みざき
bara no okurimono
薔薇シリーズ完結記念の応募者全員サービス小冊子です。
HP公開作、書き下ろし短編、描き下ろしイラスト2点を含む、約76Pに渡る豪華な1冊。
現在は入手困難かもしれません。
以下、簡単なあらすじとレビューとなります。
●サンダーの謎
啓の相棒のような存在だった、作中で大活躍していた愛犬サンダー。
不死者に勇敢に立ち向かい、レヴィンには吠えたてる…と、本能で不死者を嗅ぎ分ける賢い犬だと思っていたのですが、なんとラウルがさり気なくレヴィンが来たら威嚇するように芸を仕込んでいたというもの。
お、大人げない…!だからレヴィンに対してあんなに歯を剥き出しにしていたんですね。
車中に閉じ込められていたサンダーを助け出してあげたレヴィンに噛み付き、放り投げられ、県を何県か跨いだはずなのに追い掛けて戻って来たサンダーはすごすぎる犬なのでは。
●薔薇邸
レヴィン視点。庭の薔薇の手入れをしながら、顔を見せに来た啓を見て、今は亡きエリックとの過去に想いを馳せるレヴィンのお話。
エリックは白薔薇のイメージだそうです。
これ、雰囲気は穏やかなのに胸にくるものがあります。
過去のエリックとレヴィンのやり取りが優しいものだけに、その後の結末を知っている読者からすると、未来の話をする彼らの姿が切ないんですよ。
あの時エリックの腕の中で笑っていた赤ん坊の今の姿を見せてやりたいと思いながら、啓にぴったりな赤薔薇を贈るレヴィン。
ある意味、これも求婚なのかも。
●赤毛のサムソン
ラウル視点。力を持て余し、日々を無気力に、怠惰に、退屈な人生を送りながら「赤毛のサムソン」と呼ばれていたラウルが生まれていた意味とも言える運命と出逢うまでのお話。
このお話はラウルがお好きな方にはぜひ一度読んでほしい。
ラウルの過去をより深く掘り下げていて、荒れていた時代から居場所を見つけるまで、そして啓という運命と出逢い、奇跡のような体験をするまでが描かれています。
意外なほどに荒れていた、今とは別人のようなラウルが、啓を見た瞬間に世界が変化していく様が気持ちが良いです。
●アシュレイ
アシュレイ視点も珍しく感じるのですが、スコットのお話というのも新鮮。
そういえば彼らは従兄弟同士だったのですよね。
啓がいかに悪ガキだったのか、スコットが苦労していたのかが分かる…
苺パックに大量のカタツムリを入れて持ち帰った啓。
翌日、カタツムリが全部逃げちゃった!と啓に泣かれ、自分が泣きたい気持ちになりながら、その後引っ越しをするまでの2年間、ひたすらカタツムリの恐怖に怯え、やがて大好きだったエスカルゴ料理が食べられなくなってしまった…と語る彼に同情してしまう。
他にもいなご事件、蝶、かいこ、だんご虫事件があるそうです。
クスッと笑えて、暖かい気持ちにもなれるお話でした。
●薔薇騎士団の七不思議
薔薇騎士団にまことしやかに伝わる七不思議について調査をする啓のコミカルなお話。
自身で団員から聞き取り調査をしていくと、過去にラウルも同じ事をしていたと聞き、レヴィンを巻き込んで聞きにいく事に。
順番に解説するラウルへ現実味あふれる茶々を入れるレヴィンに笑ってしまう。
最後のひとつは見つけられなかったと言うラウルに、そういえば地下牢は…とさり気なく語り出すレヴィンが1番の不思議かもしれません。
●薔薇騎士団オフレコ会議
インタビュー風会話劇。アシュレイが司会となって、お題にそってメンバーそれぞれが回答していくというもの。こちらも面白いです。
お互いの第一印象について、羨ましい能力についてなど、メンバーの飲み会に参加しているような気持ちで読めます。
●休暇の過ごし方
本編終了後、ラウルとの休暇の過ごし方についてのお話。
長年を過ごした日本へとラウルと旅行へ行く事に。
啓が日本でラウルとしたかった事、それはホラー映画のDVDを観る事。
いつも陽気なラウルと一緒に観ればきっと怖くないのではと観始めますが、ホラーは退屈だと眠りに入ってしまうラウルを無理やり付き合わせていると、次第に身体にいたずらを仕掛けられて…
個人的に、イタリア男なラウルと啓の甘いベッドシーンが好きなんです。
すごく情熱的というか、啓を可愛がりながらとろとろに甘やかしているのがたまらなく良いんですよ。
日本に10日ほど滞在し、マルタに戻ると驚きの展開が。
アシュレイとエミリーもなのですが、雄心の意外すぎる事実。ここの三角関係も面白いです。
甘さたっぷりの休暇でした。
●予感
アダム側に属していた元薔薇騎士ギルバートのお話。
まだ若い頃のエリック、マリア、パトリック、ランスロットの姿が見られます。
ギルバートはマリアの事が好きだったのですね。
その後不死者となり、アデラから伝えられた「生涯、愛する者からは愛されない運命」の予言が切ない。
脇役まで魅力的なのがこの作品の素敵なところです。
●お見舞い
入院中の啓を見舞うレヴィンとラウル。
そんな中、せっかくだから総帥と守護者2人が揃った写真を撮ろうと言うアシュレイ。
そこに理沙が乱入するのですが、理沙ってこんな事だったの…?とびっくり。
啓を盲信する理沙をアシュレイと啓が強引に遠ざける事に成功します。
しかし、アシュレイのお説教は長そう。
●窓辺の花
もうじき深い眠りについてしまうレヴィンと過ごす啓。
啓の画力の無さが心残りだと言うレヴィンと、スケッチをして過ごす事になりますが、啓が見事な画伯なようで叱られる始末。
そんな事に時間を使うよりも愛し合おうとする2人。
眠ってしまう前に啓の全てを記憶しようとするかのようなレヴィンの抱き方がもう…
願わくば、目覚めた彼が笑顔でいられますように。
どのお話もキャラクターの魅力がたっぷりと詰まっています。
シンプルで真っ赤なカバーが印象的な、本当に贈り物のような素敵な小冊子でした。