ココアしか出さないカフェの店員、千波と千波のカフェ「cafe faro」にやってきた渚の話です。渚はちなみにどうしても話したいことがあるのですが、なかなかその肝心の話をしようとしません。
千波は周囲に自身がゲイであることをカミングアウトしている青年で、千波と千波の母との間にはセクシャリティーのことでわだかまりがあります。
渚が肝心な話、千波の母のことを千波に伝えたとき、私も千波の母のセクシャリティーのことに全く気がつきませんでした。千波の母が感じていた性的違和、生きづらさ、あのときあんなこと言わなかったほうがよかった言う後悔、祖母の後悔が祖母の最後を前にして一気に押し寄せてきました。
受け入れる、好きになる自由もそうではない自由も人それぞれですが、みんながあと10年、20年遅く生まれていたら、多様性が当たり前の時代に生きていたらと願わずにはいられない作品でした。
大学2年生の「みーくん」こと海武と「カヤ」こと佳弥は動画を撮影し、ネットで配信する大学生ですが、その再生数は今ひとつです。あるとき、カヤの動画に海武が出たことで、視聴者から「BLっぽい」と言われ、二人は本格的にビジネスBL動画を撮ることになります。
海武は表情にこそ出ないのですが、実はカヤに片思いをしている男子です。カヤからの突然のどっきり告白もすべて動画のためですが、内心はとっても嬉しいのです。
一方、カヤも海武に対する気持ちは「好き」でしかないので、二人は両片思いの関係です。
海武が「好き」をずっと顔、態度に出さないので、私は気持ちが通じ合う瞬間をいつかいつかと待ちわびていました。
あまり再生数が伸びなかったときから二人の配信動画を見て、二人を推していた女性は、最初から気持ちが通じ合う瞬間までを見届けていました。海武、カヤのことをネットの隅っこの楽園と言っていましたが、共感しかないです。ネットから仲良くなる人もいて、ネットの世の中が垣間見えるようです。