読んだのは去年だけど今更レビュー。
設定、イラスト、ストーリー全てが完璧な漫画だった。まずファンタジーものって設定を練りすぎて読者を置いてけぼりにすることが多いイメージたけど、盛り過ぎることなく上下巻完結ものとしてちょうど良いラインに抑えられていて作者さんの力量が伝わった。画力もファンタジーものに相応しい綺麗さで、表紙や扉絵だけでなく全体を通してレベルが高くて驚いた。特に序盤のカラー絵は息を呑むほど綺麗。
王道な歳の差純愛ストーリーを基盤に王位継承を巡る争いも交差し、BL抜きにファンタジーストーリーとしても楽しめる。また、出てくるキャラクターがどれも魅力的。メインの褐色美少年ハーリドと年上儚げ傾国美人イリヤはもちろんのこと、サブキャラもキャラが立ってて好き。特に好きなのは王道な設定でありながらも、それぞれステレオタイプからは逸脱している点。序盤のハーリドはいわゆるショタ攻めで可愛さもありながら王に相応しい男前な性格で、イリヤもオメガでありながら王后らしい強さを持っている。このギャップが他の作品と比べて卓抜している理由だと思う。
あとは、終わり方がファンタジーBLのラストとして模範解答では?と思うくらい好き笑
とにかく全員読むべき!
胸糞悪い&ショタ受けどちらの要素も好きだけどあまり刺さらなかった。ただ可哀想なだけで勧善懲悪でもなければ倫理観がないし攻めザマァな展開がなかったからかもしれない。大人側が苦しまないと、自分の倫理観的に見るに耐えないというか、、。あとは刺さらなかった要因として1番大きいのは、ほぼ全ての話で、攻めから受けへの愛が感じられなかったこと。ショタの時点で犯罪だから愛があれば大丈夫!とはならないけど、気持ち的な問題で。
BLっていうより成人向け漫画を描きたかったのかな?といった印象。最後の「白と黒」は藤くんも小笠原くんも可愛いし、お互いにしっかり愛がある正統派BLで良かった!
全体的にBLといっていいのか分からない内容だけど、好みのストーリーもあったので中立評価です。
なんだこれ!!久しぶりに次の展開がわからない漫画に出会った。
表題作「二世の息子」
二世の息子が神の子と禁断の恋に落ちる話。
神の子は人間であった。しかし、時に人は他人に対して理想像のようなものを作り出してしまう。そういう点では人間も神の子になりうるのかもしれない。宗教を忌んでいた主人公すらもそれは同じだった。
ラストは好き嫌いが分かれそうだけど私は大好き。あのエンディングだからこそ、2人の心のつながりの強さが引き立つと思った。あとは、人を信頼するってある意味宗教みたいなものだなあーと思ったり。
普通のハッピーエンドではないかもしれないけど、ある意味では2人だけの世界エンド。
モブの言ってた頭おかしいよアンタらって言葉がまさに2人の関係性を表してる。側から見て狂ってても、逆に唯一無二さがあって良いよね。
耽美で仄暗くて胸に何かつっかえる感じ、ガロ系っぽさも覚える。作者さんの他の作品も読んでみます。
読み終わった後はすごく胸が苦しくなる。けど2人にとっては紛れもなくハッピーエンドだと思う。だって帯にもある通り「ずっと2人でいられることが1番なハッピーエンド」だから。
世間一般的には、生きて幸せに暮らすことがいちばんのハッピーエンドだろう。だが葵兄ちゃんと福太にとっては、ずっと2人でいることが叶うなら、死ぬことすら構わなかったのかもしれない。葵兄ちゃんが死に、共に生きるということが叶わない状況の中で、心中という選択肢だけが唯一の幸せの手段であった。このラストをバッドエンドだと断定するのは、まるでその幸せを否定するようで私にはできない。
作者の方は、結末のあの瞬間がすべてだと仰っていたが私もそのように思う。共に生きるということは、共に死ぬことでもある。来世や並行世界で生存する2人を見たいとは思わないと言ったら嘘になるが、共に死に、共に生きたことを示したあの瞬間が2人にとっての全てなのではなかろうか。
読むたびに人生ってなんなんだろう、人間はなぜ営んでいくんだろうと考えさせられる。BLという枠には収まらない。
営みは作り出していくことだと考えているが、この作品は攻めが早々に死んでしまうし、年月をかけて自然は荒んでいくし、人間は機械に侵食されて生物学的な人間としての要素を失っていく。作り出すどころか失っていくものばかりだ。しかし、そんな中でも主人公は死んだ元恋人と似たロボットへの感情を変化させていく。姿形だけ似たロボットは元恋人とは別物かもしれない。だが、元恋人との出会いがなければロボットとの出会いもなかった。環境がどれだけ変わろうと、人の記憶や感情だけは途絶えることなく地続きである。最後、「とらさん?」と呼びかける声は空耳で、トラはヒカルBには会えずに死んでしまったかもしれない。しかし、それでも500年間の営みに全くの意味はなかったとは思わない。
面白かった、それに限る。
100ページにも満たないのに、ここまで人を惹きつけるのは素晴らしい。短いからこそレビューは見ずに読んでほしいてす。
タイトル通り「Kの支配者はどちらだったのか」を読者に考えさせる作品。読み手によって解釈が分かれそうだ。一つ言えるのは、互いに感情の奴隷であったということだろうか。死してなお相手を縛り付ける感情。仄暗くてアンハッピーでも、一般的な恋慕でなくても、それは確かに2人だけの理想の世界であって、闇BL好きとしてはたまらない。
余談だが、Kと聞いて思い出すのは某近代文学小説の登場人物。彼もまた色恋に、他人に、そして自分自身に振り回されたことに絶望して自殺した。意図があっての名付けなのかと思うほど彷彿とさせる。
画力、ストーリー、萌えポイント、全てにおいて文句なしの神。久しぶりにいい漫画に出会えた。読後は哲学者を読んでみたくなる。だけど、その要素は哲学に興味がない人でもわかりやすく、頭に引っかかることはない程度。実際、自分自身も哲学はそこまで詳しいわけでもないのだが、作中の描写で十分世界観に入り込めた。非BLとしても好評価できる作品だが、BLとしての萌えポイントを語るなら2人のキャラ設定が良かった。正反対の2人だけど、深層の部分で認め合っている2人。それを「魂の片割れ」という言葉で表現するのが、この作品ならではの表現で刺さった。魂の片割れは全く同じじゃなくたっていい、むしろ異なっているからこそ魂の片割れなのかもしれない。