『スモークブルーの雨のち晴れ』で波真田かもめ先生を知り、他の作品も読んでみたいなと思って読んでみました。
一言で言うと、普通のBLです。
普通の高校生BLです。
世間の人達の漠然と思い描く、BLってこんな感じでしょ? っていうイメージと大体一致するんじゃないかと思います。
したがって、私の感想は、
うむ、BLだった!!
に尽きる感じがあるんですが、もっと詳細に述べるならば、恥の多い人生を絶賛送り中の花織くんのやらかしとかを全然笑ったり馬鹿にしたりしない蜂谷くんは癒しでした。あと、モノローグや背景描写に独特のエモみがあって好きです。
高校生BLを浴びるほど読みたい方にはおすすめです。
波真田先生の作品をコンプリートしたい方にも良いと思いますが優先順位は高くないんじゃないかと思います。
二次創作からBLに入って商業に興味が出たという人には【初心者向け】と称しておすすめするのはやめた方がいいと思います。たぶん予想を超えなさすぎてがっかりされます。むしろ高校生BLを殊の外好むというマニアタイプの商業BLファンの喜ぶ、上級者向けといったほうがいいでしょう。
(普通の学園ものの少女漫画を楽しんで読む人なら喜ぶかもですが、そういう人は少年漫画や青年漫画のオタクばかりの二次創作界隈では、レアキャラなんですよねー。)
めちゃめちゃネタバレです。
転生ものなんですがちょっと変わった設定でした。
前世では結ばれなかった二人が現代に転生して結ばれる的な話ではないのです。
謎の怪奇現象が起きて過去の世界と現代の世界がリンクしてしまいます。そうとは気付かない涼太は、隣のお宅の離れに住む病弱な青年の千鶴と一夏限りの交流をします。
ところが千鶴の死後、過去と現代の間の連絡が断たれてしまいます。悲しみにくれる涼太でしたが、彼のすぐ側にいる幼馴染の一生こそが千鶴の生まれ変わりだったのでした。
という世にも奇妙な物語。ですが不気味さや暗さはなく全編通して明るく爽やかな空気感の作品です。
過去と現在、あるいは彼岸と此岸のシームレスぶりは長野まゆみ先生の小説『天然理科少年』や『左近の桜』みたいな感じ。いつ時空を越えてしまったのか全く気付かないです。
長野作品とは全く雰囲気が違いますが、SFやホラーっぽいストーリーだけど怖くない話が読みたいという方にはいいかもしれません。
個人的には一生の正体があっさり明かされてしまう事とセンチメンタル不足がやや不満なのでこの評価なのですが、爽やかなお話が好きな方には刺さるかもしれないですね。
大学の先輩後輩のBLです。
冒頭で既に仲良しな先輩後輩の武井と柳。しかし柳は恋愛的な意味で武井のことが好きなのに、武井の方はいい友達とかアパートをホテル代わりに使わせてもらえて助かる〜くらいの感情の「好き」なのです。
武井が柳の部屋に勝手にサークルの仲間達を泊めたことで、喧嘩になった2人は……。
絵が可愛くキャラが立っているのですが、それだけに突然始まったストーリーに、なんだか知らない漫画の二次創作を読んでいるような気持ちになりました。
なんかいい感じの関係性だが、ここまでどんな経緯があって二人は仲良くなったのかなあ……と思いましたが原作が! ないのです! だってこれが原作だから。二次創作じゃないから……オォゥ。
というわけで微妙に何かが不発のような気分で最後まで読みました。
「先輩となら出来る気がするし」
の場面がお気に入りです、萌。
原作が読めれば完璧だったのに。いやだからこれが原作なんだってば。
会社員とコンビニバイトのダブルワークをしている晃一。そんな彼にコンビニの常連客「炭酸くん」こと礼持が拾った猫を飼えと押し付けてきます。猫のテンゴの世話を通して仲を深めていく二人ですが……。
苦労人ぽい晃一とお金持ちの礼持の金銭感覚や常識のギャップが面白く、二人のやりとりはかわいいです。
が、晃一がなぜダブルワークまでして平和な日々を望んでいるのかが謎すぎて気になってしまいまして。
多分貧しい家庭で下に弟妹が沢山いるんだろうなと想像したら、帰省先の実家には妹とお祖母さんしかいないし、実家に居る方が健康的生活を送れるようで、謎が余計に深まりました。
単に心配性とかマグロみたいに立ち止まったら死ぬタイプとかなのか? でも実家で静養したら元気になったから止まっても死ななそう?
とても気になります……。
あ、表紙のこの感じめっちゃ好きです。
コマ割りとストーリーのテンポが独特な作品です。集中して黙々と読みました。
高校生の一郎は隣に住んでいる職業不詳の男「ひととせさん」から好意を寄せられています。しかし一郎には恋愛がよくわかりません。というのも恋愛婚で仲睦まじかった両親が今や互いにいがみ合っているからです。父と結婚した事を後悔しているという母の言葉にショックを受けた一郎。そんな彼にひととせは優しく寄り添ってくれて……。
という、派手さのないヒューマンドラマ系で、奇想天外な事は全然起こらない淡々とした物語ですが静謐な雰囲気と心理描写がよくて、心がささくれている時に読むと癒されるというか慰められるような感じがします。
高校生の天谷は、朝同じバスに乗りがちなサラリーマンの井上が着けている指輪の下に隠されている秘密を知ってしまう。そこから妄想が暴走してしまい、井上の事が気になって仕方なくなります。
ひょんなことから井上と急接近した天谷ですが、一回りも歳の離れた大人の男が高校生と容易く付き合うと言うわけもなく……。
なんか、井上さんのビジュアルが絶妙きもちわるい感じなので、天谷の妄想があらぬ方向性に暴走していくのが、ちょっとわかる気がするなぁと失礼ながら思ったりとか。
しかも二人がただの行きずりの他人から知り合いに昇格した出来事が、どうしようもなく井上さんからのセクハラでしかないので、これはどうなってしまうのかと!
このご時世に!
インモラルな展開を期待していいのか悪いのか!?
と、実はそんなけしからん事を考えながら次のページをめくる手を止められなかった私は駄目な大人でした……。
〜ともあれ〜
なんやかんやあってこのご時世に相応しい感じの終幕でよかったです。
井上さんが思いの外まともな倫理観を持っていてよかった。思いの外とか言って申し訳ありませんけど。
でも百パーセント鉄壁のモラルをお持ちという訳でもなくついつい逡巡してしまうところもリアルでよかったです。
おまけページで明かされる、この二人は年の差の問題とかじゃなく本質的にかみ合わせが悪いということが良いです。そういう二人が出会って恋してしまってすったもんだする展開好きです。
高校生って、この歳になって見るとほんっとうに子どもなんだな、ガキんちょ意外の何者でもないなぁと思いますし、三十代もけっこう子供っぽい自己中心性を無邪気に温存しているものなのだなと感じるので、ご多分に漏れない感じでそんな風な天谷と井上さんに、まだまだ微妙に青春だよなぁ、趣き深い。としみじみ思いました。
デザイン事務所の先輩✕後輩のBLです。
お仕事の描写がかなりキッチリしている立派なお仕事BLです。打ち合わせしている場面がとってもリアルです。背景の描写がすごく丁寧で、細部までこだわって設定がなされています。
登場人物のお家の間取り紹介のある漫画が好きなんですけど、この作品の巻末に収録されている間取りは群を抜いていて、わぁすごーい! とリアルに感動のため息が出ました。
ただ、あまり萌えはしなかったです。私の感性の問題かもしれないですが、わぁかわいい! とか微笑ましい〜とか、ここのやり取り一生見てられる〜とか、心に刺さるとか琴線に触れるとかいう部分がなくて、さらっと読み終わってしまいました。
表紙からしてヤンキーが喧嘩三昧のスクールライフを送ってる系の漫画っぽいですが、微妙に違いました。
主人公の椿が対立した「イベリコ豚」という他校の不良集団はゴミ拾いのボランティア活動をしている団体です。そのリーダーのイベリコこと入江の腕っぷしに、椿は男惚れしてしまいます。
ヤンキー漫画っぽいのに全体の雰囲気がふわふわしていました。なんかちょっと気の抜けた感じの描写が癖になりそうです。
入江と椿のファーストキスシーンが可愛いくて萌えました。
入江と椿のカプはゆるふわな感じで、同時収録の吉宗と源路のカプは偽装カップルから本気になっちゃう系で、ちょっと色気が高い感じ。吉宗が謎めいた感じで、強面の源路が振り回され惑わされているところがいいのです。
吉宗の過去エピソードは、急にシリアスで雰囲気の落差に風邪を引いてしまいそう。いきなり別の漫画が始まったのかと思いました。でもこういう切なくてビターな感じの物語もいいですね。
まるっと表題作かとおもいきや3本立てでした。
絵といいストーリーといい癖強めです。
表題作『二世の息子』
「宗教二世の男の子@因習村」といった感じのストーリーです。わりと予定調和で進んでいくように見えて予想外の展開。ラストはこれは何といったらいいのか。本人達がよければいいのかな……。
『夜は未だ明かぬ』
不憫な境遇の主人公がかわいそかわいいのですが、ラストはそうきたか。闇が深いのに爽やかな印象もあるような、ないような(どっち
『STAND BY ME』
前の二作がああいう作風だったので警戒心MAXで読みました。最悪の事態を想定していましたが、あらまあ!
巻末に『二世の息子』おまけ漫画とあとがきがありました。あとがきまで面白かったです。
冥花すゐ先生の『イトウさん』がお好きな方はたぶんお気に召されそうな作風です。
鶏BLです。
擬人化というよりモロに鶏なんですが、登場生物みんな人の形で表されているイメージ映像で物語が進む感じです。
自分のことを雌鳥だと思い込んでいる小柄な雄鶏のぴよちゃんと、住む処欲しさにぴよちゃんを騙す、立派な尾羽を持った雄鶏の同棲生活を描いたお話です。
お互いに固有の名前を持たなかったぴよちゃんと雄鶏が、「コッコ」「オット」と(←それも固有名とは言い難いのですが……)呼び合い、一緒に過ごしていくうちに、特別な間柄になっていきます。
ほんわかした絵柄とストーリーなのですが、元はといえばめっちゃビジネスライクな関係性でそこに愛はない感じなのが、歪な同棲生活を持ちかけたオットの方が先に絆されちゃって、コッコに愛を乞う感じなのが趣き深いです。
個人的には泣くほどではなかったですが、いいお話であることは間違いなく、続きを読んでみたい作品です。