異世界トリップ、あるいは前世の記憶持ち。不遇の悪役令嬢が王子様に見出される。等々。テンプレ展開とはいえ、人気なんだろう。この題材のモチーフは引も切らない。少し前からBLアンソロジーもプラスされ、賑やかに刊行されている。これはそういったものの最新版。
とにかく全体に絵が綺麗。アンソロジーと言えば、悲喜交々。表紙には人気の絵師さんを登板するものの、中身は玉石混合の作品集も良く見るものだ。ところが。本作は、およそ全ての作品のバランスが良い方だと思う。
#1 「鬼宰相との婚約が決まったらしい」
【漫画】さこ 【原作】たおみ
美形宰相 × 宮廷魔術師
優秀な宮廷魔術師のリューイは、仕事に打ち込む為、政略結婚を免れたい。
処女性を大事にされる社会で、破談の為に処女を捨てる事にしたリューイは…。
という、NLにもあるある展開。短編なのに、後半にはお相手の美形宰相視点もあり。
パタパタと終わるものの、2人のイチャあまは必然なので、続きを見たい!気持ちに。
宰相様の美形っぷり、うるうるお目々のリューイの愛らしさ。眼福スタート。
#2「モブに転生したはずが、推しに熱烈に愛されています」
【漫画】霰屋こん【原作】奈織
BLゲームのモブに転生した腐男子 × BLゲームの攻略対象・将来は騎士
モブなのに、「わぁイケメン!」と他の学生に言われていたり、生徒代表で挨拶しているので、もはやモブですらない。攻略対象も王子では無い。
なので、イケメンがイケメンに愛されてラブラブという、ごくフツーのBL。
#3 「うちの魔王様が過保護すぎる」
【漫画】黒埼【原作】秋山龍央
オレ様魔王 × 転生して囚われの高校生
事故で死んで転生した高校生のシュウは、転生先でいきなり魔王に囚われている。
ところが、魔王はシュウをいたぶるどころか至れり尽くせり。
実は魔王は…。というあるある展開。嬉し恥ずかし両片想い。短編なので、ジレモダはページを繰ると終わり、ハッピーエンディング♪
# 4 「泣き虫魔術師、クリア後の異世界ライフ」
【漫画】街こまち【原作】カナミ
勇者 × 異世界に無理矢理召喚されて来た魔術師
見たことある絵だと思ったら、杉原マチコ先生の別名義だった。
マチコ先生の「攻め」×「受け」は、大抵キャラデザが確定している。
勇者はクールなイケメンに。泣き虫魔術師は、うるうるお目々で大粒の涙を溢す。
物語はタイトル通り。魔物討伐後の世界。
あまりにも短いので、残念。マチコ先生お得意の、デロデロに甘やかす溺愛ライフに突入するであろう2人のその後を見てみたい。この中では、ちょっとだけシリアスめのトーンで物語は終わる。
# 5「いや、俺は護衛騎士ですが〜嫁選びで王子が選んだのは、そこにいた男でした〜」
【漫画】高山しのぶ【原作】セブン
王太子 × 護衛騎士
花を背負った美しい王子。そして美しい騎士。美形王子の衣装から、ブローチ。背景のステンドグラスまで。麗しい。
この絵で是非とも続きを読みたい!物語は出オチタイトルまんま。
王太子は花嫁候補の令嬢には目をくれず、自分の護衛騎士に求婚する。
短い物語の中で、駆け足で2人の出逢いを差し込んでいるのはさすが。
このアンソロジーの麗しい表紙を飾るのも彼ら。
本作をトリに持って来るのもさすがだ。
この物語の満足感で、「全部良かった」気になってしまう。
最も愛らしく、美しい絵だと思うので。本作の中で、一番気に入っている。
アンソロジーに編纂された物語が、その後まとまった長編に成って行く事も往々にしてあるので。そんな風に独り歩きし始める物語が生まれて欲しいなぁ、なんて思っている。
本書もスタイリッシュな表紙で、オシャレ。前作で、結構キレイに終わってたと思ってたので、まさか続いて行くとは思って無かった。続編でトーンダウンする事なく、ハイテンションそのまま。思わずクスッと笑わせてくれる、パワーワードのオンパレードは、更に磨きがかかってる様な気がする。このリズミカルに繰り出されるワードセンス、素晴らしい!としか言いようが無い。もの凄く熟慮して描いてるのか、鉄馬とみさにゃの様に、ポンポン出て来てしまうのか。作者の頭の中を覗いてみたい。
「ご褒美にキンタマキラキラ金曜日」←どんな予測変換⁈
「キスだけでイッちゃう身体?」
「んー可愛い!100おくてん」←同感‼︎
「エロスと友情は共存した!」
「俺の老舗の腕枕」
もうね、キリが無いんだよ。全部、全部、脳内ノートに書き記しておきたい!
何処を切り取っても拝みたい程の、キレッキレ。センスの塊。鬼連チャン!
そして。キリが無い程のみさにゃの可愛さ。こんなみさにゃを前にして、煽られまくる鉄馬。
2人とも可愛いくて、合掌。
笑って、笑って、バカだなぁ。可愛いなぁ、なんて。ゆるゆると油断していたら。後半にはホロリとさせてくれる。(ポロリもある。爆。)
会社の先輩、後輩だから。どうしたって、同僚の様な気やすさは、無い。みさきは、それを少し寂しく感じてたりする。同僚の女子と気軽に話している鉄馬を自然体だとして。どうしてもそこに壁を感じてしまうのだ。両想いになって、幸せなのに。多分それは独占欲。鉄馬の全部はみさきのものなのに。
鉄馬には、みさきしか見えていないのに。また、些かナナメ上の思考に苛まされたみさきは、鉄馬に依存してメンヘラになっているのでは無いか(←杞憂!)と、悩んだりもする。
このあたりの、恋する気持ちの上がったり、下がったり。ドキハラジェットコースターも。痛く無い程度に、イライラさせない程度に、テンション高く持ってくあたり。もはや職人芸だなぁ、なんて。感心してしまう。
いつも変な事ばっか言ってて、やたらみさにゃを抱き潰しにかかる、鉄馬の真心、思いやり。男らしさ、なんかも。後半怒涛の畳みかけ。もう、完全にノックアウトされてしまう。そりゃみさにゃも好きにならずにはいられないよね!
2人を熱く見守る、みさにゃの幼馴染の樹くんと、林田さんの華麗なるスルーパスも素晴らしい!隅から隅まで温かくて楽しかった!ご馳走様でした。
エチはしっかり、白抜き。
何がエッチぃって、みさにゃの肌が絶対にツルスベふわふわなのが伝わって来てしまうこと。肌の質感が分かるのが、もはや鉄馬視点の気がしてしまいます。
そう言えば。これはもぅ、ジャンル化してるのかな。木田さっつ先生が担当編集から貰ったお題だという。BLファンタジーにおいて。そんなに大変でも無さそ気なソレは、実は時間をかけるべきアレコレがあり。必ずしも挿入に至らなくても良いとは聞く。(耳年増)けれどもまぁ
「三度の飯より体格差が好き。」と、作者も語る様に、コレはちょっと大変なのでは⁈と、思わせる2人の「愛があれば大丈夫」という溺愛系。
表紙からも読み取れる、ゴリゴリの腹筋の大樹は、幼ない頃から柔道をして鍛えた身体が全体に大きい。しかもヤリチンの性豪。そんな大樹とは真逆の、小柄な奏斗に夢中になってしまう。物語冒頭から2人はもう付き合っている。しかし初夜はまだ。奏斗が痛がるので、挿入は出来ていない。私は最初不思議だった。ヤリチンの大樹がこんなにも奏斗に夢中なのが分からない。ヤレれば誰でもいいと豪語していた大樹は、ガチ恋されて執着される事など無く、スポーツの様に発散していたのだという。それって不穏では?もし、気が向けばムラムラとソッチに行ってしまい。気付けば奏斗を傷付けてしまうのでは?と、要らぬ心配をしてしまった。それは杞憂に終わる。大樹はデカいナリして「可愛いもの」が好きな、少々乙女な男だったのだ。最初はクマのぬいぐるみ、それからクマカレー、ウサギのクッキー。可愛いものを愛でたい延長線上、最高峰にたぶん、奏斗はいる。そして。奏斗は可愛いだけでは無くて、自分自身を受け止めてくれる男前さもあって。心の中はきっと。乙女と男前が逆転しているのも妙味なのだと思う。うん、可愛い。
普通は、自分よりずっと小柄で華奢な奏斗の躰を「壊してはしまわないか」と心配するのが「攻め」の優しさだと思うのに。大樹は「ホント狭い。こんなんで締め付けられたらすげー気持ちイイだろうな…」と、考える事がヤリチンのまんま。(実際、出来た時はさぞや気持ち良かったでしょうよ。)「ここまで待ったんだから、もういいだろ。」等々。大樹のヤリチンっぷりは度々顔を出しては読者を不安にさせる。そして、痛がる奏斗を見ては、ハッと我に返るのだ。この、大樹が本当の意味で恋を知って行く手順と。同じく恋を知らなかった奏斗が、だんだんと心を繋げて行く、という手順が無理が無く。2人の幼かった頃や育ちも重ねて語られて行く。特に、奏斗の恋愛小説家の母がいい。短いエピソードだけれど、母は強し。息子の顔色一つ見て、全てを悟り、的確に背中を押す。
「恋とは、それまでの自分を変えてしまうもの。」
2人の心の内で、成長して、思いやり、愛し合う。それからの、初夜。
ヤリチンだった大樹も、もう心配要らんでしょう、という絶大な安心感に胸を撫で下ろす。
悲喜交々。クスッと笑わせてくれて。
ホッコリ。そして、ヌチヌッチのエッチ。
「バカップル初夜」を堪能しました。
修正は白抜きなれど。十分エッチです。グズグズ〜。
酔った山本くんは、トロンとした顔で小林くんに問う。
「そういえば小林くんは さぁ、俺に直してほしいところとかないの?」
しなだれかかる可愛い山本くんは、そう言いつつも、小林くんの答えをロクに聞いてはいない。
本編中、小林くんは常に山本くんに群がる、或いは群がりそうになる男共に嫉妬して。牽制しては、ハラハラしている。
「…俺以外の人と、酒を飲まないでほしい……。」
それは。山本くんの全てをそのまま愛している小林くんの、精一杯の願い。
山本くんに直して欲しいとこなんて。本当は何も無い。
何も無いんだよ。
強いて言うなら、酔った山本くんが、通常の1.5倍、可愛くなってしまうところ。なんて。
んもー。小林くんの切なさも。山本くんの無防備さも。
こりゃイカン。かわいいなぁ、おい‼︎
小林くんの心の安寧の為にも。山本くんには是非とも自重して欲しいよね。
たった2ページに詰め込まれた小林くんの想い、届け。
2人で、作った酒「青のグラデーション」を呑んだ、その後。
忙しい2人が34日ぶりに抱き合う夜。
小林くんの大き過ぎるのをいっぱいにして。激しく揺さぶられる山本くん。
小林くんは夢中になった事後、ひとりごちる。
「もうこれ以上はダメだ。」
「もう無理だろう。」
「と思うときに、俺に命令する。」
挿れられて、訳わかんなくなってるのに、「…来いっ!」「キスしろっ!」「うごけぇ!」
太字で喘ぐ山本くんの命令形に煽られてしまう。
小林くんの恋情を抱き締めているのは、いつだって。
愛しい山本くんなのだ。
『山本くん、覚悟しとけよ。』と、愛しげに
山本くんの寝顔を見つめている小林くんの、切なげな眼差し。
一生山本くんを離さない覚悟を決めているのは、小林くんだったりもする。
甘い甘い夜の続きは、また。次巻へと続いて行く。きっとどこまでも。
うっすら白抜きは、あまり意味がない程に。エチエチだ。
濃ゆいエチの28ページ、堪能しました!
えーっと。どんな話だったけな、と思い。私はとりあえず手前の「続々」を読み返す。
そうだった、小林くんのXLサイズはもちろん相変わらず。相変わらず、シュールなトーンで。相変わらず、山本くんの罪な愛しさに。ほっこりしてしまう。
ああ。可愛い。
つらつらと読んでいて、ああこれは意外にも「お仕事BL」なのだな、と合点が行く。淡々とふざけている様でいて、彼等の酒造りへの情熱は至極真っ当なものだ。小林くんと山本くんは、相変わらず「青のグラデーション」を醸造すべく、日々奮闘している。
本作では新キャラが登場。山本くんに、山本くんに似た、生真面目そうで、今ドキ風の黒髪の後輩が現れる。小林くんは案の定、警戒心を抱いて、牽制しまくるが、後輩の時鳥は、先輩に惹かれてはいるものの、強引に詰めては来ない。むしろ、小林くんが新たに始めた料理屋で働く、小林くんの幼馴染・宮崎にロックオンされてしまった。彼等の方の恋も順当に進んでそうなので、この調子だと、この物語は幾らでも続いて行きそう。
時鳥のちょっと、いやだいぶズレているところが、山本くんに似ていて可愛い。山本くんとは逆に酒に強い彼は、ザルだが、日本酒の良さも分からず、酔えれば何でも良いと、ぶっきらぼうに言う。日本酒造に勤めているのに、ノンアルコールビールを箱買いして、休憩中に飲んだりしている。それでも仕事ぶりは真面目で、『…山本さんが美味しいというならきっと美味しいんだろう。』などと思っている。彼は自分でも分からないウチに、山本くんに心酔してるんだろう。いつか時鳥が日本酒の美味しさに気付けば良いな。
一見素っ気ない様でいて、実はとっても真面目。というのは、とても今ドキっぽい。最近の新社会人というのは、割とそんな感じがする。「最近の若者は〜」なんて言うと、年寄りじみて気恥ずかしいのだが。重い実先生のそういう時流の捉え方にも感心してしまう。
エチは毎度の通り。うっすらと小林くんの脚の間に描かれたXSサイズのそれは、思わず時鳥がファイティングポーズをとってしまう位、凶器だ。
前巻で、尊いわぁー、可愛いわぁー、くすっぐったいわぁー、ジワリ来るわぁ、なんて。感動していたら。それどころの騒ぎでは無かった。
涙腺キーが押されっぱなしで、涙と鼻水の洪水に見舞われてしまう。
もちろん。尊いわぁー、可愛いわぁー、の連打は押し捲られる。ところが、本作はジワリ来る、なんて。生易しいものでは無かった。読みながら、それこそ。私の涙腺キーはタガが外れてしまったのだ。
「高3の夏」と銘打ってるからには、卒業後のアレコレを考えているんだろう。タイトルから容易に想像はつく。
瀬戸は、建築系の大学に進学するべく標準を定めて準備をしているが、菊池は、恋人の瀬戸と離れたく無い、という気持ち以外、何もまだ考えてはいない。学園ものの醍醐味である文化祭や体育祭、部活動等々をザックリ端折って、卒業間近の彼等にフォーカスを定めて描いて行く。そして。瀬戸の何処か厭世的な眼差しや遠慮がちな態度は、彼が幼ない頃に大好きな父を病気で亡くした記憶に起因すると明かされて行く。くだくだしい説明はない。それは、みーち先生のシンプルな絵の様に。物語の中で、簡潔に表現されていく。瀬戸が自分に課した、「欲張らないこと。」とは。願わないこと、夢見ないこと、と同義なのだと。気付かされて、その切なさに私は泣いてしまう。愛情はそこにあるのに。手を伸ばして欲しがる事を「良くない事」だと断じている。それでも。菊池の真摯な優しさにいつか、気持ちは解けて行く。
菊池は、セクシャリティがどうとかは、若干どうでも良くなっていて。瀬戸だから、好きなのだと気付いている。素晴らしい!この安定感よ。この2人に割り込む隙は何も無いのに。瀬戸は、少し怯えているのだ。何かが変わって行くのでは無いかと。
それは当て馬の登場によってヒヤリとさせられる。中学生の瀬戸の家庭教師をしていたという塾講師の錦川は、瀬戸にエッチな手解きをしたのは自分だと菊池に告げる。動揺する菊池。しかし余計な事を吹き込む彼は、実は瀬戸の初恋でも何でも無い。ただ興味本位で抜き合いをしただけだ。錦川もそれ程瀬戸に執着している訳では無いが、少し意地悪だ。でも、我々が心配する程、錦川は悪い人でも無い、という事は終盤で明かされるので、そこは是非本編でハラハラして頂きたい。
瀬戸の突発的な事故による入院生活、見舞いに来た菊池が同室の少年と気持ちを通わせる事で。菊池もまた、将来の自分を描いて行く。生活の中で見出して行く未来。それが本当に自然というか、まぁ、ある程度予想は付くとは言え、やっぱりくだくだしく無くて、とってもナチュラルに読めて。すんなりと腹落ちして行く。菊池は子供達に関わる仕事をしたいと自発的に思う様になり、遅まきながら進路を確定する。それぞれの道へと邁進する彼等に立ちはだかる距離。卒業しても一緒に居たいと願う彼等は、違う進路、というので物理的に離れてしまうのか。遠恋になっても気持ちは変わらない、と宣言する菊池の軽々しさに一抹の不安を覚える瀬戸。自分の進路も夢も、瀬戸と一緒に居る事も。「欲張る」のは、菊池の方っていう。男前度を見せるのもいい。そう、瀬戸が欲張れないなら、菊池がその分欲張ればいい。そう結論付けた様にも見えて。ニクいというか、ホント、泣かされました。んー。やっぱり尊いわぁ。大学違うから、一緒に住みたいけれど、とりあえずは、それぞれ別の駅で一人暮らしをスタートさせる。
生活サイクルも若干違う2人。それでも、一緒に居たいから。「今日、俺んち寄ってく?」タイトルがドカンとここにオチる。如何にも気が利いていて、ニクい。ニク過ぎるよ!
高校の時、寄り道に何度と無く言い合った2人の台詞がここに来て、ドカン!クーッ!
微笑ましいやら、ニクいやら、泣き濡れた後にホッコリ笑顔。してヤラレた感も凄いけど。此処に持って来るまでに語られたエピソードを思えば。参りました、という気持ち。そして、穏やかで優しい気持ちになる読後感。
ありがとうございました。
瀬戸がまず、ヤベーヤツである。
イケメンなのは勿論。やることなす事スマートで。己れの欲よりも、相手の幸せを願える良いヤツなのだ。合掌。
齢10数年でありながら、この完成されたスパダリみよ!これはもぅ。好きにならずにはいられないでしょうよ。
みーち先生は、「俺(=吸血鬼)の獲物がゴーインすぎる!」を持っていて、時々読み返してしまう程好きなのですが。あのカサッとした線で、キャラデザも2種類程度しか無く(攻め受け確定している。)シンプルなんだけど、繊細な表情が読み取れてしまう巧みさが素晴らしい。かの短編集の中でも「後輩のパソコンのEnterキーが俺のちくbと連動している話」(タイトルが長くて出オチで全て。)をこよなく愛しているものだから、本作もそういった短めのコメディかと思ってて、何なら油断していた。瀬戸の、科白の一つ一つが、菊池の発する言葉の速さとは違う。まるで、時をたゆたう様に。それだけがキラキラとゆっくり聴こえてくるのだ。イケメンだからね。(強調)それもさることながら。彼の表情が言葉以上に発している気持ちが、想いが、切なくなる程ギュッと、ジワリと、心を掴んで離さない。
冒頭でこそ。BLあるある的な「魅惑のノンケ落とし」的な始まりをする。自身で女の子が好きだと言いながら、童貞あるあるなのか、気持ち良い事に流されてしまう、菊池。彼のその単純さ(チョロさ)につけ込む様にして、エッチな事をドンドンかまして行く瀬戸。スマートだが、手慣れている風の瀬戸は、この時ちょっと黒い。手のひらの上で菊池を転がしている様にも見える。けれど。読み進める内に、我々は気付かされてしまう。瀬戸の、苦しい胸の内を。流されて気持ち悦がっている菊池を見るのは嬉しい。しかし、本当に、純粋に、菊池を好きで、恋をしている瀬戸は、「好きな人」の幸せだけを願っている。そして、恥じてはいないものの、自身が性的マイノリティだという事に引け目を感じているのだ。自分は決して「選ばれることは無い。」と。高校生にして、こんな哀しい結論を自分に下している。だから、普通に可愛い女の子・宮坂の登場で、瀬戸は静かに身を引こうとする。宮坂もいい。2人の様子を気付いた彼女もまた、そっと身を引くのだ。
きちんと告白して。自分の気持ちを整理して。
だから。菊池も自分の気持ちに気付く。素っ気なく振る舞おうとする瀬戸に、振り払われても、ちゃんと。自分の気持ちを伝える菊池もまた。男前なのだ。
何なの⁈ この子達!尊過ぎる!
「描きおろし」の「1年前の話」も良い。放課後の電車内。シンプルな絵柄なのに、午後の空いた車内に、暖かな陽射しが差し込んでいる空気感が余す所無く描かれている。彼等の通う高校は、住まいは、郊外なのだろう。そして瀬戸のモノローグ。気持ち。菊池の、気持ちのいい単純さに救われた瞬間。何処を切り取っても素晴らしい。
みーち先生は、空気感を描く天才だと思う。
作中に出て来る言葉「挙体芳香」。初めて聞く言葉だから調べてしまいましたよ。赤ちゃんがミルクの匂いがするだとか、美人は良い匂いがするだとか。所謂身体から発する香りの事らしい。
身体から誘惑する香りを発する特殊体質のその名も「馨」は、調香の仕事をしている。我知らず周りの人々を夢中にさせてしまう自分の匂いに困惑している馨には、一度匂いをリセットする「0番」を開発する事に余念が無い。そこへ、欧州で調香師として名を馳せている翔生が開発に加わる事になる。鋭い嗅覚を持つ翔生は、馨の甘い匂いに惹かれながらも、理性を失なう事は無い。安心して身を任せた馨は、あんな事やこんな事を許してしまい…、といった、想像の範囲内の展開。さすが、しゅがーぺろぺろ先生、エッチぃです。翔生は探究心で馨の香りを暴きたい。やや乙女思考の馨は、匂いそのものでは無く、初めて自分本体を見て貰えている、などと喜んで身を任せているので、おそらくすれ違い必至。本作ではまだ序盤なので、その辺りのギスギスは、次巻へと持ち越されてしまう。まぁ、仲直りエチするんだろうけどなっ!馨がひたすらグズグズにヤラレてしまうんだろうけどなっ!
日本人はよっぽどワキガでも無い限り、体臭は無いと思う。付けた香水の香りがそのまま香る。コロン、とか。同じ香りが続くトワレでは無く、香水が好きだ。時間と共に香りには変化があり。本作のタイトルにもなっている「ラストノート」で締め括られる。体温の上昇で、変わって行く様も好きだ。香りが時間の経過を現している。
本作はオメガバースでは無いけれど。α が感じる Ω の「甘い香り」というのは、常々ゼラニウムの様な香りでは無いかと思っている。馨がその身体から発する「エッチな匂い」とはどんなものだろう。番外編の「another note」で、コンビニの店員が翔生を見て「雄みエグい」と称しているが、翔生の濃ゆい匂いは、作中にも出て来たムスク(=麝香)だろう。私は匂いフェチでは無いけれど、アロマや香水が好きだ。彼等の香りを想像しながら読むのは楽しい。そして、良い匂いをさせている筈の彼等の事後、どうかイカ臭い匂いじゃ無い事を願っている。そこはファンタジーだからねぇ。馨の匂いがイカ臭いすえた匂いに勝って欲しいなぁ、って思う。
えーっと、前巻はどこまでだったかな、と読み返すと。
もぅ結構楽々、カイウスの巨根を受け入れてそうなコーイチなのに。割と真面目に励んでいるのは、2人にとって、セックスは、愛を確認し合うもの、という大前提の他に、互いの魔力のバイパスを高め合う様になっているらしい。
これはもしかすると、「奇跡」と呼ばれるご懐妊の兆しなんじゃなかろうか。
そうすれば全てが解決するのに。
緊急招集された王国議会で、コーイチは「花嫁問答」を受ける事になる。
何なの⁈ 禅問答なの⁈ イソップ童話なの⁈
次代の王を継ぐ者として、男花嫁を迎えるカイウスは相応しく無い、という反対派一派に押されて、コーイチは、花嫁の資質を問われるのだ。
はて。この問答が何問あるのかはさておき。
1問目。翼人族のマルテバは、1年孵らない卵を孵して欲しいとコーイチに告ぐ。
隣国ハグバースの王子・マルテバ殿下の悩みにもなっているこの卵の孵化に成功すれば、両国間の友好の証になるだろう。
コーイチは、市井に降りて、翼人族の人々と交流する事で、その糸口を掴もうとするが。
果たして成功するのか。というところで次巻へと続く。
もぅ、体格差エチをドンドンヤッてくばっかりの話になって来てたから、少々飽きて来てたんですけど。そういえば、カイウス王子が王位を継ぐ事に反対している一派に、コーイチは何度と無く命を狙われてもいるし。そうこうしている内に、現王であるカイウスの父の命も
尽きそうなんですよね。預言によってコーイチはカイウス王子の花嫁として召喚されたけれども、そもそも男花嫁だと後継者どうするの問題とか、割と解決しなければならない事は山積していて。この2人はエチエチしてばっかりでは無くて、結構忙しくしていたのだった。
翼人族というのが、ほぼ見た目天使!というので、両性具有。そう言えば天使に性別無いという俗説も有った様な。
物語後半、いつも卵を赤ん坊の様に抱いているコーイチはもはや母親の様だし。孵った子供が雛の様にコーイチに懐くと良いなぁ、なんてほのぼのしてしまう。
コーイチは難問を解く賢者花嫁となるのか。
そもそも何か不思議な力でコーイチが懐妊すれば全て解決なんで。
そっちが先か。何処まで続くのー⁈ な、物語に今しばらく付き合おうと思います。
卵の謎知りたいし。
カイウス王子とのエチも、体位を変えて披露。翼人族の性交を真似てみる2人。翼人族は大きな翼があるというので、とか意味付けしてるけど。多分48手的なアレだと思う。今後、そういう意味でも色々ヤッて行きそうな2人である。コーイチがバスケやってて、鍛えられた身体というのもあるけど、引き締まった脚が、その膝下が長いのが、本当にエッチぃなぁって思う。