上下巻は一度に読むことをオススメします。
一度冷静になってしまうとツッコミたくなるのですが
勢いに任せて読むとじんわりほっこりします。
記憶喪失になり、最終的には元サヤに収まってメデタシ。
昔はもっと多かった気がするけど最近減りましたね。
使い古されたシリアス設定を
ライトかつ泣ける作品に昇華されていてお見事です。
記憶がないはずなのに終始きゅんきゅんしているところが可愛くもあり
「あー、これ元サヤにあっけなく戻るんだな」感もあり一長一短。
個人的にはもう少しエロ要素を抑えた部分で
惚れ直す過程を味わいたかったですが
健気ビッチ好きには堪らない作品だと思います。
双方トラウマ持ちのDKで攻がヤンデレ、とくると
共依存っぽいのかなと予想して読んだのですが
個を見失って幻想の中二人で生きているというよりは
トラウマや嗜好を受け入れて想い合うに至っているので
相互依存と言えるかもしれません。
作品としてはハッピーエンドと言えますが
DKという若さと世界の狭さ故に相互依存に至ったように見受けられ
「めでたしめでたし」では終われない気がします。
イタシテいるシーンで心理描写されているので
必然的に肌色が多くなっているのだろうとは思いますが
そのために心の機微に集中できないというか何というか・・・
少々ハードルの高い作品でした
納得の夜明けの腐女子御用達作品。
全てを諦めて犬として生きる受(シロ)とノンケのお人好し攻(信虎)。
毒親からの性的虐待、裏社会、男娼など
わかりやすく受の「堕ちきっている」感が表現されていて
絶望からのハッピーエンド効果を倍増しています。
倍増につながる最たるものがシロの過去ストーリーですね。
心を手放すに至った経緯を読んで
某脚本家の「希望が絶望へと切り替わる、その瞬間」
という言葉を思い出しました。
この過去を経てのハッピーエンドには感無量です。
個人的には前半のシロのセリフ
「使いたくなったら」
にズキッときました。
あと、王道ですが後半の
「初めてだから」
にも。
これをセットで使うなんてズルい。
広義でいえば大正ロマンに該当する作品ですね。
関東大震災や経済の浮き沈み、
閉塞から解放へと遷移する時代や大衆向け文学の増加など
大正時代の雰囲気を感じます。
一言で表すと綺麗でよく纏まった作品です。
絵も物語も登場人物の人となりも綺麗。
主要キャラだけでなく当て馬になり損ねた友人♂やW婚約者♀も綺麗。
終わり方も綺麗。
それ故にさっぱりとした印象が残ってしまうような気もしますが
一つ一つ取り上げれば
執着や独占欲なども目に付くところに転がっているので
サラリと読んだ後に違った読み方をするのもまた一興かもしれません。
個人的には「当て馬になり損ねた友人♂=松本」視点のスピンオフが
読んでみたいです。
精神衛生上5巻を待ってから読んだ方が良いかもしれません。
って言われても我慢できないから覚悟の上で読むしかないですよね!
矢代と百目鬼の感情が動き始めたら
こんなにも辛く切ないストーリーになっていくのか、と
恋愛要素の少なさに慣れきっていた脳みそにガツンときました。
いままで「本当に欲しいもの」を手に入れた事がないから
生きていくために「手に入らない」ではなく
「手に入れてはいけない」にすり替えてしまったのかな。
いつか矢代が本当に欲しいものに満たされる姿を見たいものです。
とりあえず百目鬼には捨て身の行動を慎むように言い聞かせたい。
三角さんか影山あたりが諭してくれないかしら・・・
お楽しみを報告された時の三角さんが
娘に虫がついたことを知った父親みたいでツボでした。