尾上与一さんのレビュー一覧

二月病 小説

尾上与一  黒沢要 

ハードでダークで八方塞がり

卒業を控えた高校三年生の千夏(せんか)と蒼司。ありふれた日常から一変、蒼司の両親が何者かに殺され、蒼司は誘拐される。高圧送電線の鉄塔を支えるボルトを100本外して届ければ蒼司を返してくれるとの言葉を信じて、千夏は毎夜鉄塔によじ登る。現場を目撃した元記者の男は千夏を咎めるが、警察に通報できないという千夏の決意にほだされ、共に事態に巻き込まれる、というお話。

内容が大変ハードで、八方塞がりで、ど…

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海鷲に告げよ 小説

尾上与一   

確かにあった塁の居場所

番外編3冊目!こうして読める幸せ。
尾上先生や出版社様方のご尽力に感謝いたします。

蒼穹のローレライの二人。
塁の不器用さ、いといけな様、読んでいて切なく胸が苦しくなります。
三上の話し方を読むと懐かしく
ああそうだった、シリーズで一番優しい口調だったな‥思い出しました。

恒と六郎も塁の振り回され役で登場。
恒が同じ搭乗員として塁を理解しようと、救いたいと思っていることに涙し…

2

海鷲に告げよ 小説

尾上与一   

戦後80年の節目に。唯一無二の二人の絆

ただただ一言、素晴らしい番外編集でした...

全21編の短編が収録された、1945シリーズ番外編集第3弾です。
同人誌や旧版のコミコミさん特典など、
今では読めないもの・入手の難しいものがこうして一つの形で読める喜び…!
噛み締めました。

1945シリーズ、どの御本も大体一度は読み返しているのですが
実は『蒼穹のローレライ』だけはどうしても読み返せなくて( ; ; )

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蒼穹のローレライ 小説

尾上与一   

あなたが読むか読まないか

ラバウルに行きたい。
検索かけて、見た事もない風景の写真なのに、涙が出るんです。
彼らがここに居たんだって思ったら、胸が熱くなる。

登場人物が『キャラ』じゃなくて、一人の人間として描かれている。
作者様の、さすがの表現力で、気持ちをどんどん攫われます。
出だしから、どんな展開になるのか引き込まれ、回想では、ローレライの謎や、そこで過ごした彼らの日常生活がとても気になりました。
整備…

0

『郵便飛行機より愛を込めて』コミコミスタジオ限定 連作SSフェア小冊子「桜とかき餅あられ」 グッズ

かき餅あられが食べたくなりました

「郵便飛行機より愛を込めて」の特典SS小冊子。本編を読んだあとにこちらを読まないと機微が伝わらないので読了後推奨です。
いろいろあって再会を果たした兄弟でしたがそう長くは休めずもう帰らないといけません。おみやげの菓子折は既に資紀が用意してくれていて十分なはずが、希のおすすめのかき餅を買うべく四人で商店街に寄ったお話。
六郎視点→希視点→六郎視点の構成で、希視点のところは兄弟のやりとり、六郎視点…

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『彩雲の城』コミコミスタジオ限定1945シリーズ連作SSフェア特典小冊子「とりのはなし 谷藤十郎、緒方伊魚」 グッズ

対等でとても良い関係

彩雲の城の特典なので、彗星ペアで「とりのはなし」。
「掃きだめに鶴」にて3題。
戦時中、男ばかりでむさくるしいラバウルの軍隊で。戦後、勤務している男子校の校内で。そして自宅の庭でもらったラブレターを燃やしながら述懐。
いずれも伊魚が鶴なわけなのですが、「これほど鶴だ鶴だと言われ続けたら、いい加減、ガーゼの一枚でも織って見せなければ名折れのような気がしてきた」と零すのが可笑しいし、ところどころ…

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『プルメリアのころ。』1945シリーズ コミコミスタジオ限定連作SSフェア小冊子「とりのはなし4 鷹居千歳」 グッズ

頼り甲斐のあるペア

作戦を終えて帰還してしばらくすると褒美が届けられる。
が、毎回千歳に届けられる褒美の内容があからさまに少なくて、届けられる間に抜かれているのが明白で、ペアのカズイがとうとうキレたお話。
何人もの人が間に入っているのを一人ずつたどって、くすねた物品を取り返す地道な作業。千歳は全然気にしていなくて、それがまたカズイの苛立ちを増幅させるという。
「プルメリアのころ。」についてきたSSなのですが、こ…

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プルメリアのころ。 小説

尾上与一   

正直な二人

1945シリーズ、最後にこの作品を読みました。
ついに現れました。
戦争が嫌だとはっきり言う人物
戦争で死ぬなんてバカバカしいと考える人物が。
その二人がペアになり、お互いのために戦います。
強くて愛国心があった人ばかりではなかっただろう。きれいごとばかりではなかっただろう。
この二人は気持ちに正直で、一番共感できると思いました。弱い泣き虫の千歳を思って、同じくらいカズイが悲鳴をあげる…

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天球儀の海 小説

尾上与一   

頑なに思いあう二人

旧作未読
1945シリーズを順通通りに読まず、四冊目にしてこちらの作品を拝読。
もし最初にこの作品から読んでいたら先に進めず怯んでいたかもしれません。

一途に思い続けた人の身代わりで特攻隊員になるとはかなり常軌を逸したお話。
舞台は日本で戦場のことはほぼ書かれておりません。
愛する人をここまでしなけれはならないくらい追い詰められる状況だったのでしょうか。
そうでもしなければ兵役を免…

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碧のかたみ 小説

尾上与一   

番のふたり

1945シリーズのなかで、二人は実に健全な男子という印象。
家族もいて愛されて育った、すこやかで明るいペア。小気味よく読み進めました。

六郎が恒に惹かれるのと同時に読んでいるこちらがときめきます。やんちゃだけど賢く腕が良い、星のように眩しい子。
屈託無い素直な性質がシリーズの中でも珍しく、それが一層戦場との対比で切なくはなりました。
戦争でなければ出会ってない二人。
尾上先生が仰るよ…

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