り始め、緩急がついてくると鬼灯のイメージが鮮明になってきて、不思議でした。小物の使い方は、流石一穂先生といったところでしょうか。


また、ぶっちゃけてしまうとメイン2人よりも草のお兄さんとの話が好みでした。草はお兄さんに長く、拗れた片想いをしていました。

草の幼少期の回想で、音を鳴らそうと口に含んだ鬼灯が苦くて、それを兄の手に吐き出した場面が特に強烈でした。
草はその行為を、家族ゆえの全てを許し受け入れる動作と認識していましたが、私は、細くも骨ばった少年の"男の手"と、幼気な舌、小さな前歯、唾液に絡まる赤い屑を想起して、鮮烈なエロティシズムを覚えました(ムッツリか)

他にも2、3、子どもの頃の草と兄の描写があって、その都度胸にキュンときました。
お兄さんの真面目な人柄も素敵で、草にもっと困らされて欲しい、この2人の話が読みたいと思ってしまい、読後は若干の失恋気分でした。
麦と草が幸せそうなので、まぁ良かった。これで良かったのさと諦めました。

非常に惜しくはありますが、前半の読みにくさ、お兄さんへの好意が大きくなりすぎたので萌評価に致します。はぁ…お兄さん…

どっちつかずな印象

ネタバレがっつりです、ご注意下さい。

あらすじを全く読まず、評価の高さと設定で購入を決めました。和製ファンタジーは大好物ですし、攻めが『のっぺらぼう』という予測出来ない方向性のキャラクターで、良いなと思いました。

プロローグ『めんない千鳥の啼く夜』が書き方も古風で、私の和製ファンタジーを読むスイッチが入りました。
しかしプロローグとはうって変わり、巽目線の本編『手のなるほうへ』はあまりに現代の話で面食らいました。
なんか思ってたのと違うぞ…と思い始めたのは巽の働く会社について、細かい描写が出て来たところ。
巽は目が見えないことが原因で、1人の社員との間に軋轢が生まれてしまい、社内では上手くコミュニケーションがとれていません。巽は病気で、徐々に視力を失っていった中途失明者です。(そう呼ぶのですね、今作で初めて知りました)
中途失明者の生活様式や、晴眼者との関わり方に関する描写が明朗で、ふむふむそうなのか…読み応えがあるな…と中盤まで読み、これ和製ファンタジーではないんだ、と気がつきました。会社の人間関係やそこからの展開は面白そうだけど、随分妖怪要素が絡んでこない…草枕が巽の前に現れるシーンも、なんだか淡々としており、"妖怪"でなくても成り立つ関係性で物語が進むので、落胆しました。

巽が草枕と関わり始めてから、巽に不気味なことが起こるようになります。部屋のものの位置が変わったり、自室で第三者の気配を感じたり…家に誰か居るのではないか、でも確認のしようがないと巽は苦悩します。
うーん…これは怖いし、巽は目が見えないので余計に気持ち悪い展開ですが、妖怪が関わるものとしてはインパクトに欠けるように感じました。草枕が状況を改善したので、人外的な作用だとわかりますが、社内で怪しそうな人とかも居るし、現実的な巽目線の話が些細に書かれ過ぎていて、妖怪要素の良さが見えづらいです。
やっぱり展開が地味で、いっそ妖怪設定いらないし、もしも顔にコンプレックスのある男と目の見えない男の出会いと日常の話だとしたら、先生の文体も相まって双方に共感でき、作品の傾向もまとまって面白いのでは?と思いました。


そして、物語後半で登場人物的にも、1つの物語としても悲惨な展開に入ります。
巽が妖怪からレイプまがいの行為を受け始めます。挿入なしで悪戯されるような書かれ方でしたが、一度二度ではありません。
な、なにこれ…?
中途失明者という、弱の立場の巽をあれだけしっかり描写しておきながら強姦未遂。
予想外に胸糞悪い展開に、更に追い討ちをかけるように、助けに来た草枕までも性急に巽を抱いてマーキングします。そして嫌がらない巽。なぜ嫌がらない、巽。作中必要なこととはいえ、ムードもへったくれもなく、置いてけぼりにされました。
ボーイズ・ラブの、ラブの部分を端折られた感じがして、どう捉えたらいいのかわからなくなりました。

その後は妖怪パートへ突入。しかし、現代編のよく練られた設定と比べ、全てにおいてふわっとしていました。場面背景がわかりにくい上、とってつけたような設定で困惑しました。栗城先生は、ノンフィクション系の描写の方が向いていそうです…
本編は非常に、中途半端なところで幕切れします。

主に共感出来なかった部分について書いてしまいましたが、タイトルは全て趣があって気に入っています。特にエピローグにあたる『春宵一刻』が好きです。サブキャラにろくろ首の春宵というキャラクターが出てくるのですが、個人的に『春宵一刻値千金』という言葉が好きで、大変に親近感を覚えました。エピローグでは、人間との親交が深い春宵が草枕に対し、人間と妖怪の持つ時間差について釘を刺します。
先生は春の宵を値千金という意味ではなく、とても淡い、僅かな時間という意味合いで使われたのかなと感じました。


文中の言葉選びや、巽目線の世界はすごく面白かったです。上でも書いたのですが、のっぺらぼうという設定が面白いのに浮いていて勿体なく感じました。
また、春宵の言葉で完全なハッピーエンドと受け取れないラストと、草枕の『200年待った』の意味が伏線のようでよくわからなかったので、評価は中立です。

MADK 1 コミック

硯遼 

まずい…!もつ一杯!

ずっとずっと気になっていたMADK、やっと読むことができました。
そしてずっと読み方について、マドゥカ?マッドケー?と悩んでいました。ちるちるに作品名のルビもなかったので、あとがきを読んでエムエーディーケーと解釈しました。
意味もそのままで面白い笑

作品の傾向のみ頭に入れて、そこそこの覚悟を決めて読みました。
私のグロ耐性は普通レベルです。バイオハザードでは悲鳴をあげ(でもやる)、ドラマの手術シーンは目をそらすタイプです。
グロい、そこまでグロくないなど様々な意見がありますが、私には『絵はそこまでグロくないが、描写には肝が冷える』という感想で落ち着きました。

また、さぞや意見が割れているだろう思いきや、しゅみじゃない評価の少なさに驚きました。
これは先生の力量によるものなんだろうなと感心。
臓物や肉片が、直截に描かれている部分は少なく、線の動きでぼかされていたり、少々デフォルメされたりしているなど、読めるグロのギリギリのラインでした。
また、台詞を巧みに操り心情の描写をされる先生だな、と感じました。ストーリーの読み応えは抜群でした。

普段、紙媒体はキャッチアンドリリースと決めているのですが、この作品は手元に置いて、続刊に備えたいなと強く思いました。描写は美味しく頂けないけど定期的に読み返したいです。

グロテスクな表現が苦手な人にも、美しさを伝えることができそうな、素晴らしい作品だと思います。