人外嫁入りファンタジー。
BL初心者の私には、このキャッチコピーがどういうものか全くわからなかったのですが、作家先生の前作が大好きで今回も購入しました。
お話として奥深く、いわゆるBL要素ではないいろいろなテーマも組み込まれており、読みごたえがすごいです。純粋に物語が面白く大満足の1巻です。
登場するキャラクターもそれぞれに魅力があり、ひとりひとり深掘りされていくなかでさらに思い入れが強くなりそうな予感です。続きが楽しみですし、長く読み続けたい作品です。
エッチなシーンはほぼゼロで、ここはもしかすると好みが別れるかもしれませんが、わたしはむしろそれがいいとさえ感じたました。急がずにゆっくりゆっくり心の交流が描かれて行くことに期待しています!
絵も美しく細部まできれいです。音や温度まで伝わってくるようで五感で楽しめる作品でもあります!
単行本の言葉に加えて新しい台詞や言葉も入り、ドラマCD初心者の私でもとても聞きやすかったです。そのうえ、声や音の凄みがより物語の世界へ誘ってくれるというか…ぐいぐい引き込まれる印象でした。他のドラマCDは聴いたことがないのですが、雨や海の音や場面のBGMなども聞こえてきました。これがまた効果的で、ドラマCDってすごい!と感動しました。
お気に入りのひとつは最終話の、夜を過ごす場面。ふたりの「夜」が「恐ろしさ」から「温かさ」に変化するところ。不覚にも泣きそうになりました。ここはひとりで単行本を読んだ時よりも、はるかに好きになった場面。最高のシーンです。声も混じり合い、まさに「君の夜に触れる(君の温かさに触れる と読むのかも…。)」でした。
中心人物ではありませんが、好きなキャラクターがいます。作品のなかに登場する女中のかよさんは、きっとすごく察しのよい勘のよい賢い女性なのかもしれません。ふたりの関係や、それを見守る聡さんの気持ちをさりげなくくんでいるように思います。ああいう女性素敵です!
想像力を刺激してくれる作品です。絵のチカラも手伝って、想いをめぐらしながら小説のように読める一冊でした。
何名かの先輩レビュアーさんが書かれていらっしゃるように、千夏くんの過去は?千夏くんの家族は?佳澄さんと聡さんの関係は?など作中で明言されていない部分があります。「全部を細部までちゃんと描いて欲しい!」という方には確かに物足りないのかもしれません。
しかし、わたしは反対に描かれていない部分をいろいろに考えたり解釈してみたりしながら読み進められるのがとても面白かったです。
またこの考えや解釈も、読む時々によって(読み手の心もち?その時の健康度合い?読み返した回数?みたいなものによって)変化するのです!まさに小説のように、「遊び」をつくることによって、もしかすると読者に味わい方を委ねてくれているのかな、と思っています。良い意味で「描かれていない部分」が残されていますから、続編や読みきりスピンオフなども!全力で、わりと本気で期待しているところです…笑
暗くて苦しくて重くてじめじめして。
ひとりで過ごすただひたすらに長い長い夜。
そこに朝日が射し込む場面でお話が閉じます。
この後、ふたりがどう生きていくのか、それぞれの家族とどう向き合い続けるのか。それは本編には描かれていません。読者の想像に委ねてくれているのかもしれません。
生きていると言葉や理屈では説明がつかないことが山ほどあって、それをどうにか着地させながらなんとか生き続けているのかなと思います。あえて残された「あいまいな部分」を考えながら読めると何度でも読み返したくなります!
もより先生の作品を、もっともっと味わえる自分になりたい!