大学の同級生同士で攻め受け両方腐男子。
見目のいい男同士を見かけてはBL妄想をする受けがわかりみが過ぎて面白かったです。
一方の攻めは唯一、受けが腐男子であることを知っているクール男子で、受けの妄想を止めたり、受けがバイトを始めた際に同じところで一緒に働いたりする保護者的な感じです。「俺で妄想しろ」と言ったり、いきなりキスしてきたりするので、受けに対する好意は明らかで、恋愛のモダモダ感や切なさは皆無でしたが、受けが可愛くて最初から最後まで萌えは大きかったです。
バイト中、女子にモテている攻めを見て、攻めへの恋心を自覚し始めた受けが「少し距離を取ってみよう」と思って攻めを避け始め、焦ったからか攻めがさらっと告白し、受けも流れで「好きだ」と返事をして、晴れて両思いになります。
その後、同人イベントで憧れの作家が実は攻めだったこともわかりました。
軽く読めるラブコメとして、楽しく読めました。
前作で紹惟が他の人たちと関係することをやめて永利だけにする、という心境に至った理由がよくわからなかったので、そのへんの紹惟側の心情がわかればいいなと期待していましたが、こちらも永利視点で話が進み、付き合って以降のエピソードのみで過去についての掘り下げはありませんでした。
共演者の十川がいわゆる当て馬ポジションだったのでしょうが、十川も十川のマネージャーも事務所も、社会人としても人としてもありえないと思うことが多すぎて、BL的な萌えは少なめでした。
両親から愛されずに育った十川には同情する点はありますが、大学まで出してもらって、永利の言葉を借りれば教養もある。小学校高学年の頃から寄りつこうとしなかった実家の経営する事務所に所属して俳優として活動していくことを決めたのは自分なのに、傷害事件を起こしたあとの2年間も家を借りることもせずにヒモ生活をしていて、才能を見込んだプロデューサーにチャンスをもらう形で今回の役をもらえたのに、主役に陰で「ここまで来れたのは彼氏のおかげ」だの「存在感が薄い」だの貶したり、酔って騒ぎを起こしそうになったり。
彼をボンボン扱いして嫌がらせをしていたマネージャーも、所属タレントの評判を悪くして何か会社に恨みでもあるのかと思っていたら、他のタレントの売り込みなんかは積極的にやっているし。理解に苦しむことのオンパレードでした。
十川がもう少し魅力的なキャラなら、彼に永利が惹かれないかハラハラしたり、フラれる十川に切なさを感じたり、嫉妬する紹惟にも共感できたのでしょうが、残念ながら私には十川のよさがわかりませんでした。
紹惟との甘いエピソードを垣間見られたことはよかったです。
写真家×俳優の年の差ラブ。
子役出身で崖っぷちタレントの永利は天才写真家の紹惟から被写体に抜擢されることで芸能活動の転機を迎えます。
紹惟は仕事のためなら何でもする男で、ステージママから搾取され愛情に飢えていた永利を自宅に住まわせ、お風呂に入れて髪を洗ってあげたり食事を作ってあげたりと甲斐甲斐しく世話を焼き、そんな紹惟に永利が惹かれるのは当然の成り行きでした。
永利は紹惟にのめり込むのですが、紹惟が永利に構う理由は恋愛とは別のところにあって、同じ気持ちを返してはくれません。紹惟は過去にも、ミューズとして被写体にしてきた女性と結婚しては離婚、を三度繰り返し、永利と性的な関係を持つようになってからも、そういう相手が他にもいました。
友達兼セフレの関係が10年続いたところで、紹惟の写真も二人の関係もマンネリ化してきて、次のステップに進むために非凡な才能を持つ役者をもう一人のミューズとして抜擢し、二人のミューズとして作品を作っていくことになります。
その若手役者の昴也を白雪姫、永利を魔女のイメージで作品作りをしていたため、永利を追い込むために撮影中は関係を持たないことにすると紹惟が告げ、てっきり紹惟の興味が昴也に移ったのだと思った永利は、狙い通り一度どん底まで落ちて、そこで俳優という仕事の面白さに気づき、また這い上がって来た、といったストーリーでした。
10年のうち9年は他に相手がいた紹惟が、これからは永利だけにすると告白したことについて、9年かかってようやく永利の大切さに気付けたというより、年を取ったことと仕事が落ち目になったことが理由なのかなと思ってしまったので、思いが通じ合ったことに対する感動は薄めでした。
歴代妻のように途中で愛想をつかさなかった永利には、10年の思いが報われてよかったねという気分です。