映画を見て小説を読みました。エリオに魅了され動揺が収まらずレビューを投稿することにしました。長文お目汚し失礼いたします。
舞台は80年代の夏、北イタリアの避暑地で家族と過ごすエリオ(17歳)は、大学教授の父が招待した大学院生オリヴァー(24歳)と出会い恋をします。
一緒に過ごした日々はたった6週間だけどエリオにとって生涯忘れられない恋となるのです。
映画ではオリヴァーがアメリカに戻ってから電話で結婚をすると報告をして涙を流すエリオで終わりますが原作ではクリスマス休暇に再びオリヴァーがイタリアにやってきてエリオに直接結婚の報告をします。そして数年後オリヴァーは妻子を連れてイタリアを訪れますがエリオはアメリカにいて会えず、15年後にアメリカで再会、20年後にイタリアで再会したところで終わります。物語はエリオの回想録のようになっているのでエリオの一人称で展開します。
映画でもそうでしたが原作でもエリオに萌え転がり必至です。オリヴァーが現れてからというもの、とにかく振り回されます。原作ではエリオの動揺が文字で直に伝わってくるので読み手もあたふたです。
とりあえずエリオの心の中は常にオリヴァー、オリヴァー。君は僕の事どう思ってるの?好き?嫌い?無視しないで、僕の気持ちに気づいて、僕に話しかけてよ、触れてよ、君に触れたいよ。というような状態。クローゼットで見つけた使用済みの赤い水着に顔をうずめ匂いを感じ、キス、もしそこに陰毛を見つけることができたら舐めたい!水着をそっくり口に入れたい!履いて射精したい!とどんどん妄想が加速していくエリオ。たまらん。
オリヴァーの気持ちは会話からしかわかりませんが、そんなエリオの気持ちにオリヴァーは気付いていてオリヴァーもエリオに惹かれますが関係が進む事態を自制しています。
でもエリオはオリヴァーへの気持ちを抑えきず、メモをきっかけにとうとう二人は結ばれます。エリオは一つになれたことを喜びオリヴァーは「君の名前で僕を呼んでくれ。僕は僕の名前で君を呼ぶ」と言います。エリオはこの言葉を耳にして後にも先にも他の誰とも分かち合ったことのない境地に達したと語っています。
ところがエリオ、翌朝おしりが痛いやら罪悪感やらで自己嫌悪に陥ってしまいます。反応の悪いエリオにオリヴァーは若干引き気味になりますが、フェラを中途半端にしたり、わざとオリヴァーの水着を履いて家族の前に現れ挑発します。するとエリオはまんまとその挑発にのって興奮し、その水着は今朝ぼくのコック(ペニス)が収められていたのに、今はネット上の生地にオリヴァーのコックが~~。てな具合に。さすがオリヴァー兄さん!そのあとすり寄ってきたエリオに「君と寝たのを僕がどんなに喜んでるか君はわかってるのか」とトドメをさします。エリオメロメロ。
オリヴァーの帰国までの残り3日間はローマで甘い一時を過ごします。ホテルに着くと一緒にシャワーを浴びてイチャついて素っ裸のまま窓から街を眺め、たばこをふかし、イチジクを食べ、オリヴァーの尻をなで、指を入れ??再びシャワーを浴び、服も下着も交換して身に着け、、等々。「オリヴァー僕は幸せだよ」とエリオは言います。至福の時。
そして最終章。ここは何度読み返しても辛いです。喪失感を抱えて戻ってきたエリオは家の中にオリヴァーの痕跡があちこちにあるようだけど現実はいないのだという悲しみに襲われます。そこにオリヴァーからアメリカに到着したと電話が入り、君を失いたくないとエリオは伝えクリスマスに会おうと約束します。
悲しそうなエリオを心配するお父さんはモンテーニュとラ・ボエシーの友情を引用して二人の稀有な出会いを無理に忘れる必要はないと激励します。
エリオはその時口にはしなかったけど自分たちの関係をブロンテの嵐が丘を引用して「彼は私以上に私そのものだった」と言おうとしていました。
お父さんは良き理解者ですよね。身体は別々だけど心は一つ、魂は一緒、ツインソウルみたいな感じ?。エリオはそう感じていたのですね。
クリスマス、オリヴァーは約束通りやってきます。そして結婚するかもしれないと報告します。。
数年後エリオがアメリカにいる時にオリヴァーは妻子をつれてエリオの実家を訪れます。その時電話でエリオはあの時のように僕の名前でオリヴァーを「エリオ」と呼んでみましたが忘れてしまった様子。。しかも上機嫌で妻にあってほしいと。。なので来られて嬉しいと言うオリヴァーに綺麗な場所のせいで喜んでいるんだねとちょっと嫌味をいいます。切ない。
15年後エリオはアメリカでオリヴァーの大学を訪ね再会するのですが、さっそくオリヴァーは自宅へ誘い妻に会ってくれと言います。。
未だにエリオはあの夏の記憶の中でオリヴァーを見ているので平常心で妻子を受け入れることなどできません。
その後バーで「死ぬとき僕がさよならを言いたい相手は君だけ」君がいなきゃ僕の人生に意義はない。君が一緒にいない時は昏睡状態。ってオリヴァーにいいます。。号泣しました。
オリヴァーももちろんエリオを大切に思っているんだけど温度差を感じずにはいられません。
20年後今度はエリオの実家で再会します。エリオはナーバスな感じでオリヴァーを迎え、あの夏のように寺院を案内するよ道は覚えてる?なんてカマをかけます。でもオリヴァーはそんなエリオを理解していて「君と同じだよ、僕はなんでも覚えてる」といいます。嬉しくなったエリオは願うのです明日帰る前、振り返って僕をみつめて「君の名前で僕を呼んで」と。。
ここで話は終わるのですがこの感じからすると呼んでくれるかかなり不安。。続編の翻訳版近々発売されますね。楽しみです。
それにしても使用済みの波打つシャツと一緒に使用済みの赤い水着もおねだりしたはずだけど、どうして水着はくれなかったんでしょうね。。ビョーキの変態だから?
SNSにて先生ご自身が初期作品で心に優しくストレスなく読めるのではと勧めてくださったのでkindleにて入手しました。
私はBLビギナーなので知らなかったのですが最初の出版は97年とのことでもう20年以上前の作品とは驚きました。現況に合わせて多少改訂しているとはいえストーリーは色褪せていません。
内容紹介にもあるように会社の先輩と後輩の一途な大人の男の恋愛の話で4章に分かれています。
「恋愛時間」
後輩の広瀬が先輩の有田に告白するところから始まり有田が広瀬の気持ちを受け入れるまでの苦悩や葛藤が有田視点で描かれています。
どうしても広瀬に感情移入してしまうので同性に告白され困惑する有田の思考や行動に慨嘆してしまうのですが有田の立場でよく考えてみるとわからなくもないところがあります。一途で健気というのは配分間違えると場合によっては嫌悪感になるなんてことは現実ではよくあることだし、有田の弟はゲイばれした後家族が揉めた過去があるわけだし。。だけど広瀬の人間性の魅せ方が絶妙でグイグイ引き込まれます。。無意識に有田の意地悪ー!!ってなります。
時の流れととも有田の心情にも変化が表れ『仲の良い会社の先輩と後輩』以上『恋人』未満?の関係になっていったのがとっても心に優しかったです。
「恋人時間」
広瀬が1年間の東京本社での研修中のお話で広瀬視点で描かれています。
広瀬は真面目で堅実だけどちょっと鈍いところがあるので本社での研修でもすんなりいくはずもなく案の定同僚と揉めます。
研修に来る前にやっと有田との距離を縮められた事もありステップアップとはいえ不本意だった広瀬は着任早々辛い日々を送ることになります。
広瀬への気持ちに気付いた有田はこの章では積極的なのに対し臆病で有田の気持ちを確かめることができない広瀬にモヤモヤさせられます。
同僚とのもめ事も研修の事も恋愛の事も結果的に有田にサポートしてもらってます。でもこれらを機に広瀬は大きく一歩を踏み出し成長するので有田との関係が成就した時は心から嬉しかったです。
「兄の恋人」
広瀬が本社での研修を終えて地元にもどり有田と同居し始めた頃の話を広瀬の弟の視点で描いています。
広瀬が実家で同性の恋人との同居をカミングアウトするところから始まるので正直この章が一番重くて辛かったです。
家族に受け入れられないだけでなく広瀬を慕う妹から猛烈な反対にあいます。まだ高校生の弟としても到底理解できるものではなく気の強い姉(広瀬にとっては妹)の言いなりになって二人を分かれさせる手伝いをさせられます。この別れさせる方法というのが幼稚でアナログなんだけど有田と広瀬の受けるダメージが弟の視点であるにもかかわらず強烈に伝わってくるので読んでる私も思わずこの妹への怒りでカー!っとなってしまいました。
ここでヘタレ気味の弟が有田を偶然みかけたときの様子や広瀬との会話で気持ちに変化があり姉の言いなりになっていた罪の意識に苛まれ兄の背中を押すのです。ちょっと遅いよって突っ込みたくなりましたが…。
この章で唯一男前だったのは広瀬家の豪快な長男さんですね。最終的に妹を言い聞かせ広瀬を見守ってくれたのですから。。ほんとこの長男さんに救われましたよ。
「海岸線」
最後は広瀬の妹の策略で有田が広瀬に別れを告げ追い出した後、弟に背をおされ広瀬が戻ってきた時のお話を有田視点で描いています。
いつの間に有田がこんなにも広瀬を愛していたのかと思うと涙が出そうになるほど切なくなりました。広瀬が浮気なんてどう考えたってありえないじゃない!って読み手は思うけど有田はそうじゃなかったんですね。。広瀬と同居しているから家で泣くこともできず一人映画館で泣いたり苦しんだりしていたなんて。。。理不尽な出来事に巻き込まれ、追い出した広瀬が突如早朝に戻ってきて海岸に連れ出され、抱きしめられ心のこもった気持ちを告げらて、、やっぱり広瀬なしでは自分はだめだと有田は泣きながら受け入れるんだけど、、すごく切なかった。。だって誤解が解けた後じゃないからこれ(涙。
ハッピーエンドではありますが広瀬も何の理由もなく理不尽に追い出されただけに誤解が解けた後の二人が見たかったな。。
でも優しい二人だからこの妹弟の気持ちも理解して苦しんだりしちゃうのかな。それは辛い。絶対ないけど有田の家族へのカミングアウトとか考えるだけでも胃がキリキリしちゃう。
っというわけで先生がおっしゃるようにストレスなく…というのは私のように糖度高めの作品ばかり愛読している新参者にはまだまだ難しく、、修業が必要のようですが心に残る神作品でした。
穂積さんのイラストと帯の『男子4人ドタバタ事件簿、冷血イケメン能力者弟×陽気な自称小説家兄』に惹かれて購入。
表紙の明るめなイメージとは違いそこはやっぱり木原先生、心をエグられるようなしんどさはないけれど登場人物に一癖も二癖もあります。
それからこの作品は図書館でも借りられる非BL。微かに匂う程度なので置きっぱにしても安心安全です。
ここからネタバレです。
登場人物の4人の視点で一章ごとに一つの事件簿のような構成になっていますが冒頭のゴミ屋敷に住む引きこもりの三井の話は引きこもるまでの経緯や放火被害にあった時の絶望的な状況が実にリアルに描かれていてページをめくる指に力が入りました。
三井は放火により自宅を焼け出された後、捜し物屋を営む間山和樹に出会い放火犯を暴くことができるのですが、三井が引きこもりから脱して再生していく姿は徐々に明らかになる間山兄弟の闇の部分とは対照的に爽快でこの章だけでもかなり読み応えがありました。
まぁ兄弟の闇というより主に弟の白雄の闇なのですが、、。
何しろ読者としては窮地に陥っていた三井にナチュラルに手を差しのべる親切で感じの良い兄の和樹に心惹かれはじめているのにブレーキをかけるみたいに弟の白雄は登場するなり冷酷な顔して三井の首を躊躇なく絞めるものだから、、たとえそれが誤解が招いた事であっても怪しげな兄弟の素性、特に弟の白雄がやたら気になってしまいその後ドタバタとコミカルに話が展開しても白雄を注視せざるを得なくなります。
白雄に父親はおらずイタコの祖母にお前の存在は悪だと言われ幼少期に声を奪われてしまったのですが、、悪人とは言えませんが冷血漢です。
霊能力があり、人の心の中を覗け、人の口を操り自分の言葉を話させることができ、心にある善と悪が白と黒のモヤのような塊で見える。そこまではいいんだけど白雄は他人の黒い部分を暴き晒すのが楽しいのです。
その結果相手がどんな状況に陥ったとしても。。温情も罪悪感も無いのです。
ただ幼馴染であり後に義理の兄となる和樹は心にほとんど黒いモヤがなく幼少の頃から白雄を丸ごと受け入れ白雄の悪の部分に対しては正面から抗ってくる。自分の行いを反省する事はできないけど白い心を保つ和樹といることに心地よさも感じる白雄。しだいに和樹だけはこの世で唯一失いたくない存在になるわけだけど…ここが木原ワールドといった感じですね。執着心メラメラです。
和樹は白雄の事を意地が悪くてダメで怖いやつそして可愛そうなやつと言って義務のように傍にいるけど本当のとこどうなんでしょうね続きがあるなら気になります。
白雄が病気などで弱った時に和樹に添い寝してほしいとかふいに抱きしめて盛大にデレちゃうとか、、萌え要素はたったこれだけなのに和樹に欲情する白雄が容易に想像できる自分が恥ずかしい。。
レビュー慣れしておらずお目汚し失礼しました。
木原作品は2冊目ですがこの作品も一度開いてしまったら最後、ページをめくる手が止まりませんでした。一読目は先が知りたくて、次は結末を知ってからの登場人物の言動の確認、その次は部屋の間取りなど細かい背景、、と貪るように読みました。内容紹介も読まずまっさらな状態で読み始めましたがとにかく話に引き込む力がとんでもなく強かったです。
主人公の啓太が冷凍庫を買う場面から始まるのですが既にここから不穏な空気が漂っていて先日読んだばかりの「積み木の恋」を思い出してしまいました。でも早い段階から啓太が死体を自室の冷凍庫に隠しているという状況はたぶん啓太の思い込みだろうなと思わせる表現がチラついていたので殺人という犯罪よりも秘密が登場人物にどんな影響を与えていくのかが気になりました。
啓太は秘密を抱えて精神的に不安定、ゲイバーで出会った充にしても見た目はまあまあだけど愚鈍でしかも優しくしてくれれば誰でも好きになってしまいそう。そんな充を見下した感じで見ている啓太が徐々に充を求め依存していく過程が薄暗いんだけどなんだかとっても甘いんですよね。
会ったばかりで警戒しているはずなのに充の部屋でいとも簡単に眠りについたり、翌日には充を慰めながら膝の上で眠ってしまったり、とにかく啓太が無防備に寝てしまう場面になんともいえない心地よさを感じてしまいました。一緒にいる時間が長くなれば純真な充に情がわくのは自然だけど、体も許してしまうのは秘密という重荷から逃れたい気持ちが自分を好きだと言う相手と触れ合う事で得られる安心感で消え、同時に本能的な肉欲がムクムクと湧き上がってくるって感じなのでしょうか。。
解説で作家の伏見憲明さんのいう、どんなに個と個が純粋に結びつくことが困難でも、その術をみつけられなくても、あきらめない BLのハッピーエンド のためなのだろうか。。。 いや、、違う気がする。。にしても充は本能のおもむくままで啓太とのエッチが好きすぎて萌えます。。
そのエッチな充を育てた従兄弟の榎本がなんとも魅力的です。充の命の恩人であり自立させてくれたすごい人。なのに自由恋愛主義なので従兄弟の充とも性的な関係を持っちゃうとか。。だけど決してぶっ飛んでいるわけじゃないんですよね。中盤の「秘密Ⅱ」が榎本視点でのお話だったのでうれしかったです。
興味深かったのは「秘密Ⅲ」の充の弟の樹のお話。ここでようやく充は父親以外の家族と再会できるわけだけど実は母親と妹は充を不憫に思っていたことが嬉しかった。家族みんな冷たいのかと思っていたので。。弟の樹もなかなかの曲者だけど「俺はみんな兄さんのことを忘れたのかと思っていたよ。籍を抜くって言った時もみんな何も言ってなかったから」と心臓をドクドクさせながら言ってるあたりで妙な共感がありました。樹は充と再会した時に放った言葉を母親や姉には秘密にしておくのでしょうかね。。
凪良先生の作品は3冊目です。先生の作品は切ない系しか読んでいないのですが、暴力的で打ちのめされるような絶望感はなく言葉が優しいというか、、なんとなく心地よいので気負わずどっぷり浸れるのが気に入っています。
この作品の主人公である蓮は詐欺師なのでこの先必ず良心の呵責に苛まれる展開になると容易に想像できちょっと面倒だなとも思いましたがさほど構えることなくすんなりストーリーに入り込めました。
蓮の生い立ちとこれまでの生き方を考えると価値観や複雑な心情は簡単に変えられるものではないだろうしどうやってこの世間知らずなボンボンと?・・・ってある意味ワクワクに似た感じでページをめくる手が加速しました。結局蓮が詐欺行為を重ねながらも会う度に疑うことなく注がれる加賀屋の無償の愛情が蓮の心の柔らかい部分に積み重なっていったからなのかなって思ってます。
加賀谷と優しい時間を過ごすほどに増していく罪悪感、やがて加賀谷の存在が失いたくない心安らぐ場所なのだと自覚し重ねた身体で初めて感じる快感。この場面は切なくてやるせない気持ちになりました。
この直後厳しい現実に向かい合う事になるのですが、蓮がこれ以上傷を拡げずに済んだと少しホッとしました。加賀谷も加賀谷で蓮に似た誰かを想い夢中になったという事実を隠していたのだけど、蓮も自覚している通りさすがにこれは同系列に並べられないですよね。。
2年の服役を終え出所した時に加賀谷の靴の先が目に入った場面、本当にうれしかったです。再会はもうちょっと先になるのかなと思っていたので、一緒に生きたいと食い下がる加賀谷に初めて男前を感じキューンとしました。
加賀谷と蓮が一緒に暮らし始めて一安心と思いきや現実はそう上手くいかず、蓮は生まれて初めて安定した幸せを味わいながらもいつか失ってしまうのではないかと不安に思っていて、いつその時が来ても大丈夫なようにと心から甘えることが出来ないんですよね。そんな中加賀谷は母親にお見合いを強制されるし、その母親は蓮の存在さえ認めようとせず、、やっと見つけた飲食店のアルバイトも前科者というハンデによって失ってしまう訳だし、、。いろいろ辛いです。でも世間なんてそんなものですものね。犯罪歴があってそれが詐欺なら誰だって警戒します。でも!賃金の未払いはめちゃくちゃ気になりました。これは労働法にふれるのではないでしょうか。このお店での話は以降出てきませんでしたが気になってしかたありません。それからお祖母さん、蓮は下心があって近づいたわけじゃないからね!っと言いたいです(涙。まあこれらの件があって二人の心の距離が縮まったり蓮に同年代の友達ができたりするわけですが、、、。
最後に加賀谷視点でのお話が入るのですがはじめて加賀谷の心の中が知れて嬉しかったです。蓮は何も欲しがらず一緒に暮らし始めてしばらくたっても元から少ない私物を増やさないのでいつかいとも簡単に消えてしまうのではとやっぱり不安だったのですね。蓮の思い出になる物を増やしたくて少しずつ贈り物をしていく加賀谷の心情も切なくて胸にくるものがありました。この先だって遠慮なしに寄りかかるような関係にはならないと思うけど、二人と一匹がいつまでも平穏無事に暮らしていけますようにと願わずにはいられません。
だけど加賀谷はなぜここまで大きな器で蓮の事を粘り強く受け止め続けられるのだろうか、、、。愛してしまうことに理由なんてないのかな。。
最近になってBL小説を読み漁りはじめましたがこんなにも衝撃を受けた作品はありません。
読み始めてすぐに辛くなり本を閉じるものの誰にも邪魔されずに静かなところでじっくり読みたいという衝動に駆られ一気読みしてしまいました。
冤罪で懲役になり刑務所内でなすすべもなく極限の生活の中で触れた喜田川の計算のないやさしさに心を救われる堂野。だけど度を超えた喜田川の想いに戸惑うばかり。
繊細でひ弱な(喜田川曰く普通の人)堂野を助けることにより初めて人の温もりに触れ持てる全ての愛情を堂野に向けてしまう悲惨な過去を持つ喜田川。
とにかくこの二人はお互いに思いあっているけど心はズレまくっているので辛くて苦しくてずっと胸が締め付けられてしまいました。堂野の心情はいたって自然で共感できるだけにひたすら喜田川の身の上が気の毒でしかたありませんでした。
そして中盤の喜田川が出所してから堂野を探し出すために探偵に詐欺にあってしまうのですが、もうなんなのこれ?以上読めない!これ以上喜田川から大事なものを奪わないでと作者様のSっ気を軽く恨んでしまいました。刑務所内で同室だった芝の登場で一気にストレスが引きましたがページを持つ手が震えました。
後半で喜田川が堂野に再会して不本意ではあるものの家庭の温かさや堂野の娘に好かれるという心地よさを喜田川は味わうのですが、ここで堂野の娘が殺されるという悲劇が起こるわけで、、、。遺体が見つかった時点で前科のある喜田川が疑われるという予測はできたのでますます読むのが辛くなりました。酷すぎます。。堂野の妻には呆れてしまうけど、それでも娘の命を不倫相手の妻に奪われてしまうのだからやっぱり気の毒です。もう誰もかれもが悲惨で心のひりひりがおさまらない。
真犯人が捕まって堂野が喜田川に会いに行った時自分が疑われたことなんかどうでもよくて堂野の娘が亡くなってしまったことを悲しみ涙を流す喜田川。そんな喜田川に心を寄せる堂野をそのまま力ずくで抱いてしまうという感情と欲情の危ういバランスがもう切ない。。
こんな酷い出来事の末二人は一緒に暮らすことになるのだけど、どこにも心安らぐ場面がなかっただけに二人のこれからの暮らしが平穏でありますようにと祈らずにはいられません。
たびたび読み返すのは辛いのですが、刑務所内での場面では、就寝後泣いている堂野の頭をそっと撫で続けたり冷えた足を温めてあげたりする喜田川、堂野の膝の上で頭を撫でられ目を細める喜田川、そしてお互いを「崇文」「圭」と呼び合うなど、こんなちょっとのやりとりがとても際立ってくるのです。
巻末の三浦しをんさんの解説にもありましたがBL界では変化球作品。すごいです。ノベルス版も読むことにしました。
最近になってBL小説を読みだしました。
こんなにも一つ一つの言葉が想像を膨らませるものなのかと改めて小説の良さを感じています。
そしてこの作家さんの作品は2冊目ですが言葉のチョイスが心地よく染み入り切ない展開でもどこか客観的に主人公を見つめることができ、感情移入し過ぎてしまう自分にとってはありがたいです。
この作品の前半は閉鎖的な田舎町でゲイばれしてしまったニコの厳しい状況下で榮と出会い、心の支えとなったわけですが、必然的に榮は恋愛の対象になってしまい、想いを伝えようとすると妨げる出来事が起き、諦めようとすると惹きつけられるような出来事が起き、、の繰り返し。もう辛さと切なさのMaxです。それでもニコは思いやりがあって優しくて健気、、だけど強い。辛くてもちゃんと自分の居場所を探して行動を起こし生きている。
榮はちょっと鈍感なのかもしれないけど大らかで真っすぐな性格だからこそニコは好きになったんだしエンドに夢中になっている榮を責める気持ちにはなれませんでした。恋は盲目、タイミングが悪かったとしか言いようがないような。。
むしろエンド、もしかしたらこの子目線で物語を追ったら一番辛いのかなと思いました。
後半は榮目線でのその後の展開、やっぱり榮は素直で真っすぐで優しい。賞味期限切れであろうとニコに対して真摯に向き合う姿にほのぼのとした気分になりました。そして慎重にニコを気遣いながら距離を縮めやっと気持ちが通じ合った時は何とも言えない安堵の気持ちが湧いてきました。自然と二人の明るい未来を想像してしまいます。
読了後はなんともいえない満足感、良い作品に出合えてよかった。
ああ、、ただニコの初体験はちゃんと下準備して欲しかったかも。だって無意識にニコの体の心配しちゃったもん(笑