東雲月虹
amai kaori
シャワージェル(ボディソープ)がほのかに香るってエロいですね。
香水妖怪は論外ですが(つけ過ぎな人っていますよね?)
嫌いだと思った香りも恋人から漂ってくると嫌いじゃないかもなんて
整のかわいいことったら。
引き出物でいただいたものだから捨てるわけにいかないとか律儀な面も。
お酒の場で流れとは言え突拍子もないことを言ったり
誰にも見せない姿を一顕にだけはすべて曝け出してしまうところも。
一顕はいつもソツなく女性に接するけど
今回は相手のあまりの鋭さにヒヤヒヤしてしまいました。
女って怖いなぁとまたしても思わせられるような短編でしたが
このようなエピソードだって結局二人の想いを深くさせ合うだけでしょうから
やっぱり“甘い香り”なんですね。
タイトルからは想像できない、ピリッとしたお話です。
会社の同期会の前日に整の家に泊まった一顕は、ゆっくりし過ぎて、家に戻る時間がなくなってしまいます。
シャワーを浴びる一顕に、嫌じゃなかったら使ってみて、と整が差し出したのは、新品のシャワージェル。同期の女性が、結婚祝いのお返しにくれたものなのですが、整はにおいが好きではありませんでした。
でも、それを使った一顕から漂うにおいは、意外と良くて。(使ってみたら案外マイルドで悪くない、というのは香りあるあるですね。)
同期会の会場で、そのシャワージェルの贈り主は、一顕と整をバーカウンターに誘います。
そして、整がその場を離れた隙に、一顕に「引き出物、半井くんのだけ、それ(その香り)にしたの」と囁くのです。
一顕を試すようにオーダーしたカクテル。二人の関係、分かってるよ、という仄めかし。魔性ですね。ゾーッとします。
彼女が整に惹かれた理由は、わからなくもないです。
でも、ピリッとしたアクセントの甘い香りなんて、官能的なイメージ。マーキングめいてますねぇ(笑)。振り向いてくれなかった男へのジェラシーを感じます。
「(結婚相手に)不誠実だろ」と怒る一顕の健やかさが、いいなあと思いました。そんな一顕だから、彼女も言ってみたくなったのでしょうね。
一顕が、誤解した整を追いかけながら、「悔しいから、あのジェルは俺が使い切ってやる」と決意するのが、可愛いです。
小冊子で、このタイトルだから、二人の甘い話を期待していたのですが、とってもスパイシーでした。こういうお話もいいですね。