題材が題材なだけに感想が難しいです。ある種の共依存でもがいて傷ついているのも、不安定で自分自身を傷つけているのも苦しい。そしてそれが曲にあらわれて、評価されて求められてしまうのも。
あの現場で例えば恵介が藍を抱き締めていたり、強姦野郎を思いのままに殴ってボコボコにしていたりしたら、何かがほんの少しでも変わっていたんだろうかと思ったりしました。
藍がトラウマから抜け出せないのは当然だと思います。でも恵介はちょっと中途半端。寄り添い尽くしつつも、そこには自分に依存させたい欲求があるわけで、それを8年も続けてきて急に離れたのは何故?辛くても苦しくても気持ちを返してもらえなくても傍にいると決めたのなら、何があろうとしがみついて脇目も振らず全うして欲しかった。
結局最後は藍からの歩み寄りだし、頼りなくてがっかりでした。
藍が最後まで愛という感情を言葉にできないところがリアルで、代わりに気持ちを曲で表現するのも良かったと思います。
α×αの恋愛模様や葛藤は面白かったです。
ただ、今まで前例がないαの妊娠が物語の終盤に急に実現して、主人公カップルが世界2例目(日本初)というご都合展開にしらけてしまいました。
結婚=妊娠&出産=幸せの図式をベタベタに見せられても…
α同士の恋愛を描いていてこの世界観ならば、たくさん養子を育ててますα同士でも幸せです!の方が合っていたのではないかと個人的には感じてガッカリでした。
穴兄弟ネタを引っ張る当て馬Ωも良い子なんだけど、なんだかなぁ。
攻めが初っ端からΩを抱いているので(その他挿入なしのシーンもあり)受け以外との描写が苦手な方は注意が必要かもです。私もその場面はちょっと嫌だった…
クズ攻めがちょっと変わった受けに乱されてハマっていく過程が自然で、面白かったです。
ただ、来るもの拒まず去るもの追わず、どこで誰と何をしようが干渉しないという自分の条件を受け入れられる人なら付き合う、という考えが理解できませんでした。
干渉されたくないなら特定の恋人を作らず全員とセフレ関係でも良いのでは?
何故告白されたら付き合うのかが分かりません。過去にトラウマ的な何かがあったわけでも無さそうですし。
受けにハマるまでは平気で浮気もするし、ただ顔が良いだけのクズ以上の魅力を発見できなかったのが残念です。
最後までなんだか攻めの都合のいいように進んで終わった印象で、今まで傷つけてきた女の子側の気持ちを思い知るようなざまぁがあったらもっと納得できたのかもしれません。当て馬の女の子もちょっと…
受けにベタ惚れでより一層振り回される続編などが出たら評価が変わるかもしれません。
受けが攻めのために努力する姿や、事情が明かされていくにつれて去ろうと決意し準備していく切なさが好印象です。
ただ、受けは心身ともに攻め一途、対して攻めは心は一途だけど身体は別というのが対等ではないような気がしてがっかりしたのと同時に無理でした。個人的に攻めの下半身事情の描写が苦手なせいもあるかもしれません。
受けのことをとても大切に想っている良い攻めなんだろうなとは思うのですが、受けのことを想っているのに手が出せないからと女性を抱いて匂いをつけて帰ってくる姿にどうしても下半身が制御出来ないヘタレにしか思えませんでした。しかも自分のことは棚に上げてお前には俺だけだって、何様のつもりだろうと最後にもイラッとしましたし、受けにだけ純真無垢な真っさらさを強いるのは違うんじゃないかな、と。
受けも攻めが女性を抱いていることに散々もやもやしていたのに、両想いになった途端にその気持ちがどこかへ飛んでいってしまうのもちょっと…
この作品に限ったことではありませんが、受け攻め対等であって欲しいと思うので子どもの頃からの想いなら尚更受けにだけ無垢性を求めるのではなく、攻めも心身共に誠実であって欲しかったというのが正直なところです。
ストーリー的にはとても楽しめたのですが、個人的な好みとは外れていたので中立とさせていただきます。