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頭がおかしいタチに感情移入しがちな人向け

一般的に見てドン引き必至な攻めの執着具合、一般的に見て理解不能な受けの寛大さ、控えめに言って最高でした。
概要等々は他のレビュアーさんがおっしゃってくれているので、私は思いの丈のみ書かせて頂きます。

業界物なのもありリアリティで言えばやはりファンタジーが混じりますが、よくない人種がぴったりハマってしまった心地好さがあります。

非常に優秀な割にスパダリに落ち着けない重大な欠陥、余裕綽々なのかと思いきやウケに気取られない為と自分自身へのブレーキ、本音の刹那性、実際に本懐を遂げたら得られたであろう満足感の30%は確実に取り逃してしまうであろう予感、無知なままでいさせたいけども本当に閉じ込めてしまうと相手の本意ではないことも理解している、但しウケが他者から干渉を受けるのも許し難い。
反して実際はタチの想定よりも成熟しておりただの馬鹿ではない、自身がタチに与える影響も操作法も理解している、寧ろ自身の満足感にタチを利用している、がそれもタチにとってはご褒美に他ならない。糧にされればされるほど今後の保証になる。
素晴らしい閉じた地球です。聖母はここにいた。

少々熱くなってしまいましたが、ウケがちゃんと男で意思表示をする点も良いです。明らかに上記を逸したタチの様子に対して読者が「怖いな!?」となる時、ウケにキュンとされると「あ、画力に自分の頭が付いて行けてなかったね」と感情移入の乏しさを恥じてしまうものですが、本作のウケは「怖!」と言ってくれます。かと思いきや、「やっぱ流石にこれはキモがる?」点ではキュンキュンしてくれるのです。あ、破れ鍋に綴蓋〜!と思えるのがまた嬉しい。自分はタチに感情移入するタイプなので、これにかなり救われました。許された感があります。ここまではセーフなのだと思うことができる。

タチの頭のイキ具合が現実に落とし込めるレベルなのもミソだと感じます。これ以上となるとリアリティを損なうか手に掛けるしかなくなると自分のレベルでは思うので、丁度いい塩梅です。
素知らぬふりでウケが指標(我慢すべき線引き)をくれなければ本懐に突き進むしかなくなってしまう。お上手です。

タチの背景に謎が多いままですが、前述の通り自分はタチに感情移入する為かあまり気になりませんでした。自分は暴くが相手には気取られたくない。何故ならウケからの好感度に関わるから。内容によっては過去の自身を何らかの形で貶めてでも、現在の自身のウケにとっての地位を守るのではないですかね。清廉潔白であることよりも守るべきものがあると感じます。バレバレなほどお粗末では勿論いけませんが。

現実で諸々こうはいきませんので、平面でこうして閉じた地球を体言してくれるのはありがたいです。ヤンデレ引き寄せ体質のウケに選ばれたタチもこれは感無量でしょう。自己中甚だしいタチの愛し方をそのまま受け入れてくれる、ベロベロに酔った泣きたい日は是非とも読みたい一冊になりました。

作家さんの本領は見れなかった感がある

商業デビュー前から好きな作家さんなので購入しました。
購入時から何度か読んでいますが、相変わらずどこか違和感があります。ご自身でも仰っていた「ハートフル不穏ストーリー」が得意というか、痴情のもつれで事件でも起こしそうというか、そういったキャラクターを描くのが上手な方なので、同じタッチの今作はオーバーに見えてしまった気がします。過去作に自分が慣れ過ぎてしまっているだけかもしれませんが。すっきりした綺麗な絵柄のがっつりヤンデレというのがなかなか衝撃的で、グッときたのを引き摺り続けています。

とはいえデキるのに盲目的すぎる黒髪クールビューティーな兄、異性ウケするわんこ系の弟と、メインキャラクターはどちらも市梨さんという感じでした。病み属性はなく、正統派な義兄弟ものです。
ストーリーはBLというか少女漫画っぽい展開が多かった印象です。
初めて市梨さんの本を読みました!ならもっと高い評価にしたかもしれないのですが、幸か不幸か…ですね。何とも心苦しいですが。

正統派ストーリーが好き、義兄弟ものが好き、華奢で女性っぽいウケが好き、濡れ場は汁多めが好き、などの方にはおすすめです。

感情がマイナス寄りな時におすすめしたい

何故か少女漫画の『俺物語』っぽさを感じながら読み進めました。
全体的にギャグテイストのラブコメディで、気負う事も凹む事もなく声を出して笑いながらの読了でした。濡れ場はほぼありませんでしたが、エロ<ストーリー派なので十分お腹いっぱい。シリアスな作風のイメージがあったのですが、こういうタッチの作品も描かれるんですね。振り幅に感心しました。

感情移入が激しい方なので読みながら憤ったり萌えたり泣いたりとする事が多いのですが、今作についてはそのタッチもあってか第三者的な視点だった気がします。タチと性質と自分の性質とが掛け離れているからか。ですが至ってマジメだからこそつい笑ってしまうような言い回しなども多く、頭を空っぽにしてただただ楽しめたのでよかったです。ウケの可愛さはもう少し見せて貰いたかったというか、フィーチャーされてもよかったかもしれません。

何も考えたくない時なんかに読みたい作品だなと感じました。たらふく笑って二人のピュアさに癒やされて、穏やかになれそうです。

バランスが最高にいいウケ

この作家さんが描くタチのライトな頭のおかしさが好きで作家買いしました。

表題作のウケの「性格はちょっとS、性的にはM」というのが個人的な好みにマッチして最高でした。このSというのがどうも難しく、BL界隈のあらゆるSを見たつもりですがなかなか合わないケースが多いので、それだけでも既に神評価という所です。クールとかツンツンとか俺様とかそういう事じゃないんですよね、Sって。

ストーリーは重すぎず軽すぎす、心地いい温度でした。元々ギャグも多い作風なので、落ち過ぎずに純粋に進行を見守る事ができます。
細かい所は既に書かれているので差し控えますが、不自然な当て馬感がないのは好印象でした。後で考えると三角関係を崩す為のビッグバンが親友の立場から見てなかなかでしたが、一貫して小ボケが多くあくまでBL作品として読めるのでマイナスにも作用せず。親友視点の描写が多くないのもよかったのかもしれません。

同時収録は翳りのないタイプのもので、セックス中のタチの行動には自分も「!?」となりましたが、キャラ勝ちですね。「出っ張ってて邪魔だから中にしまおう」は言ってみたい言葉に見事ランクインです。その発想はなかった、をよく見せつけてくれて読んでいて楽しかったです。

総じて読後感はよく、ちょっと時間が空いて「可愛い」が見たい時に読みたい本だなと感じました。気疲れしないので気分的にもリセットされ不思議な元気が出そうです。
念を押すようですが、とにかくウケの子が本当にいい。それが伝わればこのレビューは満足です。

どちらも可愛らしくコミカル、読後感もいい

自分は女と見紛うようなウケが出てくる作品は好みではありません。

読み始め、聖母と持ち上げられるウケはまぁ確実に実はヤンキーみたいな設定があるんだろうなーと思いつつ、あー中性系かーとも思いつつ。前述のような好みがあるので外れかもしれないとも過りました。しかし読み進めるうちに、普通に可愛いと攻めに同調している自分がいました。
現実にこういう人がいたらそれだけではないでしょうし、ミニキャラテイストのコマで色々と読者が受け入れやすい仕上がりになっているのは分かりますが、素直に二次元のウケとして可愛かったです。
攻めもストーカー気質やら計算高いなどの性質ながら、笑ってしまうようなスーパー攻め様みたいなキャラクターではないですし素直に応援できる可愛らしいキャラクター。ストーカーですが。

どちらも根が善人で、そこに絶妙な言葉選びのコメディタッチが加わり、読んでいて安心感がありました。ハラハラドキドキだったり、それに伴う涙だったり…というのはありません。でも、そういう作品はそういう作品で体力と気力を使う分余力がある時にしか読めませんよね。気軽に何度も読める、読みたくなる作品には個人的にキャラクターの優しさや安心感は欠かせないと思っています。恐らくどなたも感じるでしょうが、疲れている時でも読めて読後には少し元気になっている、そんな作品でした。

正直表紙ではあまり食指が動かなかったんですが、読んでよかった。細すぎミニマムすぎなウケの体型も年齢にそぐわないぶりっこの仕方もどうでもよくなるくらい、笑えたし二人とも可愛かった。それだけで十分に満足です。

よくない意味で感情が読めない

ウケを可愛いと思えなかったのが評価の要因です。
攻め視点でストーリーが進むとはいえ、肉体関係を持ってからも脈のようなものは一切感じられませんでした。攻めが押して押して絆された…のか?くらいの感じです。ウケが妬くエピソードはあるものの、好意があるからというよりは、系統としてそれまで好き好き言ってたくせに!?というような、攻めに対する好意というより想定外に対する不快感に見えてしまいました。もちろん描写としては違いますが、それまでの流れを第三者である読者が見ていての話です。
感情がよく分からないまま進んでハッピーエンドだったため、この二人何で付き合ったんだ?という感想になってしまいました。

アイドル物の短めの読み切りも収録されており、そちらはそちらで…うーん。攻めは実はウケを好きだったとかなのか、今後に期待エンドなのか分かりませんが、まぁ不憫なウケといった感じです。

表紙のさっぱりした絵柄と表情に惹かれて買いましたが、私には合わなかったようです。本編の絵柄もさっぱりしていましたがストーリーもさっぱりでした。感情の起伏や機微を大事にする人には合わない気がします。

素直な気持ちになれる作品

普段は気をつけているのですが、自分自身の背景などがかなり透けたレビューになってしまったことをはじめにお詫びします。

高校生の時分から年齢ごとに人生をカメラで追っていくような、まさに「Life」のタイトル通りの作品でした。

私事ですが自分はアラサー、本作でも岐路となっている年代。マイノリティの悩みや葛藤などのリアルな描写はよしながふみさんがよく挙げられますが、こちらは一冊完結ということもありピンポイントに絞ったことが功を奏してかそれなりに十分リアルに見えました。現実にはありえない展開ももちろんあるものの、どちらのキャラクターもヒーロー的、スパダリ的ではないのがまた愛しい。
告白した側だった攻めから別れを切り出したこと、また復縁についても攻めからだったことなどは憤慨する方も多いだろうなと思いましたが、これもまたリアルだなぁと。より寛大で度量があるのは受け側なことが得てして多い。不思議なものです。

複数冊に渡る分量になっていたらもっと深く掘り下げららたとは思うのですが、個人的にはこれでよかった気がしています。人が過去を振り返るとき、浮かぶのは得てして短い。そしてそれはよっぽど苦しいながら岐路であったか、または相手の笑顔であったり幸せな記憶ばかりです。私は二人の記憶を繋ぎ合わせて補完したものを読ませて貰ったような気分になりました。涙腺が緩くちょいちょい読後に泣くタイプではあるのですが、声を上げて泣いたのは久しぶりでした。

少女漫画のようでないBLが好きな方はもちろん、マイノリティにはまた少し違った涙と、成長と共に置いてきた素直な気持ちを蘇らせてくれる作品としておすすめしたいです。

嫌味がないキャラクターたちが魅力

可愛らしい色合いの表紙、絵柄、あらすじ(設定)を見て、失礼ながら「少女漫画的ご都合主義系BLかなー」と思いながら読みましたが、いい意味で裏切られました。

強火系受け神推しドルオタ×センターにはなれないイイコちゃんアイドルという組み合わせ。
実は物凄く性格が悪いでもなく、根っからイイコなだけでもなく、野心や嫉妬、プライドなども程々に持ち合わせた人間味のある受けは好感が持てました。
普通に聞けばそれなりに重い過去を持つ攻めは…ワンコ系の部類に入るのでしょうか?強火ながら受けが嫌がることを投票券をネタに無理強いしたりせず、表すなら「キレイなオタク」というか(笑) 私自身はドルオタではないのですが、温かい目で見守りたくなる系統の青年でした。

三角関係なら受けを取り合う攻め2人というのが多めなBLですが、本作は逆に攻めを取り合う(?)受け2人。その新鮮味も手伝っておもしろく読めた気がします。当て馬ポジションのセンターも嫌味がなく、登場人物全員を素直に応援しながら読み進めました。

エロ重視の方にはおすすめできませんが、破綻が少なく重くなく笑いどころもちゃんとあり、疲れた日の夜にふわっと読み返したくなる読後感でした。

受けを可愛く思えるかで評価が分かれそう

表題作の受けにイライラして愛でられず、うーん…です。

自分が拾った捨て犬をいつもどおり幼馴染の攻めに飼ってもらい、餌代の足しにとコンビニバイトを始めたことに関して「俺だってバイトのあいだ代わりに散歩に行ってる」とのたまったときは何なんだこいつはと思い、そのバイトに関連した嫉妬から落ちていた空き缶を蹴りヤンキー(?)の車にぶつけてしまい追われるシーンで合わないなと結論づけてしまいました。柄の悪いヤンキーとはいえ、小石を軽く蹴る程度ならまだしも空き缶をかなり高く蹴ってぶつけておいて一言の謝罪もなく「わざとじゃなくて…」という言い訳だけで終わったので。
内面が幼いままということなのでしょうが、非常識甚だしく好きになれず仕舞いでした。私が攻めに肩入れしすぎですかね…。

明るい青春BLといった感じなので、せめてもう少し受けがアレなら素直に読めたのにと残念です。

不憫受けの定義によって評価が分かれそう

「不憫受け」とありますが、うーん…??
品行方正というか健気というか、個人的な不憫受けの定義の中にはそういうマジメさみたいなものが入っているのですが、最初から最後まで性格の悪さが目につきイラつきっ放しでした。先のレビュアーさんも書かれている合コンで攻めの童貞をバラしたり包茎だと嘯いたのは、自分が攻めの立場だとしたら意地っ張りだのヤキモチだのでは済ませない気がしますし、場の空気をそんなことで壊すなんて「いつでもどこでも輪の中心にいる人気者」が聞いて呆れると言いますか…。
自分はゲイでもニコニコしてこんなに頑張ってるのになんで分かってくれないの><!?という自己憐憫に終始し、攻めがいい人間性だったのに受けに「何なんだコイツ」という冷めた目で読まずを得ず、全く萌えられませんでした。
不憫受け自体は好きですが、健気ないい子が不憫な目に遭うのが萌えるという同志の方にはあまりお勧めできません。そんなだからマトモな性格の男が寄ってこない因果応報じゃないの?と思ってしまいます。人間臭いのと性格地雷は別物だと思っているので。

もう一作のゴツく女装攻め×可愛らしい顔立ちで華奢な女装受けの方は、嫌な感じはなくよかったです。ストーリー的には目新しさや特別ここが萌えたなどはなかったものの、表題作で溜まったストレスが抑えられたというか…(笑)

描き下ろしは両作のカプが出てきます。アホエロといった感じなので何も考えずにサラッと読めました。