上下巻まとめての感想。
二冊一気に読み終わり、様々な思いを抱きつつ読んだ下巻あとがきに
「攻はともかく、受がここまで攻をきちんと愛しているのって、私が書くお話ではすごく珍しいんじゃないでしょうか」
とあるのを見た瞬間。
「それな!」と力いっぱい頷いてしまいました。
そう、そうなんですよね…
宮緒先生の本は好きで今までたくさん読んできたのですが、受けがここまで攻めを好きなのはすごく珍しい。
宮緒先生の受けというと、いつも攻めにロックオンされて逃げられず、囚われているうちにほだされて流される展開がほとんどだった。
しかし本作は相思相愛!相思相愛なラストです!!
とはいえ、宮緒先生の執着攻めが好きな私にも、本作はとても楽しく読めました。
好きなのに報われない攻めの苦しみがとてもおいしい…
それゆえに受けに無体なことを強いてしまい、より嫌われる攻めがたまらない…
ここらへんがいつもの宮緒先生作品のうまみですが、本作はこの先の展開が丁寧だった印象でしょうか。
「これだけのボリュームのお話を書かせて頂くのは私も初めて」とあとがきで書いておられましたが、是非またこのボリュームの話を書いていただきたい!
今後のご活躍を楽しみにしたいなと改めて感じた本作でした。
おもしろかった!
事前にここのレビューをチラ見して、「トンデモ設定ばっかかな?」と心配しながら読み始めたのですがそんなことはなかった!!
……いや確かに冒頭の出会いの場面はちょっとびっくりしましたが(笑)、読み進めるうちにそんなのは消え失せて、お話にのめり込んでしまいました。
猫まみれの猫屋敷先生(攻め)のワガママっぷりが可愛い!
そして綺麗系編集者(受け)の必死さがたまらない!!
言ってしまえば自業自得なのに、耐えている受けがとても健気に思えてしまいました。
そしてお互いの気持ちが近づいてからはとてもエロくて、それもとてもよかった。
大変満足した本編でした。
そして、番外編もよかったー。
こちらでは犬を飼っている作家が出てくるのですが、これがいい。
大笑いしながら楽しく読みました。
作家と編集者もの、って色々あると思うんですが、エロいおもしろいを求めているなら、これはオススメです!
スパダリなαと、誇り高いけれど可愛げもあるΩでした。
スパダリな攻めが、実は内憂を抱えているというのが面白かった。
でも一番印象に残ったのは、受けが、攻めの国に嫁ぐ冒頭。
砂漠を越えていくのですが、その行程が本当に大変そうで、とてもリアルですごかったです。
あと少しで手遅れになるところだった、というのが実感できました。
この砂漠シーンが後にまた効いてくるのもよかった。
さすが小中先生、構成が見事だな…!と感動。
そして、石田要先生の絵が付くのが前提で物語を書いた、というだけあって、イラストとの調和も完璧でした。
本編にプラスして入っている短編「幸福な庭先で」もとてもよかった。
一番最初に攻めが受けを見初めた時の回想と、本編のその後のお話。
こういう過去話が読めるのはいいですね。
そしてその後も読めるという、一作で二度美味しいお話でした。
狼×人間で、α×Ω。
α一族の嫡男として育ったのに、ある時Ωだとわかった主人公が受けです。
設定自体は、まあ、ありがちと言えばありがち。
ですが本作で特異なのは、受けの家族が受けを溺愛していて姫扱いされているところ。
なので、帝王学から花嫁修業へと突然学ぶものが変わってしまったショックはあるのでしょうが、特に迫害もされていない(というか溺愛されて育っている)ので、全体通してあまり悲壮感がない。
悲壮感がないので、攻めに対して素直になれない受けにあまり共感ができない…。
そして二人とも、一途で必死なのだけれどもちょっと可愛いを推し過ぎかな…と。
たとえば、攻めにもっと好きになってもらいたいから、攻めの大好物のだし巻き卵を作ろう!とか。そして作ったけど興奮してくれない、風邪引いてるのかな?とか考える受けも受けだし。
そして
攻め「このだし巻き玉子は俺のものだ。絶対、一生、誰にも食わせてやらない」
受け「そういうのいいから。とっくにみんなに食べてもらったし」
攻め「……あ?」
という展開で、拗ねちゃう攻めとか…。
そこで冷めてしまったので、両片思いの二人が空回りしてすれ違うという、いわば王道展開もスルンと読み終わってしまいました。
メイン二人よりもむしろ、執事の羊沢さん(頭部がまんま羊)などの脇役たちの方が印象に残りました。
二人の学生時代のエピソードとかがもっとあったら、入り込めたのかなあ。
オメガの身でありながら、必死で自力で生きようとする受けが健気で可愛かったです。
背負えるはずもない、仲間たちの命というものをそれでも背負って立とうとする姿は美しいとさえ言えるもので、ただの強気受けとは違っていたのがよかった。
攻の獣人王バルドも、優しくて強くてかっこよかったし、肌に入れ墨みたいな刻印があるのも萌えました。
のですが、もう少し悔恨などの感情が全面に出ていた方が好みだったかもなあ、とも。
ユアンは最初から運命に抗おう、自分で生きようとしていたと思うのですが、でもそもそも一番最初の段階で、バルドがユアンを救い出せていたらユアンはこんな苦労をすることもなかったとも言えると思うので。
ユアンが決してバルドに頼ろうとしないことへの淋しさを漏らしたシーン、あの場面にほんの少しでいいので、一番最初の段階で助けられなかったバルド自身を責める気持ちがあったらより萌えたかな、と思いました。
おまけのSS程度でもいいから、バルド視点のお話も読んでみたかったかも。
そんな気分にさせてくれるお話でした。
桃太郎だよ、というここのレビューを読んで「そうか、桃太郎か」と納得して読んでいたので、「桃太郎だ…」と萌え下がることはなく、楽しく読めました。(名前は桃霞[とうか])
一番の萌えどころは、フェロモン出てるイケメンな攻め。この攻めはかなりよかった。
ストーリーも大変面白かった、のですが、微妙に気になった点が二つ。
冒頭で、受けが剣術はかなりの腕前だという話が出てきたので、「これは受けが活躍する展開!」と思いながら読んでいたのですが、受けが戦うことはなく…。
クライマックス、敵に襲われたシーンにおいても、攻めが、受けの小太刀を使ってバッサバッサと敵をなぎ倒していました。
受けの剣術設定、なぜ出したのだろう…と感じてしまったのが一点。
また、モブ姦シーンがこの本の中核を担っていて。なぜ攻めがモブ姦を許したのかというのがキーワードなのですが。
それは受けを目覚めさせるためで、しかしモブ姦を断行しても目覚めない受けに焦っていた、と語られて、そうなのかと納得していたのですが。
「たとえ、お前が目覚めなくともいいと思っていたんだが──」
……あれ、そうなの?
目覚めなくてもいいと思っていたのなら、なぜモブ姦を…?と感じてしまいました。
気になったのはその二点くらい。
そこを気にしなければ大変楽しく読めました。
展開は割とあっさり目。ドロドロ展開はなく、攻めも一途で誠意あるいい攻め。
すっきりとした読了感です。
可愛く慕ってくる年下攻めが、かっこいいイケメンに育っていくという、期待通りの展開。
大変満足感あります。
また攻めにとっても受けは、一目見たときからの憧れであり、好きで好きで仕方ない存在。
だから両思いなんだけど、受けにとっては可愛がってた子だから男として見られないし、男として見たくない事情もあって……、という葛藤。
そして、どんなに抱いても自分のものになってくれない受けに対する攻めの、悲しみや悔しさ。
でもそれでも褪せぬ恋心……というあたりが大変美味しかったです。
報われない攻めが可哀想なんですが、でも攻めの愛情を受け入れられない受けの事情も、なるほどなぁ……って感じで共感しやすかったです。
うまい展開だと思う。
二人が両思いになる(事態が解決する)くだりは少々あっさりかな?
利己的な独占欲を押し付けられた受けはもっと拗ねて怒ってもいいし、策士だと言われる割に直球勝負な攻めは、もっと腹黒くていいのになあ、という気もしました。
しかしそれを差し引いても大変おいしく萌えられたので、神評価に。
年下攻めで、執着攻めを読みたいときにオススメです!
ネタバレです。
月東先生の本というと、「登場人物がみんないい子すぎる」というのが私の印象なのですが。
この作品もその例に漏れず、登場シーンでいきなり「僕は君の親友だよ」と言い出すという、いかにも「これから裏切ります」と言いたげな現れ方をした人物が、まさかの最後の最後まで裏切りませんでした。
読んでいると四〜五回、「これは裏切るな」と感じさせる箇所があるのですよ。
「とうとう裏切るか」「今度こそ裏切るか」と思いながら読んでいくのですが、毎回裏切らない。
いつ化けの皮が剥がれるのだろう……と思っていたら、なんと最後まで裏切らず、しかも男前な面も見せてくれました。
ちょっとキュンとしてしまった…
カップリングを組むと受けになる子なのですが、読み終わってみればガッツのあるいい子でした。さすが月東先生のキャラ。
そんないい子をずっと疑っていて申し訳ない気持ちにもなりました。
そんなこんなで、ずっと主人公の親友の彼に着目して読んでいたせいか、メイン二人にはあまり感情移入できず…。
月東先生の作品らしい、いい子すぎる二人です。
いつものことながら「もっと弾けちゃってもいいんだよ!」と思いましたが、お話自体は楽しく読みました。
刺激的な作品を読みたい時というより、癒やされたい時に読むといいのかなと思います。
個人的には、親友の彼に萌一票という感じです。
一人で評価下げてすみません……
序盤と終盤は「萌✕2」だったのですが、中盤に引っ掛かりを感じる描写が数多くありまして……そのせいで評価低めです。
何に引っ掛かったかというと、攻めの西口の言動(と、それにまつわる受けの反応)。
本作の攻めは、「大人と子どもが互い違いに噛み合ったような男」で、「年甲斐がな」くて、「切羽詰まるとつい物言いが無神経になる」人なので、国会議事堂の食堂でAVの話をしちゃったりする。
そんな攻めのことを序盤は憎めないヤツと思って読めていたのですが。
最初に引っ掛かりを覚えたのは、攻めと受けが親密になってきて、初めて二人で飲んだ場面でした。
離婚したさみしさを攻めが語った直後、酔っ払って足元もおぼつかない攻めを心配した受けが「送ります」と言った時の攻めの返しが、「何で」。
……心配して送るって言ってくれてる相手に、「何で」って返すかな普通、ってここでまず思っちゃったんですよね。
地の文には「いいよ別に、とか気にしないで、じゃなくてどこか、責めるような、響きのきつい問いかけだった。さっきの言葉を西口がもう、後悔し始めているのを知った。」とあるのがまた納得いかなかった。
勝手に長々と語っておいて、勝手に後悔したからって心配してくれた相手に責めるようなきつい言葉言うのってどうなんだろう。
そんなふうに、このあたりで私の攻めに対する評価が一段階下降しまして。
さらに大暴落したのは、攻めに想いを寄せる、攻めの部下の女性(すみれ)のまつげについて
「いや、マスカラ変えたのか知らんけど、先週あたりから濃すぎたからさ。ノーマルヒルのジャンプ台みたいになってんぞって言っといたんだけど、あれだよね、レギンスといいネイルといい、女のおしゃれとか身だしなみって、こっちのまったく望んでない方向に走ってる時があるよね」
などと言ったことを、失礼だと受けに批判された時に返した言葉。
「やりもしない女、ちやほやしたってしょうがないだろ」。
…優しい受けは、そんな攻めに対しても「軽べつの念が起こらない」らしく。
その理由は「本気じゃないとすぐ分かったから。西口がひどい言葉を使えば使うほど、すみれを大切に思っていることが。応えてやれないのが心苦しい、脈もないのに想い続ける女の真剣が煩わしい、できればつめたくなんてしたくない……。」と思っているのがわかると言うのですが。
いやいや……相手の想いに応えるとか応えないとか以前に、「こっち」の望むような形でおしゃれしろという発言自体、彼氏でもないのに何様のつもりなんだ、っていう話じゃないですか。
なのに攻めは、彼氏じゃないからこそ何言ってもいいんだ、っていう発言したわけですよね? 彼女なら機嫌損ねたくないから(ヤるために)褒めるけど、そうじゃない女だから何言ってもいいんだ、って。
それでいて、想われるのは煩わしいとかもう……身勝手すぎる。
百歩譲って、本気の発言じゃないからと大目に見たとしても、でもやっぱり「ヤりもしない女」呼ばわりはないと思うし、また「言葉は命」「言葉は武器」である新聞記者(44歳の大ベテラン)であることを思えば、本心じゃないなんて言い訳にもならない。
また、この発言に対する受けの反応もまた奇妙で、「西口さんが言うとさまになっててよかったな、と思い返し」ていて……なんかもう…
その後も、仕事終わりの飲み会で、女性社員が同席していても彼女を除け者にして攻めは男性陣と「キャバクラぐらい」ではない店(ソープとか?)に行くのが恒例だという話が語られたりして、なんだかもう、攻めを素敵な優しい大人の男だとは全く思えなかった。
終盤になると攻めは受けとくっつくのですが、しかし、ちょいちょい攻めの身勝手さは垣間見えて。
(受けが初めて作った手作りごはんも、冷める前に食ってあげてほしかった。セックス優先するんじゃなくて)
なんだかとても、残念な感情を抱えたまま読み終わりました。
攻めの部下の女性は本当に可愛くて健気だったし、受けも真面目な人で好印象だったので、本当に残念。
いや、攻めもいいところはいっぱいあるんですけれども、でもなぁ……
1〜3+OFF AIRを読後感の感想。
いやー、面白かった!!
面白かったし、可愛かったしかっこよかったし、可愛かっこいいって最高だな!と思いながら読みました。
表裏あるキャラとか、腹黒い受け、口の悪い受けってあんまり好きではないのですが、本作の受けはそれが全て当てはまるのにそれでも可愛くてかっこいいのがすごい。
作中でも言われていますが、この受けの口の悪いセリフ、心の中での腹黒い罵倒というのは、字面はすごく鮮烈なのですが、しかし酷いだけではなくてなんかちょっと笑っちゃう感じなのですよね。
しかも、受けは外面の良さを維持するため大変な努力家でもあるので、そんな点にも好感が持てました。
そして、決めるときは決める。
かっこいいなぁ……と、その生き様に惚れ惚れしました。
攻めも、自由人のようでいて意外と(?)穏やかで細やかで優しい。
そして本当に受けが可愛いんだなというのが伝わってきて、もうこの二人がまとめて可愛い!と思いました。
そんな二人の人徳か、本作には心の底から嫌なやつというのがいないので、この二人のお話はずっとずっと読んでいたい、そんな気にさせられました。
OFF AIRのレビュー書いてらした方によると、未収録の番外編の同人誌やSSがたくさんあるとか。
ぜひまとめて一冊にしていただきたい!
もう本当、お願いしますという気持ちです。
タイトルについてのお話が2のあとがきに載っていて、それが面白かった……『イエスかノーか半分か』の続篇だから、それとわかりやすいタイトルがいいのではと考えられた挙げ句、「一番最後の文字が『か』であればいい」という結論に落ち着いて、2のタイトルは『世界のまんなか』になった、というところが(笑)
疑問系の「か」じゃなくていいんだ、と(笑)
でもこのおかしさが、本作の魅力だと思います。
罪のない笑い、なんだか優しくてほっとするような笑いがあちこちに散りばめられていました。
私にとってはこれが初・一穂先生作品だったのですが、読んでいてあまりに楽しく幸せだったので、これからはしばらく一穂先生の作品を読みまくろうと決意しました。
そのくらい、よかったです。