綿密に張りめぐらされた伏線。狡くて、美しい大人の世界
東京のとある御屋敷町に二本の坂がある。ゆるやかに左にあがるのが日光坂。右にあがるのが月光坂といい、その月光坂の一角に見事な庭木の屋敷があり、ひとはその家を月光坂の花屋敷と呼ぶ。花に囲まれた屋敷で、時が動き出す――!
体の関係がある人物は何人かいても、誰にも執着しない雪哉。
雪哉に執着する居候の小鳥遊。求婚されて結婚して、別れたいと言われて別れた雪哉の元妻・かおり。
雪哉と元妻の共通の友人の自殺。自分のせいで死んだと雪哉が思う理由。
「雪哉はどう思う?かおり、いいよな」と笑いかける男。
好きと性欲の区別がつかないと言いながら、小鳥遊に抱かれたいと思う雪哉。
小鳥遊に明かした雪哉の息子・結人の出生の秘密。雪哉の思わせぶりなモノローグの数々。
そんな大人の絡み合った糸とは対照的に、結人の小鳥遊への幼いながらも真っ直ぐな想いが描かれています。