前巻でウルジが王女と偽装結婚し、身重の王女とラムダンを連れて故郷に凱旋してからの続き。王女のお腹の子の父親はならず者ということになっています。
故郷に帰ったウルジはラムダンと共にラムダンの故郷を訪れます。飲んだくれていたラムダン父にウルジは、ラムダンを得るためにララの駆け落ちと婚儀を画策したことを告白し、謝罪します。「人生をかけて幸せにします」という言葉を聞き、父親も村の人達も、二人の仲を認める雰囲気になっていました。
帰り際、ラムダンは父親から、捨てられていたときに包まれていたおくるみを渡されます。そのおくるみに描かれていた刺繍が、おそらくラムダンの生まれた部族であるグリナザ族を表すもので、それを見たブルクティーン家の使用人が嫌がらせをしてきます。
北の遊牧民であるグリナザ族は、流行り病をばらまいたことが疑われ、悪災扱いされていたようです。
ラムダンは正妻公認の愛人兼使用人として再びブルクティーン家で暮らすことになります。忙しい日々の中でもウルジと甘い一夜を過ごす日もありました。今回も肌色シーンは濃厚で、萌え転がりました。
王女が産む子供を後継ぎにすることを決めたウルジは、分家の子どもを教育係に迎えます。頭の良い子みたいですが、こだわりの強い子で、ラムダンがお世話係として振り回されることになります。
近々部族会議があり、ウルジが当主として認められる見込みですが、アリアナの実家であるブルアスク家だけがそれに反対の立場で、最後にアリアナの兄が登場して不穏な雰囲気で終わっていました。
王女のお腹の子の父親も不明だし、グリナザ族や部族会議の行方が気になるところです。
今巻は特に大きな波乱はなく、ウルジとラムダンの仲も終始安定していて、安心して読めました。
1巻同様、穏やかでほのぼのしたお話でした。
親戚同然の幼馴染が都会で再会し、攻めの悠次が子供の頃からの片思いを実らせる形で恋人同士となった二人のその後のお話。
悠次のお店で新しく働き始めた子が当て馬を匂わせる発言をしたので、今回初めて当て馬キャラが出てくるのかなと期待しましたが、そちらは肩透かしで終わりました。
受けの総一のひいおばあちゃんの108才の誕生日のお祝いで二人して地元に帰ります。
付き合っていることは隠して、一緒に住んでいることだけはそれぞれの家族に話していました。母親同士は察している雰囲気がありましたが、子供の恋愛に口を出す感じの親ではなさそうでした。
ストーリーは特に何か事件や波があるわけではないですが、二人とも好感のもてるキャラなので、互いを思い合う穏やかな日常に心地よい気分になりました。
ただ、1巻で既にハピエンを迎えていたため、萌えや切なさといった点では物足りなさを感じました。
闇金の取り立てをしていて、当時付き合っていた同性の恋人に集金したお金を持ち逃げされたあげく、その恋人のせいで、取り立てを逆恨みした債務者に弟を殺された受けが、元恋人への復讐を果たす人間再生の物語。元恋人がタレントになっていたので、受けも同じ芸能事務所に所属する。攻めはその事務所の理事。攻めと受けは過去に一度だけ偶然出会って一夜を共にしたことがあって、200ウォン置いて姿を消した受けのことを攻めはずっと探していた。受けはウサギの着ぐるみをかぶっていたので、顔は見られていないけど、背中のタトゥーを見られていた。
執着系の攻めは韓国BLの定番ですが、こちらの攻め様は金や力で受けを支配するのではなく、受けを掌の上で転がしている感じの鷹揚さがすごくよかったです。受けが一番復讐したいのは、元恋人ではなく、自分自身で、そういう危うさも含めてまるっと包み込んでいる包容力のある攻め様でした。
周りのキャラ達もすごく人情味があって、ほろっと涙するシーンもいくつかありました。
縦読みコミックの中では過去一好きな作品です。
幼馴染で料理人×サラリーマン。
料理人の攻めが子供の頃から幼馴染の受けのことが好きで、地元を離れて受けが住む街(すすきのって出てきたから北海道かな)でカフェを始めて、そこで再会したところから話が始まる。
まともな食生活をしていない受けにご飯を食べに来るように言って胃袋から絆した感じの話でした。受けは以前から攻めの好意には気づいていて、攻めの家に入り浸っていたので、そういう関係になってもいい、みたいなところはあったようです。
攻めがワンコ系、受けの方が背が高く性格もクールなキャラでした。
表題作だけならキャラも魅力的だし、ストーリーも付き合うまでの流れが無理やり感がなく、萌えも切なさも十分に感じられてよかったですが、二作目の「ある日 森の中で」が、菌の研究に来た研究者が身を寄せてお世話になっている家の子(未成年で中学か高校生)に好意を寄せられて手を出してしまう話で、合意の下ではありますが、世話になっているお宅の未成年に手を出しちゃいかんでしょと思ったので、総合的には萌えは一つ減りました。
受けの太陽が5才のときに、隣の家にお姫様みたいな美人な母親とハーフの息子の母子が引っ越してきます。そこからの幼馴染。流星の父親はアメリカ人で、両親はかけおちしてアメリカに行きましたが、離婚したため母子だけが日本に戻って来たという設定でした。母親の実家がかなり裕福らしく、かけおちしたけど母は祖父の遺産を受け継いでいるので、お金にはかなり余裕のある暮らしをしているようです。家も大きいし、母親が仕事をしているという話も出てきませんでした。
流星の母が何か病気があり長期入院することになったため、太陽の家でなにかと世話を焼くことになります。別々の高校に進学したけど、流星のお弁当を太陽の母が作ってあげているので、毎朝お弁当を取りに来るときに顔を合わせる、という感じでかなり家族に近い関係性でした。
流星の母が亡くなり、流星がそれを報告に来た際に太陽は感情のままに、それまで母親の病状について詳しく話してくれなかった流星を責めます。太陽は母に叱られ、流星にも謝って、流星をひとりにしないと心に決め、同時に、彼への特別な感情を自覚します。
その後、流星のアメリカ人の父が現れ、一緒に暮らそうと誘います。流星の父は日本人と再婚していて子供も二人いましたが、離婚の理由は浮気とかではなく気持ちのすれ違いが原因だったので、ずっと別れた妻子のことは気にかけていました。
太陽は父と暮らすことを流星に勧めて、流星は父の住むハワイに行くことを決め、二人はお互いの気持ちを確認し合って、一夜を過ごします。
その後は、流星が旅立った八カ月後に流星に会いに太陽がハワイに行く話。こちらも太陽視点でした。
直木賞を受賞された作家様、ということは存じ上げていて、初読みでしたが、心に刺さる表現が随所に散りばめられていて、本当にすごい作家様なのだなぁと改めて思いました。
BLと関係なく、誰もがその年代で抱いていたであろう脆くあやふやな感情をこれほど深く美しく言葉にできるのは、本当にすごいです。
幼い頃に父を亡くし、若くしてテーラーとして父の残した店を切り盛りしている受けと、恩人の息子である攻めの話。
攻めの漣は子供の頃に父に連れられて店に来たことがあり、その頃は、父が受けの巧弥を可愛がるのを見て、巧弥に嫉妬していたようです。
漣が留学先から帰って来て、スーツを作りに巧弥の店を訪れますが、最初は父親と巧弥の関係を疑っていたようです。自分がゲイなので父親もそうならバレたときに理解を求められそうと思って巧弥に近づきますが、二人がそういう関係でないと知ってからは、巧弥自身が気づいていなかった父親への感情を暴き、巧弥を落としにかかります。
漣に煽られた形で巧弥は漣の父である堂崎に思いを伝えますが、堂崎は巧弥を彼の父親に重ねてキスをします。実は巧弥の父親も堂崎のことが好きで、告白された際に酷い言葉をぶつけていて、その贖罪のために巧弥の世話を焼いていた、という話でした。
攻めも受けも好きなタイプでしたが、父親である堂崎も含めて今一つどのキャラにも感情移入できず、萌えは少なめでした。
大学の同級生同士で攻め受け両方腐男子。
見目のいい男同士を見かけてはBL妄想をする受けがわかりみが過ぎて面白かったです。
一方の攻めは唯一、受けが腐男子であることを知っているクール男子で、受けの妄想を止めたり、受けがバイトを始めた際に同じところで一緒に働いたりする保護者的な感じです。「俺で妄想しろ」と言ったり、いきなりキスしてきたりするので、受けに対する好意は明らかで、恋愛のモダモダ感や切なさは皆無でしたが、受けが可愛くて最初から最後まで萌えは大きかったです。
バイト中、女子にモテている攻めを見て、攻めへの恋心を自覚し始めた受けが「少し距離を取ってみよう」と思って攻めを避け始め、焦ったからか攻めがさらっと告白し、受けも流れで「好きだ」と返事をして、晴れて両思いになります。
その後、同人イベントで憧れの作家が実は攻めだったこともわかりました。
軽く読めるラブコメとして、楽しく読めました。
前作で紹惟が他の人たちと関係することをやめて永利だけにする、という心境に至った理由がよくわからなかったので、そのへんの紹惟側の心情がわかればいいなと期待していましたが、こちらも永利視点で話が進み、付き合って以降のエピソードのみで過去についての掘り下げはありませんでした。
共演者の十川がいわゆる当て馬ポジションだったのでしょうが、十川も十川のマネージャーも事務所も、社会人としても人としてもありえないと思うことが多すぎて、BL的な萌えは少なめでした。
両親から愛されずに育った十川には同情する点はありますが、大学まで出してもらって、永利の言葉を借りれば教養もある。小学校高学年の頃から寄りつこうとしなかった実家の経営する事務所に所属して俳優として活動していくことを決めたのは自分なのに、傷害事件を起こしたあとの2年間も家を借りることもせずにヒモ生活をしていて、才能を見込んだプロデューサーにチャンスをもらう形で今回の役をもらえたのに、主役に陰で「ここまで来れたのは彼氏のおかげ」だの「存在感が薄い」だの貶したり、酔って騒ぎを起こしそうになったり。
彼をボンボン扱いして嫌がらせをしていたマネージャーも、所属タレントの評判を悪くして何か会社に恨みでもあるのかと思っていたら、他のタレントの売り込みなんかは積極的にやっているし。理解に苦しむことのオンパレードでした。
十川がもう少し魅力的なキャラなら、彼に永利が惹かれないかハラハラしたり、フラれる十川に切なさを感じたり、嫉妬する紹惟にも共感できたのでしょうが、残念ながら私には十川のよさがわかりませんでした。
紹惟との甘いエピソードを垣間見られたことはよかったです。