大学生の大吾と双子の兄弟である慎と仁は、いとこの関係です。
仁が実家を出るため、大吾は春から深町家の仁が使っていた部屋に住むことになります。
大吾は仁のことが昔から好きなのですが、仁がおおらかなせいか、その気持ちに気づくことは難しいようで、大吾と仁は入れ違いになってしまいました。
しかし、仁の双子の兄である慎が、大吾の事を性的な意味で好きなので、ひとつ屋根の下で仁の過剰とも言えるスキンシップが始まるのです。
慎も仁は双子なので、顔も声も同じなのですが、性格がまるっきり違います。慎の俺様、傲慢さやセクハラ発言にうんざりしてしまう大吾の気持ちもよく分かりました。だけど、大吾がだんだん仁を好きになってきて、ちょっと不思議でした。
棗と葉介は幼なじみですが、棗は葉介の隠し撮り写真を持ったり、葉介の部屋に盗聴器らしきものを仕込んだりと、幼なじみ、想い人というよりかは、こじらせた思いを抱いているようです。
葉介は棗の行動を知り驚愕し、棗から逃げようとするのですが、葉介は棗と学校も一緒なため、どこでも顔を合わせてしまうのです。
棗は葉介と小学生で出会いますが、小学生から「葉ちゃんの成長日誌」をつけて、58冊まで続いているようです。もう筋金入りのストーカーだと思いました。
葉介が単純なせいか、ふたりは友達以上の関係になっていきますが、棗もちゃんとした恋愛は初めてだったのですね。自然体でストーカーができる棗の気持ちはなかなか理解されないかもしれません。
誠治はかつて警官でしたが、今は退職して商店を継いで、一般市民のおじさんです。一方誠治が警官になるように勧めた晋は無事に警官になり、今やすっかり警官の制服が似合うようになりました。
誠治は警察官のときに、不良に絡まれている学生だった晋をかばったために不良に殴られてしまいましたが、時は巡り、晋は夏祭りの日に誠治をかばうためにコンビニ強盗に殴打されます。何の因果かと思いますが、警察官の仕事は誠治が言うように危険を伴う仕事ですね。
晋と誠治はかなり年が離れていますが、晋はずっと誠治のことが好きなのです。無事に長い片思いは終わりますが、年の差よりも誠治の包容力が心に残りました。
交番勤務をしている新人警察官汐見と彼の先輩である佐野とのお話です。佐野が汐見に誤って水をかけてしまったので二人の出会いは最悪です。その上汐見がクール、無口、仕事以外のことは話したくないタイプなので、相性が悪い感じがよく伝わってきました。
二人はその後バディーになり、警察官としての仕事ぶり、お互いの仕事に対する思いや姿勢が分かってきて、先輩、後輩としての関係がぐっと近くなってきます。
困っている人を絶対に見捨てない佐野と生真面目過ぎるほどの汐見ですが、佐野の祖父との二人暮らし、汐見の当て逃げ犯人に対する思いが分かると、二人の気持ち、仕事ぶりに納得でした。汐見の誕生日も街の困っている人を助けてばかりいる姿は、二人ともこの仕事が天職なのだとすら思いました。
佐野が汐見に「見つけてくれてありがとう」と言いますが、それは一人じゃないよと言ってくれた、証明してくれたような台詞だと思いました。
白咲睦月は、白咲コーポレーションの社長の息子であり、「社長の息子」であることを理由に周囲の人に横柄な態度で接している子どもでした。同級生で双子である快と玲にもその態度は例外ではなく、お金持ちの権力を利用して命令をするのです。
白咲コーポレーションは倒産し、睦月はお金持ちの息子からアルバイトを掛け持ちするほどの貧乏人になりますが、アルバイト先のコンビニに現れたのが大人になった快と玲でした。
快と玲は睦月にハウスキーパーと体の関係を求めますが、昔いじめられたことを理由に体の関係を強いて復讐しているわけではないのです。
かつて睦月が快と玲を守ったときの恩が、今巡って睦月を守ってくれているのです。きっとこの関係は三人にしか分からないのだと思います。
猛暑の真っ只中に律の家のエアコンが壊れて、律は高野さんの家に一時避難しています。大人の関係よりも猛暑の中で二人が体調を崩さないかが心配になりました。
一方、猛暑で困ったことになったのは律だけではありません。
横澤は、桐島、桐島の娘のヒナと水族館に行くのですが、野外でサングラスをかけていた横澤がヒナと一緒にいることで、警官から「不審者」と間違われ職務質問をされてしまいました。
桐島は大笑いしていましたが、他人に桐島と横澤の関係を説明するとなると、二人の関係、その名前はどう説明したら良いのか迷ってしまいました。ヒナは「私の大切な人」と言っていましたが、桐嶋、横澤の関係も難しいものですね。
律の家には律の幼なじみの尚がいますが、尚は、友達以上の関係、恋人として付き合いたいと迫ります。しかし、律は尚からいきなり迫られたこともあり尚を拒絶してしまいます。
律はやはり高野さんが好きなのですが、尚から迫られたことでそれがはっきりしてしまいます。
尚は、律がイギリスに留学していたときの友人ですが、傷ついた律を支えてくれた尚は友人以上の関係に見えます。尚は本当は自分に律の気持ちが向いてほしかったのに、今まで友達でいられるギリギリの範囲を超えないようにしていたことがよく分かりました。
バイトで忙しい雪名と年中忙しい編集者の木佐さんは、近くに住んでいながら会えない関係になっていますが、雪名がウサギさんの絵本作品の絵を担当して、絵本作家としても活躍しだします。 雪名と木佐さんが見た夕焼けは、雪名からしたらどんな色に見えるのか、彼の目を通したらどんな絵になるのかが、私も木佐さん同様に不思議に思いました。
医師である白崎は、妻を亡くして7年になります。その上息子も大学進学を機に家を出ているので、今はひとりで暮らしています。
白崎が診察した黒江は、白崎のことがタイプなのだそうです。
二人は居酒屋で再会し、いつしかお互いの家を行き来するような仲になります。
黒江は独身なので誰を好きでも気にならないと思いますが、白崎は妻にわだかまりを感じていながらも好きなことに変わりはなく、黒江と白崎の二人の関係を読んでいくうちに混沌としているのかなとも思いました。はっきりした理由はないけれど、きっと「好き」な気持ちは混沌、曖昧な気持ちの中で揺れ動いているものなのかもしれません。白崎の中年、第二の人生の中で性を考えてしまう作品です。