作者様のファンで、このような作品を心待ちにしていました。
ただでさえ戦争という難しいテーマを扱っていますが、この作品では人間の汚い感情、弱さを描くことにも真摯に向き合っています。
だからこそ、その時代に生きた人間のきらめきがひときわ輝いて映ります。
この作品の何よりも好きなところは、登場人物がみな弱さを持っている、誰ひとりとして完璧ではないその生々しさです。
生き生きとした筆致も相まって、単なるキャラクターの枠に収まらず、全員が一人の人間として描かれているような臨場感があります。
かっこいいだけじゃない、完璧じゃない人間達が織りなすからこその魅力は言葉では語り尽くせません。
重厚な人間ドラマを観ているようでした。今後の展開がどうなるのか、ずっと楽しみにしています。
この作品に出会えて本当に良かったです。
漫画としての完成度が非常に高い作品でした。
少年たちがきれいでかわいいのはもちろん、舞台である陰鬱な田舎の雰囲気が画面全体で表現されていてシンプルに漫画が上手いな〜と感動させられます。
ストーリーは廃校を防ぐために売春する少年たちのオムニバス。
個人的には兄弟のお話が良かったです。
弟ミツキは兄キヨと恋人同士になりたいのですが、毒キノコの幻覚でキヨから紡がれた言葉がとてもきれいでした。
「恋人より兄の方が美しい言葉だと思う」
「恋人より弟の方がずっと甘い響きだと思う」
「恋人よりずっと贅沢だ」
ただ、これは描写的にミツキの幻覚だと思われます。
恋人になれないから兄弟の方が尊い物だと思い込もうとしてるのかな……という切ないシーンでもあります。
一度読んだだけでは読み解けない文学的な深い作品でした。
何度も読み返したくなります。
作家さんの他の作品もぜひ読みたくなりました。
舞台であるww2時代の歴史が大好きなので一気に読んでしまいました。
当時の民族的アイデンティティ、アプヴェーア上層部が反体制派だったことまで絡められており、創作物として扱いづらいであろう時代にもかかわらず細かな描写が光っています。
軍服は各々で仕立てていたというのも史実ですので、間男さんの毛皮のコートというディテールの細かさにもぐっときました。
金髪美人と軍服の組み合わせも最高です……
パルチザンのサーシャと国防軍人イリヤのハッピーエンドでしたが、どうにも食えない間男クラウスの存在感が際立っていてそれもまた良かったです。
上官と副官の密な関係性が大好きなので、本命二人と同じくらい心惹かれる組み合わせでした。
通行証を与えたクラウスの憎めないキャラもとても好きです。
後書きで「歴史ファンタジーとして書いた」と述べられていたように、歴史物要素は詳しくなくても楽しめるようになっていて、物語の本筋はハッピーエンドで終わります。
しかし、M/M作品のような重苦しさのある歴史物としてのBLもぜひ読んでみたいです。
軍服、軍人、ミリタリー欲が存分に満たされると前置きした上で、この作者様によるさらなる歴史物BLに期待してしまいます。
余談ですが、参考文献で有名タイトルが挙げられておりしっかりと調べられた作品であることにも感動しました。
軍服、歴史、ミリタリー好きですが、なかなか現実世界を舞台とした作品と出会えなかった中、やっと見つけた一冊です。
敗戦を目前とした1945年のルフトヴァッフェと大好きな要素が詰まっていて、短編ながら夢中になって読みました。
消耗していくパイロットと、彼らを乗せる機体を守る整備兵は、それだけで運命共同体といった熱い関係性です。
整備兵のフェリックスが祈るような気持ちでバルドゥルの機体を見送り、出迎えるシーンに何よりも胸を打たれました。
全体的にあっさりした雰囲気ではありますが、根底には深い絆で結ばれていることがしみじみ伝わってきます。
実際二人は惹かれ合っているわけですが、それだけではない「軍隊的な関係性」に改めて特別なものを感じさせられました。
イェフェム族とアジム族それぞれの部族の文化といった世界観に、圧倒的な説得力があります。
ファンタジー作品ですが、すんなりと舞台設定を受け入れられました。
アジム族の男性であるカヤが花嫁とされること、そしてイェフェム族族長三男のユティと結ばれるまでの物語に違和感がまったくありません。
本作で野原耳子先生の作品にどっぷりハマってしまいました。
カヤの壮絶な過去を受け止めるユーティは一見おおらかで柔和な青年ですが、一筋縄ではいかないところも魅力的です。
愛するカヤのためなら手を汚すこともいとわないギャップに、読んでいてハラハラするほどでした。
このユーティの一面を縁者であるヨヨから見た短編も収録されているのですが、併せてユーティという人物の掘り下げができるお気に入りのエピソードです。
先にも述べたとおり、本編が素晴らしいのはもちろん番外編も非常に良いところがたまりません。
二人のその後の生活を垣間見てほっこりした気持ちになりました。
この一冊でもとても完成度の高い作品でしたが、この世界観で二人の続きの物語をさらに読みたくなります。
何度も読み返しているお気に入りの一冊です。
映画を先に観て、本書を読みました。
映画版がいかに原作へ忠実につくられていたのか感服させられました。
本作の映画版が良かったという方はぜひ原作も読まれてほしいです。
物語はエリオの一人称視点で進行します。
オリヴァーの態度に一喜一憂する様子がときにわかりづらいほど婉曲に描かれており、まさに少年の心そのままを文章に起こしたような美しさに感動しました。
好きだからこそ嫌いになってみたり、それでもやっぱり構われると嬉しかったりと、エリオの揺れ動く心がみずみずしく表現されています。
小説としても非常に完成度が高く、文章の美しさだけでも十分に読む価値があります。
もどかしい期間を経てやっと思いを遂げる二人ですが、時代背景からハッピーエンドとはいきません。
映画のエンドロールを観たときのように、胸が締め付けられるような切なさがあります。
しかし、エリオとオリヴァーを囲む人々の暖かさは彼らが十分痛みを感じられる手助けにもなったのだろうと感じられ、救いがありました。
個人的に映画→原作小説の順番での鑑賞がおすすめです。
映画の映像美は美しい文章によって呼び起こされ、シーンごとのエリオの本心を小説でより深く触れられます。
一般文芸なので文体は硬く、きっちりとしています。
そのぶん読み応えもあり、文量の多い作品ながら最後まで一気に読んでしまいました。
成績優秀ながらも一匹狼のリチャードから強い執着心を向けられるいじめられっ子のジョナサン。
だんだんとその執着心が道理を外れた方向に向かっていく様はおそろしくもあります。
それはそれとして、少しずつ二人の距離が縮まりスキンシップが激しくなっていくところにはパブリックスクールモノならではの萌がありました。
本作のメインはリチャードとジョナサンの関係性ですが、サブキャラクターの個性も強く、いろんな要素が詰め込まれています。
もともとジョナサンと仲が良かった友人の嫉妬、双子同士の特別さ、教師と生徒などなど、メイン二人以外にも刺さる要素は多いのでは。
パブリックスクールモノがお好きな方、骨太のストーリーを求めている方には外せない作品です。