最終巻まで一気に読んでしまいました。
こういったテイストの作品は、好きか苦手かで言ったら確実に苦手な部類に入るのですが、そんな感情面の引っかかりを飛び越えて読ませるだけの力がある、素晴らしい作品だと思います。
心理描写が秀逸で、登場人物の言動に納得感があり、どんどんストーリーに引き込まれます。
一人ひとりに選択肢が与えられているようで、結局選べる答えはひとつしかないような場面の連続で、なるべくしてなったラストだと思いました。
一見すると光の執着の異常さに目がいってしまいますが、心が満たされないゆえのものだし、春樹も優しいように見えてダラダラと関係を続けて光を増長させていく…
最終的にはふたりで同じ罪を抱え、共依存のようになっていったのが切なかったけれど、私の中ではこれ以上ないほどにしっくりときました。
途中から英先輩に気持ちが寄りすぎてしまい、彼視点の話がことごとく「番外編」とつけられていたのがつらかったです。
母の法事の後、ふたりでいるところを見かけた先輩の心情を思うと胸が締めつけられます…彼には何も知らないままでいてほしかった。
ボーナストラックがなければ間違いなく"神"でした。ふたりの行く末には、少しだけ想像の余地を残してほしかったです。
“ネギ談義に花を咲かせる男子大学生”という導入部分が面白かったので、続きが気になり購入しましたが、それ以降は特にこれといった引っかかりポイントもなく、さらっと読み終わってしまいました。
たぶん他の作品なら3話くらいで終わりそうな内容を、6話構成に引き延ばしてなんとかコミックスの体裁に持っていった感じです。
その割に初エッチの途中で最終話が終わるので、尻切れトンボ感がすごい。
続きは描き下ろしで!というのはよくありますが、描き下ろしも単純にページ数の足りなかった続きを描きました、みたいな感じだったのでプレミア感はなかったです。
表紙の攻めのビジュアルが好きだったのですが、実は彼には秘密があって…という話で、3話以降は外見もがらっと変わってしまうのでそれも残念でした。
それも受けと似たビジュアルなので、区別も付きづらく…。
タイトル通り「かわいい」がテーマなので、確かに攻めの大型ワンコみたいなところはかわいいし、それにキュンキュンする受けの気持ちもよく分かるのですが、「~~しててかわいい」「~~なところがかわいい」とことあるごとに説明してくれるので、いやそれは私たち(読者)がちゃんと読み取るのでわざわざ仰っていただかなくても大丈夫です…という気持ちになってしまいました。
言葉に頼らず、もっと描写で魅せる部分があっても良かったかな。
あと、これは完全に個人の感覚なのですが、受けのフルネームが「東雲 神楽(しののめ かぐら)」とめちゃくちゃファンタジー感が強いもので、現代の男子大学生という世界観からはすごく浮いてしまっていて最後まで物語に入り込めませんでした。
寺の息子の二卵性双生児×年上幼なじみの、エッチで可愛い作品です!
表紙の印象から、ドロドロした三角関係のお話かな?と思ったのですが、終始受けが攻め二人に溺愛されまくるというハッピーで楽しいお話でした。
双子のビジュアルの対比が良くて、この一冊で色々な組み合わせが楽しめるおトクな作品となっております。
クールな兄・一心と、一見チャラそうな弟・二愛。二卵性の双子です。
二人とも幼なじみのひなのことが大好きで、幼い頃から全力のアタックを繰り返しています。
そんな二人の愛情を一身に受けるひなですが、両親の海外赴任をきっかけに、彼らの実家であるお寺で居候生活をしています。
霊媒体質で悪いものを引き寄せやすいひな。
ある日強い力を持つ霊に目を付けられてしまい、その影響からか体に様々な異変が起こります。
苦しむひなを救うため、一心と二愛との三人で、除霊と称したセックスをすることになり…。
性的なことっていわば生命力の塊みたいなものなので、それと真逆の世界にいる霊は、そういったものを苦手とする、という俗説はよく聞きますが。
とにかくエッチシーンが多いです。
霊障によって体が敏感になっているので、初めてにも関わらず気持ちよくなってしまうひな。
素面ではないとはいえ、受けからも求めている感じが、無理矢理感がなくてよかったです。
バリエーションも豊富なので、非常に満足いたしました。
一生懸命に二愛のものを頬張るひなちゃんがまぁ~エッチ。
3Pモノって嫌いではないのですが、攻め2×受け1だと、一方の攻めと結ばれてもう片方は蚊帳の外、みたいな話も少なくないんですよね。
そういう場合、だいたい愛着がわいてしまった方じゃない方の攻めとくっついてしまい悲しい思いをすることが多い私は、二の足を踏みがちで。
でもこちらの作品は、あとがきで先生もおっしゃっている通り、ひなはどちらも選ばずに終わります。つまり、最後まで三人でのラブラブが堪能できるんです!
攻め二人の扱いも平等なので、三人で致す時は必ず両方の挿入シーンがありますし、受けの心がどちらかに傾いてる描写もありません。
そもそも「どちらかを選べよ」みたいな展開もないので、本当にフラット。
一心×ひな、二愛×ひなの個別のエッチシーンもありますが、抜け駆け的なものではなく、止むに止まれぬ事情があって…というものなので、安心して萌えられます。
ホラー要素も若干ありますが、直接的な表現はないので苦手な方でも大丈夫だと想います。
それよりもとにかくひたすら三人でイチャイチャしているのが印象的。
ボリュームもたっぷりで、疲れたときに癒やされる甘々作品でした。
あえて言うまでもないかとは思いますが、とにかく絵が美麗…!
とても丁寧に、しっかりと描き込まれていて、眺めているだけでもうっとりしてしまいます。
キャラクターの表情も素晴らしく、能面のような攻めと感情豊かな受けの対比がとても映えます。
表題作は、表情筋が死んでるサラリーマン×道に落ちてたイケメンフリーターのほのぼのラブストーリー。
和久(攻め)は商社に勤める会社員。
徹底した面倒くさがり&事なかれ主義で、コミュニケーションも表情筋も常に省エネです。
そんな彼ですが、ある日、帰宅途中に道端に倒れ込んでいるハル(受け)に遭遇。
一度はスルーしようと決めてその場を離れかけたものの、放っておいた方が逆に面倒なことになるのでは…と、彼に声をかけます。
バックパッカーをしているというハルに何故か懐かれてしまう和久。
しかも、「仕事が見かるまで泊まらせてほしい」とお願いされ…。
受けのハルくん、ぽやぽやしていてちょっとずれたところがありますが、笑顔がとっても可愛い男の子です。
知り合ったばかりの男の家で自慰行為をおっぱじめてしまうくらいには自由奔放で、悩みごとなんて何もなさそうに見えますが、つらい過去を抱えていて。
自分の居場所を探すためにバックパックひとつで放浪生活をしています。
一方の和久も、定住して安定した職に就いてはいますが、そこにはなんの意義も感じていません。
ハルと出会って、今まで眠っていた部分の感情が刺激されたことで、少しずつ態度や行動に変化が出てきます。
ハルの新しいバイトが決まったときの、慈愛に満ちた笑顔にはキュンとしました…!
絵がお上手ということは、当然(?)エッチシーンも眼福です!
一宿一飯の恩として、体でご奉仕しようとするハル。
初めこそなんだかんだで拒否する和久ですが、結局流されてしまいます。
いや、あんなに可愛い子に乗っかられたら断るなんて無理ですよね。
修正は分厚めの短冊ですが、細部までしっかり描き込まれているので臨場感がすごいし、水気もたっぷり。
ハルの気持ち良さそうな顔にもグッときますし、セックスになるとSっぽくなる和久にもドキドキしてしまいます。
仲良くなってもお互いにずっと敬語のままなのもなんだかいいですね。
同時収録は、教師と元生徒の歳の差ラブです。
中学時代の恩師を追い掛けて教師になった受け。そしてその一途な想いに応える攻めがかっこいいです。
大人の余裕で落ち着いているように見える攻めですが、いい歳してずっと受けのことを想っていたあたり、彼も相当こじらせているようです。笑
攻めのビジュアルがあまり好みでなかったのでスルーしていた本作品。
いざ読んでみると、情報量の多さにただただ圧倒されてしまい、最終的にはそんな些細なことはまったく気にならなくなっていました。笑
舞台は『兄弟制度』のあるヤンキー男子校。
この制度に憧れて入学してきた新入生の黒須(受け)は、最初は瓶底メガネで素顔を隠していますが、実は超美形の女顔。
さらに、ヤクザの跡継ぎで、しかも本当の年齢は攻めの本堂よりもずっと上で…。
たくさんの設定がひと皿に盛り付けられた、まさに”萌えのデカ盛り”状態。
残念ながら、食べきれずに消化不良を起こしてしまいました。
ひとつひとつを取り出して見てみれば確かに面白いのですが、それがまったく相乗効果を成していなくて、とっちらかったまま唐突に終わってしまうんです。
『兄弟制度』も適切に調理したら絶対に面白いと思うんですが、結局はふたりが合法的にいちゃつくための装置にしかなっていなかったのももったいない。
攻めと受けのキャラクターもいまひとつしっくりきませんでした。
ものすごく硬派なイメージの本堂が、可愛い『弟』に骨抜きになって甘やかしてしまうのは分からなくもないのですが、所構わずキスしたりベタベタしたりするのも何か違うな…と。
そして、たびたび黒須のことを「守る」という言葉が使われ、それが最終的に本堂と黒須が一緒にいるための条件にもなるのですが、そもそも黒須はひとりでも十分強いし、力関係が浸透している学園で一体何から守るんだろう…?という疑問が生じてしまい。
結局は聞こえの良い言葉を使っているだけなんだろうな…という軽薄さが気になりました。
黒須も可愛かったり格好良かったりするときもありますが、基本的にヘラヘラしていて、人を小馬鹿にしたような態度が目立ち、あまり感情移入できませんでした。
当て馬の礼央の扱いがひどくて、ちょっと可哀想。
確かにイヤな奴でしたけど、無意識とはいえ好意を抱いていた相手に「お前とは死んでもキスしない」と言われたあげく、目の前で別の男とのイチャイチャちゅっちゅを見せつけられたら、そりゃ銃口を向けたくもなるよね…と同情してしまいました。
彼に対する救済がなかったのも、後味が悪かったです。
のどかな町のコインランドリーを舞台に繰り広げられる、ほんわかとしたお話です。
まさに”ゆるキュン”の名にふさわしい作品。
祖父から受け継いだコインランドリーを営む晃。
ある日、店を訪れた男子高校生の慎太郎と出会います。
徐々に仲良くなっていくふたりでしたが、あるとき恋愛事情の話題になり、晃はうっかりゲイであることをカミングアウトしてしまいます。
嫌われたかと思った矢先、再び店に現れた慎太郎は「俺、性欲あります」と言ってきて…。
慎太郎が今どきの男子高校生といった感じで、好感の持てるキャラクターです。
歳の割に落ち着いていて、どこか冷めたような雰囲気もありますが、晃へのアプローチはひたすらに真っ直ぐで積極的。
友達からスタートした関係ですが、徐々に段階を踏んで…なんてまどろっこしいことはせず、最初からトップギアでガンガン攻めてきます。
餌付けしようとしてみたり、隙あらば触れようとしてきたり、どさくさに紛れてほっぺにチューまで。(口は晃によって死守されますが)
もちろん言葉での愛情表現も欠かしません。
相手の良いところを見つけて、それをきちんと言葉にして伝えるって、簡単そうに見えて意外とできないんですよね。
それを平気でやってのける慎太郎。外見のみならず心までイケメンです。
そして晃に濁され躱されてもまったくめげない鋼のメンタル。
晃もまた、一目見たときから慎太郎をタイプだと感じていますが、相手は一回りほども年の離れた高校生。手を出すことなど許されないと、感情にセーブをかけてしまいます。
それに晃には、高校時代に部活の顧問に片思いをしていたという甘酸っぱくも苦い思い出があって。
慎太郎には同じ思いをしてほしくないと、彼の好意を思春期ゆえの気の迷いだと諭します。
年下にグイグイ来られてタジタジになっている年上がツボなので、終始キュンキュンしながら読ませていただきました。
どんなに冷たくあしらわれてもまったくめげない慎太郎の心の強さはぜひ見習いたいところです。
晃も年上のプライドでなんとか体面を保っていますが、もうかなりギリギリなのでは?笑
ゆったりとしたテンポで紡がれるストーリー。
まだまだ大きな展開はありませんが、ふたりが進展していく様子をゆっくりと見守れたらと思います。
『ゾンBL』の3巻です。やっと最新巻に追いついた…。
前巻での苦難を乗り越え、さらに絆を深めた千ヶ崎と三柴。
ラブラブ度もパワーアップしています。
もうね、すっごい甘い。あのコワモテの千ヶ崎が三柴にデレデレで、ベタベタに甘やかしています。
三柴も千ヶ崎に素直に甘えたり、積極的に奉仕したりで、気持ちが完全にダダ漏れ。
絵面はヒゲのおっさんと眼鏡の青年(言い方)なんですが、雰囲気は完全に少女漫画のそれです。
見ているこっちが気恥ずかしくなるくらいの幸せオーラ全開で、多くの人間がゾンビ化した危機的状況の世界だということをしばし忘れさせてくれます。
さて、3巻では新しいキャラクターが登場します。
研究所に保護された青年、岩楯。
ダウナー系の出で立ちに、腹の底が見えない言動をする男。不穏な空気を纏っています。
すでに前巻の最後に登場していた彼。
意味深な言葉を発して不敵に笑う姿を見て、「おっ、これは常人のふりをして研究所に忍び込み、内側から安全地帯を破壊する狂人設定のキャラクターかな!?」とワクワクしたものでしたが…。
蓋を開けてみれば、ただの私怨から三柴を逆恨みする小物で、ちょっと拍子抜けでした。
そして、ここへ来て突如サブヒロイン(?)に浮上した、三柴の友人の孝太。
1巻でゾンビ化し、三柴に撃たれて息絶えたと思われていましたが、実は急所を外しており、まだ生きているかもしれない…と。いや、ゾンビになっているから生きてはいないのか。ややこしい。
そして、三柴の血から作られた血清があれば、自我を取り戻せるかもしれません。
あー、そっち方向に舵を切ったか、と思いました。
BLあるあるの、やたら狭いコミュニティの中での複雑な人間関係…。
作品内では中学時代のエピソードしか描かれておらず、その後の岩楯と孝太にどのような交流があったのかが分からないので、岩楯がそこまで孝太に執着する感覚がピンと来ません。
でも、世界がこんな状況になってもなお一途に孝太を想っているところは、なんとも健気。
ピュア男子の片鱗が見えて、可愛く思えなくもないです。笑
現時点ではちょっと突拍子もなさすぎて、これがストーリーとしてどう展開していくのかが見えませんが、次巻へ向けて種を蒔いている状態なのかな?と前向きに捉えることにします。
個人的には、血清にゾンビになった人間を治せる効果が本当にあるのであれば、そんな貴重なものは有能な研究者や政治家に使った方が良いのでは…と思ったりもしますが。
それだと物語としては面白くないですよね。笑
でも、最後のページで夜の闇の中を彷徨っている孝太(らしき人物)の背中を見たら、もう何でもいいから彼を幸せにしてあげて…!という気持ちになってしまいました。
エロが少なめになり、修正もシーモアは3巻からほぼ白抜きになりました。残念。
2巻の展開が神すぎたので期待が膨らみすぎてしまったのかもしれませんが、大好きな作品ですので今後も追い続けたいと思います!
以前ちるちるの中で紹介されていたのを見てこちらの作品を知り、先日ついにご縁があって読ませていただくことができました。
オタクっぽい言い方をしてしまえば「死ネタ」なのですが、とてもその一言では片付けられないほど繊細で、とてもとても優しい物語です。
読み終えたときの、じわじわと染み込むような悲しさの中にかすかに感じる、なんともいえない爽やかな余韻。
人がひとりの人間の死に直面してから乗り越えるまでの、ひとつの答えを見たような気がします。
物語は、突然の事故でこの世を去った秀斗が、幽霊となって幽玄の目の前に現れるところから始まります。
生前はほとんど交わることのなかったふたりの人生ですが、実はお互いに密かに好意を抱いていて。
そのせいなのかは分かりませんが、秀斗は幽玄にしか見えません。
秀斗を成仏させるため、幽玄は残された未練を解決する手伝いをすることになります。
病弱ゆえに生に対して執着のない幽玄と、まるで人生のお手本のような生き方をしていた秀斗。
「未練リスト」を通して、今まで気にも留めていなかった事柄や、話したこともない人々と関わることで、幽玄の世界が少しずつ鮮やかに色付いていきます。
人の死を目の当たりにした人間はすべて、「グリーフワーク」と呼ばれるプロセスを経て、日常を取り戻していくと言われています。
否認、怒り、罪悪感…段階を追って次々に襲い来るさまざまな感情と葛藤しながら、途方もなく長い時間をかけて、最後は死を受け入れるのです。
秀斗の家族や友人が正しくそのプロセスを辿っていくなかで、しかし幽玄だけはその流れから外れたところにいます。
それは、幽玄にとっては、秀斗との関わりのほとんどが、彼が亡くなってからのものだから。
秀斗は今も目の前に存在している…その認識が、彼を現実世界から取り残させている。夏服のまま、時の流れに置いていかれた自分のように。
そう気づいたときの秀斗の表情が切ないです。
すべての未練を叶え、幽玄の隣で眠るように旅立っていった秀斗。そして彼が旅立ったことを知り、涙ながらに「おやすみ」とささやく幽玄。
“悲恋”と呼ぶにはあまりにも刹那的で、産まれたての雛のような恋心でした。
これは、幽玄にとっては“最初の恋”なんです。
皮肉にも、秀斗が一緒に見つけてくれた新しい世界は、どこまでも眩しくて。
そんな世界に身を置いていれば、いつかは幽玄も秀斗のことを忘れてしまうでしょうか。
あるいは、あんなこともあったなあ、と“思い出話”として語られるものになるかもしれません。
それでも、秀斗が生きていた証は確かに幽玄の中にあって、それはこれからの彼を形づくる礎となるに違いありません。
小さな痛みを大切に胸に仕舞い込んで、それでも前を向こうとする幽玄の強さに救われた気持ちになりました。
いま生きていることがどれほど素晴らしいか。大切な人に想いを伝えられることがどれだけ尊いか。
頭では痛いほど分かっているのに、どうしても人は過ちを繰り返す。
でも、それが人間らしさでもあるんだと思います。
ふたりの新たな旅立ちが、幸せなものになることを願ってやみません。
タイトル通りの内容ですので、もはやあらすじの説明は不要かもしれません。笑
攻めも受けもどちらも可愛くて、読み終わるとぽかぽかとした温かい気持ちになれます。
受けの晶の拗らせっぷりが切なく、とても共感できました。
長い間片思いをしていたのは、幼なじみの直人。彼女ができる度に律儀に報告してくる彼の言動に幾度となく傷付きながらも、関係を壊すまいと我慢を続けてきました。
大人になってからは、その場限りの関係で淋しさを紛らわせることを覚え、この感情とうまく付き合っていたのですが、ここへきて突然、直人から結婚と妊娠の報告をされ、気持ちはどん底へ。
まだ吹っ切れていなかったこともショックだし、大切な人の幸せを素直に喜べない自分にも嫌気がさしてしまい、自暴自棄に。
そんな折に訪ねて来たのが、直人の弟の春人。
酔った勢いで関係をもってしまい、とんでもないことをしでかしたと青ざめる晶でしたが、春人は意外にも晶に交際を申し込んできます。
幼い頃から晶と一緒に過ごしてきたのは直人だけではなく、春人も同じ。
兄のように慕ってよく懐いていましたが、それは恋愛感情からくるものだったんだと結論付けます。
一時の気の迷いだと思った晶は、罪滅ぼしの意味も込めて、春人の気が済むまで付き合ってやろうと決めます。
でも、恋人として一緒に過ごすうちに、直人とは違う春人自身の優しさや人柄に惹かれていきます。
年下なのに、圧倒的な包容力で晶を優しく包み込み癒やしてくれる春人の人間性が素晴らしいです。
作者様も春人のフルネームの印象を「全身ポカポカ人間!」とおっしゃっていますが、まさに名は体を表すという言葉が相応しい温かさ。
春人のご両親にも受け入れられて、一気に家族が増えて賑やかになっていく様子は見ていて楽しかったです。
一点だけネックだったのが、直人の彼女の存在感の強さ。
終盤に少し出てくる程度でまったく悪い子ではないのですが、何故か圧が強くて、私はあまり好きになれませんでした。
絵柄は全体的に安定していて可愛いのですが、突然サインペン一発描きかな?みたいな雑なコマが出てきたりして、かなり集中力を削がれました。
線のテイストというか細さというか、雰囲気は統一していただけるとありがたいです。
非常によく練られたストーリーだなと思いました。
すべての事象が複雑に絡み合っていて、え、こんなことも!?と思うようなことまでが伏線になっていたり。
ぜひネタバレなしで読んでいただきたいです。
情に厚い肉体派探偵×ホテルの敏腕コンシェルジュの、相互救済ラブストーリーです。
探偵業を営む黒瀬の次の依頼は、政治家の浮気調査。
その相手候補に挙がったのは、ホテルでコンシェルジュを勤める白石という男。
彼は、客のどんな依頼も確実に遂行するその能力の高さから「絶対に拒まない男」として知られています。
そんな白石ですが、ひとたび仕事が終われば、黒瀬の助手として探偵業の手伝いをしています。
かねてより白石に片思いをしていた黒瀬。
ひょんないざこざから、白石もまた自分を好いているということを知り、両思いだと浮かれます。
しかし、相手は調査対象の男。
疑わなければならない自分の立場と、惚れた相手を信じたいという気持ちの間で葛藤します。
白石もとい律は、最後までよく分からない男でした。
どこまでが演技で、どこからが本心だったのか。
同性愛者だということを理由に実の父親から虐げられ、引きこもっていた律。
部屋の外へ出る勇気を与え、自分の代わりに父を殴ってくれた黒瀬は、命の恩人ともいえる人物。
そんな黒瀬に対して、それが恋愛感情だと分からぬままに異様な執着を見せ、死にものぐるいで社会復帰を果たします。
コンシェルジュって、ものすごく大変な職業ですよね。
幅広い知識が要求されるのはもちろん、コミュニケーション能力も欠かせないし、何よりも常に新しい情報を仕入れて自分をアップデートし続ける意識の高さが必要。
引きこもりからそこまで至るのには、想像を絶するような努力が必要だったはず。
それをたったひとりの男のためにやり遂げられるのは、もはや恋という生易しい感情ではないかもしれません。
だんだん黒瀬に対して本性を現していく律でしたが、人のために泣けるところがある彼は、きっと根っこにある心が綺麗なんだと思います。
黒瀬は探偵に向いていないと言われるほど情に厚く、考えるより先に体が動くタイプです。
ハムスターにさえ並々ならぬ愛情を注ぎ、その死に涙する。
困っている人を見捨てない優しい心の持ち主で、復讐を果たすために近づいたのだとあざ笑う律を深い懐でしっかりと受け止めてくれます。
エッチシーン自体は多めです。
甘々ラブラブ!という感じではないですが、旅行先でのお互いの傷を癒すような、欠けたところを埋め合うような優しいセックスは見応えがあって良かったです。
なぜかほとんど下着を穿いたままでしたね。ずらし挿入がお好きなんでしょうか。