の、最終巻。
アパートのお隣さん同士になったところから始まった昴と陽平の関係はゆっくりと形を変え、時間の経過とともに彼らを取り巻く環境と社会的な立場も変化しました。
一緒に生きていくうえでの困難を乗り越えることはあっても、お互いに相手への大好きが揺るぎなくて真っ直ぐに想い合っている素直な二人なので、衝突、浮気、当て馬など暗いイメージを持つトピックとはほぼ無縁で、ずっと平和なところが読んでいて安心するし嬉しいです。
個人的な望みを言えばこれからの二人も見守っていたかったけど…、最後に幸せいっぱいの同棲生活を覗き見させてもらえたので、完結した寂しさよりも満足感のほうが大きいです。
ヤンキー受は数あれど、インフルエンサー攻×ヤンキー受で、且つお菓子作りがメインテーマの作品をこれまで見たことがなかったので新鮮でした。しかも出てくるスイーツがどれも美味しそう!食べたくなるー。
攻の瑛人が初めからずっと無自覚に受の真木を意識して観察しているのが可愛いです。真木のほうは瑛人の褒め言葉がきっかけでお菓子作りに目覚めたわりに、日直のときの態度最悪じゃないですか?(笑) 飛んできた虫に吃驚しちゃうの可愛くて好き。
瑛人の言動に納得しきれないシーンがいくつかあったのですが、これはキャラクターと自分自身の価値観の違い、そしてインフルエンサーに対して自分が持っている偏見のせいな気がするので心にしまっておきます。何よりそういう些細な違和感も気にならなくなるくらい可愛い瞬間が作品全体に散りばめられていました。
今連載している続編で二人の関係性がどんな風に変化し着地していくのか見届けるのが楽しみです。
発売順としてはシリーズ一作目の本作。何も知らずに時系列順に読み進めていたところ、このシリーズの描かれ方がスター・ウォー●方式だということを大学生編である「明け暮れ」のあとがきで知りました。
キーとなる亜弓を除いて前日譚に出てきたキャラクター達を中心に進んでいくところが、ちゃんと過去から地続きの人生を見守っている感覚があり嬉しかったです。長期に渡ってキャラクターの人生を見守らせて貰えるシリーズが大好き。
とはいえ展開や設定的にすんなり飲み込めない部分があったので評価は中立。特に、前日譚では年齢以上の落ち着きと包容力を併せ持ち大変魅力的に描かれていた巴が、未来でこんなに滅茶苦茶な振る舞いをしているなんて。こういう、今の価値観や倫理観だったらこうはならないかも……という展開は、2017年なら仕方ないよねと頭で理解はしつつ、これがせめて現代に発表されてたらと勿体ない気持ちを抱いてしまうんですよね。それと養子縁組を選ぶカップルが出てくる作品を読むたび、法的に家族と認められるのに親子になる以外の選択肢が存在する社会であって欲しかったね、とどんよりした気分になってしまうのも許してください。(その点について作品は悪くない)
でもみんなの未来の話を読めてよかった。