とても良かった!
実はM/Mを読むのはこれが初めてです。興味はあったものの、M/Mで一般的な刑事物や長編ものだと一気にハードルが上がってしまうので手を出さないでいたのですが、短編なので大変読みやすかったです。
おそらく?アスペルガー症候群(本文に記載はありませんが)のケがある主人公ルーベンが、結婚を目標に出会い系サイトを使って恋人を作ろうと一念発起し、ゲイである上司のテリーに相談する。しかし最初は協力的だった彼にだんだんと距離を置かれてなぜかソワソワしてくる...という王道テンプレートなお話です。ジャンルでいうならスパダリ×純粋すぎるツンデレかな。
ちなみに原文は出会い系サイトに登録したのではなく、Craigslist(アメリカ人なら誰でも知っている何でも掲示板。ここに出すところにルーベンの性格を感じてしまう...)になってましたが、日本語版だとどうなっているのかしら。
人付き合いが苦手、というより言外の情報を汲み取ることが困難のため人から煙たがられるルーベンを、陰から深い愛情で支えるスパダリなテリー。ルーベンのどんな面倒臭い会話にも真面目に真摯に正面から向き合ってくれるのはテリーだけなんです。その大切さに気づいてからのルーベンの行動は本当に愛らしい。はじめっから両片想いのジレジレ恋愛なので、読んでいるこっちはずっとニヤニヤ状態。新書館さん、日本人にも受けがいいであろう作品を見つけてくるのがうまいなあと唸りました。
海外の作品は翻訳された時の原文との温度差(違和感)が激しく気になって物語に集中できないので、私はなるべく原文で読みたいめんどくさい野郎なんですが。英語で読んだらそこまで萌えないんだろうなーとタカをくくっていたのですが、私の間違いでした。いやー萌えた。BLって国境を軽く超えるわ...言語なんて瑣末な問題なんだわ...と思い知らされました。
個人的に萌えたのが、外国語ならではの愛称呼び。この行を読んだ瞬間妄想が「ベッドの中でルビー呼びしてルーベンに嫌がられる」ところまで突き抜けました(←本文にそんなシーンはありません)。これが尊いってやつですかそうですか。
日本のBLだったら、ちょっと物語本番はここからでしょー?!という場面で終わってしまうので、しばらく脳内妄想が大変はかどりました。無論ルーベンは童貞なので、これからしっかりテリーがそちらも教えていくのであろうことを考えると尊いなあ。
ジョンCハウザーさん...二人の続編お待ちしております...ってここで言っても多分ご本人に届かないので新書館さん作者に伝えてください...。
ちなみに私、最後のオチを初めて読んだ時は意味がわからず、ルーベンと同じ反応でした。知りませんでしたこの英語スラング。また一つ賢くなってしまった。
ここのレビューを信じて購入してみたのですが、結果購入して正解でした。
他の方も仰るように、パブリックスクール系では有名なシリーズが他にありますが、作者の文体や表現はこちらの方がより「我々日本人(外国人)が思う英国」感が強く出ていると思います。英文を訳したような硬質さがあり、私は大変好みでした。
タイトルの「春淫狩り」が内容と釣り合っておらず、ここで損をしている作品ではないかと思います。このタイトルと笠井先生の(大変素敵ですが)扇情的なカバーを見てしまうと、私の第一印象は「輪姦されて都合よく性に目覚めちゃうエロエロ系かなー」でした。
実際は、事件発生から解決までかなり構成が練られていますし、何より美しい英国の風景が目の前に広がる描写、各キャラクターの知性の高さが伺える、ときに気障な言い回しなど、とにかく文章が大変心地よい。いい意味で裏切られました。石造りの校舎、萌ゆる一面の緑、それに対比するような真っ青な空、ときに夜霧...まさに我々が想像する美しい英国貴族の青春ハイスクールを存分に楽しませていただきました。
神評価じゃないのは、しかし少々「萌え」が足りなかったのが理由です。二人のラブラブっぷりをもっと見ていたかったのですが、個人的に若干あっさり目でした(もちろんページ割いてきちんと丁寧に描写されております)。
迷われている方、英国文化が好きな方にはオススメです。
1巻でタイトル負けしていると感じ、2巻で冗長さを感じ、ヘトヘトの3巻でキターッこれが俺らのおげれつ先生!一気に少女漫画感が加速し萌全開。この作品、変態トンデモ系の仮面を被った王道少女漫画でした。
3巻は、前巻で歯切れ悪く終わっていた修学旅行の肝試し後編からスタート。この事件から一転、加島がグイグイ攻めてくる爽やか系肉食男子に変貌します。こんなにピュアに真正面から来られたら普通の女の子だったら即落ちですよこれ。1巻を読んだ時こんな青春ストーリーが待っていると誰が予想できただろうか?あまりのピュアさに「ヤリチンビッチ部」というタイトルと設定が完全に浄化されている事実に誰もが気づくことと思います。
一方、やっちゃんこと矢口・遠野ペアの仲も良い方向へ進展するので、今後しばらくはこの三角関係に尊さを感じながら進展を待ちたいところです。この漫画の設定そのものである百合を筆頭としたヤリ部の先輩たちにもキラキラの春が舞い降りつつあり、各カップルの核心部分が見え隠れしてきているので、そちらも期待したいところ。
ただ、当初の設定である「ヤリ部」感が物凄く薄れている気がして、少女漫画的展開に喜ぶ一方、もう少しキテレツ展開があっても良いのではと思う複雑な読者心理が働いております。本編とは関係ありませんが2巻にあるような百合・田村ペアの童貞筆下ろしとか凄く好きなんですが...。この漫画の狙いかどうかは分かりませんが、来るもの拒まずのヤリチン・ビッチに不思議と聖母的な愛を感じる稀有な作品です。田村が以前、なぜ(会話が成り立たない)百合に友達がいるのかと言えば誰にも怒ったり嫌わないからだ、というようなセリフがありましたが、まさにこの通り来るもの拒まず、よく言えば博愛主義者。少女漫画的にBL(ove)してくれなくても良いので、田村と百合の一線超えた「友情」をずっと見ていたい...という気持ちにさせられます。
ヤリチン・ビッチに萌を感じる日が来ようとは、たまげたなあ。
最近読んだBLの中でもエロさが際立っていたので、どこの出版社かと思えば竹…お前か…名に恥じぬ出来栄え褒めてつかわす。
(竹書房様には毎度質の高い萌を定期的に供給頂きましていつも大変お世話になっております)(竹はフジョシをほんとよく分かってる)
エンゾウ先生のドラッグレス・セックス(無印)の続編。これ単体でも楽しめるものの前作は読んでいた方が良い。一番好きなカップルのお話だったので発売前から楽しみにしておりましたが、期待を裏切らない出来でした。
ちなみに購入したのはAmazon電子書籍版。修正は白ヌキで全く見えません。ご参考までに。
感覚的に全ページ中6割くらいセックスシーンです。看板に偽り無く毎話激しい描写が挿入されております。しかし中弛みや飽きを感じさせず、一方通行な身体だけの関係から、完全な両想いになるまで毎度萌キュンを前面に散りばめてくるあたりが流石エンゾウ先生です。BL的ご都合主義展開も含まれるものの、舞台裏を感じさせることなく最後までアクセル全開で進んでいきます。ラスト数ページは、それまでの激しい描写から打って変わってのセンチメンタル。拝みたいこの才能。読了後の満足感が半端ない。
女の子に全く困ってない節操無しのイケメン(クソ野郎)がグイグイくる好き好き攻撃に押されに押されてベロベロに懐柔されるのって良いですよね。受の辰見くん、激しい快楽と甘い言葉に酔わされて前後不覚になっていくのですが、そこから始まる(理屈じゃない)愛というのもアリだと思う。あくまでフィクションの話だけど。
作者も言うように、とにかくラブラブカップルのBLが読みたい方へ。
新刊発売おめでとうございます!と先ず言いたくなるセクピス9巻です。
遂に完結篇か…!?と8巻からワクワク期待していた人魚編…っじゃねーじゃねーか!今さら新キャラ!?と新刊を手に取った時はズッコケたのですが、さすがは寿先生、本筋から大きくズレること無く、むしろ、本シリーズ3巻くらいまでのワチャワチャ感とハートフルさが久し振りに戻ってきた懐かしく楽しい一冊でした。主要キャラもコメディ路線で沢山出てくるので安心です。
今回は学園編という名に相応しい、愛美ちゃんと犬飼くんの同級生の男の子三人が中心となったお話。一組目はあくまで序章に過ぎず、二組目のカップルが本筋でした。一組目は同級生同士、半重種の蛇と中間種の狐。二組目は学生×先生で半重種の蛇と中間種の狸。セクピスファンの方ならすぐお分かりの通り、身分違いの恋物語になっております。
今までのメインキャラはほぼ重種のセレブリティ集団でしたが、今回は一般人に焦点があたります。セレブ達はお世継ぎ問題にドロドロした関係が描かれていましたが、一方庶民はといえば斑類の中では弱者であり、格差社会に晒される人達。普段は周りの重種から子供扱いされているノリ夫ですが、中間種からすれば(本当は重種でさえも)本能的に震えがくるような存在なのです。産まれた時点から社会的弱者の中間種が世間の壁と立ち向かい、社会的強者の重種はプライドを捨ててでも、お互いがただ好きな人と一緒にいたいと願う。9巻はメインカップルと違い「身分違いの恋」編といったところでしょうか。以前にもアラブ編で身分違いが語られましたが、それよりももっと斑類界の卑しい身分社会構造が描かれています。
そして残念ながら二組目の結末は以下続刊!今冬には10巻発売予定なそうなので、今から待ち遠しいです。
全体を通して今回も大満足でしたが、1つ気になった点。犬飼君のキャラが…180度変わってキツくなっている!重種の前でだけ大人しいキャラ…という設定だったのでしょうか。初期の頃は愛美含め誰に対しても遠慮がちな純朴キャラだと思っていたのに。愛美ちゃんと立場が逆転しているのに驚きです。
愛美ちゃんは愛美ちゃんで、登場初期は誰よりもウザい咬ませ犬キャラだったのが、9巻を経て殺伐とした斑類界最後の良心になりました。流石は巻尾&カレンの息子というべきか、器の大きい聡い子に成長しつつあります。是非彼の恋の行方も1巻分使って描き切って頂きたいです。可愛い愛美ちゃんの幸せを全力で応援します。
このたびもまた、はらだ流の病的な下衆野郎を描き切って頂きました、ヘアサロンを舞台にしたお話です。
キャラクターのお名前がそれぞれ福介・笑吉と目出度いネーミングですし、冒頭もギャグシーンから始まるので珍しく(まともな)ハッピーなお話かしら?と思いきや中々のブラック具合。良い意味で騙されました。
恩師が経営するさほど流行らないサロンに勤める、美容師としては致命傷なほど無愛想だが技術は確かな笑吉(受)と、そのヘアサロンに突如新人としてやってきたコミュ力抜群の福介(攻)が出会うところから始まります。笑吉にとって福介の第一印象はとにかく最悪。馴れ馴れしく突っかかってくる福介と喧嘩ばかりの毎日。同時に、笑吉の身の回りで少しずつ気味の悪い出来事が起こっていきます。いがみ合いながらも何かと手を差し伸べてくれる福介の助言をよそに、犯人をつきとめようとする笑吉だが…。というようなお話。
さて"カラーレシピ"とはどういう意味を含んでいるのだろうか?
はらだ先生が描く受の子は毎度のこと望まない悲劇に合うので「かわいそうにねぇ…(他人事)」と思う反面、愛があれば問題無いよね?とどっかで聞いた事ある台詞が天から降ってきます。世の中馬鹿でいる方が幸せなことだってあるのです。
ストーリー展開は趣向を凝らしていて確かに面白いとは思うのですが、特に著者がはらだ先生ということを考えると、斬新さはほとんど無いかな〜と思います(通常運転と言えば良いのか)。ただやはり今回もエンタメ性が高いのと、愛せるキャラクターが多いのが魅力です。
また、エロ方面ですが今回もねちっこいです。乳首描写のなんと入念な!具体的な性器描写はあまりありませんが、突然のカラーページと乳首へのねっちこい描写でお腹いっぱいです、有難うございます。乳首攻めがお好きな人にもオススメしたい一冊。
続刊モノですが、メイン二人の関係はとりあえずこの巻でキリよく描き切ってくれているので、ドキュメンタリーを見ていたら結末寸前でテレビコマーシャルが入るようなイライラやもどかしさを味わうこともなく読み切れます。続刊面倒臭いから様子みようかな〜と思っている方はご心配なさらずにどうぞ。2巻は新キャラを出すのか、それとも脇役キャラを使ってくれるのか、どちらも期待が高まります。
ていうかですね、とりあえず本編じゃなくても良いので鬼原さんを幸せにしてあげて〜〜!!このままじゃ彼立ち直れないわよ〜〜!!彼は恐らく受のほうが向いてるんじゃなかろーか。
※文末にキャラクターのネタバレを含むので未視聴の方は要注意
PCゲーム『DRAMAtical Murder』で全国の'年下ツンデレ攻'好き女子を唸らせたカップル、ノイズ・蒼葉編の後日談。
DMMd無印→リコネクトと来て、このドラマCDでようやく1カップルのストーリーが大円団に収まるような流れになっています。ので、ゲームをまだやっていない方はまずゲームから(でないと意味が分からない内容)。リコネクトまでプレイしたけどまだCDは…という方は必聴。ちなみに他全てのキャラクターにおいても同様です。
ノイズ編では、ドイツに居住を移した二人の(新婚)生活編。特にノイズの人格形成に大きく影響を及ぼした両親と弟・テオの登場を通じて、ノイズの過去と、蒼葉の存在の大きさが改めて感じられます。正直に言えばCD一枚でもどうにか詰め込められそうな内容ではありましたが、二枚組で二人のやりとりが丁寧に描写されていました。
ドイツ着いた!から始まり、ノイズ本家やべえ!、新居での犬も食わない(蓮に非ず)イチャイチャ生活までお腹いっぱい楽しめました。ノイズが無意識にウサギを追っていた理由も明かされます。
エッチ回数は終盤一回だけではありますが、中盤に何回もイチャイチャシーンが出てくるので、個人的にはそっちの方が萌えました。いつもの鼻で笑うようなものではなく、ベットで心から楽しそうに笑っているノイズの声を聞けたのはファンとしてとても嬉しかったです。
このCDシリーズ5編のなかで、ノイズが一番蒼葉にメロメロなんじゃないでしょうか。あれだけ面倒臭〜えツンツンキャラだったのに、一回懐くと年下的な可愛さで相手を翻弄するあざといドエス。蒼葉が終始照れて年上の矜恃を保ててないところも見どころです。「蒼葉が大好き」という感情に対して驚くほど素直なので、その辺ミンクと対照的なキャラですね。
さて、このCDのもう一つの重要ポイントは、ノイズの本名が明かされたこと。ドイツ人なので確かにNoizって名前は?とはうっすら...思ってはいたものの、結構衝撃でした。しかし...本編中数回本名が声に出されるですが、なんとも聞き取りにくい!公式から書面での正式発表が無いので情報が乏しく、憶測の域を出られないですね。
英語圏のファンサイトを巡ってみたのですが、「ヴィム」、綴りにすると”Wim(Vim)”という表記で書かれていることが多いです。弟のテオが正式名称”Theodor(テオドール)"なのを考慮すると、正式名は”Wilhelm(ヴィルヘルム)”とする海外ファンの説明をみかけました。ドイツやオランダではこのスペルが多いみたいですね。
ご主人に続いて、ウサギモドキの新しい名前も本編中に決まりますよ。蒼葉のネーミングセンスに対してノイズが「あんたバカじゃないの」と揶揄ってましたが、分かりやすくて可愛い名前だと思いました。ただウサギモドキの方がインパクトはある(笑)
信じられないレベルの糞野郎共が繰り広げる昼ドラ劇場だったのですが、好評価しか見当たらないので私の感性に問題があるのかと自分を疑っています。ちなみに日野さん目当てで購入したので原作未読。だからでしょうか?
不倫モノはこれまで何作も読んできているし、それだけで不快感を感じることはなかったのですが、本作は駄目。他人の不幸の上に成り立っている幸せってのはやっぱり不愉快です。
中盤から、聞いている私の脳内には以下の関係図しか思い浮かびませんでした。
受:重度のツンデレーションを患い不幸に激しく酔うカップルクラッシャー
攻:恋愛勝率100%で生きてきたのか自分の思うように人を動かす自己中ストーカー
元攻:不倫の末に妻子を捨て受に迫る自己中ストーカー2
まともなやつが一人もいない。
妻子or彼女がいるのに他の相手を好きになるなんておかしい...なんてつまんないことは言いません。
彼らからは元妻、元カノに対する誠実さが全く見えない。いかなる理由があったにせよ自分の身勝手で相手を傷つけたことは明白。なのに償うだとか、謝るだとかいう姿勢が全くなく、受攻両者完全に二人の世界で内向きの謝罪を続けるだけ。女性達の存在が都合良く簡単に関係図から離脱するので、英田さん、こんな簡単に相手(女性)を蔑ろにする作品作ったらいかんのやないかい?と思うわけです。そんな人から愛を囁かれても全く信ぴょう性がない。
「悲痛な思いまでして彼女と別れてくれたのに...」と口にする受の脳内はお花畑か何かなのか。悲痛?頼んでもいないのに攻が!勝手に!ビンタ一本で別れてきたんだよ!その足で彼女捨ててお前の家に上がりこんできた男だよ!しかも「今から彼女のご両親に結婚のご挨拶するんだけどハッキリさせとくなら今のうちだ」とか言って口車に踊らされたんだろーが!彼女なんて赤っ恥の咬ませ犬ですよ。
それでもまだ受が倒れてくれないので急に家に来たかと思えば「女抱いてきた帰りなんだけどハッキリしてくんなきゃ俺あっちと付き合うけど」と更に煽りをかける攻!この野郎!被害がこれ以上広がらないうちにとっととくっつきやがれ!
ハッピーエンドでは「ああこの二人がくっついてくれたお陰で世界中の女性が涙を流さずに済んだ」と涙しました。
始終こんなことを考えていたので、どんな甘い台詞にも展開にも全く心を動かされず、むしろ冷めていく一方。
受が攻をなんども「優しい」と形容するのですが、カッとなったときにこういう行動を平然としてしまう男は苛立ちを通り越して怖いです。絶対自分が不利な状況に陥らないようにしている感じ、この攻。
しかし攻だけが一方的に悪いのかというとそうでもなく、受がとにかくはっきりしないので「強硬手段を取らさざるをえない状況にまで持っていく」ように攻をマインドコントロールしているようにも見えなくもない。まさにサゲチン。
これが英田先生の硬質な文章で読むと、一気に世界観に引き込まれて違和感がなくなるのだろうか。しかしもう読む気がしない。
Guilt Pleasure公式発行の英語版2巻とリブレ発行の日本語版の両方を所持しています。
読み比べて思いましたが、ファンの方は是非英語版を手にとって欲しいです。英語での駆け引きを日本語に直すと、どうも本質的に何を言わんとしているのかが伝わりにくくなっている。また、日本語であまりこういう言い方しないよな...という台詞がたくさんあって硬質な雰囲気が壊されてしまうのが非常に惜しいです(一巻でもそうでしたが、浅野先生は「そうかい」って返事を返すキャラじゃないと...)。日本語話者同士の会話のようにテンポよく翻訳しなおすのが非常に骨の折れることだと重々承知しているのですが、結構残念でした。もちろん、なるほどこう訳したか!と膝を叩きたくなるものもあります。翻訳って難しいなぁ…というのがよく分かる本です。
英語の方は浅野先生の発言がセクシーで、ウィットに富んでいます。
たとえば浅野先生のぶっちゃけ発言あとの台詞、
「精神科医が相手を知る際の常套手段ですよ」は
“It’s what a psychiatrist does when he is using someone’s shower after sex"
ただ、敬語を使って他人と一線を引く硬質さ、という点では日本語も浅野先生のキャラクターにとても合っているので、そこは英語版では補えない点です。
英語版は約19ドル(2015年時点)で、大手出版社を介さずご自分達で発行されているため少々お高めですが、ファンの方は是非。もう一つ大きな特徴は、完全無修正。ボカシもなくはっきり鮮明に見えてます。なので18禁指定。
さて2巻ですが、とにかく浅野先生のプライドの高さに心動かされました。
受がここまで雄らしいのは、BLではまだ結構珍しい。篠原の、あんたみたいな外見が良い男は苦労したこと無いんだろう、という皮肉も非常に効いている。自分が人からどう映るのか非常に良く分かったうえで、俺が好きなんだろ?惚れさせてみな?と自信満々、かつ頭も切れて漢らしい受、嫌いじゃないです。恋愛面においてイージーモードな人生を送っているのためか「自分を楽しませてくれる男が好きだ」とはっきり言い切ってしまうアイスクイーン。これがシナをつくっている馬鹿男だったら鼻つまみものなのですが、’品’と’頭脳’があるので下品にならない。冷静になって考えると、女性からしたら結構恐ろしいな男だな…と思います。
また、元カレがぼろぼろ出てくる作品は面倒くさくて通常好きではないのですが、浅野先生の場合はどんな彼を相手にしてもキャラが全くブレないので見ていて安心。デイヴィットと篠原、そして謎の彼(別小冊子に登場)で一粒で三度美味しい。いつでも攻にジョブチェンジ可能な折れない受が大好物な私には非常に楽しみなシリーズです。
ミステリー面では、一回目のどんでん返しが終わってしまったので、このままストーリーが平坦になって終わらないことを祈ります。嘘偽り無く言えば、話の筋よりも絵の完成度の高さに惹かれていることは確かです。が、この日本市場でも通じる素晴らしいイラストで、海外の方がBL市場に参入してくるというのはひとつの財産だと思います。
もうちょっと英語版(特に送料…)が安くなることを期待しつつ次巻も楽しみです。
とってもとっても!面白かった!
苦手意識の強かった作家さんを好きになれた瞬間の嬉しさといったらそれはもう無いです。
いろいろと出遅れた時期のレビューなので超個人的な感想だけ。
先生のキャラクター(矢代)に「萌え」を初めて感じることが出来たのが何よりの喜びでした。苦手意識克服の到来は、ピンと来なかった同著の過去作品群と比べて何が自分の琴線に触れたのかを研究するのに非常に有益な機会なのでいろいろと想いを巡らせているのですが、本作の場合、メインの主人公二人が暗い過去を持っているにも関わらず、そこをあまり悲観的に、そして格好よく描いていらっしゃらなかったところに感情移入の隙間がありました。
実際、本編の導入作品であるDon’t Stay Goldは、クールな受け攻め同士のクールなお話で、正直まったく心に響いてこなかったのです。先生のこの手のお話が、個人的に響かないようです。
一転、表題作はインポ×淫乱という字面だけ見ると成立し難い設定に思えるのですが、これが非常に品があってエロティックなことに驚かされて一気に心をもっていかれた次第です。
結局エロか、エロなのか。いや、そういうことじゃあない…多分。
以前、他作品のレビューで「先生の強い個性が見たい」と書いたのですが、やっと私にも感じることが出来ました。基本的に、デビューの頃から何をとっても非常に巧い作家さんなのですよね。話も巧い、絵も巧い、すべてが綺麗にまとまっている...ゆえに読んでも心に強く残らない作家さん(あくまで個人的にですよ!個人的に!)だったのですが、矢代氏によって魔法がかかったかのように変わりました。百目鬼ではなく、私自身が。
淫乱で、主導権をほぼすべて握っているにも関わらず、(半)プラトニックにお互いの思いを寄せる状況がこんなに淫媚でいいんですか。インポという設定にここまで必然性を感じる作品に初めて出会いました(そもそもBLでインポは割と致命的)。機能しない相手のモノを定期的に、自身の権限を使って好きなように扱うって凄い設定です。
百目鬼氏にもファンの方にも申し訳ないのですが、彼には一生インポでいてほしい…駄目でしょうか。 男性が男性に対して肉欲抜きで憧れを抱く様がとても好きなのです。
自分の過去に対して割と冷静に受け止めている二人(ゆえにちょっと浮世離れしている点も含め)が作品をお涙頂戴方向に持っていくことを許さないあたりも良い。
どう決着がつけられるのか心待ちにしております。