ひよどり
kitsune no mukotori
伽羅が黒曜の弟子となって間もなくの頃。
黒曜の許を訪ねてくる客人にお茶を出し見送りをするのが伽羅の仕事の一つだが
ある時、客人が帰られた後に黒曜が「さっきの客が持ってきた」と
巨大な羊羹を伽羅に差し出してきた。
今までもお土産を貰う機会はあったが
貰った物をおすそわけしていた同期の稲荷のやっかみを受け
今ではこっそりと一人で食べていたのだけれど
今回貰った羊羹はそれにしてもあまりに巨大で
何口か食べた後、口の中が羊羹の味しかしなくなり辛くなってくる。
そんな時に廊下を歩いてきた白狐が
「そなた…よいものを持っておるではないか」と声を掛けてきた。
説明しようにも涙がこみ上げて仕方がない伽羅に白狐は優しく
「こちらへ参れ」と普段は訪れる人も限られる白狐の私室に案内する。
「一人では食べきれぬであろう?茶を入れて我にも分けてくれぬか?」
そう言う白狐に従い伽羅は緊張しながらお茶を入れ羊羹を切り分ける。
その後はおすそ分けを貰う度、見計らった様に白狐が現れ
白狐と伽羅のおやつタイムは繰り返される事となった。
白狐様は陽と同じく「美味しいもの大好き」な方で
「狐の婿取り-神様、決断するの巻」の本編ではそういった描写はありませんが
一つ前の作品「狐の婿取りー神様、旅立つの巻」の本編では
子狐達と共にお土産のワッフルを召し上がっていらっしゃいましたし
陽と美味しいもの談義に花を咲かせておりました(笑)