仕事を頼まれると断れなく、帰宅はギリ終電が当たり前のリーマン角谷透(すみやとおる・受け)と、角谷の不在中に侵入して家事をして、寝入ったら角谷を優しく抱く、角谷のストーカーさん(攻め)の、ありふれた「普通」の定規では測れない、幸せと救済のラブストーリーです。
仕事でヘトヘトになっている角谷の生活は二人の男によって支えられていまして。
一人は、角谷の事を慕っていて快活でイケメンで仕事もできて、山のような角谷の抱える仕事を助けてくれる、まるでスーパーヒーローのような職場の後輩の八雲くん。
もう一人は、不法侵入までして、掃除・炊事・洗濯・風呂炊きそしてカラダのお世話(性的な意味で)をしてくれるぶっきらぼうな正体不明のストーカーさん。
しかし、八雲くんとの距離が近くなった途端に、この生活に変化が出てしまって……
という感じなのですが、まぁ、正直、リアルでこんなことあったら警察通報一択だと思います。けど、限界に達した角谷にとっては恐怖よりも、過程はどうあれ、してくれた事に対するありがたさが砂漠の一滴の水のように心と体に染み込んでいったのかなと思います。これは抗えないかもしれない……
個人的には、ストーカーさんがいざ角谷の部屋に向かおうと、鼻歌交じりに身支度を整えているシーンが若干の狂気をはらんでて好きでした。あと、攻めの方が多分年下なんですが、年下的あざとさを出す瞬間の表情のギャップが好きでした。
自分で自分の幸せの形を選ぶこと、自分にとっての「普通」を選ぶこと、そのためになりふり構わず貪欲に、強欲になれること。
このお話は、確かに、救われるための話でした。
面白かったです!
前世が日本人男性の悪役令嬢の父で元・悪の宰相である、アンドリム(受け)と、ヒロイン陣営の騎士団長でありアンドリムとは宿敵同士だったヨルガ(攻め)の、断罪された父と娘陣営が復讐を果たすべくヒロイン陣営に苦汁と辛酸を舐めさせる、ざまぁ系転生ファンタジーBLです。
参考にいうと、ヒロイン陣営の女性とモブ男のセックスがちょっとあります。
描写としてはえげつないこともあるけど、アンドリムが暗躍してるよりかは、もう種は蒔かれていて、自滅している感がありましたね。
前巻ではメインカプの二人のBL的な動きは無かったのですが、今巻ではしっかり動き始めましたね。ただ、恋だ愛だとはほど遠い感じではあります。
もうね、特筆すべきはアンドリムのヨルガ篭絡の手練手管ですよ。
ヨルガのアンドリムに沼っていく過程がスゴい。気持ちの変化がヨルガのモノローグからありありとわかって、おぉ……!ってなりました。
殺したいほど憎い相手だったはずなのに、自分だけの物にしてしまいたくなって。
そしてこれを処女の身でやってしまうのだからアンドリムはすごいな、と。
そんな色々と計算づくなアンドリムにも、ちらほら想定外の瞬間があって、そのギャップがたまりませんでした。
物語はクライマックスを迎えそうです。次巻を楽しみに待とうと思います。
人間を襲う人狼となってしまった大学生・灰島夜(攻め)と、人狼専門の探偵で夜の義理の叔父・赤月黎人(受け)の、様々な変化を受け入れ、二人の幸せを掴みにいくバディラブストーリーです。内容のネタバレを含みつつ感想を書こうと思います。
あらゆる条件が絶望的のなかで、どうにか二人で一緒にいられるよう、行動を起こした黎人がカッコ良すぎてシビれました。普通に考えたら、離れることが夜も黎人も助かる最善策なのに、夜との幸せを諦めず、なりふり構わずに全力で黎人が挑み、つかみ取った結末だと思いました。
そして、個人的に注目してしまったのが、緊迫したシーンなのに、彼シャツ(彼コート?)の絶対領域+ファスナー開けたらもう全裸+「大丈夫だ、準備はしてきた」のコンボの破壊力がとてつもなくて、うっかり何かの扉が開きかけました。もうね、その後もじっくりたっぷりと描写があって、幸福感がたまらなかったです。
2人の話はここで一段落とのことですが、まだ続いてくれるということなので、楽しみにしたいと思います。
新興宗教を信仰する母と暮らす「宗教2世」の東春一(はるひと・攻め)と、幼少時に新興宗教の神、燈主様の「器」とされた賽原永真(とうま・受け)の伝えることと、わからないことをわかろうとすることを考える、大きな意味での救済ラブストーリーでした。
東親子の関係は、繰り返し読めば読むほど、はがゆくなりました。春一に宗教活動をして欲しい母と、宗教の思想を拒絶する春一。宗教関係の話をしていないときは何気ない会話や日常が送れているようなのに、 そこだけがわかりあえない。自分の正しさをわかってもらおうとお互いがもがいて苦しくなっている様子が辛かったですね。
そして春一は心の中にもう一つ「どうせわかってもらえないと諦めようとしているもの」をかかえているわけですが。
何百何千と様々なラブストーリーを読んできましたが、恋愛とは何か?ということを改めて考えましたね。結論はまだ出そうにありません。
わかってもらえないという孤独
わかってもらえた安心感
ちょっと私の中で「わかる」がゲシュタルト崩壊しそうになってますが、
お互いが同じ形や思いじゃないと一緒にいられない、という訳じゃない
違うことをお互いがちゃんとわかってればいいのかもしれないなと思いました。
ちなみに、春一と永真と友人2人で、2回、事を起こすのですが、その時その時で、ちゃんとした大人の力を借りていたのが、何か良かったです。大人を当てにすることができて、大人も信頼に応えられてるって描写はなかなかないんだよなぁと、思いました。
色々考えることができて、とても面白かったです。
幼馴染みでもある死んだ相方が大好きだった芸人、稲葉ソーマ(32歳・ツッコミ・攻)と、8年前に死んだ漫才コンビ「イースター」のソーマの相方、麦太ミツヤ(享年24歳・ボケ・受)の、近未来ラブ&ラフコメディでした。一応参考までに書くと、死ネタがあります。
こちらの作品はリブレ刊「秒でわかるBLシリーズ」の一冊で、お題は「孤独なモンスター」だったんです。芸人でモンスター?クローン?モンスター…?と思いながら、購入して読んでみました。
幼馴染み特有の拗らせた片想いをぶつけて、受け入れて、公私ともに相方に、というほのぼのでハッピーな感じではあるのですが、ソーマの、決断から再会までの8年間の心情を考えると、尋常じゃない激しい感情を感じます。そしてこんな感情を抱えつつもちゃんと芸人として仕事をしていたのだから、ソーマのミツヤへの思いは本当にすごいな、と思いましたね。
2024年と比べて、服装だってスマホだって大して変わってないようでいて、さりげなく便利なツールができていたり、ネット犯罪に対する法制度ができてたり、何と言っても人間クローンの製造が禁止じゃなくなってたり。かと思えば、車は普通に道路を走るし、音MAD職人は健在だったり。この絶妙な混ざり具合が私的には好きでした。
初めは芸人モノとクローンという設定に惹かれて購入したのですが、まさかBLでこんなにも未来へ思いを馳せることになるとは思いませんでした。
もしかしたらないこともない、あるかもしれないちょっと未来のお話。楽しかったです!
エルヴァ様命の大型ワンコ系従者のアルトノウル(アルト・攻め)と、クーデレな南の覡(かんなぎ)のエルヴァ(受け)のスペクタクルファンタジーBLの5巻です。既刊を読まないとさっぱりわからないと思います。ちなみに、もくじにも書いてありますが、子供への性的虐待描写や暴力があったり、ショッキングな描写があったりします。
将来的に通してみたら必要な巻になるのだと思うけど、単体で見るとなかなかハートフルボッコで、二人の進む道のりはこんなにもやさしくないものなのかと思わざるを得ない巻でした。
まず、私のなかで、最低なヤツが多すぎて誰が一番最低か決めあぐねてしまう事態になってしまいましたね。「一番最低」って「頭痛が痛い」みたいになってるけど、そうとしか言いようがないくらい、救えない人が多すぎましたね。正直、こんなビジョンを見せられたら、闇堕ちまったなしだな、と。
そんな中で、エルヴァにとってアルトがひとすじの光なのかもしれないけれど、アルトの真実を知ってしまったらどうなるんだろうという不安もぬぐえなくなりました。
そして、いよいよもって、黒海ってなんなのか?という謎が深くなりました。
ヘビーな内容の巻でしたが、アルトちゃんを愛でるエルヴァとか、巻末書き下ろしとか、ほんわか出来る所があって良かったなぁと思いました。
こんだけしんどい道のりを進んでいるのだから、アルトとエルヴァには幸せになってもらいたいな、と思います。
生前やり込んだ乙女ゲームの悪役令嬢の父である宰相アンドリムに転生してしまった主人公が、前世でのゲーム知識をフル活用して、自分と娘を破滅に追いやった清廉潔白な王子や正ヒロイン達に苦汁と辛酸をなめさせていく、ざまぁ系ダークファンタジーです。
原作未読でしたが、あらすじとサンプルを読んで即購入が決定しました。
もう、宰相アンドリムと神官長マラキアの腹黒いこと!そしてその頭脳や手練手管で正当派主人公達を悪い顔をしながら、じわじわと、いけしゃあしゃあと追い詰めていく様子が、そうなっちゃうんだ!?の連続で、次の展開が読めず、ゾクゾクワクワクしました。
人物の背景や、世界観の設定など、複雑な伏線が満遍なく張られていて、それがすごいと思ったのと同時に、その情報量に自分の理解力が中々追い付かず、3回くらい読み返して理解できました(多分)
いや、本当に、結構えげつないこともしてるのに、なんでこんなにも爽快感があるのか不思議でたまらないです。そして、美しい悪が、どのように高潔な騎士を堕とすのか、楽しみでなりません。
「Subだけどセックスではタチ希望」の、会社員の渡瀬(攻め)と、「Domだけどセックスではネコ希望」の、DomSub風俗店のNo.1Domキャストのトウマ(冬馬・受け)の、出会うべくして出会った2人のドラマティック進化系DomSubユニバースラブストーリーです。
「Domがタチ、Subがネコ」という世間の風潮と、自身の抱える性質の不一致でねじれてこじれて、いびつだと思っていたそれぞれの形が、お互いの空白を補い合えたようにぴったり合わさった様子がとても好きでした。
二人のセックスにおけるイニシアチブのやり取りがDomSubならではの設定と物凄い融合していて、この二人だからできるセックスというものが見れたと思います。
終始、2人のプレイもセックスも、お互いに思いやりがあって、やさしくて、相手の欲しい所に的確に手が届いてる感じがいいなと思いました。
とにかくドンピシャで私の好みに刺さって何回も読んでしまいました。楽しかったです!
エルヴァに幼少時より仕えているアルトノウル(攻め・18歳)と、海の化物と夜な夜な戦っている南の覡(かんなぎ)エルヴァ(受け・26歳)の、二人の行く末と島の行く末を見届けるスペクタクルBLですね。こちらはシリーズ物の4巻となるので是非既刊を読了下さい。そして、またしても気になるところで待て次巻!となります。
新情報が多いです!初見では処理できずに既刊含めてあちこち読み返してしましまいました。エルヴァの過去についても着々とパーツが埋まってきましたね。もうシヨンが不気味すぎる。そしてついにアルト自身も知らなかったアルトの秘密が明らかにされてしまったわけで。もう波乱です。
この二人はイチャイチャしていい雰囲気になるのに色んな要因でその先に進まないんですよ…焦らされます。でも、ポジション確認も無事にできましたし、新月が待ち遠しいですね。そんな中で、新事実によりまた二人の間に問題が浮上したわけですが、思い合っている二人がどうするのか、ハラハラしてしまいます。
修道院、領主シヨン、黒海の勢力、レティ達、それぞれの行動と思惑が複雑に絡み合っている中で、アルトとエルヴァはどう行動していくのか、情報の波に振り落とされないように食らいつきながら次巻を待とうと思います。
とある理由で虎王組を追いかけている、仕事は謹厳実直だが性癖はSな警察官の久世康之(攻め)と、母性と父性にあふれたパーソナルスペースゼロ男子の虎王組七代目組長の虎前聖(ひじり・受け)の、ガチムチ受けロミジュリラブコメディでした。
詳細は伏せますが、他にケンカップルとおじおじカップルが出てきます。参考までに書くと、別カプにてタチのネコ化とネコのタチ化(性描写は変化後のみ)と、別カプにておもらしがあったりします。
全体を通してマンガのテンポがよくて、シリアスになりそうでならなかったり、思いきった展開があったりと、ノリがハマれば面白いコメディテイストな作品でした。でも大事なところはちゃんとしっかり魅せてくれてたので、メリハリがありました。
印象に残っているのは、聖の乳首との初対面のシーン1コマ目。無言の圧力というか、時が止まる感じ、そして詳細な描写があいまって、とにかくすごくて読む度に釘付けになりました。
ふわふわしててヤクザとして大丈夫…?な感じの聖の、しっかりと自分の欲を通す強かさを見れたのが良かったです。
あと、中盤と終盤のタイトル回収している感じが好きでした。
ロミジュリ愛の結末として、とてもたくましく、とても強かで、愛で満ちていた終わり方がとても素敵でした。