サイボーグの少年と施設研究員の交流が描かれた作品。
性玩具にするため生身の少年の体をサイボーグに作り変えたとあってショックが大きいです。本人同意の上ですがその取引内容に気分悪さがないとは言い切れません。その点を受け入れられるか否かで読者の反応は賛否両論ありますが、作者の久間よよよさんはこの作品について「育成メルヘン話」と話しており、ダークな設定に反しほのぼのした印象も強くあります。
体をサイボーグへ作り変えた弊害で記憶や言葉・感情などすべて忘れてしまったサイボーグの少年。そんな彼を世話を押し付けられた施設研究員の進藤はサイボーグが元は生身の少年だったと知ります。最初は迷惑な素ぶりで接していましたが、次第に研究施設に嫌悪感を抱き、研究指示を無視しサイボーグに言葉や感情を教えていきます。
サイボーグが無垢な子供のようで、辿々しく話す言葉やニッコリ笑った笑顔がとても愛らしい点が見所の一つだと思います。心の中を表現するメルヘンなキャラクターが背景に現れ、仄暗さを緩和してくれています。
進藤との交流で言語が増え感情もより豊かになってきたサイボーグ。進藤の心の中にも変化が出てきます。そんな折にサイボーグの処遇が明らかに…と展開していきます。
研究施設の所業は気分の良いものではありませんが、上巻より仄暗さが消えているのではないでしょうか。サイボーグの変化は元より、しかめっ面で淡々としていた進藤にも表情の変化が出てきたのも見所の一つになっていると思います。サイボーグから普通の少年へ完全に戻ることは出来ないけれど、彼らの幸せを垣間見ることが出来ます。サイボーグ改め"としおさん"が進藤に一心に愛を寄せる愛らしさは天下一品です!