東雲月虹
rutile souvenir bouquet
この度もミチさんお目当てでゲットしたので、
『街の灯ひとつ』番外編、『Golden Dew』のみで失礼致します。
片喰×初鹿野となると俄然テンションMAX!!になってしまう為、
落ち着かなくちゃとは思うのですが
やはり落ち着くなんて事は出来ないので諦めます(何を)
葛井と共に京都の“先端バイオ産業フェア”へ1泊2日で向かった初鹿野、
帰りにお土産を買おうと百貨店に寄ります。
葛井が買って行くお相手は新なんだろうなとニヤッとできました♪
片喰に昨夜「土産、何がいい?」と電話で聞くと
「百さんのついででいいよ」と言いますが
百は“よーじや”をリクエストしていたようで。
「甘いのとしょっぱいの、やわらかいのかたいの」 と
“自由記述式から選択問題”にするとホッとする片喰って…。
相変わらず過ぎて、なんだかこちらがホッとしますよw
お土産を買ったあと、目にした京都駅に大きく張られている美術展の告知。
思わず足を止め、その絵のタイトル『ダナエを』記憶してのぞみに乗り込みます。
ノートパソコンで検索すると
“ギリシャ神話の、神様に夜這いされているところ”らしいです。
私は美術にも疎いので検索してみたら
ミチさんの表現されている文章が
あまりにもぴったりすぎて溜息がこぼれました。
艶めかしい裸体の女の下肢に落ちる金色の滴。
電車内でうとうとした後強い雷の音で目が覚め、
一瞬で片喰が心配になります。
電話を入れてもメールしても応答がなく、心許なくなる初鹿野。
室内にいさえすれば大丈夫なのに、
片喰が苦しい思いをするのが嫌だと思うあたり、愛がありすぎます!
葛井に“稲妻”の話を聞き、
『ダナエ』の、夜這いをかけた神様がゼウスだから“黄金の雨”。
東京に着いても雷も雨も止まず、
片喰の元へ急ぎたいのですが、
ダイヤの乱れや交通渋滞ですんなり着けません。
途中でタクシーを降り、雨に濡れたまま合鍵で部屋に入り
名前を読んでも返事がなく、
カラのバスタブにうずくまっている片喰を発見します。
怖くて身動きが取れなかった様子。
「ごめん、片喰」
謝る必要などどこにもないのに、口にしてしまう初鹿野。
あの絵で女の恍惚となった表情を羨んでしまい、
雷は自分が呼んでしまったのではないかと思ったから。
「……抱いて。片喰」
その一言で耳を赤く染めますが
やはり雷の響きが怖いらしく身を縮ませるので
シャワーカーテンに当てるようにコックを開け、
濡れた音と熱気の中、唾液を混ぜ舌をもつれさせ…。
片喰の耳を両手で塞いだまま、張りつめていた部分を見られ
「したくて、我慢してたから、こんななってんの」と告げます。
聞き取れなかったらしく
今度はキスをして「好き」と言うと更に火がつく片喰。
繋がるとようやく気持ちも体も満たされ、
嵐の中の絶頂、「脳裏で弾けた光は稲妻の色に似ていた」。
う……うまい……!!!!!!
初鹿野が買ってきたお土産は専門店で売っていた金平糖。
パイナップル味のそれは、また明るい金色で
食べさせ合う二人の甘いこと甘いこと!!
出張でも初鹿野と遠出出来たのが羨ましいと片喰が控え目に言うと
「今度泊りがけで行こう」と誘ってくれます。
晴れなくても、雷が鳴ってもまた耳を塞ぐから。傍にいるから。
シーツにこぼれた金色の滴の中で
抱き締め合った二人は目を閉じるのです。
……8pです。
だと言うのにこのラブ濃度ときたら!!!
金平糖をチョイスしたのも、片喰が仕事中は
集中し過ぎて食が疎かになる為、
片手で簡単に口に出来るものにしたとか、
愛以外の何でも無いもの!!!
片喰が初鹿野を好き過ぎるのは勿論前から言わずもがな、ですが
このね、おねだりする初鹿野ってたまらんわけです!!
普段思いやりがあって機転が利く素敵な男が益々魅力的!!
愛し愛されるってこんななんだなぁ……。
初鹿野が羨ましかったのですが
片喰も羨ましすぎるぞ!!
だから私はやっぱり二人が大好きでしょうがないのです!!!
だもんでゼウスにかけてこの8pに“神”!!
(かかってない!?)
「街の灯ひとつ」番外編のみのレビューです。
初鹿野が築と一緒に京都に出張した帰り道新幹線で雷雨に見舞われ、
片喰のもとへ駆けつける話。
平和に京都駅でお土産を調達し、新幹線に乗ったものの途中から鳴り出した雷鳴に
恋人の事を思っていても立ってもいられなくなる。
かつて雷に打たれた経験を持つ片喰にとっての雷は、想像を絶する恐怖だ。
新幹線の中からかけた電話にも出ない(出られない)恋人のもとに、
新幹線を降りた後、雨をものともせずビショ濡れになりながら駆けつける初鹿野。
怯えてバスルームでうずくまる片喰に、ごめんという初鹿野。
何を謝るのか、自分でもよく分からない。
でも、この雷を自分が呼んでしまったような錯覚、
片喰とセックスしたいと思い、空一面に降り注ぐのはあたかも自分の欲情。
この二人、狂っているのはいつも片喰。
初鹿野が好きで好きで、常軌を逸した執着と愛を向ける変態ぶりは初鹿野も読者も知っている。
でも、いつもクールな顔をしている初鹿野も、狂っていてこんな熱い思いを抱えている。
京都駅で見かけて美術展のポスターの、クリムトのダナエが作品全体のモチーフになっているが
こういうイメージの使い方のうまさ!
一穂さんは、長編の読みでも勿論魅せられるのだけれど、こういう短編もまた大好き!
築が淡々と、でも嬉しそうに新にお土産を届けているんだろうな〜と思うと、
これもまた微笑ましい。
そんな描かれていない部分も想像できてしまうのが、一穂作品のすてきなところ。
*ところで、稲妻。
作中でも、初鹿野と築が稲妻に関する蘊蓄を話している場面が出てくるが、
雷にも雨にも性交の意味があるという。
雷鳴がとどろき、稲光と雨が降りる時、天地は交わるのだ。
天にいる神が大地に発情し、稲田に精子をまき散らし、天地有情となって稲は実を結ぶという。
ああ、エロティック。