涙なしに読めぬ三部作
新入社員の高梨は、初めてできた上司の徳永がゲイであることを知る。
しかも、彼の恋のお相手は社長の古谷で、そのことは周知の事実。
ゲイ受け入れモードの会社についていけないと思いつつ、一途な徳永の想いに触れ、気づけば徳永を目で追ってしまう高梨。
あれ?この気持ちは…恋!?
表題作は会社の先輩後輩社員、そしてその会社の人達とのお話がほのぼのとした感じで描かれています。
先輩の徳永は新入社員の高梨の教育係なのですが、ゲイということを公表していて、社内でもそれは知られている状況。
でも社長の古谷社長が偏見のない人で、最初はギスギスした空気だった社内も次第に徳永にとって居心地のいいものに。
そんな中に入社してきた高梨は、徳永のアッサリとしたゲイカミングアウトにびっくりしながらも、徳永の人柄と仕事に対する姿勢に次第に偏見のない態度を取るようになります。
全体的には、根っから悪い人は登場しないお話で、安心して読める作品。
今作は高梨と徳永の恋愛に徹して描かれていました。高梨が新たに営業部への配属となり、ただでさえ成果が出せず燻っているところに、契約成立まであと一歩という相手先に同性と付き合っていることが伝わってしまい、直前で破棄されるという踏んだり蹴ったりな状況に陥ります。それを知った徳永は、仕事や会社にまで迷惑をかけてしまうのなら、と自ら引くことを選びます。
描き下ろしは2人の甘々ぶりが堪能できます。
徳永さんはほんと、これが同一人物?と思うくらい、仕事中とは打って変わってデレるのが可愛いです。
本編の方がかなりシリアスだったので、こういう幸せな2人を見るとホッとします。
今本当に、いろんな人に読んでほしい作品。同性同士とか異性同士とか関係ない。もう恋愛の次元じゃない。このラストの巻では、家族のこと、子供のことなどBLではあまり描かれない、男性の恋人同士の将来をめぐるお話がかかれています。読むのは結構つらかったです。
もし、私が徳永の立場だったら、別の一般的に幸福だといわれる人生を歩める可能性のある恋人がいたら、同じように別れようと決断したと思います。
でも、高梨のまっすぐな徳永への愛情は、全くぶれなかった。こんなに、人の愛を感じる作品は、初めてでした。