確かに主人公チャロはサワガニなので、ファンタジー設定が一切ダメな方は仕方がないですが…ですが!
ストーリーはテンポ良く進みますし、キャラが物凄く魅力的なんです。受けのチャロは天然トンチンカン(まぁ、天然物のサワガニですからね)ですが、攻めの龍治はそんなチャロを決して否定しない。チャロがどんな斜め上の言動をとっても、その間違いを正そうとか、ましてや馬鹿にしたりとかはせずに淡々とぶっきらぼうではあるけれどその実とても優しい受け答えでチャロに向き合ってくれるのです。超男前!そしてそのズレた掛け合いが面白いし、優しいし。
また最大の魅力は、いしだ赤月先生の驚異の伏線回収力です。作中に散りばめられた伏線があれよあれよという間にトントンっと回収されて畳まれていく様は本当にお見事です。
実は若干潔癖症の気がある私は、最初のあたりがかなり苦手でうっ、ダメだ、きちゃない、啜らないでー、読めない〜だったのですが、そこを乗り越えたら、まぁ、面白いこと!こんな面白くて優しくて素敵なお話を最初の部分だけで諦めずに読んでよかったと心から思いました。ですので、ファンタジー設定苦手な方、サワガニBLとかなにそれ無理!とか思っていらっしゃる方も騙されたと思ってえいやっ!と是非是非読んで欲しいです。後悔しないですよ、ホント。
この寡黙な黒髪が攻め?いや、表紙を見るに陽気な金髪が攻め様?と首を傾げながら読み始めましたが(個人的に黒髪キャラが好きなので)、いやいやいや、ルーカス様!完全同意です。マルは国宝級の可愛さです。呼ばれて「あいっ!」と元気よくお返事してしまうまん丸でフワフワのお守り鳥のマル。
お守り鳥としてはちょっと(かなり?)冴えない姿かたちのマルですが、何事にも一生懸命で、優しくて、いつか青い空を自由に飛ぶことを夢見る頑張り屋さん。そんなマルを心から愛して大事にする騎士団長のルーカス殿下。
何度読み返しても心がふわぁとほどけて、知らず微笑みが浮かんで、幸せになれるお話でした。
可哀想なΩという設定が苦手なので、こんなふうに芯の通った強くて優しいΩの主人公がキチンと自分の足で立って頑張るお話し大好きです。
ストーリー重視の物語を読みたい方に最適で、主人公たちを取り巻く世界観や設定がしっかり構築され、他の登場人物たちもとても魅力的です。するんと物語の世界に引き込まれます。
まぁ、オバちゃんが攻め様の頭をスパーン!と叩いて「ほらっ!言葉にしなきゃ何にも伝わらないでしょこの朴念仁がっ!」と叫びたくなるナイスなモダモダ両片思いなので、ジレジレ感を楽しみながら読めるかなと。お好きな方は是非。
それから最重要ポイントですが、このお話し、この
刊だけで終わってはいません。発行にあたってここまでとなったようですので、続き読みたいよーと声を上げると出版社さん続刊出してくださるかも。
私は紙の本でこの続き読みたいので、アンダルシュさん、よろしくお願い致しますね。
「精霊を宿す国」2巻目は主人公達以外の神獣師のエピソードが書かれています。
考えてもみてください!精霊師、神獣師は2人で一組、しかも神獣は5体。どう少なく見積もっても5組10人のエピソードが楽しめる!
しかしともすればバラバラになってしまいそうなそれぞれのエピソードが、主人公の出生の秘密や事の起こりの事件と絡められ織り込まれ、ヨダ国の存亡へと展開していく様は見事としか言いようがありません。
2巻の終盤では読者は主人公の秘密に薄らと気づき始めるかと思われますが、ここで次巻へ続く!です。
ここまで読み終えると、それまでイマイチ主人公カプに思い入れがー、なんてお嘆きの方でも必ず、誰か、どのカプかに推しが生まれているはず。佐伊先生の登場人物・エピソード書き分け能力本当に素晴らしいの一言です。
壮大な長編「精霊を宿す国」の最初の一冊です。
主人公達が出会い、唯一無二の半神へとなっていく様が描かれています。
精霊を体内に宿す依代とそれを操る操者。その宿した精霊の力を使い国を守る神獣師、精霊師。大国に挟まれ精霊の力で自立独立を守るヨダ国。
設定が壮大かつ緻密で、その上で魅力あふれる登場人物達が己の宿命と唯一無二の半神の為にもがき生き抜きます。
この青雷の巻は物語のスタートでありこれから通奏低音の様に全てのエピソードの根底に流れ、それらを結びつけまとめ上げる主人公2人の話でもあります。
とにかく、読んでください。これからガッツリ物語は進み、読者は首根っこを掴まれ引き摺られていきますから!