発売を心待ちにしていました。
2巻発売が2017年8月。今回の3巻が2022年6月。
5年の月日が流れましたが、待っていて本当に良かった!!
物語のなかでは2003年10月から2012年5月までの出来事が時系列順に描かれています。
複雑な人間関係、企業のM&A、裏組織の暗躍や裏切り。
登場人物が多く、年単位で話も進んでいくので流れを把握し理解するのは初読時は多少戸惑うかもしれません。
私は正直、初読でしっかり理解できなかったので簡単なメモ書き(登場人物の名前や立場)を作成してから2回、3回と読み込みました(笑)
感想としては掛け値なしに本当に面白い。
BLだからどう、ではなく純粋にストーリーが興味深く心掴まれています。
BLであることを前面に出した物語ではなく、物語の構成要素の一つにBL的な要素が含まれている、といった感じでしょうか。
直接的なベットシーンはノブとサムの二人の場面でしたが、こちらも肉体と精神の慰撫といった雰囲気。
肉欲からは距離を置いた人間愛、家族愛、魂の共有といった関係性。
そこにサスペンス要素がふんだんに盛り込まれています。
読み応えが素晴らしい!
ハル、サム、ノブは互いの深い信頼のもとに着実に物事を進めています。
陰謀を暴くための暗躍/駆け引き場面を描写しているページが多いので、読み方によっては説明過多に感じられるかもせれません。
でも、その説明(言葉)を発している人物の表情を見ているとなんとも豊かに心情を読み手に伝えていることが分かります。
ZAKK氏の描く表情(特に目の表現)描写はとてもリアルで、まるで三次元の映画を観ているような気分になります。
3巻で主要な登場人物として物語に関わり始めたCIA所属のカサイ、ハッカーのチェイス、リョウは各々魅力的で物語に深みを与えてくれています。
また本筋からは外れますが、ノブが辛酸を嘗めていた時代に交流のあったカホが良い状況で生きていることがわかってホッとしました。ナホは分かりませんが、少なくともナホの娘さんが幸せそうなのも読んでいて嬉しくなりました。
辛い状況の登場人物が多いなか、救いもあったのだと。
帯によると最終巻である4巻は今秋発売予定とのこと。
シスターメアリーとの直接対決はあるのでしょうか。ただただ4巻発売が楽しみです。
お勧めです!
個人的に年下大型ワンコ攻めが大好きなのでとっても楽しめました。
「待て」がちゃんとできる見延の健気さがいい!!
そしてこの作品が素晴らしいのはバレエ漫画としても非常に魅力的なこと。
作者の昼寝シアンさんが経験者であり、バレエを愛しているのが伝わってきます。
偉そうなもの言いで申し訳ないのですが、「バレエ漫画」としてどのページをめくってもノーストレス。嫌な引っかかりが一つもないのです。
バレエ経験者(特に一時期でも本気でバレエに打ち込んだ方)はバレエを題材にした映画やドラマ、漫画に一家言お持ちの方が少なくないと思います。
その「私バレエやってました」感満載の言動が面倒臭くて周囲から敬遠されるのは重々承知していますが、ほんの少しだけ語らせて下さい。
バレエは「美しい・正しい」とされる形が他のダンスより厳密に決まっています。例えば体と足の向き、肩(肩甲骨)から指先までのライン、足の甲からつま先の伸ばし方、指先の形。理想の形があって、そこを目指して幼少期から日々レッスンに励みます。
そのせいか、「美しい形」から外れた映像作品や漫画を見ると個人的には生理的にゾワゾワするというか、瞬間的に拒否感やら恥ずかしさに近い気持ちが生まれて見続けられなくなってしまうのですが、この作品ではそうした気持ちに微塵もなりませんでした。
BLとしてだけでなく、本格的なバレエ漫画としてもこの先を期待しています。
攻めの見延は非常に恵まれた身体条件を持ちながらダンサーとしての輝きが未だ十分ではない高校1年生。
受けの一宮はダンサーとしての才能も魅力もバレエに対する真摯な想いもあるが、身体条件だけは恵まれずにバレエからコンテンポラリーに変わった高校2年生。
この「身体条件」という努力ではどうしようもないもののために将来を変えられてしまった一宮に対して、純粋に尊敬し魅せられていく見延の言動がとても素直。
この素直さにどんどん絆されていく一宮の心情の変化が思いのほかストレートで読んでいてニヤニヤしそうになります(笑)
いわゆる普通の男子高校生ではなく、将来の目標(職業)を目指して努力し続ける十代の輝きや葛藤がお好みの方にもお勧めです。
画面も美しくて眼福。
切ない、そして、リアル。
心は相手を想ってやまないのに、離れるしかない。という、切なさの極み・・・。
鈴木の恋心が痛みを伴って揺れる描写が秀逸なのですが、人の心の機微をこんなにも掬い取って表現しきる井上佐藤さんの力量にひたすら感服。
例えば、
鈴木が自分のスタジオでレッスン中、目の前にいる生徒さん(男性)と杉木を比べてしまい『ちゃんとアイツを抱きしめときゃ良かった』と思うモノローグと表情や、ノーマンとのレッスン後、杉木のことを想い『気ぃ抜くとすぐに会いたくなる』とこっそり杉木のスタジオ近くに行こうとする際に鈴木の心に浮かぶ二人の甘い場面。
なんだかもういじらしいというか、鈴木がいかに杉木を愛しく想っているかが伝わるシーンになっていると思います。
かたや杉木も鈴木が世界ヘ羽ばたけるように万全の態勢を敷いて強力バックアップ。
杉木が最大限できること全てを鈴木に与えている状態。
互いに相手を特別で愛しいと感じているのは間違いないのになぜこんなにも辿る道が違うのか・・・。
男性同士の勝負の在り方や、リスペクトが行き過ぎた神格化、そもそも異性愛者なのでそこから生まれる肉体的・心理的な葛藤。その他諸々互いを思い遣るが故の方向性の違い。
そんないろいろをすっ飛ばして結ばれる(良い意味で)BLファンタジーな作品が多い中、異端な作品。
でもそうした物語展開がとってもリアル。
結果的に『10DANCE』は他作品との差別化をはかれたのではないかな、と。
そして、魅力の大きな源泉の一つになっているのは“大人の男性が先に進めない/進まない”という展開に他ならないと個人的に思っています。
私は6巻まで巻数を重ねたBLで体を重ねていない漫画を他に読んだことがありません。
時折、受け攻めどちらでもいいから一度セックスしてから考えませんかー?という即物的な脳みそをもつ私が叫ぶこともあります(笑)
でも、丁寧に二人の想いを積み重ねてきた『10DANCE』がそうした展開になるほうが不自然極まりないので、一読者としては二人の(ある種)純愛を見守る気持ちでページをめくるのみ。
最後のレッスンは真夜中の外でのダンス。
噴水の前で「ジジィになってもこの8ヶ月は忘れないな」の鈴木の言葉と杉木の表情。
二人の思い出とともに描かれるダンスシーンは美しさと切なさが読者の感情を揺さぶる名シーンです。
恋愛パートもダンスパートも素晴らしくて紙面から目が離せません。
物語としては新たな登場人物が現れたり、互いに新しいコーチのもとレッスを重ねる日々へと変化していきます。
次巻が待ち遠しくて仕方ないのですが、来年の発売のようですね。
二人の関係性がどのように変わっていくのかはもちろん、周囲の登場人物の関わり方も楽しみ。アキちゃん、ちょっと気付きつつある?
特装版の小冊子ですが、
そうきたか!!の一言です。
読者の気になる「どっちがどっち?!」にこんな風に応えてくれるとは!!
特装版、ものすごくお薦めです!
収録してあるカラーもとっても素敵。特に地下鉄の電車のキスシーンがカラーになってお目見えしたことに感涙。美しい。眼福です。
神評価、連打できるものなら超連打。
「たった4年」か「もう4年」か。
「変わった」のか「変えられた」のかもしくは「変わらない」のか。
そんなことを考えながら最後までページをめくりました。
あの日から4年。
矢代は闇カジノのオーナーになり、三角さんから「組を持て」の誘いをのらりくらりかわしながら生きています。
側に七原と杉本は居るのでそれは一読者としてひと安心。
そして、百目鬼は天羽の口利きで三和会系桜一家の組長・綱川に預けられています。
矢代から捨てられ、それでも同じ世界にいたいと裏世界に留まり居場所を作ったけれど、矢代と直接会うことは一切なく日々は過ぎています。
互いに相手の居ない世界での日常が描写されているのですが、色のない世界というか、物悲しさすら感じられる画面の連なりにこちらの気分も切なくなり・・・。
別れたあとの日々を所々に挟み込んで物語は進行していくので、4年間の空白の時間もわかりやすく埋められて現在に繋がっていきます。
ちなみに4年後の矢代は色気倍増!百目鬼の男振りも倍増!です。
ある事件が起こり、矢代サイドも百目鬼サイドも同じ人物を追うこととなり、ついに運命に引き合わされた二人。
矢代はどう感じたのか。
百目鬼をまっとうな世界に戻したくて手を離したのに、まさかの「ヤクザ」として目の前に居るなんて。
個人的に、綱川に向かって百目鬼との間柄を話す矢代の言葉に静かな怒りや落胆が混ざっていたように感じました。
手を離したのに、自由にしたのに、カタギの世界がそこにあったのになぜ陽のある場所に戻らなかったのか、と。
一方、百目鬼の方は胆が座ったというか、矢代に相対する姿に成長を感じました。
ずっと感情面(恋情面)では百目鬼が押して矢代が躱す、逃げるといった構図でしたが、7巻においてもその構図は変わらず。
百目鬼の心が成長したのはもちろんのこと、4年間の想いも積み重なってより一層強い気持ちで矢代を掴まえにいくのではないかな。いや、いってほしい!!
矢代と百目鬼が紡ぐ関係は捩れたり切れそうだったりするけれど、最後の最後は二人で並んでいて欲しいと強く願います。
7巻も印象に残るページが多すぎて、全てに感想を書いたらとんでもない文字数になってしまうので、2つだけ。
百目鬼が矢代に発した「俺のこと覚えてたんですね 頭」。
この言葉を言う前の百目鬼の表情が少し緩んで嬉しそうにも見えて。
矢代が記憶喪失の振りをして百目鬼の存在をないものとしたこと、嘘だとわかっていても百目鬼には非常に辛い出来事だったのだと改めて胸が痛みました。
もう1つはお風呂場のシーン。
『囀る鳥は羽ばたかない』といえばお風呂はいつも名シーン!!
今回も、最後の最後にきました。井波に嫉妬(おそらくこの感情が一番近そう)した百目鬼が発した言葉、行動に読み手の私まで心臓がギュッとされました。
誰にも触られたくなかった体。その体に触った奴がいる。百目鬼の男としての独占欲みたいなものが発露した瞬間。からの8巻へ続く・・・。
番外編
1、拘置所で竜崎と矢代(と七原)が面会したシーン。竜崎!生きてた!!嬉しい!!!と私のテンションが上がりました(笑)。
髪を下ろした矢代は十代の面影を残していて、竜崎また惚れちゃうなー。そして相変わらず報われないなー。
2、三角さんと矢代の戯れ(もはや茶番?)の濡れ場もどき。三角さん、矢代に対して超Sのご主人様。
シリアスな事実として、矢代の目が片方失明していたこと。右眼を手で覆うシーンがずっと気になっていたのだけど、まさかの失明。
今後、片眼であることが物語に何かしらの意味を付与する展開になるのでしょうか。
着地点はどこなのか。
どうかどうか二人にとって最良の場所に行き着きますように、と祈る気持ちで神評価。
男前攻めと男前受けという個人的に最高の組み合わせ。
さらに沙野風結子さんと小山田あみさんという素晴らしい組み合わせ!
買うしかないでしょう!と発売を楽しみにしていました。
結果、大・大満足。
好みのカップリングということもありますが、最初から最後までノーストレスで読み進めあっという間に読了してしまいました。
そしてまたイラストがとんでもない破壊力。眼福です。
フリーライターのゼロ(攻め)と刑事の鹿倉陣也(受け)が半グレ集団である東界連合を潰すために共闘する物語。
二人ともに理由があって東界連合に拘り、なんとしても倒すことを心に誓っています。
利害関係の一致から利用したりされたりするのですが、互いにマウントを取る姿が男前。
同等な二人が遠慮会釈せずに力を出しあっている関係性が堪らない。均衡するパワーバランスからしか生まれない色気が充満していて読んでいて心が踊ります(笑)
ページが進むほどに二人の間に信頼や情が生まれ、少しずつ心の距離がなくなっていく道程もある意味お約束な展開かもしれませんが、十分に楽しませてくれるものでした。
一冊に「獣はかくして交わる」「獣はかくして喰らう」、SSの「ゼロの匂い」が収録されています。
「獣はかくして喰らう」に曲者な桐山検事が登場するのですが、この人の胡散臭さ&きな臭さが凄い。
一応の決着はありますが、嬉しいことに続編が決定しているとのこと。
本にまとまるのはまだまだ先のことだと思いますが、次巻発売を楽しみにしています。
ボリュームたっぷり!
聞き応えたっぷり!
CDの発売を今か今かと楽しみに待っていました。
期待値を上げすぎるのは良くないと思いつつ、だからといって期待を抑えることもできず。
結果、期待以上でした。
原作もかなりのページ数で厚みがありますが、それを音声にするとまたかなりのボリューム感。
ともすると途中で中弛みしそうなものですが、本作は高い熱量で最後まで楽しく聴くことができました。
周カイリ(受け)役の小野友樹さん。
素晴らしかったです。
受け攻めどちらも遜色ない魅力的な演技をされますが、今回のビッチで賢い受け役がドはまり。
肉体的には受けだけど精神的には抱いてるというか。包容力やら漂う余裕感が堪らなく色っぽかったです。
また、即物的な感想になりますが、喘ぎ声がイイ。
あくまで男性的な声なのに纏う色気といったら!
高音の掠れた声がもう職人技。下品にならず女性的にもならず、ものすごいバランス感覚でビッチさを表現。
狩野尾鉄雄(攻め)役は佐藤拓也さん。
狩野尾の内面の複雑さを丁寧に演じられていました。
他者に距離を置き、誰にも頼らずに生きていた孤独さを感じる序盤の演技から、少しずつカイリに信頼を寄せていく心の動きが佐藤さんの声で余すところなく表現されていたと思います。
原作でもCDでも鉄雄が完全にデレるところまでいきませんでしたが、デレるのも時間の問題だな、と想像できる声の演技。
ガードの固い男性がチラリと見せるデレの片鱗はたまりません(笑)
他のキャストの方々も本当にぴったりで、『メメントスカーレット』の世界観を盛り上げてくださっていました。
個人的には中束透役の田所陽向さんが私の思い描いていた通りで、思わず「すごい」と聴きながら呟いてしまいました。
大満足の神評価!
『夏の離宮』『色子語り』『春の青さはうたかたの』『布商人チャールズの冒険』の4編からなる短編集。
デイメンとローレントが主役の短編は『夏の離宮』のみ。
他3編については登場はしますが脇に回っています。
『色子語り』は1巻において衆目の前でデイメンと「営み」をしたアンケルが主役。
『春の青さはうたかたの』はローレントの近衛兵であるジョードとグイオン元老の四男アイメリックの話。
『布商人チャールズの冒険』は布商人チャールズが主役ですが、デイメンとローレントが戴冠の儀直前の1ヶ月あまりをチャールズと一緒に旅する話。
シリーズ3巻を読了後、非常に満足度の高い読書時間を過ごせて幸せだったのですが、唯一物足りなかった(読み足りなかった)のは二人の糖度の高い親密なシーン。
もっと読みたい!という願望が膨れ上がっていましたが、今回その望みが叶えられて嬉しい限りです。
『夏の離宮』『布商人~』について感想を綴っていますが、他2作品も周囲の人々の想いや行動を知ることで物語の世界がより豊かで深みのあるものとなり、視点が変わることで印象的なストーリーとなっています。
私は再び1巻から読み直したくなりました。
この場面において周囲の人々はこんな想いでいたのか、と。
『夏の離宮』は二人がデイメンの母上が造られた宮殿に行く話。
そこでの逢瀬が甘い。
甘いだけではなく、これまでの二人の関係を見つめ直して再構築するようなやり取りもあり、読んでいて胸が一杯になります。
そして、本文から映像が脳裏に浮かぶのですが、二人が裸で陽光のもと手を繋いで庭園を歩く姿の描写は穏やかさと幸せ感マックス。
こんな優しい時間を過ごすことができるなんて!と読者として感無量。
『布商人チャールズの冒険』はチャールズの人柄の良さや、チャールズから見た二人の様子がとても素敵な関係であることがわかり読み応えがありました。
途中、事件もあってハラハラする展開もあるのですが、最後の一頁でなんともチャーミングというか楽しい気持ちで読み終えることが出来ます。
魅力的な世界観はそのままに、今作も楽しい読書時間を過ごすことが出来ました。
ただ、この番外編だけを読むと多数の登場人物の関係性が分からないと思うので、本編全3巻を読んでからこちらの外伝を読むことを強くお勧めします。
ドラマCD第6弾。
今回は特に人間ドラマの様相を強く感じる作品でした。
色恋とは別のところにあるけれど、限りなくそこに近い感情が蠢く男たちの群像劇も見どころ(聞きどころ)の一つ。
矢代と百目鬼だけではなく、登場人物各々の生き方や想いが声優の皆様の声(演技)を通して強く語りかけられ、個人的にはより作品世界への理解を深めることができたように思います。
声優の皆さまの演技に心から称賛の気持ちしかありません。
先日映画も観たのですが、スクリーンに映し出される画のなかで特に印象に残ったのは「逆光の矢代の美しさ」「雨」「煙草の紫煙」の表現。
これらが強く心に残ったせいもあると思いますが、CDでも雨音やライターに火をつける音、煙草を吸い吐き出す息遣いに意識を持っていかれました。
息ひとつとっても繊細に演技されているのだなぁ、と改めて感じ入るのみ。
原作を読んでいるときに「この台詞はどんな風に表現されるのかな?」と楽しみにしていたのが、矢代が思わず本音を口にしてしまったシーン(影山に対して、どうして俺じゃなく久我だったのか訊いた場面)と、平田に首を絞められていたときのモノローグ。
影山とのやり取りは自然で、あの言葉もスルリと口をついた言葉だったことが分かる力の抜けた口調でした。
そして、矢代は影山に対しては馴染んだ(そして多少甘えた)口調になるなぁ、と。
他の誰とも違う距離感を上手に表現される新垣さん。流石!の一言です。
長い初恋の終止符が穏やかであったことがいち読者として嬉しい限り。
そして、モノローグ。
新垣さんの繊細な演技が完璧です。
矢代の内面の脆さ、諦念や絶望といった複雑で危うい感情が抑えたトーンのなかで最大限に表現されていて圧巻。
5巻でのお風呂場シーンも心揺さぶられる見事な演技をされていましたが、今回も本当に素晴らしかった!
矢代という男のどうにも掴めない心の奥底を読者に見せてくれました。
跡目争いに決着がつき、一応の区切りを見せた巻でした。
原作の巻末「飛ぶ鳥は言葉を持たない」において、百目鬼と七原の会話で書かれていなかった「七原さん わかりました。俺は頭の前からいなくなればいいんですね」という百目鬼の台詞が足されていました。
切ない・・・。
そして原作では屋上に青空が広がり、これまでの曇り空、雨、夜の情景(登場人物の心象風景とのリンク)とは違った印象をもたらしていました。
けれど、百目鬼が屋上のドアを開けて階下へ戻る画は時間が経過し、周囲は夕闇へ向かっていました。そのドアを開けた下は暗闇が描かれていました。
そこで、あぁ百目鬼は空(堅気の世界)ではなく地下(矢代)を選んだのだという暗示を感じましたが、CDではドアが閉まる音で、堅気の世界との決別を感じました。
表現方法は違えど、百目鬼の決意を感じられる心に残るシーンとなっています。
この先に続く7巻が楽しみで仕方ありません。
キャストトークも変わらず皆さんの仲の良さ、チームワークの良さが溢れる楽しいトークでした!
こちらも必聴♪
ものすごく良かった!!
海沿いの町をあてもなく車を走らせる二人。
立ち寄る場所でその土地の人々とほんの少しだけ交流を持つものの、留まらず次の土地へと。
海から吹く風や磯の香り。太陽が照らす波頭。長閑で寂れた空気感。
そうしたものが紙面から感じられ、五感を刺激されながら読み進めました。
地元で少々問題を起こし暫く身を隠す必要のある若頭・片岡(攻め)と、片岡殺害の密命を受けて同行している小田島(受け)。
この二人の関係性がたまりません。
片岡は人好きする男前。チャラチャラしつつも肝の座ったイイ男。
小田島は喜怒哀楽がまったく表に出ないけれど、内に様々な想いを抱え込んでいます。
小田島はかつて相棒を亡くしていますがその原因が片岡であるため、そもそも今回の命令がなくても憎い相手ではありました。
ただ、片岡に対して同時に密やかな憧れや恋情も抱いていて・・・。
二人して腹のなかを見せないので、表面上は問題なく淡々と時間は過ぎゆき、時にはコミカルな場面が挟み込まれたりもします。
だからこそ、殺害を実行しようとする場面には(未遂だけれど)胸が締め付けられます。
こうした場面の緩急がとても上手で惹き付けられ、ページをめくる手が止まりません。
印象的な場面も多くありますが、私がグッと心掴まれたのは、片桐がセックスをしたことがなく、小田島に「あなたが初めての男です」と伝えると暫し考えた後に「うーん よし 結婚すっか」と言ってのけた小田島。
その理由は今までの相手は商売女ばかりで処女はいなかった。だから処女だった片桐に対して「責任はとらねぇとな」と。
なんて男前発言!
そもそも、片桐は小田島が自分の命を狙っていることに気付いています。
そんな相手に対して鷹揚というか考えなしというか。
でもこうした言動が魅力的で人を惹き付けてやまないのだろうな。
もちろんこの言葉に嘘やからかいの意はなく、なんの衒いもなしに出た言葉。
惚れちゃうよね。こんなの言われたら惚れちゃうよね!と読んでる私が興奮(笑)
一筋縄ではいかない関係。
環境も状況も厳しく、どうにもならないような場所から光あるエンディングに持っていった話運びが本当に素晴らしかったと思います。
胸のうちの葛藤を乗り越え、二人が選んだ道が平和であることを願います。
どうか血生臭い場所からいつまでも遠く離れていられますように。
大人気のこちらのシリーズ。
いずれ聴きたいな、と思いながらなかなか購入する機会がなかったのですが、今回の人物設定が好みなのと小野友樹さんが主演とのことで購入。
あぁ、耳が幸せ。
今までドラマCDは原作既読のものしか聴いたことがなかったので、実は少し不安もありました。
前もってストーリーが頭に入っていない作品を楽しめるかな?と。
まったくの杞憂でした。
声優さんて本当に凄い。
声の俳優とはまさに!とあらためて感嘆するのみ。
一途な恋心を持つやんちゃな不良・拾 昂二(攻め)を濱野大輝さんが演じ、気怠げな先輩・伊藤天弥(受け)を小野友樹さんが演じられています。
昂二の男子高校生の持つ熱量と勢い、そして天弥にだけみせる素直な可愛らしさみたいなものを上手く演じられていてもの凄く良かったです。
強引なんだけど基本的には天弥の意思を尊重するのでお伺いを立てる感じが好感度大。
まるで大きいワンコ。
恋心と性欲が渾然一体となって天弥に向けて真っ直ぐ向かうさまが、若いなーと微笑ましかったりします(笑)
対して気怠げな雰囲気を漂わせつつも優しい天弥は小野さんの声にぴったり!
セックスシーンじゃなくても声に纏わせる色気がすごい。特に今回のような気怠げだったりする少しゆっくり目の喋り方だと如実に色気を感じます。
また、常々思っていたのですが、小野さんの母音、特にaとeがエロい。
だから(?)喘ぎ声がとてつもない破壊力で私の耳に響きます。もう、私にとってヒーリング効果抜群のお声(笑)
二人のキスシーンは臨場感があって気持ち良さそう&ラブラブで聞き応えあり。
二人の最中の会話もロマンチックにならない直接的な言葉のチョイスが高校生ぽくて良い!
購入してから何度もリピートしていますが、まだまだヘビロテが続きそうです。