まりぽん812
hana wa sakuka
不知道花开否
桜井さんが大阪に転勤して3年が過ぎた頃の話のようです。
蓉一は吉富さんの会社に籍を置きながら制作に打ち込み、大家業も頑張っています。水川邸は新しい住人やアトリエを借りる人たちで賑わうようになりました。竹生、藤本は引き続き水川邸に住み、大学生になり実家に帰ったはずの菖太も月の半分は泊まっています。新しい住人と古い住人が集う家で、自分の周りが緩やかに変化していることを感じる蓉一。
桜井と一緒に蒔いた芙蓉の種から芽が出て、やっと蕾をつけそうなところまで育つのに2年。桜井が土を変えたりと試行錯誤し、蓉一が見守ってきました。「今やるべきことをやれば、きっと、俺がこの家に帰る頃には花が咲くよ」という桜井の言葉を蓉一が思い出しているところに、桜井が大阪から戻ってきて…。
蓉一の最後の言葉「俺自身の居場所も少しずつ作っていけそうな気がする」が深いです。
昔、アトリエに学生や友人を招き入れていた父のように、蓉一も若者たちの居場所を作るようになりました。きっと、桜井の言うように今やるべきことを蓉一なりに取り組んできたのでしょう。誰かの居場所を作ることは、きっと自分の居場所を作ることでもあるのですね。そうして、仲間たちの中で自分らしく絵を描くことができ、自分らしく桜井の傍にいられると思えるようになったのでしょう。
一緒に育ててきた芙蓉のように、ゆっくりと育まれた桜井と蓉一の関係。二人の居場所を二人で作ってきたことが、素敵だと思いました。