↑コレ。これを今年一番実感した作品です。
約一年前、BLを読み始めて少し経った頃に、電子書籍サイトRenta!のキャンペーンで知って購入しました。
当時の自分がレビューを書いてたら、確実に「趣味じゃない」。
それが一年後。再読したら評価が変わってました。
一年前の自分は、
1.メインの登場人物がヤクザだったのがダメだった
2.相手が入れ替わり立ち代りの複数物がダメだった
3.セックスするまでのノリが軽すぎてダメだった
4.絵がダメだった
2話目で読むのを止めたので、主な理由は上記の4つ。
当時は3Pも苦手でしたから、仮に3話目に読み進めることが出来たとしても、やっぱり挫折してたと思います。
それが今ではすっかり平気になりました。むしろ良い。
私の場合は多分、雑誌で色々なパターンの作品を読んだのが影響してます。
特に4番はそう。雑誌を購読してなければ、こんなに早く絵に慣れることはありませんでした。
(ちなみに終盤にあるリバは、その単語すら知らなかったので、マイナスにはならなかったと思います。他作品で初めて見たときも、同じ構造の体なんだし有り得るだろうな程度でスルーでした。)
自分の経験から、本作品をBL初心者にはあまりおすすめ出来ません。
内容を細かくみていくと、地雷になりやすい要素が散りばめられてます。
特に初心者には厳しいと、今でも感じます。
ただ、だいぶ慣れてきた頃に読むと、BLあるあるから微妙に外れたストーリーを新鮮に感じて、もしかしたら楽しめるかもしれません。私みたいに。
連載途中なのは、ありいめめこ さんの「かのこみち」だけ。
ほかは全て新作です。といっても、電子アンソロジーになってから作品数が大幅に減少して、今号は4作品になります。
★ありいめめこ「かのこみち」第7話(13頁、扉絵なし)
鹿から人の姿に変身できなくなった紅葉。あちこちに相談した穂村は、このままでは紅葉の存在自体が消えてしまうことを知ります。
防ぐには、存在に必要な「精気」を補充しなければなりません。
穂村は紅葉を失わないために決断し、あることを実行します。
ここまでが前回まで。
そして今回・・・良かった、人間の姿に戻ってる。
ほっとしたのも束の間。
意識が回復した紅葉は、穂村が実行した内容をネットで検索してました。
そんで穂村に問いただしました。
昨晩のは「性行為」というものでは?って。
そうですけど!?と、動揺と開き直りを混ぜ混ぜしながら認める穂村。
でも今回に限って性行為うんぬんはどうでもよくて。
重要なのは、このあとの会話でした。
穂村を見てると紅葉の心臓の辺りがテケテケ(ドキドキ)することに始まり、
鹿:これって、かずなる(穂村)のことを好きってことですよね?
鹿:かずなる(穂村)も紅葉が好きってことですよね?
鹿:これって、両想いってことでは!?
紅葉の追求に、恥ずかしさのあまり逃げる穂村。追いかける鹿ちゃん。
二人の掛け合いが可愛かったです。
それにしても性行為で弱った体をなおすって、どこぞの国の武侠・神話ドラマみたいな展開だな~・・・って感じたのですが。
元々東洋には、病気の治療に「精気」を用いるという迷信がありまして。
受精の仕組みが科学的に解明→認知される前は、「精気」をそそぐ行為で子が成るという汎用性の高さをみせていたほどです。
これらを踏まえると、実は最も「かのこみち」らしさのある手段だと思うんですよね。「気」でなおす。
――「Fig」が、紙から web へと媒体を変更した際に、多くの作品が紙書籍の「Cab」に移籍しました。
どの作品を移籍させるかの基準は分かりませんが、ファンタジーと、エロの傾向が強い作品が Fig に残ったように思います。
修正もweb配信としては珍しく、かなり薄め。新書館といい勝負かも。
ダリア・ラブコレで読んでたので書いてみようかな~と思ったら。
ちょっとw ↑上のあらすじで、ほぼネタバレしてるじゃないですかw
案丸広さんの作品は、暗い話と明るい話で区別してます。
今回は暗い話。「暗い」というのは、バッドエンドか、メリーバッドエンドを予感させるものを指してます。
悪い方向へ進んでるストーリーを途中で切ることで、不安や気まずさなどの余韻を残します。
案丸広さんが暗い話を描くときは、この手法をとることが多く、この「天罰への階段」もそうでした。
毎度のことながら、話をどの段階で切るかの選択が上手いと思います。
読後感は、15分~20分の短編ドラマを見てるような感覚に近い。
ページ数以上の読みごたえがありました。
今月号はいつもより1話多い6話が掲載されてます。
・・・されてるんですけどね、うーん。
どれもいまいちパッとしないというか。
これのために買って良かったと思える作品はありませんでした。
野々宮ちよ子さんの「小悪魔カレシ」(26頁,第4話)は、最初の騒動が一段落ついて、次のステップへ。
主人公の亮太の状況把握と心の整理を兼ねたエピソードでした。
山田さん氏の「そしてまた恋をはじめる」(26頁,第5話)は、今月号の中では中身のある話でした。シリアスです。
ただ絵がね・・・かたい。体も硬けりゃ、表情も硬い。
Hシーンも人形に演技させてるみたいで白けてしまいました。
作画がストーリーに追いついてなくて勿体無い気がします。
一番読みやすかったのは、桜庭ゆりんさんの「不埒なコイビト」(25頁)。
読みきりか続き物かは分かりませんが、一通りこなしたぞ!っていう内容。
コメディって程ではないものの、登場人物のノリを軽くして展開を早めた感じがします。バラ売りの電子専門っぽいスピード感がありました。
[次号予告] 1月号は、2015年1月15日頃配信開始予定。
表紙を飾るのは野々宮ちよ子。フルカラー漫画は塔夜綴。他、クロオ千尋、楽田トリノ、柊みずか、田中。(敬称略)
総ページの6割が表題作。他にもう一組、計2カプのお話が収録されてます。
両方ともコメディで、表題作は月刊GUSH、同時収録作はGUSHペシェに掲載されてました。
私はペシェの作品のほうが好きかな~。
だってエロいから・・・じゃなくて、愛が溢れてるからw
★「触るなキケン!」他。
全3話。サッカー部の先輩と後輩のカップルです。
無愛想で、部活の先輩達から生意気だと嫌われてる、高校生の宮下三葉。
だけど、同じくサッカー部の吉瀬先輩だけは、彼をとっても可愛がります。
なぜなら、二人は付き合ってるから。
三葉が吉瀬先輩に片想いしてるのを見抜かれ、本人に指摘されたのがきっかけ。なし崩し的に恋人になったものの、それ以来、三葉はあることに悩まされるようになって・・・。
と、1話目は後輩の三葉の視点でストーリーが進行します。
三葉の悩みというのは、吉瀬先輩が性欲旺盛な乳首フェチだったこと。
あれよあれよと開発された三葉は、タオルがちょっと擦れるだけでヘニャるほど、乳首が異常に敏感になってしまいました。
2~3話目は吉瀬先輩の視点に交代します。
この吉瀬先輩。どんだけ三葉が好きなのよってくらい、頭の中はデレデレ。
三葉がイヤイヤしながら ぐずる姿も可愛いくて仕方ないみたい。モノローグで何度もカワイイと言ってます。しかも変態入ってます。
先輩に振り回される三葉が「恥ずか死ぬ!」なら、吉瀬先輩は三葉が好きすぎてそのうち「可愛い死ぬ」んじゃないだろうか・・・。
吉瀬先輩が三葉を好きでたまらない様子に、幸せな気分が伝染しました。
ちなみに、ヤンキーっぽい三葉ですが、中身は純情・健気な普通の(?)高校生です。ただ見た目がそれっぽくて、無愛想で、口が悪いだけです。
★「逆転ヒエラルキー」
こちらが表題作になります。
視点は、周囲に面倒くさいヤツと思われてる学級委員の静生。
タイトルのヒエラルキーとは、静生の心の中だけで形成されてる認識で、実際には存在しません。
というか、彼は集団の中で孤立しており、そこまでの繋がりがありません。
そのズレた認識を、唯一の友人である幼馴染みの将人に、壊されるところから本筋がスタートします。きっかけを作ったのは静生です。
将人は、たまたま家が隣だったから友人なだけで、本来なら静生との接点が無さそうなタイプ。
ただ、面倒くさいと言いながらも静生のことをよく見ていて、さりげなく主人公をサポートしてくれる一面もありました。
主人公の静生は、将人になら心を許してるので、コミュニケーションがとれてます。将人も勝手知ったる何とやらで、静生の転がし方が上手い。
静生がコロコロ転がされてる姿は可哀そうでもあるけど、同時に可愛くもありました。
絵柄はペシェの同時収録作と比べると、キャラクターの描き方などが変わってきてます。面長だった顔が、丸顔(正三角形)寄りになってきました。
私はこちらの顔つきのほうが好きなので、あとは各パーツ(目など)とのバランスが整ってくれたら嬉しいです。
絶対笑かそーとしてるでしょ、このタイトル。
いや確かに目立つよ?目立つけどさ。
絶対、タイトルで出オチだよね。
とりあえず「すごい」攻様ってどういう意味だろうと初心にかえった。
それで聞いてみた。→ グーグル様に。
そしたらね。
すごい攻様ってスーパー攻様のことじゃ無かった。
アメージング攻様だったw
しかもキレイな発音で「アメージング セメ~ィサマー」って音読までしてくれて、感動と同時に若干の後ろめたさをくれました。
★灰崎めじろ「愛は暴虐の華の上で」
すごい【 肩にフリンジつけた 】攻様がやってきた。
総付きの軍服みたいな衣装を着てました。でも表紙の二人ではありません。
もっと優男っぽい、財閥の次期当主(凛太郎,18歳)と執事(秀里,26歳)です。
執事の秀里に夢中で、三日と空けずに寝屋に呼ぶ次期当主の凛太郎。
ある日、凛太郎の婚約話を耳にした秀里が、彼の将来をおもんばかって暇乞いをします。しかし、それを裏切り行為とみなした凛太郎が、彼をねじ伏せるというお話でした。最初から最後まで汁だくで濃かったです。二ア耽美。
灰崎さんの作品が好きな方なら楽しめる・・・かな?
★山本アタル「いくじなしのaccomplice」
すごい【 かませ犬な 】攻様がやってきた。
2014年夏に発売された18禁「エロとろR18ver.SS」収録作の続編です。
見物人から共犯者に格上げされた主人公ですが、ポジションとしては上記のとおり、残念な役回りだったと思います。
マガビー2月号の予告には、山本アタルさんのお名前もありました。でも、本作の続編になるかは不明です。予告の煽り文を読むと違う気もします。
★東野 海「へびの恩返し」
すごい【 祀られてる 】攻様がやってきた。
もう、そのままの意味なんですけど神様でした。
それ恩返しなの?単に自分が楽しみたいだけなんじゃない?っていう展開でした。ラストに続き物っぽい含みのあるセリフがありました。
★古川ふみ「秘密のビョーキはきみのせい」
すごい【 先輩をたばかる 】攻様がやってきた。
憧れの先輩(三上)がバレーを続けられないことを、後輩の主人公(椎名)だけに、そっと打ち明けます。全日本の大会を一ヵ月後に控え、エースでもある先輩が病気で抜けることにショックを隠せない椎名は、役に立てることはないかと詳しく聞こうとして・・・。
・・・ここまでは至って真面目ですが、どうみてもアホエロ コメディでした。
★牛込トラジ「イジワルに感じて♥」
すごい【 相手が弱くて相対的に強くみえる 】攻様がやってきた。
彼氏(栄)が全然優しくないどころか、自分への扱いがヒドイと怒る主人公の春也。部屋を飛び出しても迎えに来てくれないし、自分ばかりが好きなのは不公平だ!と、イライラを募らせます。
でも思い出してるうちに、また栄への愛情が溢れてきて・・・。
これだけ「あれ、ホントにキューブ?」と戸惑う、日常系のほんわかラブコメディでした。ちょいシトロン寄り。
ちなみに、毎号、特集のタイトルの脇に小さくサブタイトル的な一文がついてます。それも含めて、最近、飲み屋のオッサンか!っていう駄洒落に走りだしました。たぶん飲みながらネタを捻り出してると思う。
秋平しろさんの「僕らの群青」のページが多くて、けっこう読み応えがありました。キラキラしてるのに、ちょっとせつないお話です。
★秋平しろ「僕らの群青」第3話(40頁)
彼氏がほしい・・・彼氏がいるってどんな感じだろう?
主人公は高校生の木ノ下。ゲイの自覚があり、ネットに出会いを求めていたのを、運悪く真面目な青木先生に知られて生徒指導室に呼び出されます。
いっそ先生が相手でもいいや、と開き直る木ノ下。形だけでもいいから彼氏のフリをしてくれれば辞めると、青木に詰め寄ります。交渉は成功。
週3回までの部屋デート限定、門限厳守、ハグ以上のことはしないなど、色々なルールを決めて、青木は秘密の彼氏のフリをする約束をします。
木ノ下は、別に青木先生が好きだったわけでもなく、ただ単に彼氏っていうものを作りたかっただけ。はじめはそれだけだったのに、次第に青木を意識するようになり、いつの間にか本当に好きになってしまいました。
最初に決めたルールを守れば、部屋デートの間だけ、彼氏の「フリ」をしてくれる青木先生。だけど、それだけでは物足りない。
いっそ告白してみようかと思うけれど、関係が終ってしまうのが怖い。
ある日、先生の家に向かう途中、突然の豪雨に襲われ、ずぶ濡れになった木ノ下。そのままでは風邪を引いてしまうからと、お風呂を借りることに。
すると木ノ下がお風呂に入ってる間に、ふいの訪問客が。客は、木ノ下のネットでの活動を、最初に発見した女性教師の伊藤でした。
玄関口の話し声は、風呂場にまで聞こえてきます。彼女が青木に告白するつもりだと察した木ノ下は、風呂場でいても立ってもいられず、のぼせた体で咄嗟に立ち上がり、そのまま意識を失ってしまいます。
―― はあ~、カワイイ♡ 目覚めた木ノ下が真っ先に確認したのは、伊藤先生との話がどうなったかではなく、気絶した自分を運んだ青木先生が、裸を見たかどうかでしたw
秋平さんの作画ですが、話が進むにつれて、顔のパーツと輪郭のズレが徐々に修正されてきました。これが魅力と思う人もいるでしょうが、私はスゴク気になってたので嬉しい変化です。
★大島かもめ「転校生は恋を運ぶ」第1話(32頁)新連載
山と木と田園。最近できたショッピングセンターが唯一の遊び場。
主人公(大沢)が暮らす田舎の高校に、都会から転校生がやってきました。
彼の名前は尾津康浩。格好良いけど、少し近寄りがたい。
転校生が孤立しないよう、担任から彼の面倒をまかされた大沢。
仕方なく尾津に声をかけると、無愛想だったのが一転、人懐こい様子で大沢にこたえます。その日から一緒に下校するようになった二人。
尾津はすぐにクラスに溶け込み、遠巻きに見ていた生徒たちも、彼のまわりに集まるようになりました。担任の心配をよそに人気者になった尾津ですが、帰りは相変わらず二人一緒に下校します。
そうこうしてるうちに大沢は、さりげなく周囲に気を使う尾津の性格に気がついて、彼をフォローするように。二人は更に親しくなります。
―― こちらも初々しさが可愛い高校生のお話。目立つ存在の尾津は、女子生徒から告白されてました。そして案の定、現場に遭遇する大沢w
二人とも恋愛に興味ない素振りをしていましたが、終盤に、尾津が意味深な発言をして次回に続きます。
6作品のうち、4作が高校生のお話でした。ああ、眩しいはずだわ・・・。
「ベタ」って言葉、好きじゃありません。
だって、あまり良いイメージ無いでしょう?
特に創作物に使われる場合は。
だからベタだなって思う作品は褒めるの避けてきた。連呼するから。
でも、感性が人類の最大公約数であろう平凡な自分はそれが大好き。
できることなら連呼せずに褒めてみたい。
だからもっと褒めてるっぽい言い回しはないのかな?って。
それで考えた。必死こいて考えてみた。
「王道のセンターライン」
・・・・・・・・・・うわぁ・・・。
もうね、スゲェ。すげーセンス無い。
書いたそばから他人のフリしたくなる。
考えすぎて何かがこじれた。
「褒めるつもりが褒めてない言葉」の連呼を回避するため、気に入ったポイントだけ箇条書きにします。
1.主役二人のセリフや仕草、やり取りがいちいち甘い。
うん、やっぱコレ。ベt・・・期待通りの動きをしてくれる。
その度にニヤニヤ、クスクス。二人のやりとりは、見ていて楽しい。
2.笑いを欠かさない、あくまでラブコメ。
甘さが過ぎると気恥ずかしくて居心地がわるい。
そんな時にスッと笑いを入れてくれると、だいぶ読みやすくなります。
3.考えるアホがでる。
これはフランスの偉い人も言ってた。「人間は考えるナントカ」だって。
アホなりに無い知恵をしぼって考える努力家が好きです。
主人公はトラウマ持ちながら前向きな性格で、お話が暗くなりません。
いざトラウマに直面してもウジウジせず合理的に考える一面もあります。
たまにヒロイック・シンドローム的な展開があって、クサイと感じたりもするけど、基本はラブコメなんで、甘々好きなら楽しめると思います。
表紙の絵の、月と星座と薄明るい夜空をじっと見る。
その時に感じたイメージが、この作品の空気感。
てっきりキワモノだと思ってたのに、核となる部分は正統派でした。
この作品の主役二人には、二つの性的嗜好の相違がみられます。
主人公の真澄龍一は、ヘテロでノーマル。
同じ大学に通う飛田 白は、ゲイで真性のマゾ。真澄が飛田の性癖を知り、興味本位でS役を引き受けてから、彼とセフレの関係が続いてます。
前提として、飛田の性的嗜好は、ストーリーの展開次第で変わるということはありません。個性の「違い」であって異常なことでは無いからです。
作中でも、そのように扱われています。
しかしこの「個性の違い」が、彼らに「性の不一致」と「恋愛感情」との間で、大きな「葛藤」を生じさせます。
では主役の二人は、いつ相手に「恋愛感情」を持ったのでしょうか?
これに関しては、飛田のほうが先だと思います。時系列にすると明瞭で、2話のラストに兆候があらわれます。3話以降では自覚も芽生え、真澄に対する彼なりの愛情表現を示します。
(しかし、この飛田の変化に、真澄の認識が追いついていません。)
反対にノーマルな真澄は、それが遅かった。3話目の後半、散髪のシーンあたりから無自覚ながら兆しが見られ、4話目では自覚への葛藤が発生し、5話目でやっと愛情に起因する怒りが見えました。(作品は6話構成です)
真澄はやがてS役が負担となり、心が不安定になります。
プレイについては、過激なものが含まれてたと思います。
加えて前半は、時系列が前後しており、真澄のS役としての成長過程が分かりませんでした。その状況でM役の飛田が、S役の真澄に酸素のコントロールも委ねた時は、信頼のペースが早いように思えました。
もう少し真澄が感じていた恐怖や、危険性についての描写があっても良い気がしました。表現は言葉に留まり、体感としてはありませんでした。
前半はSMパートの割合が多く、後半に行くに従って、SMと入れ替わるように恋愛パートの分量が増えていきます。
序盤はSMのインパクトで読者の目を惹き、中盤は性の不一致で葛藤させ、終盤ではキャラクターの心情が最高潮に達し、そのままラストまで畳み掛けるという構成になってました。
作品の両輪をなす「性癖」と「愛情」について。「愛情」の面では、誤解やすれ違いと真摯に向き合うことで、一定の進歩がみえました。
しかし、それによって「性癖」の問題までクリアしたことにはなりません。
真澄は、ゲイとノンケの違いについては軽々と乗り越えました。一方で、彼らの間には、マゾとノーマルという性の不一致が残っています。
一旦気持ちが通じてしまえば、ノーマルである真澄も、作中のように怒りにまかせて暴力を振るう状態には戻れません。S役は苦痛なことでしょう。
愛さえあればノーマルの主人公が、好きな相手を痛めつけるサドに徹することができるのか? その葛藤をより強めるためにSMもソフトにせず、ハードルを上げたんじゃないかと思いました。
この作品がハッピーエンドになるかどうかは、もう、話をどこで切るかの問題だけのように思えます。SMという性の不一致を解決しなければ、不安要素は排除したことにはなりません。二人の葛藤は今後も続きそうです。
再読中は時系列や細かい確認のために、頭が冷めた状態だったはずですが、それでもラストの展開はかなりドラマティックな印象を受けました。
ボーナストラックを含め、飛田の表情が別人のように魅力的でした。
阿部あかねさんが描く主役たちは、不器用で頼りないタイプが多い。
いつもなら、その頼りない男を しっかり者が
!!!ひっぱたく!!!
ここまでが様式美です。
読むたびに期待してます。
(※甘やかし倒すバージョンも好きです。)
ただ今作は、誰がしっかり者役なのか、曖昧なままスタート。
メインキャラは二人とも、どこか頼りない。
それも、コイツは自分がいなきゃダメになる…な、影のある男では無くて。
あまりのダサさに笑いがとれそうな物件。
名も無き通行人と比べても、遜色ないオーラの無さです。
なのに少し真面目な顔をしただけで、残念度は変わらないのに不思議と格好良く見えます。これは(絵の)ギャップによる効果でしょうか。
ストーリーは、読者を煙に巻くのを楽しんでるかのような内容です。
主人公と一緒に油断して、オロオロしてね!といった具合に。
そうはいくかと読むんですが。
推理物みたいに随所に配置される「謎」と「ヒント」。
一旦は解いてみようと考えても、すぐ後に主役たちの絡みのシーンがあったりして・・・うん、とりあえず保留にしとくか・・・と、流されます。
この構成が、緊張と緩和を小刻みに生んで、話の牽引役になっていました。
今作の作画で特徴的だなと思ったのは、キャラクターの顔の簡略化。
主役の二人さえ、顔をきれいに見せるコマは絞ってる気がします。
時には、へのへのもへじ級の風格で、沢山の脇役たちと調和してます。
同じ作者の既刊と雑誌掲載作、つまり、今作の前後に描かれた作品と比較しても、シンプルに略した顔の割合が高いと思いました。
インパクトの強い設定に頼らず、ストーリーを進めるバランス感覚は、読んでて安心します。セリフが長いところ以外は偏り無く良かったと思います。
一つ一つの上手さが幾層にも重なった、とても「器用」な作品でした。