生真面目な伊東と無邪気な西、この二人の高校生から老後までの一生が描かれています。
学校帰りの一人遊び、白線ゲームで偶然出会った二人。そこから少しずつ距離を縮めていきます。
若い頃は相手を好きな気持ちと勢いで過ごしていたけれど、大人になるに従い広がる人間関係、気になる周りの目、そして少しずつすれ違っていく心。
伊東が西を振り回すので勝手だな…と思っちゃうんですが、不安を抱えて迷って間違って後悔するのも人間なんですよね…むしろ間違わない人なんていないだろうし。
一生を一冊で表現しているのでテンポが早く、この年齢はもう少し深く読みたかったな…と思う部分はありますが、でも出会いから看取りまでとても綺麗にまとまってると思います。
線上と西の笑顔がとても効果的な場面で使われていて印象的。いろんな作品にありますが、作品のキーとなるものをラストにもまた持ってくる構成、大好き!
余命わずかの青年・寧と、
禁忌を犯す外科医・霧崎の物語。
帯にどどんと明記されてるので、ネタバレも何もないとは思いますが、メリバです。
自分がいなくなることで残される人が悲しむのは嫌だ、笑えるうちに早く逝ってしまいたいと願う寧、一方でどんなことをしても寧に生きていて欲しいと願う霧崎。
なんかもうね、寧の想いも霧崎の想いもどちらもとにかく切ないんですよ。
この作品、本編だけ読むとそれこそモヤモヤが残るメリバです。ここで終わってたら「はぁ!?」ってなってたと思います…
が!!!
そのあとの描き下ろしを読むと、納得というか…あぁ良かった…って思うし、読後感は一気に良くなりました。
描き下ろしでこらえ切れず号泣。
描き下ろしがあったからこそ☆4つけましたが、本編だけなら☆2か3になってたと思います。
その一方で本編だけで終わってたら、その後どうなったのか…という、メリバとしての余韻というか想像の余地みたいなものは多かったと思います。描き下ろしをどう捉えるか…ですね☆
罪を犯して芸能界を追放された隼人と、
テレビ局の敏腕プロデューサー・佐波の物語。
冤罪とか誤解ではなく、しっかり罪を犯している主人公というのはなかなか珍しく、それだけに重い始まりになっています。
どこにも行く場所がない隼人。
そんな隼人に声を掛け、自宅へと連れて行くのが佐波です。しかしその実態は『美人な野良猫を飼ってみたい』という願望で…。
次第に佐波に依存していく隼人。
ハピエンなのかな?メリバなのかな?突然佐波の手酷い裏切りがあるのでは?と、どういう結末を迎えるのかハラハラしながら読みました(^_^;)
犯した罪は消すことが出来ず、
それはどこまでもついて回る。
どこにいても誰かに知られるんじゃないか?また軽蔑の目で見られるんじゃないか…そんな気持ちを抱えながら生きていく隼人の姿が描かれています。
知らなかったんですが、本作は『オレを守ると誓ってよ』のスピンオフだそうで、隼人が罪を犯したお相手の物語が先に出ているようです。
スピン元を知らず本作を読んでも問題なく読めましたが、スピン元から読んだ方がより分かりやすいような気がします☆
漁師町に住む高校生・唯と、人魚の"くじら"の物語で、幼馴染みものです。
くじらの声は特殊な周波数をしていて、他の人魚にも人間にも誰にも聞こえない。
一人寂しく孤独に生きてきたくじらの声を、唯一聞き取ってくれたのが人間である唯だった。
唯に依存するくじらの存在を心地いいと思ってしまう反面、もっといろんな世界を知って欲しいとも思う唯。
一方唯だけしかいらないと思ってたはずなのに、本を読んでいろんなことに興味を持ち始めた自分に怯えるくじら。
人と人間、寿命が大きく違うからこそ悩んでしまう、迷ってしまう。そして出した二人の決断…。
性的な描写は皆無ですが、とても優しい物語でした。
続編でその後のえっちまで進んだ幸せな二人、そしてやがて寿命に苦悩する二人も見てみたいな。
画家を目指す大学生・日向と、
異国の青年ベルトランドの物語。
人外ものになります。
『水槽のカダベル』を読んだときも思いましたが、長曽根先生の作品はシリアスで人間の狂気的な部分が書かれているにも関わらず、読後は悪くないんですよね。
今回も日向の勘違いで終わると思ったことが事実だったと分かり、その一線越えちゃうんだ…ってちょっとびっくりしました。
どんなに望んでも誰かに求めてもらえない・認めてもらえない自分という存在に追い詰められていく日向、そしてただ生き続けていただけのベルトランド…どちらも切なく辛かった。
基本的に日向視点ですが、
最後にベル視点があります。
長曽根先生の書かれる、重くシリアスな作風大好きなんですが、メインはTL作品のようで、なかなかBL作品を読めないのが残念(¯―¯٥)
みんなが泣けると書いていたこの漫画。
晩御飯の用意も済ませ、号泣してもOKな状態で読んだ…いやホント…涙が止まらんよ。
序盤はみんなが生活に満足出来ず、社会保険制度が破綻し、役所に不満をぶつける様子が描かれていて、何となく日本の未来を予感させます。
タイトルとか序盤のイメージから、やってきたタマちゃんと少しずつ距離を縮めて、暗い過去を乗り越えてHappyになる癒し系ほのぼのストーリーだと思ってましたが、いやはやとんでもなく重かった!
もう1話目で"死"というテーマが出てきます。
この時点で何とも言えない悲しさが出てくるんですが、さらに2話3話と読み進めていくうちに、タマの置かれている劣悪な状況や矢澤の過去が明らかになります。
人のために働き続ける矢澤、
矢澤のためにあえて線を引くタマ。
本当にどちらにも幸せになって欲しかった!
タマの最期のシーン…
なんかもう本当に「なんでだよ!!!」ですよ。
ここで涙腺が決壊しました。
しかしそのあと。
矢澤は一匹の猫と出会います。
その猫に矢澤がつけた名前。
もう個人的にはここが超絶無理でした。
涙がダム放流レベル、今書いてても泣けます。
BLという枠を超えた、とても深く優しく温かく、そしてとても切ない愛情の物語でした。